(肝臓の血管の病気の概要も参照のこと。)
門脈に狭窄や閉塞が起きることで、門脈の血圧が上昇します。門脈の血圧が上昇すると(その状態を門脈圧亢進症といいます)、脾臓が大きくなります(脾腫)。さらに、拡張して蛇行した静脈(静脈瘤)が、食道(食道静脈瘤)のほか、しばしば胃(胃静脈瘤)にも生じます。これらの静脈は大出血を起こすことがあります。
腹部への体液の貯留(腹水)は、あまり一般的ではありません。しかし、肝臓のうっ血(肝臓における血液の滞留)または肝臓の損傷(重度の瘢痕化[肝硬変]など)がみられる場合や、食道または胃の静脈瘤破裂による大量出血の治療で大量の水分を静脈内に投与(輸液)した場合には、腹水が生じることがあります。肝硬変患者に門脈血栓症が起こると、患者の容態は悪化します。
原因
肝硬変がある成人の約25%には門脈血栓症がみられますが、これは通常、肝臓に重度の瘢痕化が起きて血流が遅くなることが原因です。血流が遅いと、血栓ができやすくなるのです。血栓ができやすくなる病気は、いずれも門脈血栓症の原因となります。
一般的な原因は年齢層によって異なります。
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新生児:臍帯断端(へそ)の感染
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年長児:虫垂炎(感染が門脈に広がり、血栓の形成を促すことがある)
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成人:赤血球数の過剰(赤血球増多症)、特定のがん(肝臓、膵臓、腎臓、または副腎のがん)、肝硬変、外傷、血栓ができやすい病気、手術、妊娠
いくつかの状態が重なって、閉塞が起きることもよくあります。約3分の1の患者では原因不明です。
症状
診断
以下の状態のうちいくつかに該当する場合は、門脈血栓症が疑われます。
肝臓がどの程度機能しているか、肝臓の損傷がないかを確認するための血液検査(肝機能検査)を行いますが、結果はたいてい正常です。
通常はドプラ超音波検査で診断が確定されます。ドプラ超音波検査では、門脈の血流が減少、または欠如していることが分かります。MRI検査やCT検査が必要になる場合もあります({blank} 肝臓と胆嚢の画像検査)。
血流の経路を新たに作る処置が予定されている場合は、血管造影検査が行われます。血管造影検査では、造影剤(X線画像に写る物質)を門脈に注入してから、門脈のX線撮影を行います。
治療
血栓が突然静脈をふさいだ場合、血栓を溶かす薬(組織プラスミノーゲンアクチベーターなど)を使用することもあります。この治療(血栓溶解療法)の有効性は明らかになっていません。
病気が徐々に発現する場合、血栓の再発や拡大を防ぐために、長期にわたって抗凝固薬(ヘパリンなど)を使用することがあります。抗凝固薬には、既存の血栓を溶かす作用はありません。
新生児と小児では、原因(通常は臍帯の感染や急性虫垂炎)を治療します。
門脈圧亢進症によって生じた問題も治療します。食道静脈瘤からの出血は、以下のようないくつかの手技で止めることができます。