C型肝炎は、肝臓にひどい損傷を与えるまでは症状を引き起こさないことがよくあります。
C型慢性肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。
C型慢性肝炎によって肝硬変が生じた場合、6カ月毎に肝臓がんのスクリーニングを行います。
C型慢性肝炎の治療は抗ウイルス薬によって行います。
( 肝炎の概要 肝炎の概要 肝炎は肝臓の炎症です。 肝炎は世界中でみられる病気です。 肝炎には以下の種類があります。 急性(経過が短い) さらに読む 、 慢性肝炎の概要 慢性肝炎の概要 慢性肝炎は、肝臓の炎症が最低6カ月以上持続する病気です。 一般的な原因としては、B型およびC型肝炎ウイルス、特定の薬などがあります。 多くの場合は無症状ですが、全身のだるさ、食欲不振、疲労などの漠然とした症状がみられることもあります。 慢性肝炎の結果、門脈圧亢進症と肝不全を伴う肝硬変が生じることがあります。 さらに読む 、 C型肝炎[急性] C型肝炎(急性) C型急性肝炎は、C型肝炎ウイルスを原因とし、持続期間が数週間から最大で6カ月の肝臓の炎症です。 C型肝炎は、違法薬物の注射を目的として滅菌していない針を共用した場合にみられるように、感染した人の血液などの体液と接触することで感染します。 C型急性肝炎では多くの場合、症状が起こりません。 C型急性肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。 利用可能なワクチンはありません。 さらに読む も参照のこと。)
C型急性肝炎の約75%は慢性化します。
米国のC型慢性肝炎の患者数は、約270万~390万人と推定されています。世界中では、7100万人がC型慢性肝炎にかかっていると推定されています。
C型慢性肝炎は、治療しないでいると、約20~30%の患者で 肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的なアルコール乱用、慢性ウイルス性肝炎、飲酒によらない脂肪肝です。 食欲不振、体重減少、疲労、全身のだるさなどの症状が現れます。 腹部への体液の貯留(腹水)、消化管の出血、脳機能の異常など、多くの重篤な合併症が起こる可能性が... さらに読む を引き起こします。しかし、肝硬変の発生までには何十年もかかることがあります。肝臓がんのリスクは、通常は肝硬変がある場合にのみ増加します。
C型肝炎ウイルスには様々なタイプ(遺伝子型1~6)があり、異なる薬で治療が行われることがあります。
症状
C型慢性肝炎患者の多くでは症状がみられません。全身のだるさ(けん怠感)、食欲不振、疲労、腹部の漠然とした不快感を覚える人もいます。
多くの場合、最初の具体的な症状は慢性肝疾患や肝硬変によるものです。その場合、以下のような症状がみられます。
脾臓の腫大
皮膚にみられる、小さなくものような形の血管(くも状血管腫)
手のひらの発赤
黄疸(皮膚と白眼が黄色に変色すること)
門脈圧亢進症は、肝臓の大量の瘢痕組織が肝臓を通る血流を妨げることによって生じます。その結果、肝臓に血液を運ぶ静脈(門脈)を血液が逆流し、これらの静脈内の圧力が高まります。
スクリーニング
一部の人は、肝炎を疑わせる症状の有無にかかわらず、C型肝炎の検査について主治医に相談する必要があります。
以下の特徴がある人は、C型肝炎のスクリーニングを受ける必要があります。
生まれた国にかかわらず、1945~1965年に生まれた
違法薬物を現在使用しているか過去に注射したことがある(1回だけの場合や遠い過去の場合も)
違法薬物を吸引したことがある
1987年より前に血液凝固の問題のために注射(静脈内投与または筋肉内注射)による治療を受けた
1992年7月より前に輸血か臓器移植を受けた
長期にわたる血液透析による治療を、現在受けているか過去に受けたことがある
肝臓の検査結果に異常があるか、慢性肝疾患がある
医療か公衆安全関連の従事者で、注射針や鋭いものによる他のけがを介して血液に触れたことがある
HIV感染症を患っている
刑務所に入れられたことがある
C型肝炎の女性から生まれた小児
このような検査が重要である理由は、最初に感染してから何年も経過し、感染によって肝臓に広範囲の損傷が生じるまで、症状が現れないことがあるためです。
診断
血液検査
以下の場合にC型慢性肝炎が疑われることがあります。
典型的な症状がみられる場合。
血液検査(他の理由で行ったもの)で異常に高い肝酵素値が検出される場合。
過去にC型急性肝炎の診断を受けたことがある場合。
C型慢性肝炎の検査は、通常、肝臓がどの程度機能しているかと肝傷害の有無を評価する血液検査( 肝機能検査 肝機能検査 肝機能検査という名称から誤解されることもありますが、これは肝臓の代謝や胆汁分泌の機能を調べる検査ではなく、実際には肝臓の炎症や肝臓の損傷を検出する検査です( 肝臓の機能)。このような炎症や損傷は、肝臓の実際の機能に影響が現れる前から生じている可能性があります。肝機能検査は血液検査として行われますが、これは肝疾患の有無をスクリーニングし(例えば、献血された血液に肝炎があるかを調べる)、肝疾患の重症度や進行度と治療に対する反応を評価するため... さらに読む )により開始します。肝機能検査では、肝酵素や肝臓で作られるその他の物質の濃度を測定します。この検査は、肝炎の診断の確定や除外、原因の特定、肝傷害の重症度の判定に役立ちます。
また、感染症を引き起こしている肝炎ウイルスの種類を特定するための参考にする目的でも、血液検査を行います。
血液検査を行い、C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを判定します。血液検査で以下の項目を測定します。
C型肝炎ウイルスに反応して患者の免疫系によって作られた抗体
C型肝炎ウイルスの遺伝物質(C型肝炎ウイルスRNA)
C型慢性肝炎が確定した場合、HIVとB型肝炎ウイルスも同じ経路(血液や精液などの体液との接触)で感染することが多いため、医師はこれらの感染の有無も調べます。
C型肝炎の診断が下された後、肝傷害の程度を判定し、肝疾患の他の原因がないか調べるための検査が行われることがあります。検査には以下のものがあります。
特殊な画像検査、例えば超音波エラストグラフィーや磁気共鳴エラストグラフィーなど
線維化の有無や程度を示す物質(マーカー)を測定する血液検査
肝臓がんのスクリーニング
C型慢性肝炎の患者では、肝臓がんのスクリーニングを6カ月毎に行います。以下の検査が行われることがあります。
超音波検査
ときにアルファ-フェトプロテインの濃度の測定
肝臓がんがあると、アルファ-フェトプロテイン(胎児の未熟な肝細胞が正常時から作るタンパク)の測定値が高くなります。
治療
抗ウイルス薬
C型慢性肝炎の治療は、直接作用型抗ウイルス薬という抗ウイルス薬で行われます。通常は、いくつかの薬を同時に使用します。
C型慢性肝炎では、以下の両方が認められる場合に治療が適応となります。
肝酵素値が上昇している。
生検で炎症が進行していることと瘢痕組織の形成が続いていることが示される。
治療法は、感染の原因となったC型肝炎ウイルスのタイプによって異なります。C型肝炎の治療用として新しい抗ウイルス薬が開発されているため、推奨される治療法は急速に変化しています。
C型肝炎の治療には多くの抗ウイルス薬が使用できます。具体的には、ソホスブビル、ダクラタスビル、パリタプレビル、リトナビル、オムビタスビル、ダサブビル(dasabuvir)、テラプレビル、ボセプレビル(boceprevir)、シメプレビル、エルバスビル、グラゾプレビル、ベルパタスビル、グレカプレビル、ピブレンタスビル、リバビリン(すべて経口投与)などがあります。
治療は8~24週間続けます。C型肝炎の治療により、体内からウイルスを排除し、炎症を食い止め、肝硬変に至る瘢痕化を予防することができます。
リバビリン、テラプレビル、ボセプレビル(boceprevir)、シメプレビルは、先天異常を引き起こす可能性があります。そのため、これらの薬を服用しなければならない患者は、性別にかかわらず、治療中および治療終了後6カ月間にわたって避妊を行う必要があります。
C型慢性肝炎によって肝臓に重度の損傷が起きている場合は、肝移植を行うことがあります。肝移植を受けたC型肝炎の人には、治癒の可能性を高めるため、しばしば抗ウイルス薬による治療が行われます。
治療が完了したら、ウイルスの遺伝物質の量を測定するために血液検査を行います。選択された投薬計画によっては、治療完了後12週時点と24週時点で何も検出されない場合、おそらく治癒が得られたと判断されます。