食道 のどと食道 のど(咽頭[いんとう]、 のどを参照)は口の下後方に位置しています。口から飲み込まれた飲食物はのどを通過します。飲食物を飲み込む運動(嚥下[えんげ])は、特に意識しなくても始まり自動的に継続します。嚥下時には、小さな筋皮弁(喉頭蓋[こうとうがい])が閉じて、飲食物が肺に向かう気管に入らないように防いでいます。口の天井の後方部分(軟口蓋[なんこうがい])は上にもち上がって、飲食物が鼻に入らないように防いでいます。口蓋垂(こうがいすい)は、... さらに読む は、のど(咽頭)から胃までをつなぐ中空の管です。(食道の概要 食道の概要 食道は、のど(咽頭)から胃までをつなぐ中空の管です。食べものは単純に食道を落ちて胃に入るわけではありません。食道の壁は、波のように進む筋肉のリズミカルな収縮(ぜん動)によって、食べものを胃まで進めます。 のどと食道の境界のすぐ下には、上部食道括約筋と呼ばれるリング状の筋肉があります。食道と胃の境界の少し上にも、下部食道括約筋と呼ばれるリン... さらに読む も参照のこと。)
感染から食道を守る防御機構がいくつかあります。例えば、唾液、食道の正常な運動(収縮)、免疫系細胞などです。したがって、エイズ、 臓器移植 移植後の合併症 移植とは、生きて機能している細胞、組織、臓器を体から摘出して、同じ人間の別の部分、または別の人間の体に移し替えることをいいます。 一番よく行われている移植は 輸血です。毎年、何百万人もが治療として輸血を受けます。しかし、一般には移植というと臓器(実質臓器移植)や組織の移植を指します。... さらに読む 、 アルコール使用障害 アルコール アルコール(エタノール)は抑制薬です。急激にまたは定期的に大量飲酒すると、臓器の損傷、昏睡、死亡などの健康上の問題を引き起こす可能性があります。 遺伝特性や個人的な性質がアルコール関連障害の発症に関与しています。 アルコールを飲みすぎると、眠くなったり攻撃的になり、運動協調や精神機能が損なわれ、仕事、家族関係、その他の活動が妨げられます。 長期間大量のアルコールを飲むと、アルコールに依存するようになり、肝臓、脳、心臓を損傷します。... さらに読む 、 糖尿病 糖尿病 糖尿病は、体がインスリンを十分に産生しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 神経を損傷し、知覚に問題が生じます。 血管を損傷し、心臓発作、脳卒中、慢性腎臓病、視力障害のリスクが高まります。... さらに読む 、免疫系の機能低下、 低栄養 低栄養 低栄養とは、カロリーまたは1つ以上の必須栄養素が不足している状態です。 低栄養は、食べものを手に入れたり調理したりできない、食べものを食べたり吸収したりしにくくなる病気がある、またはカロリーの必要量が大幅に増えているということが原因で発生することがあります。 低栄養は、多くの場合、見た目にも明らかです。低体重で、しばしば骨が突き出ており、... さらに読む 、がん、 食道運動障害 食べものの送り込みの異常 食べものが口から胃へと運ばれるためには、口とのどが協調して正常に動くこと、 食道の筋肉が波のように収縮(ぜん動)して食べものを送ること、食道括約筋(開くと食べものが食道から胃に入れるようになる帯状の筋肉)が弛緩することが必要です。 ( 食道の概要も参照のこと。) これらの機能に1つでも問題があると、 嚥下困難、胸やけ、 胸痛、 逆流(吐き気や腹部筋肉の強い収縮がない状態で、食道や胃から食べものを吐き戻すこと)、... さらに読む などの患者では、感染のリスクが高くなります。さらに、コルチコステロイドの内服薬や吸入薬は、食道の感染症のリスクを高める可能性があります。 カンジダ感染症 カンジダ症(真菌感染症) カンジダ症は、カンジダ属の真菌による感染症です。 カンジダ症は湿潤部位の皮膚で発生しやすい傾向があります。 カンジダ症では、発疹、鱗屑(りんせつ)、かゆみ、腫れなどがみられます。 診断では、患部を診察するとともに、皮膚のサンプルを顕微鏡で調べたり、培養して観察したりします。 通常は、抗真菌薬のクリームや経口薬による治療で治癒します。 さらに読む
は、これらのどの患者でも起こる可能性があります。 単純ヘルペスウイルス感染症 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症では、皮膚、口、唇(口唇ヘルペス)、眼、性器に、液体で満たされた、痛みのある小さな水疱が繰り返し発生します。 非常に感染力の強い ウイルス感染症であり、潰瘍に直接触れたり、ときには潰瘍がない場合でも患部に触れることで感染します。 ヘルペスウイルスは口の中や 性器に水疱や潰瘍を引き起こし、最初の感染時にはしばしば発熱と全身のけん怠感を伴います。... さらに読む
と サイトメガロウイルス感染症 サイトメガロウイルス(CMV)感染症 サイトメガロウイルス感染症はよくみられるヘルペスウイルス感染症で、症状が出ないものから、発熱と疲労感が出るもの(伝染性単核球症に似たもの)、また、眼や脳、その他の内臓を侵す重い症状が生じるものまで、症状は多岐にわたります。 この ウイルスは、体の分泌物と接触(性的接触とそれ以外の接触の両方)することで感染します。 ほとんどの人では何の症状もみられませんが、気分が悪くなって熱が出る場合もあり、免疫機能が低下している人が感染すると、失明など... さらに読む は、主にエイズ患者、臓器移植を受けた人、免疫抑制薬を使用している人で発生します。
典型的な症状は、飲み込むときの痛み(嚥下痛[えんげつう])です。また、飲み込むのに困難を覚える患者もいます(嚥下困難 嚥下困難 飲み込みに障害が生じること(嚥下[えんげ]困難)があります。嚥下困難では、食べものや飲みものがのど(咽頭)から胃へと正常に移動しません。のどと胃をつなぐ管(食道)の途中で食べものや飲みものが動かなくなったように感じます。嚥下困難をのどのしこり( 球感覚)と混同してはならず、球感覚ではのどにしこりがある感じがしますが、飲み込みに支障はありません。 嚥下困難によって、口腔分泌物や飲食物を肺に吸い込む誤嚥(ごえん)が生じる可能性があります。誤... さらに読む )。食道の感染症は、食道の潰瘍(かいよう)や、刺激と腫れ(食道炎)も引き起こします。
診断
内視鏡検査
食道がカンジダ Candidaに感染した場合、口の中にカンジダ(Candida)感染症の徴候(鵞口瘡 カンジダ症(真菌感染症) カンジダ症は、カンジダ属の真菌による感染症です。 カンジダ症は湿潤部位の皮膚で発生しやすい傾向があります。 カンジダ症では、発疹、鱗屑(りんせつ)、かゆみ、腫れなどがみられます。 診断では、患部を診察するとともに、皮膚のサンプルを顕微鏡で調べたり、培養して観察したりします。 通常は、抗真菌薬のクリームや経口薬による治療で治癒します。 さらに読む [がこうそう])が認められることがあります。単純ヘルペスウイルス感染症またはサイトメガロウイルス感染症の患者では、口の中の異常は通常認められません。
食道の感染症を診断するため、通常は内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を用いて食道を観察します(内視鏡検査 内視鏡検査 内視鏡検査とは、柔軟な管状の機器(内視鏡)を用いて体内の構造物を観察する検査です。チューブを介して器具を通すことができるため、内視鏡は多くの病気の治療にも使うことができます。 口から挿入する内視鏡検査では、食道(食道鏡検査)、胃(胃鏡検査)、小腸の一部(上部消化管内視鏡検査)が観察できます。上部消化管内視鏡検査を受ける場合は、のどの感覚をなくすために液体またはスプレー状の麻酔薬が検査前に使用されることがあります。... さらに読む )。内視鏡検査では通常、顕微鏡で調べるために組織を採取します(生検)。
治療
カンジダ(Candida)感染症に対して、抗真菌薬
単純ヘルペスウイルス 感染症またはサイトメガロウイルス感染症に対して、抗ウイルス薬
カンジダ Candidaの感染がみられる人には、フルコナゾールなどの抗真菌薬を投与します。抗真菌薬は錠剤として投与するか、嚥下困難がみられる場合は静脈内注射で投与することができます。
単純ヘルペスウイルス感染症の患者には、アシクロビルなどの抗ウイルス薬を経口または静脈内注射で投与します。サイトメガロウイルス感染症の患者には、ガンシクロビルなどの抗ウイルス薬を静脈内注射で投与します。