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急性ウイルス性肝炎の概要

執筆者:

Anna E. Rutherford

, MD, MPH, Harvard Medical School

最終査読/改訂年月 2017年 11月
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急性ウイルス性肝炎は、5種類の肝炎ウイルスのいずれかの感染によって肝臓に炎症が起きる病気です。多くの場合、炎症は突然始まり数週間続きます。

  • 症状は、何もみられない場合から重症の場合まであります。

  • 感染すると、食欲不振、吐き気、嘔吐、発熱、右上腹部の痛み、黄疸などの症状がみられます。

  • 医師は身体診察と検査用の採血を行います。

  • ワクチンはA型、B型、E型の肝炎を予防できます。

  • 通常、特別な治療は不要です。

急性ウイルス性肝炎は世界中でみられる病気です。

肝炎の概要 肝炎の概要 肝炎は肝臓の炎症です。 肝炎は世界中でみられる病気です。 肝炎には以下の種類があります。 急性(経過が短い) さらに読む 慢性肝炎の概要 慢性肝炎の概要 慢性肝炎は、肝臓の炎症が最低6カ月以上持続する病気です。 一般的な原因としては、B型およびC型肝炎ウイルス、特定の薬などがあります。 多くの場合は無症状ですが、全身のだるさ、食欲不振、疲労などの漠然とした症状がみられることもあります。 慢性肝炎の結果、門脈圧亢進症と肝不全を伴う肝硬変が生じることがあります。 さらに読む A型肝炎 A型肝炎(急性) A型急性肝炎は、A型肝炎ウイルスを原因とし、持続期間が6カ月未満の肝臓の炎症です。 A型肝炎は、通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染します。 A型肝炎は、年長児と成人ではウイルス性肝炎の典型的な症状(食欲不振、全身のだるさ、黄疸など)を引き起こしますが、幼児では症状が起こらないことがあります。 A型肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。 すべての小児のほか、感染にさらされたり、重い合併症が発生したりする可... さらに読む B型肝炎[急性] B型肝炎(急性) B型急性肝炎は、B型肝炎ウイルスを原因とし、持続期間が数週間から最大で6カ月の肝臓の炎症です。 B型肝炎は、違法薬物の注射を目的として滅菌していない針を共用した場合にみられるように、感染した人の血液などの体液と接触することで感染します。 B型肝炎はウイルス性肝炎の典型的な症状(食欲不振、全身のだるさ、黄疸など)を引き起こし、劇症肝炎と呼ばれる重症の肝炎も生じることがあります。... さらに読む C型肝炎[急性] C型肝炎(急性) C型急性肝炎は、C型肝炎ウイルスを原因とし、持続期間が数週間から最大で6カ月の肝臓の炎症です。 C型肝炎は、違法薬物の注射を目的として滅菌していない針を共用した場合にみられるように、感染した人の血液などの体液と接触することで感染します。 C型急性肝炎では多くの場合、症状が起こりません。 C型急性肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。 利用可能なワクチンはありません。 さらに読む E型肝炎 E型肝炎 E型肝炎は、E型肝炎ウイルスによる肝臓の炎症です。 E型肝炎は、通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染します。 E型肝炎は、食欲不振、全身のだるさ、黄疸など、ウイルス性肝炎の典型的な症状を引き起こします。 E型肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。 さらに読む も参照のこと。)

原因

急性ウイルス性肝炎は以下の5種類の肝炎ウイルスが原因で起こります( 肝炎ウイルス 肝炎ウイルス 肝炎ウイルス )。

急性肝炎で最も一般的な原因はA型肝炎ウイルスで、次がB型肝炎ウイルスです。

急性ウイルス性肝炎は、まだ特定されていない他のウイルスによって引き起こされる可能性もあります。

刺青やボディーピアス、注射針の共用、複数のセックスパートナーをもつなどの特定の行為は、肝炎の発生リスクを高めます。

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症状

急性ウイルス性肝炎の症状は、軽いインフルエンザのようなものから死に至る 肝不全 肝不全 肝不全は、肝機能が大幅に低下した状態です。 肝不全は、肝臓に損傷が起きる病気や物質により引き起こされます。 ほとんどの患者は黄疸(皮膚と眼が黄色くなる)になり、疲れて脱力を覚え、食欲を失います。 他の症状には、腹部への体液の貯留(腹水)や、皮下出血や出血が起きやすい傾向などがあります。 医師は通常、症状と身体診察、および血液検査の結果に基づいて、肝不全の診断を下すことができます。 さらに読む まで様々です。症状がみられない場合もあります。症状の重症度や回復までの期間は、ウイルスの種類や感染に対する患者の反応によって大きく異なります。A型肝炎とC型肝炎では、症状はごく軽度か無症状であることが多く、患者が症状に気づかないこともあります。B型肝炎とE型肝炎では、重度の症状が比較的よくみられます。B型肝炎とD型肝炎に同時に感染していると、B型肝炎の症状がさらに重くなります。

急性ウイルス性肝炎の症状は通常、突然現れます。具体的には以下のものがあります。

  • 食欲不振

  • 全身のだるさ(けん怠感)

  • 吐き気と嘔吐

  • しばしば発熱

  • しばしば右上腹部(肝臓がある場所)の痛み

喫煙者では、タバコをまずく感じるのが典型的な症状です。ときに、特にB型肝炎では、関節痛とかゆみを伴う赤いじんま疹(膨疹)が生じることがあります。

典型的には、3~10日後に尿の色が濃くなり、 黄疸 成人の黄疸 黄疸では、皮膚や白眼が黄色くなります。黄疸は、血中にビリルビン(黄色の色素)が多すぎる場合に起こります。この病態を高ビリルビン血症と呼びます。 (肝疾患の概要と新生児黄疸も参照のこと。) 写真では、黄色に変色した眼と皮膚(黄疸)がみられます。 ビリルビンは、古くなった赤血球または損傷した赤血球を再利用する正常なプロセスの中で、ヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球の一部)が分解されるときに形成されます。ビリルビンは、血流によって肝臓に運ばれ、そ... さらに読む 成人の黄疸 (皮膚や白眼の部分が黄色くなる症状)がみられます。これらの症状は、損傷した肝臓が血液から正常にビリルビンを取り除くことができないために起こります。そうしてビリルビンが血液中に蓄積し、皮膚や白眼に沈着します。ビリルビンは黄色い色素で、赤血球の正常な分解の際に老廃物として作られます。肝臓はこれを使って胆汁(肝臓で作られる緑がかった黄色の消化液)を作ります。通常よりも尿中に排泄されるビリルビンが増えるため、尿の色が濃くなります。

肝臓が腫大したり圧痛が生じたりすることもあります。

通常、初期症状(食欲不振、吐き気、嘔吐、発熱)の大半はこの時点で消失し、たとえ黄疸が悪化した場合でも、患者は体調が良くなったように感じます。黄疸は1~2週間後にピークに達し、それから2~4週間かけて徐々に消えていきます。

まれに、劇症肝炎が生じます。劇症肝炎は 肝不全 肝不全 肝不全は、肝機能が大幅に低下した状態です。 肝不全は、肝臓に損傷が起きる病気や物質により引き起こされます。 ほとんどの患者は黄疸(皮膚と眼が黄色くなる)になり、疲れて脱力を覚え、食欲を失います。 他の症状には、腹部への体液の貯留(腹水)や、皮下出血や出血が起きやすい傾向などがあります。 医師は通常、症状と身体診察、および血液検査の結果に基づいて、肝不全の診断を下すことができます。 さらに読む の徴候を伴う重度の肝炎です。劇症肝炎は、B型肝炎の患者により多くみられ、D型肝炎を併発しているとさらにリスクが高まります。劇症肝炎は非常に速く進行することがあります。肝臓は、もはや血液凝固を助けるタンパクを十分に合成できなくなります。しかし、血液が正常に凝固しないとはいえ、あざができやすくなったり、出血しやすくなったり、原因なしに出血したりすることはありません。肝臓は有害物質を正常に除去できなくなります。そのため、それらの有害物質が血液中に蓄積して脳に到達し、 肝性(門脈大循環性)脳症 肝性脳症 肝性脳症は、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気です。 肝性脳症は、長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生します。 肝性脳症は、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発されます。 錯乱、見当識障害、眠気が起こるとともに、性格、行動、気分の変化がみられます。... さらに読む を引き起こします。数日から数週間で昏睡状態に陥る可能性があります。劇症肝炎は死に至ることがあり、成人では特に死亡リスクが高まります。救命のために、直ちに肝移植を行わなければならないこともあります。

急性ウイルス性肝炎の患者は、治療しなくても通常は4~8週間で回復します。しかし、C型肝炎ウイルスに感染した人は、そのウイルスのキャリアになる可能性があります。B型肝炎ウイルスに感染した人がキャリアになる可能性はあまりありません。キャリアとは、症状はないもののウイルスに感染している状態であり、他者にウイルスを感染させる可能性があります。キャリアの人は病気があるようには見えなくても、 慢性肝炎 慢性肝炎の概要 慢性肝炎は、肝臓の炎症が最低6カ月以上持続する病気です。 一般的な原因としては、B型およびC型肝炎ウイルス、特定の薬などがあります。 多くの場合は無症状ですが、全身のだるさ、食欲不振、疲労などの漠然とした症状がみられることもあります。 慢性肝炎の結果、門脈圧亢進症と肝不全を伴う肝硬変が生じることがあります。 さらに読む を発症していることがあります。キャリアは最終的に 肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的なアルコール乱用、慢性ウイルス性肝炎、飲酒によらない脂肪肝です。 食欲不振、体重減少、疲労、全身のだるさなどの症状が現れます。 腹部への体液の貯留(腹水)、消化管の出血、脳機能の異常など、多くの重篤な合併症が起こる可能性が... さらに読む 肝硬変 (肝臓の重度の瘢痕化)や 肝臓がん 肝細胞がん 肝細胞がんは、肝臓の細胞から発生するがんの一種であり、原発性の肝臓がんの中で最も多くみられるものです。 B型またはC型肝炎、脂肪性肝疾患、および過度の飲酒は、肝細胞がんの発生リスクを高め、特に肝硬変がある患者では著しくリスクを高めます。 腹痛や体重減少がみられるほか、右上腹部に大きなかたまりを触れることがあります。 医師は血液検査と画像検査の結果に基づいて診断を下します。 このがんは、早期に診断されない限り、通常は死に至ります。 さらに読む を発症することがあります。

診断

  • 血液検査

急性ウイルス性肝炎は症状に基づいて疑われます。身体診察では腹部の肝臓の上を触診しますが、急性ウイルス性肝炎患者の約半数では圧痛がみられ、多少の腫れが認められます。

以下の場合に劇症肝炎が疑われます。

  • 患者の状態が非常に悪く、非常に急速に黄疸が発生する場合。

  • 精神機能が急速に悪化する場合。

  • 血液が凝固する速さを測定する血液検査(プロトロンビン時間または国際標準化比[INR])で異常がみられる場合。

  • 肝疾患の患者の状態が急速に悪化する場合。

劇症肝炎を診断するために、医師は肝機能検査に加えて血液が凝固する速さを測定する血液検査を行います(劇症肝炎がある場合、血液が正常に凝固しないため)。

急性ウイルス性肝炎の可能性が高いと思われる場合は、可能なら原因を特定します。原因を特定するため、医師は通常、次のことを行います。

  • ウイルス性肝炎( 肝炎ウイルス 肝炎ウイルス 肝炎ウイルス )にかかるリスクを高める活動について尋ねます。

  • 感染症を引き起こしている肝炎ウイルスの種類を特定するための参考にする目的で血液検査を行います。

この血液検査では、特定のウイルスの一部や、体内でウイルスを攻撃するために作られた特定の抗体を検出できます。(抗体とは、ウイルスなどの外来異物による攻撃から体を守るために免疫系が作り出すタンパクです。)

原因がウイルス以外のものであるかどうかを判定するため、肝炎を引き起こす可能性のある薬(結核治療に用いられるイソニアジドなど)を服用していないか、飲酒量はどのくらいかを尋ねることがあります。

ときに、診断がはっきりしない場合に肝生検を行い、針を使って肝臓から採取した組織のサンプルを検査します。

予防

ウイルス性肝炎の治療の効果は部分的でしかないため、ウイルス性肝炎の予防は非常に重要です。

ワクチン

米国ではA型肝炎とB型肝炎を予防するワクチンが利用可能です。E型肝炎に対するワクチンは、現在のところ中国でのみ利用可能です。肝炎ワクチンは筋肉内への注射で投与されます。

特定のウイルスに対する抗体は徐々に作られるため、多くのワクチンと同様に、肝炎ワクチンが最大の効果を発揮するまでには数週間を要します。

予防接種を受けていない人がA型肝炎ウイルスにさらされた場合には、年齢と健康状態に応じて、A型肝炎ワクチンを1回接種するか、標準的な免疫グロブリン製剤を注射します。標準的な免疫グロブリン製剤には、免疫系が正常な人の大規模な集団から採取した血液から抽出された抗体が含まれます。免疫グロブリン製剤により感染を予防できるか、感染した際は重症度が軽減されます。しかし、防御効果は一様ではなく、また一時的なものにすぎません。

ワクチン接種を受けていない人がB型肝炎ウイルスにさらされたら、B型肝炎免疫グロブリンの投与とワクチン接種を受けます。B型肝炎免疫グロブリンには、B型肝炎に対する抗体の濃度が高い人の血液から抽出した抗体が含まれます。筋肉内または静脈内への注射で投与されます。この製剤は、体が感染と戦うのを助け、症状を予防し、症状が現れた場合にも重症度を軽減する働きがありますが、感染を防ぐ効果は見込めません。

B型肝炎患者の母親から生まれた新生児には、B型肝炎免疫グロブリン(筋肉内に注射)とB型肝炎ワクチンが投与されます。

C型またはD型肝炎ウイルスに対するワクチンはありません。ただし、B型肝炎ウイルスのワクチン接種は、D型肝炎ウイルスの感染リスクを軽減する効果があります。

その他の予防策

肝炎ウイルスの感染を予防する手段としては、ほかに以下のものがあります。

  • 食べものを扱う前に徹底して手洗いをする

  • 薬の注射針を共用しない

  • 歯ブラシやカミソリなど、血液が付着する可能性のある器具を共用しない

  • コンドームなどのバリア型の避妊具を利用して、安全な性行為を心がける

  • セックスパートナーの数を限定する

輸血用の血液にはスクリーニング検査が実施されているため、汚染はまずないと考えられます。それでもなお、医師は本当に必要な場合にのみ輸血の指示を出すことで、肝炎のリスクをさらに減らすようにしています。予定された手術では、一般ドナーの血液を輸血しないで済むようにするため、手術の数週間前に患者自身の血液を採取しておくことも可能です。

治療

  • 支持療法

急性ウイルス性肝炎の患者の大半では、特別な治療は不要です。しかし、重症の急性肝炎の場合は症状の治療ができるように入院が必要なことがあります。劇症肝炎が発生しつつあると疑われる場合は、精神状態のモニタリング、肝機能検査、肝移植が必要かどうかの判定ができるように入院します。

通常なら数日後には食欲も戻り、ベッドで安静にする必要もなくなります。厳しい食事制限や運動制限は不要で、ビタミンのサプリメントも必要ありません。黄疸が消えれば、肝機能検査の結果が完全に正常に戻らなくても、大半の患者は安全に職場復帰できます。

肝炎の患者は、完全に回復するまでは禁酒すべきです。

感染した肝臓は薬を正常に処理(代謝)できません。そのため、体内で有害な濃度に達してしまう可能性がある薬(ワルファリンやテオフィリンなど)は、医師の指示で用量を減らしたり使用を中止したりすることがあります。必要に応じて服用量の調節ができるように、処方薬だけでなく、市販薬や漢方薬、薬用ハーブなども含めて、肝炎患者は使用している薬をすべて主治医に告げる必要があります。

かゆみが生じた場合、経口投与するコレスチラミンがしばしば効果的です。

B型肝炎により劇症肝炎が起こった場合は、抗ウイルス薬が役立つことがあります。しかし、最も効果的な治療法は肝移植であり、特に成人にとっては、生存を期待できる最善の治療法です。

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