胆石とアルコール乱用が急性膵炎の主な原因です。
重度の腹痛が主な症状です。
診断には血液検査と画像検査(CT検査など)が役立ちます。
軽度であれ中等度であれ重度であれ、急性膵炎では通常は入院が必要になります。
(膵炎の概要 膵炎の概要 膵炎とは膵臓の炎症です。 膵臓は木の葉の形をした臓器で、長さは約13センチメートルあります。周囲を胃の下側と小腸の最初の部分(十二指腸)に囲まれています。 膵臓には主に以下の3つの機能があります。 消化酵素を含む膵液を十二指腸に分泌する 血糖値の調節を助けるインスリンとグルカゴンというホルモンを分泌する さらに読む も参照のこと。)
膵臓 膵臓 膵臓(すいぞう)は以下の2種類の腺組織を含む臓器です。 膵腺房(すいせんぼう) ランゲルハンス島 ( 消化器系の概要も参照のこと。) 膵腺房では消化酵素がつくられます。ランゲルハンス島ではホルモンがつくられます。膵臓は消化酵素を十二指腸へ、ホルモンを血液中へ分泌します。 さらに読む は上腹部にある臓器で、消化液とホルモンのインスリンをつくります。膵臓のホルモン(特にインスリン)をつくる部分は、急性膵炎に侵されない傾向があります。
急性膵炎では、炎症が急に発生して数日以内に治まりますが、数週間続くこともあります。 慢性膵炎 慢性膵炎 慢性膵炎は長期間続く膵臓の炎症で、膵臓の構造と機能に回復不能な悪化が生じます。 飲酒と喫煙が慢性膵炎の2大原因です。 腹痛は持続する場合もあれば、現れたり消えたりする場合もあります。 診断は症状、急性膵炎の再発歴と飲酒歴、ならびに画像検査と膵機能検査の結果に基づいて下されます。 治療としては、禁酒と禁煙、食習慣の変更、膵酵素サプリメントの服用、痛みを緩和する対策を行います。 さらに読む では、膵臓に持続的な炎症が起こり、それにより永続的な損傷が生じます。
膵臓の位置
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急性膵炎の原因
急性膵炎の最も一般的な原因(併せて全体の70%以上)は以下のものです。
飲酒
胆石
胆石は急性膵炎症例の原因のうち約40%を占めています。胆石は 胆嚢 胆嚢と胆管 胆嚢(たんのう)は、洋ナシのような形をした、筋肉でできた小さな袋状の臓器で、胆汁を蓄える機能があり、胆道と呼ばれる管で肝臓とつながっています。( 肝臓と胆嚢の概要も参照のこと。) 胆汁(たんじゅう)は、緑がかった黄色の粘り気のある液体です。胆汁には、胆汁酸塩、電解質(ナトリウムや重炭酸塩など可溶性の荷電粒子)、胆汁色素、コレステロール、その他の脂肪(脂質)が含まれています。胆汁には主に2つの働きがあります。... さらに読む 内で固形物が凝縮したものです。胆石は胆嚢が膵臓と共用している管(総胆管)の中に入り、この管を詰まらせることがあります。
正常な状態では、膵臓は膵管を通して小腸の最初の部分(十二指腸)に膵液を分泌します。この膵液には、食べものの消化を助ける消化酵素が含まれています。胆石がオッディ括約筋(膵管が十二指腸に出るところの開口部)に詰まって動かなくなると、膵液の流れが止まります。この閉塞は通常は一時的なもので、それにより生じる限定的な損傷は、すぐに回復します。しかし、閉塞が続くと、酵素が膵臓内に蓄積して、膵臓の細胞を消化し始めてしまい、重度の炎症を引き起こします。
アルコール
飲酒は急性膵炎症例の原因のうち約30%を占めています。膵炎の発生リスクは飲酒量とともに高まります(男性では1日4~7ドリンク、女性では1日3ドリンク以上)。しかし、飲酒の頻度が高い人で急性膵炎を発症する割合は10%未満であり、このことから膵炎を発症するにはさらなる誘因や他の要因が必要であることが示唆されます。
アルコールがどのようにして膵炎を引き起こすのかは、まだ十分に解明されていません。1つの仮説は、アルコールが膵臓で有毒化学物質に変換され、それが損傷を引き起こすというものです。別の仮説として、膵管に膵液を分泌する膵臓の小管がアルコールによって詰まり、最終的に急性膵炎が起きるという見方もあります。
その他の原因
一部の患者では急性膵炎が遺伝します。急性膵炎を発症しやすくなる遺伝子変異が特定されています。 嚢胞(のうほう)性線維症 嚢胞性線維症(CF) 嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)は、特定の分泌腺が異常に粘り気の強い分泌物を生産し、それによって組織や器官、特に肺や消化管が損傷を受ける遺伝性疾患です。 嚢胞性線維症は、遺伝子変異を親から引き継ぐことで発生し、粘り気の強い濃厚な分泌物が肺やその他の臓器の働きを妨げます。... さらに読む があるか、または嚢胞性線維症の遺伝子を保有している人は、 慢性膵炎 慢性膵炎 慢性膵炎は長期間続く膵臓の炎症で、膵臓の構造と機能に回復不能な悪化が生じます。 飲酒と喫煙が慢性膵炎の2大原因です。 腹痛は持続する場合もあれば、現れたり消えたりする場合もあります。 診断は症状、急性膵炎の再発歴と飲酒歴、ならびに画像検査と膵機能検査の結果に基づいて下されます。 治療としては、禁酒と禁煙、食習慣の変更、膵酵素サプリメントの服用、痛みを緩和する対策を行います。 さらに読む に加え、急性膵炎の発生リスクが高くなります。
膵臓を刺激する薬は数多くあります。通常は、薬の使用を中止すると炎症が治まります。
ウイルスも膵炎を起こすことがありますが、通常は長引きません。
急性膵炎の症状
急性膵炎を起こした人のほぼ全員で、上腹部に重度の腹痛が生じます。約50%の人で、この痛みは背中まで突き抜けます。胆石による急性膵炎では、痛みは通常は突然始まり、数分で最大の強さに達します。アルコールにより膵炎が生じる場合、一般的には数日かけて痛みが発生します。原因が何であれ、その後は突き刺すような激しい痛みが重度のまま残り、数日間持続することがあります。
せきをしたり、活発な動作や深呼吸をしたりすると痛みが悪化することがあります。背筋を伸ばして座り前かがみになるといくぶん楽になることがあります。ほとんどの場合、吐き気を感じて嘔吐し、ときには、吐くものがなくなっても吐き気が続きます。高用量の オピオイド鎮痛薬 オピオイド鎮痛薬 痛み止め(鎮痛薬)は、痛みの治療に使用される主な薬剤です。医師が痛み止めを選択する際には、痛みの種類および持続期間と、それぞれの痛み止めで予想されるベネフィットとリスクを考慮します。ほとんどの痛み止めは侵害受容性疼痛(損傷による痛み)に対しては効果がありますが、 神経障害性疼痛(神経、脊髄、脳の損傷や機能障害による痛み)に対してはあまり効果がありません。多くのタイプの痛み(特に... さらに読む を注射しても、痛みを完全に取り除けないことがしばしばあります。
急性膵炎では、上腹部がいくらか腫れることがあります。この腫れは、腸の内容物が動かなくなって腸が腫れるために起こることがあります(イレウス イレウス イレウスとは、腸が一時的に正常な筋収縮をしなくなった状態です。 一般的な原因として、腹部の手術や腸の運動を阻害する薬があります。 腹部膨満、嘔吐、便秘、けいれん性の腹痛、食欲不振が生じます。 診断はX線検査によって下されます。 飲食物の経口摂取が中止され、ときには鼻から胃に細い吸引チューブが挿入されることがあります。 さらに読む と呼ばれる状態)。
患者の中には(特に飲酒が原因で急性膵炎が起こった場合)、中等度から重度の痛みのほかには何の症状も出ない人がいます。非常に具合が悪くなる人もいます。具合が悪そうにみえ、汗をかき、脈拍が速くなり(1分間に100~140拍)、呼吸が浅く速くなります。肺に炎症が起こったり、肺の一部の組織がつぶれたり(無気肺 無気肺 無気肺は、肺の一部または全体に空気がなく、肺がつぶれた状態です。 無気肺の一般的な原因は気管支の閉塞です。 酸素レベルが低くなる、または肺炎が起こると、息切れが生じます。 診断を確定するには胸部X線検査を使います。 治療では、深い呼吸を確実にできるようにすること、気道の障害物を取り除くこと、またはその両方が必要になることがあります。 さらに読む )、胸腔に水がたまったりすると(胸水 胸水 胸水とは、胸腔(厳密には2つの胸膜の間)に液体が異常にたまることや、その液体自体のことをいいます。 胸腔に液体がたまる原因としては、感染症、腫瘍、外傷、心不全、腎不全、肝不全、肺血管の血栓( 肺塞栓症)、薬物など、数多くあります。 症状には、呼吸困難や胸痛などがあり、特に呼吸やせきをしたときに現れます。 診断には、胸部X線検査や胸水の検査が用いられ、CT血管造影検査もよく使用されます。... さらに読む )、呼吸が速くなることもあります。このような状態では、空気から酸素を血液に取り入れることができる肺組織の量が減少し、血液中の酸素レベルが低下する可能性があります。
最初は体温は正常なこともありますが、数時間で38℃ほどに上昇することがあります。血圧は通常低く、立ち上がったときに低下する傾向があり、立ちくらみを起こします。
ときに白眼の部分(強膜)が黄色に変色します。
急性膵炎の合併症
急性膵炎の主な合併症は以下の通りです。
膵仮性嚢胞
壊死性膵炎
膵臓の感染症
臓器不全
膵仮性嚢胞は、膵酵素を含む液体が中に蓄積していて、膵臓内やその周囲にできます。一部の患者では、膵仮性嚢胞は自然になくなりますが、そうでない場合は、仮性嚢胞がなくならず、感染を起こすことがあります。
重度の急性膵炎では壊死性膵炎が発生することがあります。壊死性膵炎では、膵臓の一部が壊死することがあり、体液が腹腔に流れ出し、血液量が減少して大幅な血圧低下を起こし、 ショック ショック ショックとは、臓器に向かう血流が減少することで、酸素の供給量が低下し、それにより臓器不全やときに死にもつながる、生命を脅かす状態です。通常、血圧は低下しています。 ( 低血圧も参照のこと。) ショックの原因には血液量の減少、心臓のポンプ機能の障害、血管の過度の拡張などがあります。 血液量の減少または心臓のポンプ機能の障害によってショックが起きると、脱力感、眠気、錯乱が生じ、皮膚が冷たく湿っぽくなり、皮膚の色が青白くなります。... さらに読む 状態と臓器不全が生じることがあります。重症の急性膵炎は生命を脅かします。
炎症を起こした膵臓に感染が生じるリスクがあり、特に壊死性膵炎の患者ではリスクが高くなります。患者の状態が悪化した場合や、発熱がみられた場合、特に最初の症状が治まり始めた後にそうなった場合に、感染症が疑われます。
膵臓が損傷すると、活性化した酵素や サイトカイン サイトカイン 体の防衛線(免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 自然免疫は、生まれつき備わっていて、異物との遭遇を介した学習が必要ないことから、このように呼ばれています。そのため、体外から侵入してきた異物に対してすぐに反応します。しかし、この... さらに読む などの毒性物質が血液中に入り、低血圧になったり、肺や腎臓など他の臓器に損傷が生じたりすることがあるため、急性膵炎では臓器不全が発生する可能性があります。一部の急性膵炎患者では、この損傷によって腎臓、肺、心臓などの臓器不全が起き、それにより死に至る可能性があります。
急性膵炎の診断
血液検査
画像検査
特徴的な腹痛があるとき、特に胆嚢疾患がある人や大量に飲酒する人では、急性膵炎が疑われます。診察では、腹部に圧痛があることや、腹壁の筋肉がときに硬いことが、しばしば判明します。聴診器で腹部の音を聴くと、腸の音がほとんどまたはまったく聞こえないことがあります。
血液検査
単独で急性膵炎の診断を証明できる血液検査はありませんが、特定の検査から急性膵炎が疑われます。膵臓で生産される2種類の酵素、アミラーゼとリパーゼの血中濃度は、通常は急性膵炎の発症初日に上昇しますが、その後3~7日で正常レベルに戻ります。ただし、それまでに膵炎の発作があった場合は、膵臓の大部分が破壊されて酵素を分泌する細胞が少なくなりすぎたために、これらの酵素の濃度は大きくは上昇しないことがあります。
画像検査
腹部X線検査では、腸の一部が拡張していることが分かったり、まれに1個または複数の胆石が見つかることがあります。胸部X線検査では、肺組織がつぶれている領域や胸腔にたまった胸水が明らかになることがあります。
腹部の 超音波検査 腹部の超音波検査 超音波検査では、超音波を用いて内臓の画像を描き出します( 超音波検査)。超音波検査により、肝臓や膵臓(すいぞう)など多くの内臓の形や大きさが確認でき、嚢胞(のうほう)や腫瘍などの内臓の中の異常部位も発見できます。また、腹腔内の液体( 腹水)も確認できます。腹壁にプローブを当てる超音波検査は、消化管の粘膜や壁を調べる方法としては不適切です。しかし、超音波内視鏡検査の場合は、内視鏡の先端にプローブがあるため、消化管壁や一部の腹部臓器がより明... さらに読む では、胆嚢内やときに総胆管内の胆石が明らかになることもあれば、膵臓の腫れも検出されることがあります。この検査は、さらなる膵炎を引き起こす可能性のある胆石がないことを確認するために、急性膵炎の発作を初めて起こしたすべての人に対して行われます。
CT検査 CT検査 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとは... さらに読む は、膵臓の炎症を検出するのに特に有用で、重症の急性膵炎がある場合に行われます。この検査では、造影剤も投与されます。造影剤とは、X線画像に写る物質のことです。CT検査では非常に鮮明な画像が得られますので、この検査は膵炎の正確な診断と合併症の特定に役立ちます。
磁気共鳴胆道膵管造影 MRI検査 肝臓、胆嚢、胆管の画像検査には、超音波検査、核医学検査、CT検査、MRI検査、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)検査、経皮経肝胆道造影検査、術中胆道造影検査、単純X線検査などがあります。 ( 肝臓と胆嚢の概要も参照のこと。) 超音波検査では、音波を利用して肝臓や胆嚢、胆管を画像化します。経腹超音波検査は、 肝硬変(肝臓の重度の瘢痕化)や 脂肪肝(肝臓に過剰な脂肪が蓄積している状態)など肝臓全体を一様に侵す異常よりも、腫瘍など肝臓の特... さらに読む (MRCP)検査は、特殊なMRI検査で、膵管と胆管を描き出して、これらの管に拡張、閉塞、狭窄がないか確かめるために行われることがあります。
内視鏡的逆行性胆道膵管造影 内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査 肝臓、胆嚢、胆管の画像検査には、超音波検査、核医学検査、CT検査、MRI検査、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)検査、経皮経肝胆道造影検査、術中胆道造影検査、単純X線検査などがあります。 ( 肝臓と胆嚢の概要も参照のこと。) 超音波検査では、音波を利用して肝臓や胆嚢、胆管を画像化します。経腹超音波検査は、 肝硬変(肝臓の重度の瘢痕化)や 脂肪肝(肝臓に過剰な脂肪が蓄積している状態)など肝臓全体を一様に侵す異常よりも、腫瘍など肝臓の特... さらに読む を行えば、胆管と膵管を観察することができます。この検査中に、閉塞を引き起こしている胆管の胆石を取り除くことができます。
内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査について理解する
内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)検査では、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を口から挿入し、胃を通して十二指腸(小腸が始まる部分)まで到達させて、そこから造影剤を注入します。造影剤はオッディ括約筋から少し中に入ったところから胆道に注入します。この造影剤は胆道を逆流して、しばしば膵管を描き出します。 内視鏡と一緒に手術器具を用いて、胆管の結石を除去したり、瘢痕やがんで詰まった胆管を迂回するための筒状の器具(ステント)を挿入したりすることも可能です。 |
その他の検査
感染が疑われる場合は、皮膚から蓄積した体液に向かって針を刺して、感染組織のサンプルを抜き取る検査を行うことがあります。
トリプシノーゲンという酵素の有無を調べるために、尿検査を行う場合もあります。この酵素は膵臓から分泌されます。この酵素の尿中濃度が上昇している場合は、膵炎の可能性があります。
急性膵炎の予後(経過の見通し)
急性膵炎では、CT検査が予後(経過の見通し)の予測に役立ちます。CT画像で膵臓が軽く腫れているだけの場合は、予後は極めて良好です。CT画像で膵臓の破壊された領域が大きい場合、通常は予後が不良です。
いくつかのスコアリングシステムが急性膵炎の重症度の予測に役立ち、重症度を参考にすることで、状態の管理を改善できます。それらのスコアリングシステムには、年齢、病歴、身体所見、臨床検査、CT検査の結果などの情報が含まれています。
急性膵炎は、軽症であれば死亡率は約5%以下です。しかし、膵炎による組織の損傷がひどい場合や、炎症が膵臓だけにとどまらない場合は、死亡率がはるかに高くなります。急性膵炎を発症して数日以内に死亡する場合は、心不全、呼吸不全、または腎不全が通常の原因です。最初の1週間より後に生じる死亡は通常、膵臓の感染か、仮性嚢胞の出血や破裂によるものです。
急性膵炎の治療
輸液
痛みの緩和
栄養摂取を補助する対策
ときに内視鏡検査または手術
軽症の急性膵炎に対する通常の治療では、短期間入院して輸液を行い、痛みの緩和のために鎮痛薬が投与され、膵臓を休ませるために絶食します。吐き気、嘔吐、重度の痛みがなければ、通常は入院直後から脂肪の少ない柔らかい食事を開始します。
中等症の急性膵炎では、より長期間の入院が必要になり、輸液を行います。飲食に耐えられるなら、病気が続いている間も飲食を続けることができます。食べることができない場合は、鼻から胃または腸に挿入したチューブを通して栄養を投与します(経管栄養 経管栄養 経管栄養は、消化管は正常に機能しているものの、十分に栄養所要量を満たすほど食べられない人に、栄養を与えるために用いられることがあります。例としては、以下の状態の人が挙げられます。 長期間にわたる食欲不振 重度の タンパク-エネルギー低栄養(重度のタンパク質とカロリーの欠乏症) 昏睡または覚醒レベルの大幅な低下 肝不全 さらに読む または経腸チューブ栄養)。痛みや吐き気などの症状は、薬を静脈から投与することでコントロールされます。このような患者に何らかの感染の徴候がみられた場合は、抗菌薬を投与します。
重症急性膵炎の患者は、 集中治療室 特別治療室の種類 特別な治療が必要な場合は、特別治療室に入院することがあります。 集中治療室(ICU)には、症状の重い患者が入ります。例えば、肝臓、肺、腎臓などの臓器が不意に全般的な機能不全に陥った患者が含まれます。これは、肺の機能不全であれば呼吸を助ける必要が、腎臓の機能不全なら透析が必要になるからです。このほかに、ショックや重い感染症の患者、大きな手術を受けた患者もICUに入ることがあります。大きな病院には小児のための小児集中治療室(PICU)があり... さらに読む に収容され、バイタルサイン(脈拍、血圧、呼吸数)と尿量が継続的にモニタリングされます。ヘマトクリット、血糖値、電解質濃度、白血球数、血中尿素窒素値など、様々な血液成分をモニタリングするために、繰り返し採血が行われます。鼻から胃にチューブ(経鼻胃管)が挿入され、水分と空気が除去されることがあり、特に吐き気と嘔吐が持続する場合や イレウス イレウス イレウスとは、腸が一時的に正常な筋収縮をしなくなった状態です。 一般的な原因として、腹部の手術や腸の運動を阻害する薬があります。 腹部膨満、嘔吐、便秘、けいれん性の腹痛、食欲不振が生じます。 診断はX線検査によって下されます。 飲食物の経口摂取が中止され、ときには鼻から胃に細い吸引チューブが挿入されることがあります。 さらに読む がある場合に行われます。
可能であれば、重症の急性膵炎の患者には経管栄養で栄養を投与します。経管栄養が不可能な場合は、太い静脈に挿入した静脈内カテーテルを通して栄養を投与します(静脈栄養 静脈栄養 静脈栄養は、重い 吸収不良を引き起こす病気などで、消化管が十分に栄養素を吸収できない場合に用いられます。 潰瘍性大腸炎の特定の病期など、一時的に食べものを消化管に入れてはいけない場合にも用いられます。 静脈から投与される食物は、栄養所要量の一部を供給して(部分的静脈栄養)、口から食べる食物の栄養を補うことができます。または、栄養所要量の前部を供給する場合もあります(完全静脈栄養)。... さらに読む )。
血圧が低下しているか、ショック状態になっている場合は、輸液と薬で血液量が注意深く維持され、心臓の機能が綿密にモニタリングされます。酸素吸入が必要になる場合もあり、最も重篤な場合では人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)が必要になります。
胆石が原因の急性膵炎では、重症度によって治療法が異なります。胆石性膵炎患者の80%以上では、自然に胆石が排出されますが、排出されない胆石があるために状態が改善しない場合は、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)による胆石除去が通常必要になります。入院中に胆嚢を摘出するのが一般的です。
仮性嚢胞が急速に大きくなった場合や痛みなどの症状を引き起こしている場合、通常は内容物を排出させます。発生部位などの要因に応じて、排出用のチューブ(カテーテル)を仮性嚢胞に留置することにより、仮性嚢胞の内容物を排出することができます。カテーテルは、内視鏡を用いるか、皮膚から仮性嚢胞に直接カテーテルを挿入することで留置できます。このカテーテルにより仮性嚢胞から数週間にわたり排出できます。仮性嚢胞の内容物を排出するために手術が必要になることはまれです。
感染症または壊死性膵炎は抗菌薬で治療しますが、感染組織や壊死組織を内視鏡または開腹手術で取り除くことが必要になる場合もあります。
急性膵炎に関するよくある質問
急性膵炎とは何ですか?
急性膵炎は、突然起きた膵臓の炎症で、軽度のものから生命を脅かすものまでありますが、通常は治まります。
急性膵炎の原因は何ですか?
膵炎には多くの原因がありますが、最も一般的なものは胆石と飲酒の2つです。
急性膵炎はどのくらいで治りますか?
急性膵炎の発作の重症度や長さは様々です。急性膵炎の軽度の発作は、1週間以内に治まることがあります。重度の発作は治まるまでに数週間かかることがあります。
急性膵炎は再発しますか?
はい、急性膵炎は再発することがあります。再発のリスクは、膵炎の原因や、危険因子が(胆石の除去、禁酒、禁煙などにより)取り除かれたかどうかに応じて大きく異なります。
急性膵炎の検査はどのように行いますか?
炎症を起こした膵臓から放出される酵素を検出する血液検査を行い、合併症を探すためにCT検査や超音波検査などの画像検査を行います。
急性膵炎はどのように治療しますか?
痛みや吐き気を和らげるために、輸液や薬を投与します。嘔吐が治まれば、水分をとることや、低脂肪、低繊維の軟らかい食事をとることができるようになります。食べることができない人には、胃に入れたチューブから栄養を投与することがあります。合併症に対して手術が必要になることがあります。
急性膵炎の後に適度の飲酒をすることはできますか?
アルコールは膵炎の危険因子であるため、医師は通常、急性膵炎になったことがある患者に飲酒を避けるよう助言します。飲酒によるリスクの程度は、膵炎の原因と重症度によって異なりますが、飲酒は避けた方が安全です。
急性膵炎のときに水を飲むことはできますか?
一般的に、液体を飲むことに耐えられる程度に吐き気と嘔吐が治まれば、水を飲むことが許可されます。
急性膵炎で死亡することはありますか?
はい、重症の急性膵炎では死に至ることがあります。膵炎の重症度、患者の年齢やその他の健康上の問題、肥満であるかどうかや大量飲酒をしているかどうかなど、多くの要因によってリスクが高まります。
急性膵炎は糖尿病の原因になりますか?
はい。ただし、非常に重度の場合に、まれにしかみられません。ほとんどの場合、膵臓はインスリンの生産や血糖値のコントロールなどの正常な機能を果たすことができます。しかしながら、 慢性膵炎 慢性膵炎 慢性膵炎は長期間続く膵臓の炎症で、膵臓の構造と機能に回復不能な悪化が生じます。 飲酒と喫煙が慢性膵炎の2大原因です。 腹痛は持続する場合もあれば、現れたり消えたりする場合もあります。 診断は症状、急性膵炎の再発歴と飲酒歴、ならびに画像検査と膵機能検査の結果に基づいて下されます。 治療としては、禁酒と禁煙、食習慣の変更、膵酵素サプリメントの服用、痛みを緩和する対策を行います。 さらに読む では糖尿病を引き起こすほどの損傷が膵臓に生じる可能性がより高くなります。
急性膵炎のときに食べていいものは何ですか?
急性膵炎では通常、低脂肪、低繊維の軟らかい食事をとることができます。低脂肪食は膵臓の消化液の必要性を最小限に抑え、低繊維食は腸の活動を最小限に抑えます。