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胃炎

執筆者:

Nimish Vakil

, MD, University of Wisconsin School of Medicine and Public Health

最終査読/改訂年月 2020年 3月
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胃炎とは、胃の粘膜の炎症です。

  • 胃炎は、感染、重度の疾患によるストレス、損傷、ある種の薬、免疫系の病気など、様々な要因によって起こります。

  • 胃炎の症状が発生する場合、腹痛や腹部不快感、ときには吐き気や嘔吐などがみられます。

  • 診断は、多くの場合患者の症状に基づいて下されますが、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)で胃を調べなければならないこともあります(上部消化管内視鏡検査)。

  • 治療は胃酸を減らす薬や、ときに抗菌薬により行います。

胃の粘膜には刺激に対する抵抗力があり、通常は非常に強い酸にも耐えられます。しかし、胃炎の場合、胃の粘膜は刺激を受けて炎症を起こします。

胃炎は重症度に基づいて以下の2つに分類されます。

  • びらん性

  • 非びらん性

びらん性胃炎は、非びらん性胃炎より重度です。この種の胃炎では、胃の粘膜の炎症と粘膜の減少(びらん)が起こります。びらん性胃炎は典型的には急激に発生します(急性びらん性胃炎と呼ばれる)が、ゆっくりと発生することもあります(慢性びらん性胃炎と呼ばれ、ほかの点は健康な人に通常みられます)。

非びらん性胃炎は胃の粘膜の変化を特徴とし、変化としては、胃の粘膜が消耗(萎縮[いしゅく])する状態から、胃の組織が他の種類の腸管組織に変化する状態(化生)まで幅があります。多くの場合、数種類の白血球が胃に集まって、様々な程度の炎症を引き起こします。これらの白血球は、胃全体に炎症を引き起こすことも、その一部のみに炎症を引き起こすこともあります。

原因

特定の種類の胃炎は、感染、重度の疾患が原因で生じるストレス、損傷、ある種の薬、免疫系の病気など、様々な要因によって起こります。

びらん性胃炎は、一般的にアルコール、重度の疾患が原因で生じるストレス、薬のような刺激物で特にアスピリンやその他の非ステロイド系抗炎症薬( NSAID 非ステロイド系抗炎症薬 基礎疾患を治療することで、痛みを解消したり最小限に抑えたりできるケースがあります。例えば、骨折をギプスで固定することや、感染を起こした関節に抗菌薬を投与することは、鎮痛に役立ちます。しかし、痛みの基礎疾患が治療可能な場合でも、痛みに速やかに対処するために痛み止め(鎮痛薬)が必要になる場合もあります。 医師が鎮痛薬を選択する際、痛みのタイプと持続期間、それぞれの鎮痛薬の便益とリスクを考慮します。ほとんどの鎮痛薬は侵害受容性疼痛(通常の組織... さらに読む )により発生します。あまり一般的でない原因としては、 クローン病 クローン病 クローン病は、炎症性腸疾患の一種で、一般的には小腸の下部、大腸、またはその両方に慢性炎症が生じますが、炎症は消化管のどの部分にも現れる可能性があります。 正確な原因は分かっていませんが、免疫システムが正常に機能していないことでクローン病が起こる可能性があります。 典型的な症状としては、慢性の下痢(血性となることもある)、けいれん性の腹痛、発熱、食欲不振、体重減少などがあります。... さらに読む クローン病 、放射線、細菌やウイルスによる感染( サイトメガロウイルス サイトメガロウイルス(CMV)感染症 サイトメガロウイルス感染症はよくみられるヘルペスウイルス感染症で、症状が出ないものから、発熱と疲労感が出るもの(伝染性単核球症に似たもの)、また、眼や脳、その他の内臓を侵す重い症状が生じるものまで、症状は多様です。 このウイルスは、体の分泌物と接触(性的接触とそれ以外の接触の両方)することで感染します。 ほとんどの人では何の症状もみられませんが、気分が悪くなって熱が出る場合もあり、免疫機能が低下している人が感染すると、失明などの重篤な症... さらに読む など)、腐食性物質の摂取、直接的損傷(経鼻胃管挿入によるものなど)などがあります。人によっては、乳児用アスピリンを毎日服用するだけでも胃の粘膜が傷つくことがあります。

感染性胃炎のうち、ヘリコバクター・ピロリHelicobacter pylori(ピロリ菌)が原因ではないものはまれです。

ウイルス性胃炎や真菌性胃炎は、慢性疾患がある人や、エイズやがんがあったり 免疫抑制薬 免疫不全を引き起こす可能性がある主な薬剤 免疫不全を引き起こす可能性がある主な薬剤 を服用しているなどで免疫機能が弱くなっている人に起こることがあります。

急性ストレス性胃炎はびらん性胃炎の一種で、突然の病気や損傷によって起こります。損傷部位は胃に限りません。例えば、広範囲な皮膚の熱傷(やけど)、頭部損傷、大出血を伴う損傷がその典型的な原因です。なぜ重篤な病気が胃炎を引き起こすのかは正確には分かっていませんが、胃への血流の減少、胃酸量の増加、胃粘膜の保護力と修復力の低下に関連している可能性があります。

胃切除後胃炎は、胃の一部を切除する手術(胃部分切除術と呼ばれる)を受けた人に起こります。通常、組織を縫合(ほうごう)した部分に炎症が起こります。胃切除後胃炎は、手術によって胃粘膜への血流が減少したり、胃粘膜が過剰な量の胆汁(肝臓で生成される緑黄色の消化液)にさらされることで起こると考えられています。

萎縮性胃炎では、胃の粘膜が非常に薄くなり(萎縮)、胃酸と酵素を産生する細胞が大量にまたはすべて失われます。この状態は、 抗体 抗体 獲得免疫(特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識したときに始まります。そして、獲得免疫を構成する要素が、それぞれの抗原について最良の攻撃方法を学習し、抗原を記憶していきます。獲得免疫が特異免疫とも呼ばれているのは、過去に遭遇した抗原に対し、それぞれに応じた(特異的な)攻撃をするからです。その優れたところは、学習し、適応し、記... さらに読む 抗体 が胃の粘膜を攻撃することで起こります(自己免疫性萎縮性胃炎と呼ばれます)。萎縮性胃炎は、ピロリ菌 H. pyloriの慢性感染がある人の一部にも発生します。また胃の部分切除を受けた人にも起こる傾向があります。

好酸球性胃炎は、線虫の寄生に対するアレルギー反応によって起こることがありますが、通常は原因不明です。このタイプの胃炎では白血球の一種である好酸球が胃壁に蓄積します。

症状

通常、胃炎では症状がみられません。症状が発生する場合は、原因によって症状が異なり、胃痛、不快感、吐き気、嘔吐などが起こり、これらの症状が単に消化不良とまとめて呼ばれることもあります。

びらん性胃炎や放射線性胃炎など、より重度の胃炎では、吐き気や間欠的な嘔吐が起こる可能性があります。

胃炎の合併症

胃炎の合併症には以下のものがあります。

  • 出血

  • 潰瘍(かいよう)

  • 胃の出口が狭くなる

急性ストレス性胃炎では病気や損傷が生じてから数日以内に出血が起こることがありますが、慢性びらん性胃炎や放射線性胃炎ではよりゆっくりと出血が起こる傾向があります。出血が軽度でゆっくりな場合は、症状がみられなかったり、黒い便(消化された血液が黒い色であるために生じる黒色便)に気が付くだけの場合があります。出血がより速いと、吐血したり、血便がみられたりすることがあります。出血が長引くと 貧血 貧血の概要 貧血とは、赤血球の数やヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球中のタンパク質)の量が少ない状態をいいます。 赤血球には、肺から酸素を運び、全身の組織に届けることを可能にしているヘモグロビンというタンパク質が含まれています。赤血球数が減少したり、赤血球中のヘモグロビンの量が少なくなったりすると、血液は酸素を十分に供給できなくなります。組織に酸素が十分... さらに読む の症状が現れることがあり、疲労、筋力低下、ふらつきなどが起こります。

胃炎の合併症の中にはゆっくりと発生するものもあります。胃炎のために胃の出口が瘢痕(はんこん)化して狭くなることがあり、特に放射線性胃炎と好酸球性胃炎でよくみられ、重度の吐き気と頻繁な嘔吐を起こします。

メネトリエ病では、炎症を起こした胃粘膜からタンパク質が失われ、そのため体液貯留と組織のむくみ(浮腫)が生じることがあります。

胃切除後胃炎と萎縮性胃炎では内因子の産生が減少し、そのため疲労や筋力低下など貧血の症状が現れることがあります(内因子はタンパク質の一種で、ビタミンB12と結合して、ビタミンB12が吸収され赤血球産生に利用されるようにします)。

萎縮性胃炎患者のごく一部では、胃の組織が別の種類の消化管組織に変化します(化生)。そのうちのさらに少数の患者で、化生が胃がんへと進行します。

診断

  • 上部消化管内視鏡検査

上部消化管内視鏡検査では、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を使用して胃や小腸の一部を調べます。必要であれば、胃の粘膜の生検(組織のサンプルを採取して顕微鏡で調べる)を行います。

治療

  • 胃酸分泌抑制薬と制酸薬

  • ときにピロリ菌(H. pylori)感染症を治療するための抗菌薬

  • 出血を止めるための治療

胃炎に対する薬

制酸薬 制酸薬 消化性潰瘍、胃炎、胃食道逆流症(GERD)などのいくつかの胃の病気には胃酸が関与しています。胃に存在する酸の量は通常、このような病気の患者では正常ですが、胃と腸の損傷の治療や症状の緩和には、胃酸の量を減らすことが重要です。 プロトンポンプとは化学的過程の名称であり、これによって胃から酸が分泌されます。プロトンポンプ阻害薬は胃酸の分泌を最も強く抑制する薬です。プロトンポンプ阻害薬は、ヒスタミンH2受容体拮抗薬と比較して、より多くの人でより... さらに読む は、すでに産生され胃の中に放出された胃酸を中和する薬で、軽い症状に対しては、しばしばこの制酸薬で十分です。ほとんどすべての制酸薬は医師の処方せんなしで購入でき、錠剤とシロップが利用できます。制酸薬には、水酸化アルミニウム(便秘を引き起こすことがある)、水酸化マグネシウム(下痢を引き起こすことがある)、炭酸カルシウムなどがあります。制酸薬は様々な薬の吸収を妨げる可能性があるため、他の薬を服用している人は、制酸薬を使用する前に薬剤師に相談する必要があります。

胃酸分泌抑制薬には以下のようなものがあります。

ヒスタミンH2受容体拮抗薬は制酸薬より症状を軽くする効果が大きく、服用も簡単です。プロトンポンプ阻害薬は出血を伴う胃炎で最もよく処方されます。このような制酸薬は通常、8~12週間服用する必要があります。

びらん性胃炎

急性ストレス性胃炎

急性ストレス性胃炎は、ほとんどの場合、その原因になっている病気や損傷、出血が治ると完全に治ります。しかし集中治療室で治療を受けている患者では、2%が急性ストレス性胃炎から多量の出血を起こし、それによって死に至ることもあります。そのため大きな病気や損傷、重度の熱傷(やけど)の後には、医師は急性ストレス性胃炎の予防に努めます。手術後や、集中治療室の患者の大半には、急性ストレス性胃炎を予防するために、一般的に胃酸の分泌を抑制する薬が投与されます。そのような薬は潰瘍の治療にも用いられます。

急性ストレス性胃炎による重度の出血に対しては様々な治療法が用いられています。しかし、結果を改善する治療法はほとんどありません。内視鏡で観察しながら出血部を一時的に熱でふさぐ(焼灼[しょうしゃく])こともできますが、原因となっている基礎疾患が続くかぎりしばしば再出血を起こします。出血が止まらない場合は、救命処置として胃を全部切除せざるを得ないこともありますが、この処置が必要になることはまれです。

その他の種類の胃炎

胃切除後胃炎と萎縮性胃炎には根治的な治療法がありません。萎縮性胃炎に伴うビタミンB12の吸収低下によって貧血が生じている場合は、生涯を通じてビタミンB12を注射で補充する必要があります。

好酸球性胃炎により狭くなった胃の出口を広げるために、コルチコステロイドの投与や手術が必要になることがあります。

メネトリエ病は胃の部分切除または全切除術で治癒することがあります。有効な薬物療法はありません。

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