C型肝炎(慢性)

執筆者:Sonal Kumar, MD, MPH, Weill Cornell Medical College
レビュー/改訂 2022年 8月
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C型慢性肝炎は、C型肝炎ウイルスを原因とし、6カ月以上持続している肝臓の炎症です。

  • C型肝炎は、肝臓にひどい損傷を与えるまでは症状を引き起こさないことがよくあります。

  • C型慢性肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。

  • C型慢性肝炎によって肝硬変が生じた場合、6カ月毎に肝臓がんのスクリーニングを行います。

  • C型慢性肝炎の治療は抗ウイルス薬によって行います。

肝炎の概要慢性肝炎の概要C型肝炎[急性]も参照のこと。)

C型急性肝炎の約75%は慢性化します。

2013年から2016年までの米国のC型慢性肝炎の患者数は、約240万人と推定されています。世界中では、7100万人がC型慢性肝炎にかかっていると推定されています。

C型慢性肝炎は、治療しないでいると、約20~30%の患者で肝硬変を引き起こします。しかし、肝硬変の発生までには何十年もかかることがあります。肝臓がんのリスクは、通常は肝硬変がある場合にのみ増加します。

C型肝炎ウイルスには様々なタイプ(遺伝子型1~6)があり、異なる薬で治療が行われることがあります。

C型慢性肝炎の症状

C型慢性肝炎患者の多くでは症状がみられません。全身のだるさ(けん怠感)、食欲不振、疲労、腹部の漠然とした不快感を覚える人もいます。

多くの場合、最初の具体的な症状は肝硬変やその合併症によるものです。その場合、以下のような症状がみられます。

  • 脾臓の腫大

  • 皮膚にみられる、小さなくものような形の血管(くも状血管腫)

  • 手のひらの発赤

  • 腹部への体液の貯留(腹水

  • 出血傾向(血液凝固障害)

  • 食道静脈瘤による消化管出血

  • 黄疸(皮膚と白眼が黄色に変色すること)

  • 肝臓の機能不全に起因する脳の機能の低下(肝性脳症

脳の機能が低下する理由は、ひどい損傷を受けた肝臓が血液から有害物質を正常に除去できないためです。そうした物質が、その後血液中に蓄積し脳に到達します。肝臓は正常な状態では、血液中から有害物質を取り除いて分解し、無害な副産物として胆汁(消化を助ける緑がかった黄色の液)中や血液中に排泄しています(肝臓の機能を参照)。肝性脳症の治療によって、脳の機能の低下が永続的なものになるのを予防できます。

C型慢性肝炎のスクリーニング

一部の人は、肝炎を疑わせる症状の有無にかかわらず、C型肝炎の検査について主治医と相談するべきです。危険因子の有無にかかわらず、18歳以上のすべての人を対象に1回のスクリーニングが推奨されています。

また以下の特徴が認められる18歳以下の人にも、1回のスクリーニングが推奨されています。

  • 違法薬物を現在使用しているか過去に1回でも注射したことがある

  • 違法薬物を吸引したことがある

  • 男性と性行為をする男性である

  • 長期にわたる血液透析による治療を、現在受けているか過去に受けたことがある

  • 肝臓の検査結果に異常があるか、原因不明の慢性肝疾患がある

  • 医療か公衆安全関連の従事者で、注射針や鋭いものによる他のけがを介してC型肝炎患者の血液に触れたことがある

  • HIVに感染しているか、HIVに曝露する前から抗レトロウイルス薬の使用を開始している

  • 服役したことがある

  • C型肝炎の女性から生まれた小児

このような検査が重要である理由は、最初に感染してから何年も経過し、感染によって肝臓に広範囲の損傷が生じるまで、症状が現れないことがあるためです。

C型慢性肝炎の診断

  • 血液検査

以下の場合にC型慢性肝炎が疑われることがあります。

  • 典型的な症状がみられる場合。

  • 血液検査(他の理由で行ったもの)で異常に高い肝酵素値が検出される場合。

  • 過去にC型急性肝炎の診断を受けたことがある場合。

慢性肝炎の検査は、通常、肝臓がどの程度機能しているかと肝傷害の有無を評価する血液検査(肝臓の検査)により開始します。肝臓の検査では、肝酵素や肝臓で作られるその他の物質の濃度を測定します。この検査は、C型肝炎の診断の確定や除外と、肝傷害の重症度の判定に役立ちます。

検査の結果から肝炎が疑われる場合は、他の血液検査を行ってB型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスの有無を調べます。どちらも慢性肝炎を引き起こす可能性があります。この血液検査では、特定のウイルスの一部(抗原)や、体内でウイルスを攻撃するために作られた特定の抗体のほか、ときにはウイルスの遺伝物質(RNAまたはDNA)を特定できます。医師がC型慢性肝炎だけを強く疑う場合は、C型肝炎ウイルスの有無だけを調べる血液検査を行うこともあります。

C型慢性肝炎が確定した場合、HIVとB型肝炎ウイルスも同じ経路(血液や精液などの体液との接触)で感染することが多いため、医師はこれらの感染の有無も調べます。

C型肝炎の診断が下された後、肝傷害の程度を判定し、肝疾患の他の原因がないか調べるための検査が行われることがあります。検査には以下のものがあります。

超音波エラストグラフィーおよび磁気共鳴エラストグラフィーでは、腹部に超音波を照射することで、肝組織の硬さを判定します。

肝臓がんのスクリーニング

C型慢性肝炎の患者で肝臓に広範な瘢痕化(線維化)や肝硬変がある場合は、肝臓がんのスクリーニングを6カ月毎に行います。以下の検査が行われることがあります。

  • 超音波検査

  • ときにアルファ-フェトプロテインの濃度の測定のための血液検査

肝臓がんがあると、アルファ-フェトプロテイン(胎児の未熟な肝細胞が正常時から作るタンパク質)の測定値が高くなります。

C型慢性肝炎の治療

  • 抗ウイルス薬

C型慢性肝炎の治療は、直接作用型抗ウイルス薬という抗ウイルス薬で行われます。通常は、いくつかの薬を同時に使用します。

C型慢性肝炎は、治療しても効果がなく余命が短くなる別の病気がない限り、治療すべきです。

治療法は、感染の原因になったC型肝炎ウイルスの遺伝子型、肝傷害の程度、C型肝炎に対する過去の治療によって異なります。

C型肝炎の治療には多くの直接作用型抗ウイルス薬が使用できます。これらの薬はウイルスを直接標的とするため、非常に効果的で、副作用がわずかしかありません。具体的には、ソホスブビル、エルバスビル、グラゾプレビル、ベルパタスビル、グレカプレビル、レジパスビル、ボキシラプレビル(voxilaprevir)、ピブレンタスビル(すべて経口投与)などがあります。

治療は8~24週間続けます。C型肝炎の治療により、体内からウイルスを排除し、炎症を食い止め、瘢痕化を予防し、肝硬変の発生リスクを低減することができます。

抗ウイルス薬の効果を高めるために、治療計画にリバビリンが追加されることがあります。ただし、リバビリンは先天異常の原因となる可能性があります。そのため、これらの薬を服用しなければならない患者は、性別にかかわらず、治療中および治療終了後6カ月間にわたって避妊を行う必要があります。

C型慢性肝炎によって肝臓に重度の損傷が起きている場合は、肝移植を行うことがあります。肝移植を受けたC型肝炎の人には、治癒の可能性を高めるため、しばしば抗ウイルス薬による治療が行われます。

治療が完了したら、ウイルスの遺伝物質の量を測定するために血液検査を行います。治療完了後12週時点で何も検出されない場合、おそらく治癒が得られたと判断されます。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention):一般向けのC型肝炎に関するQ&A:このウェブサイトでは、C型肝炎の概要(定義および統計を含む)ならびに感染、症状、検査、治療、C型肝炎と雇用に関する情報が提供されています。Accessed May 19, 2022.

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