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急性膵炎

執筆者:

Raghav Bansal

, MBBS, Ichan School of Medicine at Mount Sinai, NY

最終査読/改訂年月 2017年 8月
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本ページのリソース

急性膵炎は、膵臓の突然の炎症で、軽度のものから生命を脅かすものまでありますが、通常は治まります。

  • 胆石とアルコール乱用が急性膵炎の主な原因です。

  • 重度の腹痛が主な症状です。

  • 診断には血液検査と画像検査(CT検査など)が役立ちます。

  • 軽度であれ中等度であれ重度であれ、急性膵炎では通常は入院が必要になります。

膵炎の概要も参照のこと。)

膵臓は上腹部にある臓器で、消化液とホルモンのインスリンをつくります。急性膵炎では、炎症が急に発生して数日以内に治まりますが、数週間続くこともあります。慢性膵炎では、膵臓に持続的な炎症が起こり、それにより永続的な損傷が生じます。

膵臓の位置

膵臓の位置

原因

急性膵炎の最も一般的な原因(併せて全体の70%以上)は以下のものです。

胆石

胆石は急性膵炎症例の原因のうち約40%を占めています。胆石は胆嚢内で固形物が凝縮したものです。胆石は胆嚢が膵臓と共用している管(総胆管)の中に入り、この管を詰まらせることがあります。

正常な状態では、膵臓は膵管を通して小腸の最初の部分(十二指腸)に膵液を分泌します。この膵液には、食べものの消化を助ける消化酵素が含まれています。胆石がオッディ括約筋(膵管が十二指腸に出るところの開口部)に詰まって動かなくなると、膵液の流れが止まります。この閉塞は通常は一時的なもので、それにより生じる限定的な損傷は、すぐに回復します。しかし、閉塞が続くと、酵素が膵臓内に蓄積して、膵臓の細胞を消化し始めてしまい、重度の炎症を引き起こします。

アルコール

飲酒は急性膵炎症例の原因のうち約30%を占めていますが、通常、急性膵炎が起きるのは大量の飲酒をした場合だけです。膵炎の発生リスクは飲酒量とともに高まります(男性では1日4~7ドリンク、女性では1日3ドリンク以上)。アルコールがどのようにして膵炎を引き起こすのかは、まだ十分に解明されていません。1つの仮説は、アルコールが膵臓で有毒化学物質に変換され、それが損傷を引き起こすというものです。別の仮説として、膵管に膵液を分泌する膵臓の小管がアルコールによって詰まり、最終的に急性膵炎が起きるという見方もあります。

その他の原因

一部の患者では急性膵炎が遺伝します。急性膵炎を発症しやすくなる遺伝子変異が特定されています。嚢胞(のうほう)性線維症があるか、または嚢胞性線維症の遺伝子を保有している人は、慢性膵炎に加え、急性膵炎の発生リスクが高くなります。

膵臓を刺激する薬は数多くあります。通常は、薬の使用を中止すると炎症が治まります。

ウイルスも膵炎を起こすことがありますが、通常は長引きません。

急性膵炎の主な原因

症状

急性膵炎を起こした人のほぼ全員で、上腹部に重度の腹痛が生じます。約50%の人で、この痛みは背中まで突き抜けます。胆石による急性膵炎では、痛みは通常は突然始まり、数分で最大の強さに達します。アルコールにより膵炎が生じる場合、一般的には数日かけて痛みが発生します。原因が何であれ、その後は突き刺すような激しい痛みが重度のまま残り、数日間持続することがあります。

せきこんだり、活発な動作や深呼吸をすると痛みが悪化することがあります。背筋を伸ばして座り前かがみになるといくぶん楽になることがあります。ほとんどの場合、吐き気を感じて嘔吐し、ときには、吐くものがなくなっても吐き気が続きます。高用量のオピオイド鎮痛薬を注射しても、痛みを完全に取り除けないことがしばしばあります。

患者の中には(特に大量飲酒が原因で急性膵炎が起こった場合)、中等度から重度の痛みの他には何の症状も出ない人がいます。非常に具合が悪くなる人もいます。具合が悪そうにみえ、汗をかき、脈拍が速くなり(1分間に100~140拍)、呼吸が浅く速くなります。肺に炎症が起こったり、肺の一部の組織がつぶれたり(無気肺)、胸腔に水がたまったりすると(胸水)、呼吸が速くなることもあります。このような状態では、空気から酸素を血液に取り入れることができる肺組織の量が減少し、血液中の酸素レベルが低下する可能性があります。

最初は体温は正常なこともありますが、数時間で37.7~38.3℃に上昇することがあります。血圧は通常低く、立ち上がったときに低下する傾向があり、立ちくらみを起こします。

ときに白眼の部分(強膜)が黄色に変色します。

急性膵炎の合併症

急性膵炎の主な合併症は以下の通りです。

  • 低血圧およびショック

  • 他の臓器の損傷

  • 膵臓の感染症

  • 膵仮性嚢胞

膵臓が損傷すると、活性化した酵素やサイトカインなどの毒性物質が血液中に入り、低血圧になったり、肺や腎臓など他の臓器を損傷したりすることがあります。一部の急性膵炎患者では、腎臓、肺、心臓などの臓器不全が起き、それにより死に至る可能性があります。

膵臓のホルモン(特に インスリン)をつくる部分は、急性膵炎に侵されない傾向があります。

急性膵炎では、上腹部がいくらか腫れることがあります。この腫れは、腸の内容物が動かなくなって腸が腫れるために起こることがあります(イレウスと呼ばれる状態)。

重症の急性膵炎では、膵臓の一部が壊死することがあり(壊死性膵炎)、体液が腹腔に流れ出し、血液量が減少して大幅な血圧低下を起こし、ショック状態と臓器不全が生じることがあります。重症の急性膵炎は生命を脅かします。

炎症を起こした膵臓に感染が生じるリスクがあり、特に発症後1週間を過ぎてからリスクが高くなります。患者の状態が悪化した場合や、発熱がみられた場合、特に最初の症状が治まり始めた後にそうなった場合に、感染症が疑われます。

膵仮性嚢胞は、膵酵素、膵液、組織片が中に蓄積していて、膵臓内やその周囲にできることがあります。一部の患者では、膵仮性嚢胞は自然になくなりますが、そうでない場合は、仮性嚢胞がなくならず、感染を起こすことがあります。

診断

  • 血液検査

  • 画像検査

特徴的な腹痛があるとき、特に胆嚢疾患がある人や大量に飲酒する人では、急性膵炎が疑われます。診察では、しばしば腹部に触れると圧痛があることや、腹壁の筋肉が硬いことを確認します。聴診器で腹部の音を聴くと、腸の音がほとんどまたはまったく聞こえないことがあります。

血液検査

単独で急性膵炎の診断を証明できる血液検査はありませんが、特定の検査から急性膵炎が疑われます。膵臓で産生される2種類の酵素、アミラーゼとリパーゼの血中濃度は、通常は急性膵炎の発症初日に上昇しますが、その後3~7日で正常レベルに戻ります。ただし、それまでに膵炎の発作があった場合は、膵臓の大部分が破壊されて酵素を分泌する細胞がほとんど残っていないために、これらの酵素の濃度は大きくは上昇しないことがあります。

通常は白血球数と血中尿素窒素値(腎機能のマーカー)が上昇します。

画像検査

腹部X線検査では、腸の一部が拡張していることが分かったり、まれに1個または複数の胆石が見つかることがあります。胸部X線検査では、肺組織がつぶれている領域や胸腔にたまった胸水が明らかになることがあります。

腹部の超音波検査では、胆嚢内やときには総胆管内の胆石が明らかになったり、膵臓の腫れも分かることがあります。

CT検査は、膵臓の炎症を検出するのに特に有用で、重症の急性膵炎がある場合に行われます。CT検査では非常に鮮明な画像が得られますので、この検査は膵炎の正確な診断と合併症の特定に役立ちます。

磁気共鳴胆道膵管造影(MRCP)検査は、特殊なMRI検査で、膵管と胆管を描き出して、これらの管に拡張、閉塞、狭窄がないか確かめるために行われることがあります。

内視鏡的逆行性胆道膵管造影を行えば、胆管と膵管を観察することができます。この検査中に、閉塞を引き起こしている胆管の胆石を取り除くことができます。

内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査について

内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)検査では、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を口から挿入し、胃を通して十二指腸(小腸が始まる部分)まで到達させます。その後、オッディ括約筋を通して胆道に造影剤(X線画像に写る液体)を注入します。造影剤によって閉塞の輪郭が描き出されます。

さらに内視鏡を通して手術器具を挿入することにより、胆管の結石を除去したり、結石、瘢痕、がんなどで詰まった胆管を迂回するためのステント(筒状の器具)を挿入したりすることも可能です。

内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査について

その他の検査

感染が疑われる場合は、皮膚から蓄積した体液に向かって針を刺して、感染組織のサンプルを抜き取る検査を行うことがあります。

予後(経過の見通し)

急性膵炎では、CT検査が予後(経過の見通し)の予測に役立ちます。CT画像で膵臓が軽く腫れているだけの場合は、予後は極めて良好です。CT画像で膵臓の破壊された領域が大きい場合、通常は予後が不良です。

いくつかのスコアリングシステムが急性膵炎の重症度の予測に役立ち、重症度を参考にすることで、状態の管理を改善できます。それらのスコアリングシステムには、年齢、病歴、身体所見、臨床検査、CT検査の結果などの情報が含まれています。

急性膵炎は、軽症であれば死亡率は約5%以下です。しかし、膵炎による組織の損傷がひどい場合や、炎症が膵臓だけにとどまらない場合は、死亡率がはるかに高くなります。急性膵炎を発症して数日以内に死亡する場合は、心不全、呼吸不全、または腎不全が通常の原因です。最初の1週間より後に生じる死亡は通常、膵臓の感染か、仮性嚢胞の出血や破裂によるものです。

治療

  • 輸液

  • 痛みの緩和

  • 栄養摂取を補助する対策

  • ときに内視鏡検査または手術

軽症の急性膵炎に対する通常の治療では、短期間入院して輸液を行い、痛みの緩和のために鎮痛薬が投与され、膵臓を休ませるために絶食します。吐き気、嘔吐、重度の痛みがなければ、通常は入院直後から脂肪の少ない柔らかい食事を開始します。

中等症から重症の急性膵炎では、より長期間の入院が必要になり、輸液を行います。食べたり飲んだりすると膵臓が刺激されるため、患者はまず飲食を避ける必要があります。痛みや吐き気などの症状は、薬を静脈から投与することでコントロールされます。このような患者に何らかの感染の徴候がみられた場合は、抗菌薬を投与します。

重症の急性膵炎の患者は、集中治療室に収容され、バイタルサイン(脈拍、血圧、呼吸数)と尿量が継続的にモニタリングされます。ヘマトクリット、血糖値、電解質濃度、白血球数、血中尿素窒素値など、様々な血液成分をモニタリングするために、繰り返し採血が行われます。鼻から胃にチューブ(経鼻胃管)が挿入され、水分と空気が除去されることがあり、特に吐き気と嘔吐が持続する場合やイレウスがある場合に行われます。

中等症から重症の急性膵炎の場合は、鼻から胃を通して小腸まで挿入した合成樹脂製の細いチューブを介して栄養を送り込む方法(経管栄養)がしばしば用いられます。それよりは少ないですが、静脈栄養を行うこともあります。

血圧が低下したり、ショック状態になっている場合は、輸液と薬で血液量が注意深く維持され、心臓の機能が綿密にモニタリングされます。酸素吸入が必要になる場合もあり、最も重篤な場合では人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)が必要になります。

胆石が原因の急性膵炎では、重症度によって治療法が異なります。胆石が原因の膵炎患者の80%以上では、自然に胆石が排出されますが、排出されない胆石があるために改善しない場合は、ERCPによる胆石除去が通常必要になります。通常はいずれかの時点で胆嚢を切除することになりますが、膵炎が重症の場合は、通常は症状が治まるまで胆嚢の切除を遅らせることができます。

仮性嚢胞が急速に大きくなった場合や痛みなどの症状を引き起こしている場合、通常は内容物を排出させます。発生部位などの要因に応じて、手術を行うか排出用のチューブ(カテーテル)を仮性嚢胞に留置することにより、仮性嚢胞の内容物を排出することができます。カテーテルは、内視鏡を用いるか、皮膚から仮性嚢胞に直接カテーテルを挿入することで留置できます。このカテーテルにより仮性嚢胞から数週間にわたり排出できます。

感染症は抗菌薬で治療しますが、感染組織や壊死組織を内視鏡または開腹手術で取り除くことが必要になる場合もあります。

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