腹部に体液がたまることが多く、脾臓が腫大することがあり、食道で重度の出血が起こることもあります。
皮膚と白眼の部分が黄色くなり、腹部が膨らむことがあります。
診断は、症状とドプラ超音波検査の結果に基づいて下されます。
可能であれば、原因を是正するか取り除き、症状を治療します。
(肝臓の血管の病気の概要 肝臓の血管の病気の概要 肝臓は必要とする酸素と栄養素を次の2つの太い血管から得ています。 門脈 肝動脈 門脈は、肝臓への血液供給の3分の2を担っています。その血液には酸素のほか、肝臓で処理するために腸から運ばれる多くの栄養素が含まれています。肝動脈は、残る3分の1の血液供給を担っています。その血液は、心臓から流れてきた酸素を豊富に含む血液で、肝臓に供給される酸素... さらに読む も参照のこと。)
類洞閉塞症候群はバッド-キアリ症候群に似ていますが、 バッド-キアリ症候群 バッド-キアリ症候群 バッド-キアリ症候群は、肝臓からの血流を完全にまたは部分的に遮断する血栓によって引き起こされます。閉塞は、肝臓(肝静脈)から下大静脈に向かう大小の静脈のどこにでも起こる可能性があります。 無症状の場合もありますが、疲労、腹痛、吐き気、黄疸などがみられる場合もあります。 腹部に体液が貯留し、脾臓が腫大することがあるほか、ときには食道で重度の出血が起こります。 ドプラ超音波検査では、静脈が狭くなっている部分やふさがっている部分を検出できます... さらに読む は肝臓の太い血管や肝臓外の血管で血流が遮断されるのに対し、肝中心静脈閉塞症では肝臓内の非常に細い血管で血流が遮断されるだけです。すなわち、閉塞は大きな肝静脈や下大静脈(肝臓を含む下半身からの血液を心臓に送り込む太い静脈)には影響しません。
類洞閉塞症候群は、あらゆる年齢で発生します。
肝臓から出る血流が遮断されるため、血液は肝臓内にたまります。こうして血液がたまること(うっ血)によって、肝臓に流入する血液の量が減少します。供給される血液が不足する(虚血)ことで、肝臓の細胞に損傷が生じます。うっ血により、肝臓は腫れて大きくなります。肝臓のうっ血により、門脈の血圧も上昇します(門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症は、門脈(腸から肝臓に向かう太い静脈)とその分枝の血圧が異常に高くなる病気です。 欧米諸国で最も一般的な原因は、 肝硬変(瘢痕化により肝臓の構造が歪み、機能が損なわれること)です。 門脈圧亢進症は、腹部の膨隆( 腹水)、腹部の不快感、錯乱、消化管での出血につながります。 医師は、症状および身体診察の結果、ときには超音波検査、CT検査、MRI検査、または肝生検の結果に基づいて診断を下します。... さらに読む )。門脈圧亢進症の結果、食道の静脈が蛇行して拡張することがあります(食道静脈瘤 消化管出血 口から肛門までの消化管のいずれの部分でも、出血が起こることがあります。出血は肉眼で容易に見える場合(顕性)もあれば、量が少なすぎて見えない場合(潜在性)もあります。潜在性の出血(潜血)は、特別な化学物質を用いた便サンプルの検査でのみ検出されます。 嘔吐物中に血液がみられる場合(吐血)があり、この場合上部消化管(通常は食道、胃または小腸の最... さらに読む )。門脈内の血圧の上昇と肝臓のうっ血により、腹部に体液がたまる 腹水 腹水 腹水とは、タンパク質を含む体液が腹部に貯留したものです。 腹水がたまる病気は多くありますが、最も一般的な原因は、肝臓につながる静脈(門脈)の血圧が上昇すること( 門脈圧亢進症)で、通常は 肝硬変によって起こります。 大量の体液が貯留すると、腹部は非常に大きく膨らみ、ときに食欲不振や息切れ、不快感を生じることがあります。 原因を確定するには、腹水の分析が役立ちます。 通常は、低ナトリウム食と利尿薬によって、過剰な体液の排出を促します。 さらに読む と呼ばれる病態が発生します。脾臓の腫大もよくみられます。
うっ血が起こると、肝臓への血流は減少します。その結果、肝臓が損傷し、最終的には重度の瘢痕化(肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、 飲酒によらない脂肪肝です。 食欲不振、体重減少、疲労、全身のけん怠感などの症状が現れます。 腹部への体液の貯留( 腹水)、... さらに読む )が起こります。
肝臓への血液の供給
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原因
一般的な原因としては以下のものがあります。
タヌキマメ属やセネキオ属の植物(ジャマイカでハーブティーを淹れるために用いられる)や、コンフリーなどのハーブに含まれるピロリジジンアルカロイドの摂取(薬用ハーブと肝臓 薬用ハーブと肝臓 多くの薬は、肝機能に影響を及ぼしたり、肝臓を損傷したりする可能性があります。( 薬と肝臓も参照のこと。) スタチン系薬剤(コレステロール値の上昇に対する治療に用いられる)などの一部の薬は、肝酵素の値を上昇させ、肝臓に損傷(通常は軽度)を与えることがありますが、症状は引き起こしません。 ごくわずかですが、肝臓をひどく損傷して、 黄疸(皮膚や眼が黄色くなること)、腹痛、かゆみ、皮下出血や出血が起きやすくなるなどの症状を引き起こす薬もあります... さらに読む を参照)
シクロホスファミドやアザチオプリン(免疫系を抑制する薬)など、肝臓に毒性作用を及ぼすことがある特定の薬剤の使用
骨髄移植や幹細胞移植後の反応(移植片対宿主病)
移植片対宿主病 移植片対宿主病 輸血を行うことで、血液が酸素を運ぶ能力を高め、体内の血液量を回復させるとともに、血液凝固の障害を正常にします。輸血は通常安全ですが、ときに副作用が生じることもあります。 輸血に際しては、副作用を最小限に抑えるため、いくつかの予防措置が行われます。輸血を開始する前に、通常は数時間前に(または数日前のこともあります)、受血者と供血者の血液の交差適合試験を行います(血漿輸血や血小板輸血では行いません)。... さらに読む では、移植された組織の白血球が受け入れ側の組織を攻撃します。この反応は移植から約3週間後に起こる傾向があります。
症状
症状は突然起こることがあります。肝臓が腫大し、圧痛を生じます。内部に体液が貯留し、腹部が膨らむことがあります。皮膚や白眼の部分が黄色くなる症状(黄疸 成人の黄疸 黄疸では、皮膚や白眼が黄色くなります。黄疸は、血中にビリルビン(黄色の色素)が多すぎる場合に起こります。この病態を高ビリルビン血症と呼びます。 ( 肝疾患の概要と 新生児黄疸も参照のこと。) 写真では、黄色に変色した眼と皮膚(黄疸)がみられます。 ビリルビンは、古くなった赤血球や損傷した赤血球を再利用する正常なプロセスの中で、ヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球の一部)が分解されるときに生成されます。ビリルビンは、血流によって肝臓に運ばれ、そ... さらに読む )がみられることもあります。
食道の静脈瘤が破裂して出血し、ときには大出血になって、吐血したり ショック ショック ショックとは、臓器への酸素の供給量が低下し、生命を脅かす状態で、臓器不全やときには死亡につながります。通常、血圧は低下しています。 ( 低血圧も参照のこと。) ショックの原因には血液量の減少、心臓のポンプ機能の障害、血管の過度の拡張などがあります。 血液量の減少または心臓のポンプ機能の障害によってショックが起きると、脱力感、眠気、錯乱が生じ、皮膚が冷たく湿っぽくなり、皮膚の色が青白くなります。... さらに読む 状態に陥ったりすることがあります。静脈瘤からの出血が消化管を通過することで、悪臭を放つ黒いタール状の便(黒色便)がみられることがあります。重度の出血の場合、その後にショックを起こします。少数の患者は 肝不全 肝不全 肝不全は、肝機能が大幅に低下した状態です。 肝不全は、肝臓に損傷が起きる病気や物質により引き起こされます。 ほとんどの患者は 黄疸(皮膚と眼が黄色くなる)になり、疲れて脱力を覚え、食欲を失います。 他の症状には、腹部への体液の貯留( 腹水)や、皮下出血や出血が起きやすい傾向などがあります。 医師は通常、症状と身体診察、および血液検査の結果に基づいて、肝不全の診断を下すことができます。 さらに読む と脳機能の異常(肝性脳症 肝性脳症 肝性脳症は、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気です。 肝性脳症は、長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生します。 肝性脳症は、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発されます。 錯乱、見当識障害、眠気が起こるとともに、性格、行動、気分の変化がみられます。... さらに読む )を起こし、錯乱や昏睡に陥ります。
また、 肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、 飲酒によらない脂肪肝です。 食欲不振、体重減少、疲労、全身のけん怠感などの症状が現れます。 腹部への体液の貯留( 腹水)、... さらに読む を発症する患者もいます。肝硬変に至るまでに通常は数カ月かかりますが、原因と有害物質への曝露回数によって、発症までの期間は異なります。
診断
医師による評価
肝臓の血液検査と血液凝固検査
超音波検査または侵襲的検査
類洞閉塞症候群は、肝機能障害を示す症状や血液検査の結果に基づいて疑われます。特に患者がこの病気を引き起こす物質を摂取しているか、原因となりうる状態にある(とりわけ骨髄移植や幹細胞移植を受けたことがある)場合には強く疑われます。まだ血液検査を行っていない場合は、検査を行い、肝臓がどの程度機能しているか、肝臓の損傷がないか(肝臓の検査 肝臓の血液検査 肝臓の検査は血液検査として行われますが、これは肝疾患の有無をスクリーニングし(例えば、献血された血液に 肝炎があるかを調べる)、肝疾患の重症度や進行度と治療に対する反応を評価するための検査のうち、体への負担が少ない方法の代表例です。 臨床検査は、一般的に以下の目的に有効です。 肝臓の炎症、損傷、機能障害の検出... さらに読む )を判定するとともに、血液の凝固能を評価します。
たいていは ドプラ超音波検査 ドプラ超音波検査 超音波検査は、周波数の高い音波(超音波)を用いて内臓などの組織の画像を描出する検査です。プローブと呼ばれる装置で電流を音波に変換し、この音波を体の組織に向けて発信すると、音波は体内の構造で跳ね返ってプローブに戻ります。これは再度、電気信号に変換されます。コンピュータが、この電気信号のパターンをさらに画像に変換してモニター上に表示するとともに、コンピュータ上のデジタル画像として記録します。X線は使用しないため、超音波検査で放射線にさらされ... さらに読む で診断が確定されます。ときに侵襲的な(体に負担をかける)検査が必要になります。侵襲的な検査としては、肝生検や肝静脈および門脈の血圧測定などがあります。肝静脈および門脈の血圧測定では、医師がカテーテルを首の静脈(頸静脈)に挿入し、肝静脈まで通します。同時に 肝生検 肝生検 肝臓の組織サンプルは、試験開腹中に採取することもありますが、多くの場合、皮膚から肝臓に中空の針を刺す方法で採取します。このタイプの生検は、経皮的肝生検と呼ばれます。また、経静脈的肝生検と呼ばれる生検の方法もあります。 肝生検では、他の検査で得られない肝臓の情報を検出することができます。肝生検は、肝臓の過剰な脂肪( 脂肪肝)、慢性的な肝臓の炎症( 慢性肝炎)、 ウィルソン病(銅が過剰に蓄積する病気)や... さらに読む を行うこともできます。
予後(経過の見通し)
経過の見通しは、肝傷害の程度と病気の原因になる行為が再開または継続されているかどうか(例えば、患者がセネキオ属のハーブティーを飲み続けているなど)によって異なります。
全体で見ると、類洞閉塞症候群を発症した人の約4分の1が 肝不全 肝不全 肝不全は、肝機能が大幅に低下した状態です。 肝不全は、肝臓に損傷が起きる病気や物質により引き起こされます。 ほとんどの患者は 黄疸(皮膚と眼が黄色くなる)になり、疲れて脱力を覚え、食欲を失います。 他の症状には、腹部への体液の貯留( 腹水)や、皮下出血や出血が起きやすい傾向などがあります。 医師は通常、症状と身体診察、および血液検査の結果に基づいて、肝不全の診断を下すことができます。 さらに読む のため死亡します。
骨髄移植後または 幹細胞移植 造血幹細胞移植 幹細胞移植とは、健康な人から幹細胞(未分化細胞)を採取し、重篤な血液疾患がある人にそれを注射することです。 ( 移植の概要も参照のこと。) 幹細胞は未分化の細胞で、分裂しながら、より分化した他の細胞に変わっていきます。幹細胞は以下のものから採取することができます。 生まれてすぐの新生児の臍帯血(母親が提供) 骨髄(骨髄移植) さらに読む 後にみられる 移植片対宿主病 移植片対宿主病 輸血を行うことで、血液が酸素を運ぶ能力を高め、体内の血液量を回復させるとともに、血液凝固の障害を正常にします。輸血は通常安全ですが、ときに副作用が生じることもあります。 輸血に際しては、副作用を最小限に抑えるため、いくつかの予防措置が行われます。輸血を開始する前に、通常は数時間前に(または数日前のこともあります)、受血者と供血者の血液の交差適合試験を行います(血漿輸血や血小板輸血では行いません)。... さらに読む が原因の場合、類洞閉塞症候群はたいてい数週間以内に自然に解消されます。免疫系を抑制する薬を増量すると、移植片対宿主病の解消が促されます。しかし、こういった患者の中には、重度の肝不全で死亡する人もいます。
摂取している物質が原因であれば、摂取をやめるとそれ以上の肝傷害を防ぐことができます。
治療
原因の治療
血管の閉塞によって生じる症状に対する治療
閉塞に対する特別な治療法はありません。可能であれば、原因を取り除くか治療する必要があります。例えば、特定の物質(ある種のハーブティーなど)を摂取している場合や、肝臓に損傷を与える薬を服用している場合は、それをやめる必要があります。
ウルソデオキシコール酸には、骨髄移植や 幹細胞移植 造血幹細胞移植 幹細胞移植とは、健康な人から幹細胞(未分化細胞)を採取し、重篤な血液疾患がある人にそれを注射することです。 ( 移植の概要も参照のこと。) 幹細胞は未分化の細胞で、分裂しながら、より分化した他の細胞に変わっていきます。幹細胞は以下のものから採取することができます。 生まれてすぐの新生児の臍帯血(母親が提供) 骨髄(骨髄移植) さらに読む の後に起こる類洞閉塞症候群を予防する効果があります。移植片対宿主病による類洞閉塞症候群は、免疫系を抑制する薬やデフィブロチドナトリウムの用量を増やすことで治療されます。
血管の閉塞によって生じた問題は、治療します。例えば、塩分を控えた食事(低ナトリウム食)と利尿薬を用いて、腹部に体液がたまらないようにします。
門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症は、門脈(腸から肝臓に向かう太い静脈)とその分枝の血圧が異常に高くなる病気です。 欧米諸国で最も一般的な原因は、 肝硬変(瘢痕化により肝臓の構造が歪み、機能が損なわれること)です。 門脈圧亢進症は、腹部の膨隆( 腹水)、腹部の不快感、錯乱、消化管での出血につながります。 医師は、症状および身体診察の結果、ときには超音波検査、CT検査、MRI検査、または肝生検の結果に基づいて診断を下します。... さらに読む が発生した場合は、 経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS) 門脈大循環短絡術 門脈圧亢進症は、門脈(腸から肝臓に向かう太い静脈)とその分枝の血圧が異常に高くなる病気です。 欧米諸国で最も一般的な原因は、 肝硬変(瘢痕化により肝臓の構造が歪み、機能が損なわれること)です。 門脈圧亢進症は、腹部の膨隆( 腹水)、腹部の不快感、錯乱、消化管での出血につながります。 医師は、症状および身体診察の結果、ときには超音波検査、CT検査、MRI検査、または肝生検の結果に基づいて診断を下します。... さらに読む と呼ばれる手術によって、血流の代替経路を形成する治療を試みることがあります。しかし、この処置が有効かどうかは不明です。