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胃炎

執筆者:

Nimish Vakil

, MD, University of Wisconsin School of Medicine and Public Health

最終査読/改訂年月 2018年 7月
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胃炎とは、胃の粘膜の炎症です。

  • 胃炎は、感染、重度の疾患によるストレス、損傷、ある種の薬、免疫系の病気など、様々な要因によって起こります。

  • 胃炎の症状が発生する場合、腹痛や腹部不快感、ときには吐き気や嘔吐などがみられます。

  • 診断は、多くの場合患者の症状に基づいて下されますが、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)で胃を調べなければならないこともあります(上部消化管内視鏡検査)。

  • 治療は胃酸を減らす薬により行います。

胃炎と消化性潰瘍に関する序も参照のこと。)

胃の粘膜には刺激に対する抵抗力があり、通常は非常に強い酸にも耐えられます。しかし、胃炎の場合、胃の粘膜は刺激を受けて炎症を起こします。

胃炎は重症度に基づいて以下の2つに分類されます。

  • びらん性

  • 非びらん性

びらん性胃炎は、非びらん性胃炎より重度です。この種の胃炎では、胃の粘膜の炎症と粘膜の減少(びらん)が起こります。胃の内面を胃酸から保護する粘液を酸性する細胞が消失しているか、損傷を受けています。びらん性胃炎は典型的には急激に発生します(急性びらん性胃炎と呼ばれる)が、ゆっくりと発生することもあります(慢性びらん性胃炎と呼ばれ、ほかの点は健康な人に通常みられます)。

非びらん性胃炎は胃の粘膜の変化を特徴とし、変化としては、胃の粘膜が消耗(萎縮[いしゅく])する状態から、胃の組織が他の種類の腸管組織に変化する状態(化生)まで幅があります。多くの場合、数種類の白血球が胃に集まって、様々な程度の炎症を引き起こします。これらの白血球は、胃全体に炎症を引き起こすことも、その一部のみに炎症を引き起こすこともあります。

原因

特定の種類の胃炎は、感染、重度の疾患が原因で生じるストレス、損傷、ある種の薬、免疫系の病気など、様々な要因によって起こります。

びらん性胃炎は、アルコール、重度の疾患が原因で生じるストレス、薬のような刺激物で特に アスピリンやその他の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、クローン病、細菌やウイルスによる感染、腐食性物質の摂取により発生します。人によっては、乳児用 アスピリンを毎日服用するだけでも胃の粘膜が傷つくことがあります。まれに、放射線、ウイルス感染(サイトメガロウイルスなど)、直接的損傷(経鼻胃管挿入によるものなど)がびらん性胃炎を引き起こすことがあります。

非びらん性胃炎は、ヘリコバクター・ピロリ感染により発生することがあります。

感染性胃炎のうち、ヘリコバクター・ピロリHelicobacter pylori(ピロリ菌)が原因ではないものはまれです。

ウイルス性胃炎や真菌性胃炎は、慢性疾患がある人や、エイズやがんがあったり免疫抑制薬を服用しているなどで免疫機能が弱くなっている人に起こることがあります。

急性ストレス性胃炎はびらん性胃炎の一種で、突然の病気や損傷によって起こります。損傷部位は胃に限りません。例えば、広範囲な皮膚の熱傷(やけど)、頭部損傷、大出血を伴う損傷がその典型的な原因です。なぜ重篤な病気が胃炎を引き起こすのかは正確には分かっていませんが、胃への血流の減少、胃酸量の増加、胃粘膜の保護力と修復力の低下に関連している可能性があります。

放射線性胃炎は、胸部左下や上腹部への放射線療法により胃の内面が刺激を受けると起こることがあります。

胃切除後胃炎は、胃の一部を切除する手術(胃部分切除術)を受けた人に起こります。通常、組織を縫合(ほうごう)した部分に炎症が起こります。胃切除後胃炎は、手術によって胃粘膜への血流が減少したり、胃粘膜が過剰な量の胆汁(肝臓で生成される緑黄色の消化液)にさらされることで起こると考えられています。

萎縮性胃炎では、胃の粘膜が非常に薄くなり(萎縮)、胃酸と酵素を産生する細胞が大量にまたはすべて失われます。この状態は、抗体が胃の粘膜を攻撃することで起こります(自己免疫萎縮性胃炎と呼ばれます)。萎縮性胃炎は、ピロリ菌 H. pyloriの慢性感染がある人の一部にも発生します。また胃の部分切除を受けた人にも起こる傾向があります。

好酸球性胃炎は、線虫の寄生に対するアレルギー反応によって起こることがありますが、通常は原因不明です。このタイプの胃炎では白血球の一種である好酸球が胃壁に蓄積します。

メネトリエ病は原因不明のまれな胃炎の一種で、胃壁に厚い大きなひだができ、液体で満たされた嚢胞(のうほう)が形成されます。免疫反応の異常が原因となっている可能性がありますが、ヘリコバクター・ピロリ菌感染とも関連があるといわれています。

症状

通常、胃炎では症状がみられません。症状が発生する場合は、原因によって症状が異なり、胃痛、不快感、吐き気、嘔吐などが起こり、これらの症状が単に消化不良とまとめて呼ばれることもあります。

びらん性胃炎、放射線性胃炎、メネトリエ病、リンパ球性胃炎では、吐き気や間欠的な嘔吐が起こります。

消化不良も生じることがあり、特にびらん性胃炎、放射線性胃炎、胃切除後胃炎、萎縮性胃炎ではこの症状がよくみられます。急性ストレス性胃炎によっても、ごく軽度の消化不良が生じます。

胃炎の合併症

胃炎の合併症には以下のものがあります。

  • 出血

  • 潰瘍(かいよう)

  • 胃の出口が狭くなる

急性ストレス性胃炎では病気や損傷が生じてから数日以内に出血が起こることがありますが、慢性びらん性胃炎や放射線性胃炎ではよりゆっくりと出血が起こる傾向があります。出血が軽度でゆっくりな場合は、症状がみられなかったり、黒い便(消化された血液が黒い色であるために生じる黒色便)に気が付くだけの場合があります。出血がより速いと、吐血したり、血便がみられたりすることがあります。出血が長引くと貧血の症状が現れることがあり、疲労、筋力低下、ふらつきなどが起こります。

胃炎が胃潰瘍(いかいよう)につながることがあり、その場合は症状が悪化する可能性があります。胃潰瘍が胃壁に穴をあけた場合は(穿孔[せんこう])、胃の内容物が腹腔に漏れることがあり、腹腔内面の炎症と通常は感染症(腹膜炎)を起こし、突然痛みが悪化します。

胃炎の合併症の中にはゆっくりと発生するものもあります。胃炎のために胃の出口が瘢痕(はんこん)化して狭くなることがあり、特に放射線性胃炎と好酸球性胃炎でよくみられ、重度の吐き気と頻繁な嘔吐を起こします。

メネトリエ病では、炎症を起こした胃粘膜からタンパク質が失われ、そのため体液貯留と組織のむくみ(浮腫)が生じることがあります。メネトリエ病患者の約10%が、数年後に胃がんを発症します。

胃切除後胃炎と萎縮性胃炎では内因子の産生が減少し、そのため疲労や筋力低下など貧血の症状が現れることがあります(内因子はタンパク質の一種で、ビタミンB12と結合して、ビタミンB12が吸収され赤血球産生に利用されるようにします)。

割合は少ないですが、萎縮性胃炎で化生が発生する人がいます。そのうちのさらに少数の患者で、化生が胃がんへと進行します。

診断

  • 上部消化管内視鏡検査

上腹部の不快感や痛み、吐き気がある場合に胃炎が疑われます。通常、検査は不要です。しかし、診断が確定しない場合や、治療しても症状が改善されない場合、医師は上部消化管内視鏡検査を行うことがあります。上部消化管内視鏡検査では、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を使用して胃や小腸の一部を調べます。必要であれば、胃の粘膜の生検(組織のサンプルを採取して顕微鏡で調べる)を行います。

治療

  • 胃酸分泌抑制薬と制酸薬

  • ときにピロリ菌(H. pylori)感染症を治療するための抗菌薬

  • 出血を止めるための治療

胃炎の原因が何であれ、胃酸を中和する薬か胃酸の分泌を抑制する薬を服用し、胃炎の症状の原因になっている薬の服用を中止することで症状を和らげることができます。

胃炎に対する薬

制酸薬は、すでに産生され胃の中に放出された胃酸を中和する薬で、軽い症状に対しては、しばしばこの制酸薬で十分です。ほとんどすべての制酸薬は医師の処方せんなしで購入でき、錠剤とシロップが利用できます。制酸薬には、水酸化アルミニウム(便秘を引き起こすことがある)、水酸化マグネシウム(下痢を引き起こすことがある)、炭酸カルシウムなどがあります。制酸薬は様々な薬の吸収を妨げる可能性があるため、他の薬を服用している人は、制酸薬を使用する前に薬剤師に相談する必要があります。

胃酸分泌抑制薬には、ヒスタミンH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬などがあります。ヒスタミンH2受容体拮抗薬は制酸薬より症状を軽くする効果が大きく、服用も簡単です。プロトンポンプ阻害薬は出血を伴う胃炎で最もよく処方されます。このような制酸薬は通常、8~12週間服用する必要があります。

胃を覆って治癒させるのに役立ち、刺激も防ぐ薬であるスクラルファートが処方されることもあります。

胃炎がピロリ菌感染によるものであれば、抗菌薬も処方されます。

びらん性胃炎

びらん性胃炎では、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの胃粘膜を刺激する薬を避ける必要があります。胃粘膜の保護に役立てるためにプロトンポンプ阻害薬やミソプロストールが処方されることもあります。

急性ストレス性胃炎

急性ストレス性胃炎は、ほとんどの場合、その原因になっている病気や損傷、出血が治ると完全に治ります。しかし集中治療室で治療を受けている患者では、2%が急性ストレス性胃炎から多量の出血を起こし、それによって死に至ることもあります。そのため大きな病気や損傷、重度の熱傷(やけど)の後には、医師は急性ストレス性胃炎の予防に努めます。手術後や、集中治療室の患者の大半には、急性ストレス性胃炎を予防するために、一般的に胃酸の分泌を抑制する薬が投与されます。そのような薬は潰瘍の治療にも用いられます。

急性ストレス性胃炎による重度の出血に対しては様々な治療法が用いられています。しかし、結果を改善する治療法はほとんどありません。内視鏡で観察しながら出血部を一時的に熱でふさぐ(焼灼[しょうしゃく])こともできますが、原因となっている基礎疾患が続くかぎりしばしば再出血を起こします。出血が止まらない場合は、救命処置として胃を全部切除せざるを得ないこともありますが、この処置が必要になることはまれです。

その他の種類の胃炎

胃切除後胃炎と萎縮性胃炎には根治的な治療法がありません。萎縮性胃炎に伴うビタミンB12の吸収低下によって貧血が生じている場合は、生涯を通じてビタミンB12を注射で補充する必要があります。

好酸球性胃炎により狭くなった胃の出口を広げるために、コルチコステロイドの投与や手術が必要になることがあります。

メネトリエ病は胃の部分切除または全切除術で治癒することがあります。有効な薬物療法はありません。

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