( 糸球体疾患の概要 糸球体疾患の概要 腎臓には、血液のろ過を担っている糸球体と呼ばれる組織が左右でそれぞれ約100万個ずつ存在します。糸球体は、小さな穴があいた微細な血管(毛細血管)で形成された顕微鏡レベルの微小なかたまりです。この微細な血管は、内部を流れる血液中の水分が周囲に漏れ出るようにできていて、漏れ出た水分は尿細管という微細な管に流れ込みます。尿細管は化学物質やその他... さらに読む も参照のこと。)
健診の尿検査において、症状が何もみられない人の尿中に少量のタンパク質(タンパク尿)や血液( 血尿 血尿 尿に血液が混じると(血尿)、血液の量や血液が尿に混入してからの経過時間や尿の酸性度などに応じて、尿の色がピンク、赤色、茶色に変化することがあります。混入した血液の量が少なく尿が変色しない場合(顕微鏡的血尿)でも、化学的な検査や顕微鏡による検査では検出することが可能です。別の理由で尿検査を受けた際に顕微鏡的血尿が発見される場合もあります。 血尿のある人は、血尿の原因に応じて、側腹部または背部の痛み、下腹部痛、尿意切迫感、排尿困難など、... さらに読む )が検出されることがあります。尿中に赤血球の尿円柱(赤血球が凝集したもの)や異常な形状をした赤血球が認められれば、尿中で検出された血液は糸球体から漏れ出たものであることが疑われます。最近発生してまだ診断されていない 腎炎 糸球体腎炎 糸球体腎炎は、糸球体(小さな穴が多数あいた微細な血管でできた球状の腎組織で、それらの穴を通して血液がろ過されます)が侵される病気です。糸球体腎炎は、むくみ(浮腫)、高血圧および尿中での赤血球の検出を特徴とします。 糸球体腎炎は、感染症、遺伝性疾患、自己免疫疾患など、様々な病気が原因で発生します。 診断は、血液検査と尿検査の結果に基づいて下され、場合によっては画像検査や腎臓の生検も行われます。... さらに読む (腎臓の炎症)からの回復期に尿円柱やタンパク尿が認められることもあり、このような状況が疑われる場合には、その後の数週間から数カ月間にわたって異常が解消されたことを再確認するだけで十分です。
赤血球(特に尿円柱)やタンパク尿が依然として認められる場合、その原因は通常、次の3つの病気のいずれかです。
IgA(免疫グロブリンA)腎症:これは腎臓に免疫複合体(抗体と抗原が結合したもの)が沈着することによって引き起こされる 糸球体腎炎 糸球体腎炎 糸球体腎炎は、糸球体(小さな穴が多数あいた微細な血管でできた球状の腎組織で、それらの穴を通して血液がろ過されます)が侵される病気です。糸球体腎炎は、むくみ(浮腫)、高血圧および尿中での赤血球の検出を特徴とします。 糸球体腎炎は、感染症、遺伝性疾患、自己免疫疾患など、様々な病気が原因で発生します。 診断は、血液検査と尿検査の結果に基づいて下され、場合によっては画像検査や腎臓の生検も行われます。... さらに読む の一種で、極めて軽度で進行しない場合もあれば、重症化して腎不全(腎機能のほとんどが失われた病態)に進展する場合もあります。
遺伝性腎炎 遺伝性腎炎 遺伝性腎炎は、糸球体腎炎が発生する遺伝性疾患で、腎機能の低下と血尿がみられるほか、ときに難聴や眼の異常も生じます。 ( 糸球体疾患の概要と 糸球体腎炎も参照のこと。) 遺伝性腎炎は通常、X染色体(女性の性染色体)にある特定の遺伝子の異常が原因で発生しますが、ときに常染色体にある別の遺伝子の異常によって引き起こされることもあります。この遺伝子をもっている人での重症度には、他の要因が影響を及ぼします。遺伝性腎炎は... さらに読む (アルポート症候群):重症化して腎不全に進展することもある進行性の病気で、聴覚や視覚が損なわれる可能性があります。
菲薄基底膜病(良性家族性血尿):この遺伝性の病気は、基底膜と呼ばれる糸球体の一部分が薄くなることによって引き起こされます。
菲薄基底膜病により、尿中に赤血球がみられる傾向がありますが、タンパク質の排泄量はIgA腎症や遺伝性腎炎と比較して少なく、赤血球の尿円柱は排泄されない場合があります。この病気は軽度で非進行性の経過をたどります。通常は 腎生検 組織および細胞のサンプル採取 膀胱や尿路の病気が疑われる場合の評価には、部位に応じた生検や細胞を採取する検査も用いられます。( 尿路の概要も参照のこと。) 腎生検(腎臓の組織サンプルを採取して顕微鏡で観察する検査)は主に、腎臓の特殊な血管(糸球体)や微細な管(尿細管)が障害される病気の診断と、 急性腎障害のまれな原因の診断に用いられます。生検はまた、移植された腎臓で拒絶反応の徴候がないかを調べる目的でもしばしば行われます。... さらに読む で診断できます。しかし、治療可能な病気が発見される可能性がほとんどないため、腎生検はめったに行われません。
無症候性タンパク尿・血尿症候群の人には通常、年1~2回の間隔で身体診察と尿検査を受けることが勧められます。尿中のタンパク質や血液の量が際立って増えた場合や、特定の病気の発生を疑わせる症状が認められる場合には、より詳細な検査が行われます。無症候性タンパク尿・血尿症候群が悪化することはほとんどなく、同じ状態がいつまでも続く場合もあります。
さらなる情報
米国腎臓財団、タンパク尿(American Kidney Fund, Proteinuria):尿中のタンパク質に関する情報や解説画像(この症状と慢性腎臓病との関連など)
米国腎臓財団、IgA腎症(American Kidney Fund, IgA Nephropathy):IgA腎症に関する一般的な情報(よくある質問への回答など)
米国腎臓財団、血尿(American Kidney Fund, Hematuria):尿中の血液に関する情報(この症状と重篤な腎疾患との関連など)