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胃酸の薬物治療

執筆者:

Nimish Vakil

, MD, University of Wisconsin School of Medicine and Public Health

レビュー/改訂 2021年 6月
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消化性潰瘍 消化性潰瘍 消化性潰瘍(かいよう)とは、胃や十二指腸の内面が胃酸や消化液で侵食されて、円形やだ円形の傷ができた状態をいいます。 消化性潰瘍は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染や、胃や十二指腸の粘膜を衰弱させる薬によって生じることがあります。 潰瘍による不快感が生じたり消えたりしますが、この不快感は食べることで胃酸が分泌されるために食後に起こる傾向があります。... さらに読む 消化性潰瘍 胃炎 胃炎 胃炎とは、胃の粘膜の炎症です。 胃炎は、感染、重い病気によるストレス、損傷、特定の薬、免疫系の病気など、様々な要因によって起こります。 胃炎の症状が発生する場合、腹痛や腹部不快感、ときには吐き気や嘔吐などがみられます。 診断は、多くの場合患者の症状に基づいて下されますが、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)で胃を調べなければならないこともあります(上部消化管内視鏡検査)。 治療には胃酸を減らす薬のほか、ときに抗菌薬が使用されます。 さらに読む 胃炎 胃食道逆流症 胃食道逆流症(GERD) 胃食道逆流症では、胃酸や胆汁を含む胃の内容物が胃から食道に逆流し、食道の炎症と胸部の下部の痛みが生じます。 逆流は、正常な場合に胃の内容物が食道に逆流しないように防いでいる輪状の筋肉(下部食道括約筋)が正しく機能していないと起こります。 最も典型的な症状は胸やけ(胸骨の裏側の焼けつくような痛み)です。 診断は症状のほか、ときに食道pH検査の結果に基づいて下されます。 引き金になる物質(アルコールや脂肪分の多い食物など)を避け、胃酸を減ら... さらに読む 胃食道逆流症(GERD) (GERD)などのいくつかの胃の病気には胃酸が関与しています。胃に存在する酸の量は通常、このような病気の患者では正常ですが、胃と腸の損傷の治療や症状の緩和には、胃酸の量を減らすことが重要です。

プロトンポンプ阻害薬

プロトンポンプとは化学的過程の名称であり、これによって胃から酸が分泌されます。プロトンポンプ阻害薬は胃酸の分泌を最も強く抑制する薬です。プロトンポンプ阻害薬は、ヒスタミンH2受容体拮抗薬と比較して、より多くの人でより短期間に潰瘍の治癒を促進するため、潰瘍の治療では通常はH2受容体拮抗薬よりもよく使用されます。この薬は重度の胃炎(出血がある場合など)や重度のGERDに使用されます。プロトンポンプ阻害薬は ゾリンジャー-エリソン症候群 ガストリノーマ ガストリノーマは、通常は 膵臓または十二指腸(小腸の最初の部分)に発生してガストリンというホルモンを過剰に分泌する腫瘍で、ガストリンが胃を刺激して胃酸や消化酵素の分泌を促進することで、 消化性潰瘍が生じます。 この種の腫瘍は、ガストリンを作っている膵臓の細胞から発生します。 症状は消化性潰瘍のものと似ていて、具体的には痛みや出血などがみられます。 診断では血液検査や画像検査などを行います。... さらに読む など、胃酸分泌が過剰になる病気の治療にも非常に有用です。

プロトンポンプ阻害薬は経口または静脈を介して投与されます。通常はとても忍容性が良好な薬ですが、下痢、便秘、頭痛を引き起こす場合があります。プロトンポンプ阻害薬を長期間使用すると、ビタミンB12、鉄、マグネシウム、カルシウムの吸収が低下することがあります。

ヒスタミンH2受容体拮抗薬

体内で自然に生成される物質であるヒスタミンには、いくつかの役割があります。ヒスタミンはアレルギー反応を引き起こす主要な物質の1つです。そのため、何かに対してアレルギー反応を起こしている人に抗ヒスタミン薬(ヒスタミン受容体拮抗薬)が投与されます。ヒスタミンはまた、胃酸を生成するように体に信号を送るのにも役立ちます。そのため、ヒスタミンH2受容体拮抗薬と呼ばれる特定のタイプの抗ヒスタミン薬が胃酸を減らすために使用されます。したがって、H2受容体拮抗薬はプロトンポンプ阻害薬が用いられる病気の多くに使用されます。

H2受容体拮抗薬は1日1回または2回、経口または静脈を介して投与されます。H2受容体拮抗薬は重篤な副作用を起こすことは通常はありません。しかし、すべてのH2受容体拮抗薬が下痢、発疹、発熱、筋肉痛、錯乱を引き起こすことがあります。シメチジンは、男性で 乳房の腫大 男性の乳房腫大 乳房の病気がまれに男性に起こります。乳房の病気には以下のものがあります。 乳房腫大 乳がん 男性の乳房腫大は、女性化乳房または偽性女性化乳房と呼ばれます。 女性化乳房は乳腺からなる乳房組織そのものが大きくなることです。 さらに読む 勃起障害 勃起障害(ED) 勃起障害(ED)とは、性交を行うのに十分な勃起を達成または持続できないことです。 ( 男性の性機能障害の概要も参照のこと。) どんな男性でもときに勃起に至らない問題を抱えることがあり、そのような問題の発生は正常なことと考えられています。勃起障害(ED)は男性が次のような場合に起こります。 一切勃起できない 繰り返し短時間は勃起するが、性交に十分な時間ではない さらに読む を引き起こすことがあります。またシメチジンに加え、程度は低いものの他のH2受容体拮抗薬も、喘息に用いられるテオフィリン、過剰な血液凝固に用いられるワルファリン、けいれん発作に用いられるフェニトインなどの一部の薬が体内から排出されるのを妨げます。

制酸薬

制酸薬は、すでに分泌されている胃酸を中和し、それによって胃のpH値を上げる(酸性度を下げる)化学物質です。制酸薬は胃酸によって引き起こされる軽い症状に対しては単独で使用されることがあります。しかし、制酸薬はそれ自体では、潰瘍や重度の胃炎などの胃酸関連の深刻な病気の十分な治療にはなりません。このような病気では、治療の初期の段階で症状を緩和するために、通常は、制酸薬がプロトンポンプ阻害薬またはH2受容体拮抗薬とともに用いられます。制酸薬の有効性は、薬の摂取量と胃酸の分泌量によって異なります。ほとんどすべての制酸薬は医師の処方せんなしで購入でき、錠剤とシロップが利用できます。ただし、制酸薬は様々な薬の吸収を妨げる可能性があるため、服用する前に、起こりうる 薬物間相互作用 薬物相互作用 薬が人に与える影響については、薬が以下のものと相互作用することにより、予想されたものとは異なる可能性があります。 その人が服用している別の薬(薬同士の相互作用) その人が摂取している飲食物やサプリメント(薬と栄養素の相互作用) その人がかかっている別の病気(薬と病気の相互作用) 薬物相互作用は、通常は好ましくなく、ときに害をもたらすことがあります。相互作用では以下のことが起こる可能性があります。 さらに読む について薬剤師に相談する必要があります。

炭酸水素ナトリウム(重曹)と炭酸カルシウムは最も強力な制酸薬で、短期間の症状緩和を素早く得るために用いられることがあります。しかし、これらは血液中に吸収されるため、使用し続けると血液がアルカリ性に傾き過ぎることがあり(アルカローシス アルカローシス アルカローシスは血液のアルカリ性度が高くなりすぎた状態で、血液中の重炭酸塩の過剰または血液中の酸の減少が原因で発生する代謝性アルカローシスと、深く速い呼吸により血液中の二酸化炭素濃度が低下して生じる呼吸性アルカローシスとがあります。 アルカローシスは、易刺激性、筋肉のひきつり、筋肉のけいれん(強い痛みを伴うこともあります)を引き起こすことがあります。 アルカローシスの診断は血液検査により行われます。... さらに読む )、吐き気、頭痛、筋力低下が起こります。したがって、これらの制酸薬は一般的には数日以上にわたって大量に使用してはいけません。また、これらの制酸薬には塩分が多量に含まれていて、食事の塩分を制限されている人、 心不全 心不全 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。 心不全は心臓の収縮や弛緩が不十分になることで発生しますが、これらの変化は一般的に、心筋が弱ったり硬くなったりすることが原因で起こります。... さらに読む 心不全 の人、 高血圧 高血圧 高血圧とは、動脈内の圧力が恒常的に高くなっている状態のことです。 高血圧の原因は不明のことも多いですが、腎臓の基礎疾患や内分泌疾患によって起こる場合もあります。 肥満、体を動かさない生活習慣、ストレス、喫煙、過度の飲酒、食事での過剰な塩分摂取などはすべて、遺伝的に高血圧になりやすい人の高血圧の発症に何らかの形で関与しています。... さらに読む 高血圧 の人は使用してはいけません。

水酸化アルミニウムは比較的安全で、広く使われている制酸薬です。しかし、アルミニウムが消化管でリン酸と結合することで、体内のカルシウムの欠乏、血液中のリン濃度の低下が生じ、筋力低下、吐き気、食欲不振が起こることがあります。これらの副作用のリスクは、アルコール依存症の人や低栄養の人、透析患者を含む腎疾患がある人では高くなります。水酸化アルミニウムの服用で便秘になることもあります。

水酸化マグネシウムは水酸化アルミニウムより効果が高い制酸薬です。この制酸薬は速く作用して酸を効果的に中和します。ただし、マグネシウムは下剤でもあります。1日に大さじ数杯分を摂取する程度であれば排便も正常に保たれます。1日5回以上摂取すると下痢を起こすことがあります。少量のマグネシウムが血液中へと吸収されるため、腎臓に障害がある人では水酸化マグネシウムの用量を低く抑える必要があります。下痢を制限するため、制酸薬の多くは水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムを両方含んでいます。

心疾患、高血圧、または腎疾患がある人は制酸薬を選ぶ前に、医師に相談してください。

胃酸のための他の薬

スクラルファートは、潰瘍の基部に保護膜を形成して治癒を促すことで、効果が得られることがあります。消化性潰瘍には効果が高く、制酸薬の代替として適切です。スクラルファートは1日2~4回服用し、血液中に吸収されないため副作用はほとんど起こりません。しかし、便秘を起こしたり、他の薬の有効性を低下させたりすることがあります。

ミソプロストールは、NSAIDによって胃潰瘍や十二指腸潰瘍が発生する可能性を減らすために用いられることがあります。ミソプロストールは、胃酸の分泌を抑制し、胃酸に対する胃粘膜の抵抗力を高めることで、効果が得られることがあります。高齢者、コルチコステロイドを服用している人、潰瘍の病歴または潰瘍による合併症の病歴がある人は、NSAIDの使用で潰瘍が発生するリスクが高くなります。このような人は、食事やNSAIDとともにミソプロストールを服用することができます。しかし、ミソプロストールを服用した人の30%に下痢などの消化器の問題が起こります。さらに、妊婦が服用すると自然流産を起こす可能性があります。アスピリン、NSAID、またはコルチコステロイドを服用している人では、ミソプロストールの代替薬が利用できます。そうした代替薬(例えばプロトンポンプ阻害薬)は、潰瘍の発生率を低下させる効果がミソプロストールと同程度で、副作用はより少なくなります。

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