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ガス

執筆者:

Norton J. Greenberger

, MD, Brigham and Women's Hospital

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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正常な状態でもガスは消化器系内に存在し、これらは口から排出されたり(げっぷ)、肛門から排出されたり(放屁)します。

ガスが関連する症状には主に以下の3つがあります。

  • 過度のげっぷ(おくび)

  • 腹部膨満(膨隆)

  • 過度の放屁(口語では「おなら」)

げっぷは食事直後やストレスのあるときによく起こります。げっぷをする直前に胸や胃に圧迫感を感じて、ガスが出た後でこれらが和らぐ人もいます。

鼓腸の症状を訴える人は、正常な放屁の回数を誤解していることがよくあります。放屁の量と回数には大きな個人差があります。典型的には、放屁の回数は1日に約13~21回で、量は0.5~1.5リットルですが、これより多い場合も少ない場合もあります。このようなガスは臭いがあることもないこともあります。

放屁したガスは可燃性(含まれる水素やメタンガスによる)ですが、通常問題となることはありません。例えば、火の近くで作業していても危険ではありません。しかし、腸の手術や大腸内視鏡検査で手技前に腸内が完全に空になっていない状態で電気メスを用いた場合にガス爆発があったというまれな報告があります。

過去には、生後2~4カ月の乳児にみられる仙痛 仙痛 仙痛とは、ほかの点では健康な乳児に明らかな理由(空腹、病気やけがなど)がなく起こる、度を超えた激しい啼泣とむずかりの固有のパターンのことです。仙痛は典型的に生後1カ月以内に始まり、生後6週時に最もひどくなります。たいていの場合は比較的突然に、生後3~4カ月までにみられなくなります。... さらに読む が過剰な腹部のガスによるものとされていました。今日では、このような乳児の腹部を検査しても過剰なガスは認められないことから、仙痛はガスと関係ないとほとんどの医師が考えています。仙痛の実際の原因は依然不明です。

原因

ガスの原因は、ガスに関連する症状に応じて異なります。

げっぷ

げっぷは以下によって生じます。

  • 空気嚥下(えんげ)

  • 炭酸飲料から生じたガス

正常な状態でも、食べたり飲んだりするときに少量の空気を飲み込みます。しかし、食事中や喫煙中や、ときに不安を感じたり神経質になったりしているときに、無意識のうちに大量の空気を繰り返し飲み込んでしまう場合(空気嚥下症)があります。胃食道逆流症、義歯の不適合、特定の薬、ガムの咀嚼(そしゃく)、原因を問わない吐き気により生じることのある、過剰な唾液分泌がある場合も、空気嚥下が増えます。

飲み込んだ空気の大部分は後でげっぷとして排出され、ごく少量の空気が胃からその先の消化器系に入ります。腸内に入った少量の空気は大半が血液中に吸収され、ごく少量の空気が放屁として排出されます。

放屁

放屁は、正常な状態で大腸内に存在する細菌により産生される、水素、メタン、二酸化炭素のガスによって起こります。そのような細菌は常に多少のガスを産生しますが、以下の場合は過剰なガスが発生することがあります。

  • 特定の食べものを摂取したとき

  • 消化管が食べものを適切に吸収できないとき(吸収不良症候群)

ガスの発生を増やす食べものには、消化しにくい炭水化物を含むもの(例えば、煮豆やキャベツなどの食物繊維)、特定の糖(フルクトースなど)または糖アルコール(ソルビトールなど)、脂肪などがあります。野菜や果物を大量に食べると、ほぼ誰でもある程度の鼓腸が起こります。

吸収不良症候群 吸収不良の概要 吸収不良症候群とは、食べたものに含まれる栄養素が様々な理由により小腸で適切に吸収されない状態のことをいいます。 ある種の病気、感染症、手術でも吸収不良が起こることがあります。 吸収不良によって、下痢、体重減少、極度の悪臭がする大量の便がみられます。 診断は、典型的な症状と、便検査の結果、ときに小腸粘膜の生検結果に基づいて下されます。... さらに読む によってガスの産生が増加する可能性があります。ラクターゼ欠乏症などの炭水化物欠乏症(特定の糖を分解する酵素が欠乏している状態)がある場合は、その糖を含む食べものを摂取したときに大量のガスが発生する傾向があります。その他の吸収不良症候群(熱帯性スプルー 熱帯性スプルー 熱帯性スプルーは原因不明のまれな病気で、熱帯や亜熱帯地方に住む人にみられ、小腸の粘膜に異常が起こり、様々な栄養素の吸収不良と欠乏に至ります。 原因は不明ですが、感染が疑われています。 熱帯スプルーの典型的な症状としては、貧血、色の薄い便、慢性の下痢、体重減少などがあります。 診断は、この疾患が起こりやすい地域の住民やその地域に最近旅行した人にみられる症状に基づいて下されます。... さらに読む セリアック病 セリアック病 セリアック病は、小麦や大麦、ライ麦に含まれるタンパク質のグルテンに対する遺伝性の不耐症であり、小腸の粘膜に特徴的な変化を起こし、吸収不良が生じます。 タンパク質のグルテンの摂取後に、腸の粘膜に炎症が生じます。 症状としては、成人では下痢、低栄養、体重減少などがあります。 小児でみられる症状としては、腹部膨満、非常に強い悪臭がする大量の便、成長不良などがあります。 診断は、典型的な症状と小腸の粘膜から採取した組織サンプルの検査結果に基づい... さらに読む セリアック病 、膵機能不全など)の場合も、大量のガスが生じることがあります。

しかし、消化管に常在している細菌が単に多いか異なっている場合や消化管の筋肉の運動障害である場合もあります。そのような個人差が放屁の差の原因になっていることがあります。医師による評価を受ける前に放屁の回数を日記に記録しておくこともできます。

腹部膨満

腹部膨満または腹部の腫れ(膨隆)の感覚は、胃が空になりにくい病気(胃不全麻痺)や過敏性腸症候群 過敏性腸症候群(IBS) 過敏性腸症候群(IBS)は消化管の病気で、腹痛と便秘または下痢を繰り返し引き起こします。 症状は様々ですが、下腹部痛、腹部膨満、ガス、便秘、下痢がよくみられます。 様々な物質や感情的要素が引き金となって過敏性腸症候群の症状が起こります。 通常は症状に基づいて診断が下されますが、他の病気ではないことを確認する検査が行われます。... さらに読む などの消化器疾患、または卵巣がん 卵巣がん 卵巣がんでは、病巣が大きくなるか、範囲が広がるまで、症状がみられないことがあります。 卵巣がんの疑いがある場合は、血液検査、超音波検査、MRI検査、CT検査などを行います。 通常は、左右の卵巣および卵管と子宮を切除します。 多くの場合、手術後に化学療法が必要になります。 (女性生殖器のがんの概要を参照のこと。) さらに読む 結腸がん 大腸がん 大腸がんのリスクは、家族歴や食事に関する一部の要因(低繊維、高脂肪)によって高まります。 典型的な症状としては、排便時の出血、疲労、筋力低下などがあります。 50歳以上の人ではスクリーニング検査が重要です。 診断を下すために大腸内視鏡検査がよく行われます。 早期に発見された場合に最も高い治癒の可能性があります。 さらに読む 大腸がん などの他の身体の病気の患者にみられることがあります。抗コリン作用のある多くの薬は、胃が空になるのを遅らせ、腹部膨満を引き起こすことがあります。ときには、腹部と無関係な病気によって腹部膨満感が生じることがあります。例えば、心臓発作の唯一の症状が腹部膨満感やげっぷの強い切迫感という場合があります。しかし、多くの場合、腹部膨満感があっても、身体の病気はありません。

腹部膨満感に腸内ガスがどのように関わっているかは不明です。炭酸飲料を飲んだ人や空気を過剰に飲み込んだ人を除くと、ほとんどの場合腹部膨満感があっても消化器系に過剰なガスは存在しません。しかし、過敏性腸症候群の患者など、一部の人は正常な量のガスに対して特に感受性が高いことが研究で示されています。同様に、摂食障害(神経性やせ症や過食症)の患者は誤解していることが多く、腹部膨満などの症状に対して特にストレスを感じます。そのため、ガス関連症状がある場合の基本的な異常は、腸が極度に敏感なこと(腸の過敏性)であると考えられます。運動障害も症状の一因である可能性があります。

評価

ほとんどのガス関連症状は、直ちに医師の評価を受ける必要はありません。以下では、医師の診察を受ける必要があるか、また受けた場合に何が行われるかについて説明しています。

警戒すべき徴候

ガスがみられる場合は、特定の症状や特徴に注意が必要です。具体的には以下のものがあります。

  • 体重減少(意図しないもの)

  • 血便

  • 胸痛

受診のタイミング

胸部に膨満感がある場合(特に膨満感に伴って胸痛がある場合)、心疾患の徴候である可能性があるため、速やかに医師の診察を受ける必要があります。ガス関連症状があり、他の警戒すべき徴候、腹部の不快感、または下痢がある場合は、約1週間以内に医師の診察を受ける必要があります。これらの症状と徴候がみられなければ、頃合いを見て医師の診察を受ける必要はありますが、緊急ではありません。

医師が行うこと

過度のげっぷがみられる場合、病歴聴取では空気嚥下の原因(特に食事の原因)の発見に重点が置かれます。過剰な放屁がみられる場合、医師は食事の原因を探し、吸収不良の症状(下痢や脂肪性の悪臭を放つ便など)がないかも調べます。

ガス関連症状がある場合、医師は症状と食事(食事の時間、食べものの種類と量)および排便との関係を知る必要があります。医師は、排便回数や便の色と硬さの変化について尋ねます。また、体重が減少したかどうかについても知る必要があります。

腹部膨満または放屁がみられる場合、身体診察では、基礎にある身体の病気(卵巣がんなど)の徴候を発見することに重点が置かれます。医師は、腹部と直腸の診察、および(女性患者の場合)内診を行います。

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検査

ガス関連症状があっても、医師が検査を行うことは通常ありませんが、特定の病気が疑われる症状が他にある場合は別です( ガスが関係する症状の主な原因と特徴 ガスが関係する症状の主な原因と特徴 正常な状態でもガスは消化器系内に存在し、これらは口から排出されたり(げっぷ)、肛門から排出されたり(放屁)します。 ガスが関連する症状には主に以下の3つがあります。 過度のげっぷ(おくび) 腹部膨満(膨隆) 過度の放屁(口語では「おなら」) さらに読む )。例えば、下痢もみられる場合は、吸収不良症候群 吸収不良の概要 吸収不良症候群とは、食べたものに含まれる栄養素が様々な理由により小腸で適切に吸収されない状態のことをいいます。 ある種の病気、感染症、手術でも吸収不良が起こることがあります。 吸収不良によって、下痢、体重減少、極度の悪臭がする大量の便がみられます。 診断は、典型的な症状と、便検査の結果、ときに小腸粘膜の生検結果に基づいて下されます。... さらに読む がないか確認する検査が必要になることがあります。持続的な腹部膨満や腹部膨隆が発生した中年または高齢者(特に過去に消化器系の症状がない場合)は例外です。このような場合、医師は卵巣や結腸のがんがないか確認する検査を行うことがあります。

治療

慢性の腹部膨満または放屁がみられる人に対して医師は、その異常が他の病気に起因したものではないこと、これらのガス関連症状が健康を害するものではないことを伝えて安心させます。

腹部膨満とげっぷは、通常は無意識の空気嚥下または正常なガスの量に対する感受性が高いことが原因であるため、軽減させることが困難です。主な問題がげっぷであれば、飲み込まれる空気の量を減らすことが役に立ちますが、通常は空気を飲み込んでいることに気がつかないため困難です。ガムを噛まないようにし、リラックスした雰囲気でゆっくり食事をすることも役立つことがあります。一部の人では炭酸飲料を避けることが助けになります。医師はさらに、横隔膜による口呼吸を練習することによって空気嚥下を最小限に抑えるとともに、関連する上部消化管の病気(消化性潰瘍 消化性潰瘍 消化性潰瘍(かいよう)とは、胃や十二指腸の内面が胃酸や消化液で侵食されて、円形やだ円形の傷ができた状態をいいます。 消化性潰瘍は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染や、胃や十二指腸の粘膜を衰弱させる薬によって生じることがあります。 潰瘍による不快感が生じたり消えたりしますが、この不快感は食べることで胃酸が分泌されるために食後に起こる傾向があります。... さらに読む 消化性潰瘍 など)があれば完全に治療するよう試みることも勧めることがあります。

放屁が過度に出る人は、その原因となる可能性が高い食べものを避ける必要があります。一般的には、一度に1つの食べものまたは1グループの食べものを除去するようにします。そのため、消化しにくい炭水化物を含む食べもの(豆類やキャベツなど)を除外することから始めて、ミルクと乳製品、新鮮な果物、ある種の野菜とその他の食品の順番で除外していきます。大腸通過を促進することを目的に、食物繊維(ふすま、オオバコ種子など)を食事に加えることができます。ただし、食物繊維の追加により症状が悪化することがあります。

薬物療法

薬ではあまり症状緩和は得られません。医師によっては、抗コリン薬(ベタネコールなど)とシメチコン(simethicone)(一部の制酸薬に含まれ、また単体でも利用可能)を試みることがあります。しかし、それらが有益であることを示す科学的根拠はほとんどありません。

放屁とその不快な匂いを減らすには、活性炭錠剤がときに役立つ場合があります。しかし、炭により口や衣服が汚れます。そのため炭入り下着が利用できます。プロバイオティクス(VSL#3など)は、善玉菌の増殖を促す体内に天然に存在する細菌で、正常な腸内細菌の増殖を促すことによって腹部膨満と鼓腸を軽減できることがあります。

要点

  • 主に他の症状により特定の病気が疑われる場合に検査が行われます。

  • 医師は、高齢者で持続性の腹部膨満症状が新たに生じていないか確認する必要があります。

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