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胃食道逆流症(GERD)

執筆者:

Kristle Lee Lynch

, MD, Perelman School of Medicine at The University of Pennsylvania

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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胃食道逆流症では、胃酸や胆汁を含む胃の内容物が胃から食道に逆流し、食道の炎症と胸部の下部の痛みが生じます。

  • 逆流は、正常な場合に胃の内容物が食道に逆流しないように防いでいる輪状の筋肉(下部食道括約筋)が正しく機能していないと起こります。

  • 最も典型的な症状は胸やけ(胸骨の裏側の焼けつくような痛み)です。

  • 診断は症状のほか、ときに食道pH検査の結果に基づいて下されます。

  • 引き金になる物質(アルコールや脂肪分の多い食物など)を避け、胃酸を減らす薬を服用することが最初の治療になりますが、これらの方法でうまくいかない場合には、手術を行うことがあります。

食道は、のど(咽頭)から胃までをつなぐ中空の管です。下部食道括約筋は輪状の筋肉で、食べものや胃酸が食道を逆流して上がって行かないように、食道の下部を閉じた状態に保っています。何かを飲み込むと、正常であればこの括約筋が弛緩(しかん)して、食べものが胃に入れるようになります。(食道の概要も参照のこと。)

胃食道逆流症(GERD)は、よくみられる病気です。成人での発生率は10~20%です。乳児にも高い頻度でみられ、出生時から始まることもあります( 小児の胃食道逆流)。

胃粘膜は胃酸の作用から胃を保護しています。しかし、食道にはこのような保護粘膜がないため、胃酸や胆汁が食道へと逆流すると、症状が出たり、ときに食道に損傷が生じたりすることがあります。

食道への胃酸や胆汁の逆流は、下部食道括約筋が適切に機能していないときに起こります。立っているときや座っているときは、重力によって胃の内容物が食道に逆流しにくくなっていますが、横になっているときに逆流が悪化することがあるのはこのためです。また、食後すぐは胃の内容物の量が多く、酸性度も高く、下部食道括約筋が正常に機能しにくくなるため、やはり逆流が起きやすくなります。逆流につながる要因としては以下のものがあります。

  • 体重増加

  • 脂肪分の多い食物

  • カフェイン入り飲料や炭酸飲料

  • アルコール

  • 喫煙

  • 特定の薬

下部食道括約筋の機能を妨げる薬の種類としては、抗コリン作用のある薬(多くの抗ヒスタミン薬や一部の抗うつ薬など)、カルシウム拮抗薬、プロゲステロン、硝酸薬などがあります。糖尿病やオピオイドの使用などによって胃の内容物を送り出すのが遅い場合も逆流を悪化させることがあります。

症状

胃食道逆流症の最も分かりやすい症状は胸やけ(胸骨の裏側の焼けつくような痛み)です。胸やけに伴って、胃の内容物が口まで戻ってくる逆流が起こることもあります。胃の内容物が口に達すると、のどの痛み、声がれ、せき、のどにしこりがある感覚(球感覚)を引き起こすことがあります。ときに、胃の内容物が肺に流れて入り、せきや喘鳴(ぜんめい)が生じることがあります。長期にわたり胸やけが続いている人では、ものが飲み込みにくくなることがあります(嚥下困難)。

胃食道逆流症の合併症

食道の下部が長期にわたって繰り返し逆流にさらされると、以下の異常が生じます。

  • 食道の炎症(食道炎)

  • 食道の潰瘍(びらん性食道炎)

  • 食道の狭窄(きょうさく)

  • がん化することもある食道の細胞の異常(食道がんを参照)

食道の炎症(食道炎またはびらん性食道炎)は、典型的な胃食道逆流症の症状を引き起こしますが、たいていはより重症です。炎症によって、飲み込むときに痛みが生じることがあります(嚥下痛[えんげつう])。出血することもあり、通常はわずかな出血ですが、大量出血の可能性もあります。出血した血液は、吐血となることもあれば、消化管を通過して、黒いタール状の便(黒色便)または出血が激しい場合は鮮紅色の便になって出ることもあります。長期にわたる軽度の出血によって、鉄欠乏性貧血が発生することがあります。

食道潰瘍は、食道の粘膜がただれて破れたものです。食道潰瘍があると、ものを飲み込んだときに、胸やけと同じ位置、つまり胸骨の裏側やすぐ下に胸痛が生じます。

逆流によって食道が狭くなる(狭窄)と、固形の食べものが次第に飲み込みにくくなります。

長期にわたって食道が刺激を受けると、食道の内面を覆っている細胞の状態が変化して、バレット食道と呼ばれる状態になります。症状がなくても変化が生じることがあります。この異常な細胞は前がん状態で、ときにがん化することがあります。

診断

  • 内視鏡検査と生検

  • ときにpH検査

  • ときに内圧検査

症状から胃食道逆流症の診断が下せる場合は、検査を行わなくても治療を開始できます。検査は通常、診断が確定できない場合、治療をしても症状が改善されない場合、長期にわたって症状が続く場合にのみ行われます。

検査が必要な場合、通常は内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を用いて食道を調べる検査を最初に行います。内視鏡検査は、食道炎、びらん性食道炎、食道潰瘍、食道狭窄(きょうさく)、食道がん、バレット食道の診断を下すための最善の検査です。内視鏡検査では、顕微鏡で調べるために組織を採取することがあります(生検)。

胃食道逆流症を強く疑わせる症状がみられる場合には、内視鏡検査と生検の結果が正常であれば、食道pH検査を行うことがあります(pHは酸性度の尺度—カテーテルを用いたモニタリングを参照)。この検査では、先端にセンサーが付いた観察用の柔軟な管状の機器を鼻から下部食道へと入れます。この管は24時間にわたり留置されます。管の反対側の端は患者に装着されたモニターにつながっています。モニターは通常24時間、食道の酸性度を記録します。この検査では、逆流がどの程度起きているかを調べる以外に、症状と逆流との関係も確認できます。また、症状が逆流に典型的なものではない場合にも役立ちます。胃食道逆流症を治す手術が考慮される場合は、必ず食道のpH測定が推奨されます。鼻に挿入するチューブに耐えられない場合は、小さなpH測定用カプセルを下部食道に取り付けることもできます(ワイヤレスモニタリングを参照)。

内圧検査という検査法を用いた下部食道括約筋の圧力測定では、括約筋の機能を調べて、正常時と比較して低下していないかを判別できます。この検査で得られた情報は、手術が適切な治療かどうかを判断するのに役立ちます。

予防

胃食道逆流症を軽減するためにとられることがある対処法はいくつかあります。

  • ベッドの頭側を高くする

  • 症状を引き起こしたり胃酸の分泌を促進したりする薬の使用や同様の食べものの摂取を控える

  • 就寝前に食べない

  • 体重を減らす

就寝時に頭部を15センチメートルほど高くすると、睡眠中に胃酸が食道に逆流するのを防ぐのに役立ちます。症状を引き起こす薬を避ける必要があり、喫煙も同様にやめるべきです。コーヒー、アルコール、脂肪分の多い食べもの、オレンジジュースなどの酸を含む飲みもの、コーラ飲料、酢をベースにしたサラダドレッシングなど、胃酸の分泌を強く促したり、胃の排出を遅らせたりする物質も同様に避けるようにします。就寝前の3時間は食事を控えるべきです。過体重の人および最近体重が増えた人は、体重を落とす必要があります。

治療

  • プロトンポンプ阻害薬またはときにヒスタミンH2受容体拮抗薬

  • 狭窄部の拡張

  • 噴門形成術

  • バレット食道の管理

プロトンポンプ阻害薬は、胃酸の分泌を最も強く抑制する薬ですが、胃食道逆流症の治療や胃食道逆流症に起因する食道炎やびらん性食道炎の治療には、通常はこの種の薬が最も有効です。治癒するには、一般にこの薬を4~12週間にわたり服用する必要があります。このような薬は長期にわたり使用を継続することがありますが、それが必要な場合には、医師は低い用量で使用しようと試みます。プロトンポンプ阻害薬の代替薬として、ヒスタミンH2受容体拮抗薬や、食べものが食道、胃、腸を通過する動きを促進する薬(消化管運動機能改善薬と呼ばれる)があります。しかし、これらの薬はプロトンポンプ阻害薬ほど効果的ではありません。

食道狭窄では、バルーンやチューブを用いて狭窄部を繰り返し拡張させる治療を行います。拡張がうまくいけば、狭窄によって食べられるものが大きく制限されることはなくなります。

バレット食道は、プロトンポンプ阻害薬を使用しても消失することはまれであり、典型的にはそのまま変化しません。細胞が前がん状態になった場合、内視鏡検査の際に行える治療選択肢として、ラジオ波(ラジオ波焼灼術[しょうしゃくじゅつ])、極低温(凍結療法)、レーザービーム(レーザー焼灼術)を用いて異常な組織を破壊する方法などがあります。あるいは、その組織を手術で切除することもあります。しかし、治療により症状が軽減した後でも異常な細胞がまだ残っている場合があります。そのためバレット食道の患者は、がんに進行していないことを確認するため定期的に内視鏡検査を受けるよう指示されます。

薬で症状が軽減しない場合や、症状が改善しても潰瘍、出血、食道炎が持続する場合は、手術が胃食道逆流の治療選択肢となります。また、薬を何年も飲み続けることを好まない人では、手術が適していることもあります。腹腔鏡を用いて行う、体への負担が少ない手術(噴門形成術と呼ばれる)が利用できます。ただし、この手術を受ける人の20~30%で副作用がみられ、嚥下困難、食後の腹部の膨満感や腹部不快感が最も多くみられます。

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