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食道がん

執筆者:

Elliot M. Livstone

, MD, Sarasota Memorial Hospital, Sarasota, FL

最終査読/改訂年月 2017年 9月
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食道がんで最も一般的な種類は扁平上皮がんと腺がんで、食道粘膜の細胞から発生します。扁平上皮がんは、上部食道でよくみられます。腺がんは下部食道でよくみられます。これらのがんは、食道が狭くなったり(狭窄[きょうさく])、食道内に腫瘤(しゅりゅう)ができる、異常な平坦領域(斑[はん])ができる、食道と肺につながる気道との間に異常な通路(瘻[ろう])ができるといった形で現れることがあります。あまり一般的でない種類の食道がんには、平滑筋肉腫(食道の平滑筋にできるがん)や転移性のがん(別の部位から食道に転移したがん)などあります。

米国では、毎年16,910人が食道がんになり、食道がんにより15,690人が死亡すると推定されています。扁平上皮がんと腺がんのどちらも女性より男性に多くみられます。扁平上皮がんは黒人に、腺がんは白人に多くみられます。米国では、1970年代から、特に白人の男性を中心に腺がんの発症頻度が急激に増加しています。

危険因子

あらゆる種類のタバコの使用と飲酒は食道がんの主要な危険因子であり、腺がんよりも扁平上皮がんの発症と密接に関係しています。ヒトパピローマウイルス感染症の病歴がある人、頭頸部がんの病歴がある人、または食道付近の別のがんを治療するために食道への放射線療法を受けたことがある人は、食道がんの発生リスクが高くなります。

アカラシア アカラシア アカラシアとは、食道のリズミカルな収縮(ぜん動)がみられないか弱くなり、下部食道括約筋が正常に弛緩(しかん)しなくなり、下部食道括約筋の静止圧が上昇する病気です。 この病気の原因は通常は不明ですが、ウイルスにさらされた後に発生することがあります。 アカラシアの主な症状は嚥下困難です。 診断は内圧検査と食道造影検査の結果に基づいて下されます。 治療の目標は症状の緩和であり、具体的には、下部食道括約筋をバルーンで拡張する、括約筋の筋線維を切... さらに読む 食道ウェブ 食道ウェブ 食道ウェブは、食道の上部に形成された薄い膜で、嚥下困難を引き起こすことがあります。 (食道閉塞の概要も参照のこと。) 食道は、のど(咽頭)から胃までをつなぐ中空の管です。 食道ウェブはまれにしか起こりませんが、重度の鉄欠乏性貧血を治療しなかった人で最も多く起こります。貧血に食道ウェブが合併する理由は不明です。上部食道にウェブがあると、通常は固形物が飲み込みにくくなります。 この問題に最適な診断法は通常、食道造影検査です。この検査では、バ... さらに読む 食道ウェブ (プラマー-ビンソン症候群)のような食道の病気がある人、またはアルカリ液などの腐食性物質を飲んだことがあり食道が狭くなっている人も、食道の扁平上皮がんの発生リスクが高くなります。ほとんどの腺がんは、バレット食道と呼ばれる前がん状態がある人に発生します。バレット食道は、胃酸の逆流(胃食道逆流症 胃食道逆流症(GERD) 胃食道逆流症では、胃酸や胆汁を含む胃の内容物が胃から食道に逆流し、食道の炎症と胸部の下部の痛みが生じます。 逆流は、正常な場合に胃の内容物が食道に逆流しないように防いでいる輪状の筋肉(下部食道括約筋)が正しく機能していないと起こります。 最も典型的な症状は胸やけ(胸骨の裏側の焼けつくような痛み)です。 診断は症状のほか、ときに食道pH検査の結果に基づいて下されます。 引き金になる物質(アルコールや脂肪分の多い食物など)を避け、胃酸を減ら... さらに読む 胃食道逆流症(GERD) )が繰り返すことで、食道が長期間にわたり刺激を受け続けることによって発生します。肥満の人は胃食道逆流症のリスクが高いため、腺がんのリスクが高くなります。

症状

早期の食道がんは見逃されることがあります。食道がんの最初の症状は通常、固形の食べものを飲み込みにくい 嚥下困難 飲み込みに障害が生じること(嚥下[えんげ]困難)があります。嚥下困難では、食べものや飲みものがのど(咽頭)から胃へと正常に移動しません。のどと胃をつなぐ管(食道)の途中で食べものや飲みものが動かなくなったように感じます。嚥下困難をのどのしこり(球感覚)と混同してはならず、球感覚ではのどにしこりがある感じがしますが、飲み込みに支障はありません。 嚥下困難によって、口腔分泌物や飲食物を肺に吸い込む誤嚥(ごえん)が生じる可能性があります。誤嚥... さらに読む ことで、これは大きくなっていくがんによって食道が狭くなると起こります。数週間後に軟らかい食べもの、その後に水分や唾液が飲み込みにくくなります。体重減少がよくみられ、よく食べている場合でも起こります。胸痛が生じることがあり、痛みが背中まで突き抜けるように感じられます。

がんが進行するにつれて、一般的に様々な神経や、その他の組織や臓器に浸潤していきます。声帯を調節している神経を腫瘍が圧迫することがあり、それにより声がれが起こることがあります。周囲の神経が圧迫されると、脊椎の痛み、横隔膜の麻痺、しゃっくりが起きることがあります。食道がんは通常は肺や肝臓に転移し、肺に転移すると息切れが生じることがあり、肝臓に転移すると発熱と腹部の腫れが生じることがあります。骨に転移すると痛みが起こることがあります。脳に転移すると頭痛、錯乱、けいれん発作が起きることがあります。腸に転移すると嘔吐、血便、鉄欠乏性貧血 鉄欠乏性貧血 鉄欠乏性貧血は、赤血球の産生に必要な鉄の貯蔵量の不足や欠乏によって起こります。 過剰な出血が最も一般的な原因です。 脱力感や息切れを覚えたり、顔が青白くなったりします。 血液検査で鉄分の量が測定できます。 鉄分の量を回復させるために、鉄剤が用いられます。 さらに読む が生じることがあります。腎臓に転移した場合は、症状が起こらないことがよくあります。

後期では、食道がんによって食道が完全に閉塞することがあります。飲み込むことがまったくできなくなるため、分泌物が口の中にたまり、非常に苦痛なことがあります。

診断

  • 内視鏡検査と生検

  • 食道造影

  • CT検査

  • 超音波検査

食道造影と呼ばれるX線検査(X線画像に写るバリウム溶液を飲んで行う検査)でも、閉塞が分かります。胸部と腹部のCT検査 CT検査とMRI検査 CT検査( CT(コンピュータ断層撮影)検査)とMRI検査( MRI(磁気共鳴画像)検査)は、腹部臓器の大きさや位置を調べるのに適しています。さらに、これらの検査では悪性腫瘍(がん)や良性腫瘍(がんではない腫瘍)もしばしば検出されます。血管の変化も検出できます。虫垂や憩室などの炎症も通常は明確に分かります。ときに、X線照射や手術のガイド役としてこれらの検査を用いることもあります。... さらに読む や、食道に挿入した内視鏡で行う超音波検査(超音波検査 超音波検査 超音波検査では、超音波を用いて内臓の画像を描き出します( 超音波検査)。超音波検査により、肝臓や膵臓(すいぞう)など多くの内臓の形や大きさが確認でき、嚢胞(のうほう)や腫瘍などの内臓の中の異常部位も発見できます。また、腹腔内の液体(腹水)も確認できます。腹壁にプローブを当てる超音波検査は、消化管の粘膜や壁を調べる方法としては不適切です。しかし、超音波内視鏡検査の場合は、内視鏡の先端にプローブがあるため、消化管壁や一部の腹部臓器がより明確... さらに読む 超音波検査 を参照)は、がんの広がりをさらに評価するために行われることがあります。

予後(経過の見通し)

食道がんは通常は転移するまで診断されないため、死亡率の高い病気です。5年以上生存できる人は5%未満です。多くの人が最初の症状に気づいてから1年以内に死亡します。例外として、腺がんがまだ非常に浅い状態(表在性)で診断された場合があります。このような浅い状態のがんは、高周波で焼いたり(ラジオ波焼灼術[しょうしゃくじゅつ])内視鏡で切除することによって、ときに治癒することがあります。

食道がんはほとんどのケースで死に至るため、医師の主な目標は症状(特に患者やその愛する人にとって非常に恐ろしいものとなる痛み 痛み 多くの致死的な疾患により、痛みや息切れ、胃腸の障害、失禁、皮膚の損傷、疲労といった共通の症状が起こります。抑うつや不安、錯乱、意識不明、身体障害が生じることもあります。通常、症状は予測して治療することができます。 死に直面すると、大半の人は痛みを恐れます。しかし、ほぼすべての人が心地良く過ごすことができ、多くの場合、意識もはっきりとしていて、現実世界との関わりを維持することができます。ただし、積極的な疼痛治療によって、鎮静や錯乱が避けら... さらに読む 嚥下困難 嚥下困難 多くの致死的な疾患により、痛みや息切れ、胃腸の障害、失禁、皮膚の損傷、疲労といった共通の症状が起こります。抑うつや不安、錯乱、意識不明、身体障害が生じることもあります。通常、症状は予測して治療することができます。 死に直面すると、大半の人は痛みを恐れます。しかし、ほぼすべての人が心地良く過ごすことができ、多くの場合、意識もはっきりとしていて、現実世界との関わりを維持することができます。ただし、積極的な疼痛治療によって、鎮静や錯乱が避けら... さらに読む )のコントロールです。

治療

  • 手術による摘出

  • 放射線療法と併用した化学療法

  • 症状の緩和

手術で腫瘍を摘出すると、症状が軽減する期間が最も長くなりますが、食道がんは通常は手術をする前にすでに転移しているため、治癒することはほとんどありません。化学療法を放射線療法( がんの併用療法 がんの併用療法 抗がん剤は、複数の薬を組み合わせて使用する場合に最も効果的です。併用療法の原理は、異なる仕組みで作用する薬を用いることで、治療抵抗性のがん細胞が発生する可能性を減らすというものです。異なる効果をもつ薬を併用する場合は、耐えがたい副作用を伴うことなくそれぞれの薬を最適な用量で使用できます。(がん治療の原則も参照のこと。) 一部のがんでは、がん手術、放射線療法、化学療法または他の抗がん剤を組み合わせるのが最善の方法です。手術と放射線療法では... さらに読む )と併用すると、症状が緩和し数カ月ほど延命できる可能性があります。ときに手術の前に放射線療法と化学療法の併用療法を行うことがあり、それにより生存率が上がる可能性があります。

その他の処置は症状の緩和を目的としたもので、特に嚥下困難に重点が置かれます。そのような処置には、食道の狭くなった部分を拡げてからステント(柔軟性のある網目状の金属でできた筒)を挿入することで食道が開いた状態を保ったり、レーザーでがんを焼灼して開き方を大きくしたり、放射線療法を用いて食道を閉塞しているがん組織を破壊したりする方法があります。

症状を緩和する別の方法として光線力学療法があり、光線力学療法では光に反応する造影剤が治療開始の48時間前に静脈内投与されます。造影剤はがんの周囲にある正常な食道組織の細胞よりもがん細胞にはるかに多く取り込まれます。内視鏡から食道にレーザー光を照射して造影剤が活性化されると、造影剤ががん細胞を破壊し、それにより食道が開きます。健康状態が悪いために手術に耐えられない人では、放射線療法や化学療法よりも光線力学療法の方が閉塞を起こしている病変を速やかに破壊することができます。

どの治療法も、十分な栄養補給を行うことで、より実行しやすく耐えやすくなります。飲み込むことができる場合は、濃縮した液体の栄養補助食品を摂取します。飲み込めない場合は、腹壁から胃にチューブを入れて留置し(胃瘻チューブ 胃や腸への栄養チューブの直接挿入 経管栄養は、消化管は正常に機能しているものの、十分に栄養所要量を満たすほど食べられない人に、栄養を与えるために用いられることがあります。例としては、以下の状態の人が挙げられます。 長期間にわたる食欲不振 重度のタンパク-エネルギー低栄養(重度のタンパク質とカロリーの欠乏症) 昏睡または覚醒レベルの大幅な低下 肝不全 さらに読む 胃や腸への栄養チューブの直接挿入 )、栄養をとる必要が生じることがあります。

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