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ネフローゼ症候群

執筆者:

Navin Jaipaul

, MD, MHS, Loma Linda University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 7月
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ネフローゼ症候群は、尿中に大量のタンパクが排泄される、糸球体(小さな穴が多数あいた微細な血管でできた球状の腎組織で、それらの穴を通して血液がろ過されます)の病気です。タンパクの過剰な排泄により、典型的には体内への水分の蓄積(浮腫)をきたすとともに、アルブミンと呼ばれるタンパクの血中濃度が低下し、脂質の血中濃度が上昇します。

  • 腎臓に損傷を与える薬剤や病気によってネフローゼ症候群が発生することがあります。

  • 症状としては疲労やむくみ(浮腫)などが挙げられます。

  • 診断は、血液検査と尿検査のほか、ときに腎臓の画像検査や生検の結果に基づいて下されます。

  • ネフローゼ症候群を引き起こしうる病気のある患者には、腎臓の損傷を遅らせるため、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬が投与されます。

  • さらに治療では、ナトリウム摂取量を制限し、利尿薬とスタチン系薬剤を使用します。

糸球体疾患の概要も参照のこと。)

ネフローゼ症候群は、徐々に症状が現れてくる場合もあれば、突然発症する場合もあります。ネフローゼ症候群はあらゆる年齢で発生します。小児では生後18カ月から4歳までの期間が最も多く、女児よりも男児で多くみられます。年齢が高くなると、男女差はなくなります。

尿中への過剰なタンパクの排泄(タンパク尿)により、アルブミンなどの重要なタンパクの血中濃度が低下します。また、血液中の脂質の濃度が上昇し、血液が固まりやすくなり、感染症にかかりやすくなります。また血液中のアルブミン濃度が低下することで、血流から水分が流出し、組織内に流入します。組織内に入った水分により浮腫が起こります。血流から水分が流出することで、腎臓は代償として、より多くのナトリウムを保持します。

原因

ネフローゼ症候群は以下のものに分けられます。

  • 原発性:腎臓から発生するもの

  • 二次性:他の様々な病気によって発生するもの

二次性の原因としては、体の他の部分に影響を及ぼすものもあります。ネフローゼ症候群の原因になる病気で最も多くみられるものは、糖尿病全身性エリテマトーデス、および特定のウイルス感染症です。また腎炎が原因でネフローゼ症候群が発生することもあります(糸球体腎炎)。腎臓に対して毒性を示すいくつかの薬もネフローゼ症候群を引き起こす可能性があり、特に非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が重要です。虫刺されやウルシ科の植物に対するアレルギーなど、一部のアレルギー反応が原因になる場合もあります。さらに遺伝性のネフローゼ症候群もあります。

ネフローゼ症候群の二次的な原因

*印は最も一般的な原因を示す。

症状

初期症状には以下のものがあります。

  • 食欲不振

  • 全身のだるさ(けん怠感)

  • ナトリウムと水分の過剰な貯留によるまぶたの腫れやその他の部分のむくみ(浮腫)

  • 腹痛

  • 尿の泡立ち

腹腔に多量の体液がたまって(腹水)、腹部が膨張することもあります。また肺の周囲の隙間に体液が貯まって(胸水)、息切れを起こすこともあります。そのほかにも、女性の陰唇や男性の陰嚢(いんのう)などのむくみもみられます。ほとんどの場合、組織のむくみの原因になる水分は、重力の影響を受けるため体内のあちこちに移動します。夜間には、まぶたなどの体の上の方に貯まる一方、日中に座っているか立っているときには、足首などの体の下の方に貯まります。同時に進行している筋肉の萎縮がむくみによって隠れてしまうこともあります。

小児では、血圧は概して低く、立ち上がったときに血圧が低下することがあります(起立性低血圧)。ときにショックに至ることもあります。成人では、低血圧になる場合もあれば、正常の場合も、高血圧になる場合もあります。

血管からその外部の組織へと水分が漏れ出すために血液の液体成分の量が大幅に減少し、腎臓への血液供給量が少なくなると、作られる尿の量が減少して、腎不全(腎機能がほぼ失われた状態)に至る場合があります。まれに、尿量の減少を伴って腎不全が突然発生することもあります。

尿中に栄養素が排泄されてしまうことから、栄養不良に陥ることもあります。その場合、小児では成長が妨げられます。骨からカルシウムが失われたり、ビタミンD欠乏症になったりすることがあり、結果として骨粗しょう症を発症する場合もあります。さらに、毛髪や爪がもろくなったり、毛髪が一部抜け落ちたりすることもあります。爪の基部に白い横線が現れることがありますが、その理由は解明されていません。

腹腔の内側と腹部の臓器を覆っている膜(腹膜)に炎症や感染が起こることもあります。日和見感染(健康な人には無害な細菌によって引き起こされる感染症)がよくみられます。感染症にかかりやすくなるのは、感染防御に関わる抗体が尿中に排泄されたり、抗体の生産量が通常より減少したりすることが原因と考えられています。血液が固まりやすくなる傾向もみられ(血栓症)、特に腎臓から血液が流れ出す太い静脈の内部に血栓が作られやすくなります。頻度はやや低いとはいえ、必要なときに血液が固まらなくなる場合もあり、そうなると大量出血を起こしやすくなります。心臓や脳に異常をきたす合併症を伴う高血圧は、糖尿病か全身性エリテマトーデスの患者で最も多くみられます。

診断

  • 尿検査と血液検査

ネフローゼ症候群の診断は、症状、身体所見、および臨床検査の結果に基づいて下されます。高齢者のネフローゼ症候群は、心不全と間違われることがありますが、これは、どちらの状態でもむくみが認められることと、高齢者では心不全がよくみられることによります。

失われたタンパクの量を測定するには、24時間にわたって尿を採取する検査が有用ですが、丸1日かけて尿を集めるのは多くの患者にとって困難です。その代わりに、1回だけ採取した尿サンプルで検査を行って、クレアチニン(老廃物)の濃度に対するタンパクの濃度の比を求めることによって、失われたタンパクの量を推定することも可能です。

血液検査と上記以外の尿検査によって、さらにネフローゼ症候群の特徴がないかを調べます。重要なタンパクであるアルブミンは、尿中に排泄されると同時に生産も損なわれるため、血中濃度が低下します。血液細胞にタンパクや脂質も加わって凝集したかたまり(尿円柱)が尿中に確認されることも多くあります。尿中のナトリウム濃度は低く、カリウム濃度は高い値となります。

血液中の脂質濃度は高値を示し、ときに正常値の10倍以上になる場合もあります。尿中の脂質濃度も高値となります。貧血がみられることもあります。血液の凝固を担うタンパクの濃度は高いこともあれば、低いこともあります。

ネフローゼ症候群の原因の特定

薬物も含めて、ネフローゼ症候群の原因として考えられるものがないか調べます。

尿と血液の分析によって、背景にある病気(基礎疾患)を特定できる可能性があります。例えば、ネフローゼ症候群の原因となりうる過去の感染症の証拠や、自己免疫疾患を示唆する自己抗体(自身の組織に向けられた抗体)について、血液検査を行います。

超音波検査やCT検査などによる腎臓の画像検査も行われる場合があります。体重減少がみられる場合と患者が高齢者の場合には、がんの検査が行われます。腎臓の損傷の原因と程度を判断する上では、腎生検が特に有用です。

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ネフローゼ症候群を引き起こす原発性糸球体疾患

糸球体疾患

説明

予後(経過の見通し)

微小変化群

軽度の糸球体の病気で、小児に多くみられますが、成人でもみられます。

予後(経過の見通し)は良好です。小児の90%、成人でもほぼ同程度の割合で、治療の効果が得られます。ただし、成人の30~50%では再発がみられます。1~2年間の治療後には、80%以上の患者が軽快し、その状態が生涯維持されます。

巣状分節性糸球体硬化症

この病気では糸球体に損傷が生じます。主に青年に発生する病気ですが、成人の若年層と中年層にもみられます。黒人で比較的多くみられます。

治療の効果があまりみられないため、予後は不良です。成人であれ小児であれ、大半が診断後5~20年のうちに末期腎不全へと進行します。

膜性腎症

重篤な糸球体の病気で、主に成人にみられます。白人で比較的多くみられます。

約25%の人では、尿中へのタンパクの排泄が止まります。約25%の人が末期腎不全に移行します。その他の人では、ネフローゼ症候群または無症候性タンパク尿・血尿症候群として、尿中へのタンパク排出が持続します。

先天性および乳児ネフローゼ症候群

これらは遺伝性のまれな病気です。原因になる主な病気として、先天性ネフローゼ症候群(フィンランド型)とびまん性メサンギウム硬化症の2つがあり、これらは巣状分節性糸球体硬化症とよく似ています。フィンランド型では出生時から症状がみられ、びまん性メサンギウム硬化症では小児期に発症します。

これらの病気にはコルチコステロイドが効きません。血中アルブミン濃度が極度に低下することから、両側の腎臓を切除する手術がしばしば検討されます。腎移植が可能となる条件が整うまで、透析を含めた支持療法が行われます。

膜性増殖性糸球体腎炎

まれな種類の糸球体腎炎で、発症年齢は主に8~30歳です。原因は、腎臓に付着した免疫複合体(抗原と抗体が結合した複合体)の沈着で、付着する理由はときに不明です。

治療可能な病気(全身性エリテマトーデス、B型肝炎、C型肝炎など)が原因の場合、部分的な回復が起こる可能性があります。一方、原因不明の場合は、最終的な経過はそれほど良くありません。治療を行わない場合には、末期腎不全への進行が10年以内に約半数の患者で、20年以内に90%の患者で認められます。

メサンギウム増殖性糸球体腎炎

原因が特定されないネフローゼ症候群患者のうち約3~5%は、この病気によるものです。あらゆる年齢で発生します。

約50%の患者はコルチコステロイド投与に最初は反応します。約10~30%は進行性の腎不全へと進展します。再発時には、シクロホスファミドによる治療で効果が得られることがあります。

予後(経過の見通し)

予後は以下の要因によって異なります。

  • ネフローゼ症候群の原因

  • 患者の年齢

  • 腎障害の種類

  • 腎障害の程度

ネフローゼ症候群の原因が感染症、がん、薬物などの治療可能なものであれば、その病態を早期の段階で効果的に治療することで、症状を完全に解消できる可能性があります。このような状況は小児では約半数に起こりますが、成人ではそれほど多くありません。基礎疾患にコルチコステロイドが有効であれば、ときに病気の進行を止められる場合もあり、また可能性はやや低くなりますが部分的な回復や、まれながら完全な回復が得られる場合もあります。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症が原因のネフローゼ症候群は、概して容赦なく進行し、その多くは3~4カ月で完全な腎不全へと移行します。ネフローゼ症候群の状態で生まれた乳児は、1歳の誕生日まで生きられることはまれですが、少数ながら透析治療または腎移植によって生存できる場合もあります。

全身性エリテマトーデスや糖尿病が原因であるネフローゼ症候群では、しばしば薬物療法で尿中のタンパクの量を安定ないし減少させることができます。しかし、一部の患者には薬物療法が効果を発揮せず、慢性腎臓病が発生し、数年で進行性の腎不全に至ることもあります。

予防

予防および治療の柱として、エナラプリル、べナゼプリル、リシノプリルなどのアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、またはカンデサルタン、ロサルタン、バルサルタンなどのアンジオテンシンII受容体拮抗薬を使用します。全身性エリテマトーデスや糖尿病などのある人で軽度または中等度のタンパク尿が認められる場合は、ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬でタンパク尿の増加と腎機能の悪化を予防できる可能性があるため、できるだけ速やかにこれらの薬剤の投与が開始されます。

治療

  • 薬剤、しばしばACE阻害薬またはARBを含む

  • 原因の治療

  • 合併症の治療

すでにネフローゼ症候群を発症している人では、ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬を使用することで、症状が改善することがあるほか、通常は尿中へのタンパクの排泄量が減少し、さらに血液中の脂質の濃度も低下する可能性が高くなります。ただし、中等度から重度の腎不全のある人では、これらの薬剤を使用すると血液中のカリウム濃度が上昇する可能性があり、それにより危険な不整脈が発生するおそれがあります。

ネフローゼ症候群に対する治療としては、タンパク質とカリウムは通常の摂取量で維持する一方、飽和脂肪酸、コレステロール、ナトリウムの摂取量を制限する食事療法があります。

腹部に体液(腹水)が貯まると、胃の容積が小さくなるため、食事を何回かに分けて少量ずつ取らなければならない場合があります。

高血圧には利尿薬による治療が通常行われます。利尿薬には体液のうっ滞と組織のむくみを軽減する効果もありますが、一方で血栓形成のリスクを高める可能性もあります。

その場合には、抗凝固薬が血栓形成を抑えるのに役立ちます。感染症が起きると生命が脅かされる可能性があり、速やかに治療を行う必要があります。

血液中の脂質の濃度が高い場合は、スタチン系薬剤(血液中のコレステロール濃度を低下させる薬剤)も必要になることがあります。

患者は肺炎球菌ワクチンの接種を受けるべきです。まれに、多量のタンパクが尿中に排出されるため、腎臓を摘出しなければならない場合があります。

可能であれば、原因に応じた特別な治療が行われます。原因になっている感染症を治療することで、ネフローゼ症候群が治癒することもあります。一部のがんなどのように治療可能な病気が原因の場合には、その病気を治療することでネフローゼ症候群は解消されます。ヘロインの常用者がネフローゼ症候群を発症した場合には、早期の段階でヘロインの使用をやめれば回復が望めます。その他の薬剤が原因である場合は、問題の薬剤を中止することで治癒に至る可能性があります。ウルシ科の植物や虫刺されに対する過敏症やアレルギーがある人は、それらに接触しないようにする必要があります。

治療可能な原因が見つからない場合には、コルチコステロイドやその他の免疫抑制薬(シクロホスファミドなど)を投与します。ただし、コルチコステロイドには問題になる副作用もあり、特に小児では成長が阻害されたり、性的な発達が抑制されたりするなどの問題が懸念されます( コルチコステロイドの使用法と副作用)。

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