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憩室炎

執筆者:

Joel A. Baum

, MD, Icahn School of Medicine at Mount Sinai;


Rafael Antonio Ching Companioni

, MD, Icahn School of Medicine, Elmhurst Hospital Center

最終査読/改訂年月 2017年 10月
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憩室の病気の定義も参照のこと。)

憩室炎(けいしつえん)は、1つ以上の風船状の袋(憩室)に炎症や感染症が起きた状態です。

  • 通常、憩室炎は大腸(結腸)に起こります。

  • 左下腹部の痛み、圧痛、発熱が、典型的な症状です。

  • 診断は、CT検査の結果に基づいて下され、憩室炎が治まった後に、大腸内視鏡検査を行います。

  • 憩室炎の症状が軽度の場合は、安静、流動食と、ときに抗菌薬の服用により治療しますが、重度の場合は入院して、抗菌薬を静脈内投与し、ときには手術を行うこともあります。

結腸の憩室は、大腸壁の中間にあって厚みのある筋層が弱くなった箇所に起こります。腸壁の内側の薄い層がその弱くなった部分から突き出て、小さな袋を形成します。

憩室症の人で、憩室に小さな穴(ときに微細な穴)ができると、腸からの細菌が放出されて、憩室炎が発生します。穴ができなくても憩室には炎症が起こりえると考えている医師もいます。憩室炎は、大腸の最後の部分で直腸のすぐ上のS状結腸に最も多く起こります。

憩室炎は40歳以上の人で多くなります。憩室炎は、どの年代でも重症化する可能性がありますが、高齢者で最も重症化し、特にコルチコステロイドなどの免疫系を抑制する薬を服用している場合には、感染のリスク(結腸の感染を含む)も上昇するため、非常に重篤な状態に陥ります。50歳未満で憩室炎のために手術を受けなければならない人の男女比は、3:1で男性が多くなります。70歳以上で憩室炎のために手術を受けなければならない人の男女比は、3:1で女性が多くなります。

症状

憩室炎の症状としては一般的に、痛みや圧痛(通常は左下腹部)、発熱、ときに吐き気や嘔吐がみられます。憩室炎では通常、消化管出血は起こりません。

憩室炎の合併症

憩室炎の合併症には以下のものがあります。

  • 膿瘍

  • 腹膜炎

(ろう)とは、ある臓器と別の臓器や皮膚との間に異常な連絡路が生じた状態をいいます。憩室炎による腸の炎症により、大腸と他の臓器との間に、瘻が形成されることがあります。瘻は通常、大腸の憩室が膀胱などの他の臓器に接触した場合に形成されます。大腸に含まれる細菌によって炎症が起き、隣接する組織にゆっくりと穴があいて、その部分が瘻になります。ほとんどの瘻は、S状結腸と膀胱との間に形成されます。瘻は女性より男性で多くみられますが、女性でも、子宮摘出術を受けた場合は大腸と膀胱が子宮によって隔てられなくなるため、瘻が形成されるリスクが高まります。瘻が大腸と膀胱との間に形成されると、常在菌を含む腸の内容物が膀胱に入り、尿路感染症を引き起こします。頻度は低いですが、瘻は大腸と小腸、子宮、腟、腹壁との間に、さらには太ももとの間にも形成されることがあります。

憩室炎の合併症

憩室が破れると、細菌や血液を含む腸の内容物が腹腔にこぼれ、感染症を起こします。大腸とその臓器の間に異常な連絡路(瘻)が形成されることがあり、これは通常は他の臓器に接触した憩室が破れたときに起こります。

憩室炎の合併症

膿瘍とは、膿がたまった状態を指します。炎症が起こった憩室の周囲に腹腔内膿瘍が生じることがあり、悪化する痛みと発熱を引き起こします。

腹膜炎は腹腔内の感染であり、憩室の壁が破裂すると発生することがあります。

憩室炎で起こりうるその他の合併症として、付近の臓器(子宮、膀胱、消化管の他の部分など)の炎症があります。憩室炎が再発を繰り返すと、瘢痕化(はんこんか)と筋肉の肥厚が生じて大腸の内径が狭くなり、硬い便が通過できなくなるため、腸閉塞を起こすことがあります。

診断

  • 腹部および骨盤のCT検査

  • 炎症が治まった後に大腸内視鏡検査

憩室症があるとすでに分かっているケースでは、ほぼ症状のみに基づいて憩室炎が診断されることがあります。しかし、大腸や腹腔および骨盤内の他の臓器の異常で、憩室炎と似た症状を引き起こすものが多数あり、例えば虫垂炎結腸がん卵巣がん膿瘍、子宮壁の良性腫瘍(子宮筋腫)などが含まれます。

病態が虫垂炎や他の疾患ではなく、憩室炎であると判断するために、腹部および骨盤部のCT検査が役立つことがあります。妊婦や若年者に対する代替の検査として、MRI検査があります。

炎症が治まるか感染症の治療が済むと、大腸内視鏡検査(観察用の柔軟な管状の機器を用いた大腸の検査)が行われます。この検査は大腸がんではないことを確認するために行われます。大腸内視鏡検査は、炎症を起こしている腸管を傷つけたり破ったりことがあるため、通常は治療後6~8週間経過してから行う必要があります。診断を確定するために、まれに試験開腹が必要です。

治療

  • 軽度の憩室炎に対しては、流動食および安静

  • 重度の憩室炎に対しては、絶食および抗菌薬の投与

  • ときに手術

軽度の憩室炎は、安静にして流動食をとり、ときに抗菌薬を服用することにより自宅で治療できます。通常は憩室炎の症状が速やかに軽減します。憩室炎に対し抗菌薬が必要ないこともあります。数日後に高繊維食が開始できます。1~3カ月後に、結腸の評価のために大腸内視鏡検査を受けます。

重度の憩室炎では、異なる治療が必要です。憩室炎の症状が重度の場合(例えば、腹痛がみられる、38.3℃を超える発熱がある、経口抗菌薬の効果がみられない、その他の重篤な感染症や合併症の証拠がみられる場合など)は入院します。病院では、輸液と抗菌薬が静脈内投与されます。また、床上安静の状態を続けて、症状が治まるまでは絶食します。

なかには、憩室炎の治療として抗菌薬と安静だけで十分な場合もあります。

膿瘍の排膿

大きい膿瘍は、CT検査の画像でガイドしながら針を皮膚に刺して排膿します。排膿が役に立てば、症状が回復して柔らかい食事が再開できるまで入院します。排膿しても効果がみられない場合は、手術が必要です。

憩室炎に対する手術

腸管が破裂しているか、腹膜炎が生じている場合には、緊急手術が必要です。また、憩室炎の症状が重く、手術以外の治療(例えば抗菌薬)で48時間以内に症状が軽快しない場合などでも手術が必要になります。痛み、圧痛、発熱が悪化している場合も手術が必要です。

手術では、腸の病変部を切除します。穿孔(せんこう)、膿瘍、重度の腸の炎症がない健康な状態の人であれば、その切断部をすぐにつなぎ合わせます。それ以外の人では、一時的人工肛門造設術が必要です。人工肛門造設術では、大腸と腹部の皮膚表面の間に開口部がつくられます。約10~12週間(ときにはこれより長期間)経過し、炎症が消失して患者の状態が改善した後に、腸の切断部をつなぎ合わせる再手術をして、人工肛門を閉鎖します。

人工肛門造設術について理解する

人工肛門造設術では、大腸(結腸)を切除します。結腸とつながっている部分の断端を皮膚に形成した開口部から皮膚の表面へ移動させます。その部分を皮膚に縫合します。便はこの開口部を通って使い捨てのバッグの中に入ります。

人工肛門造設術について理解する

瘻の治療では、瘻がある大腸の部分を切除し、大腸の切断部をつなぎ合わせ、膀胱や小腸など他の影響を受けた部分を修復します。

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憩室炎:待機手術を選択する理由の例

状態

理由

憩室炎の軽度の発作が3回以上(50歳未満では1回)発生

重篤な合併症が生じるリスクが高い

瘢痕形成によるS状結腸(大腸の下部)の狭小化

重篤な合併症が生じるリスクが高い

圧痛のある持続性の腹部腫瘤

がんの可能性がある

内視鏡検査やX線検査でS状結腸の疑わしい変化が示された

がんの可能性がある

排尿時の痛み(排尿困難)または尿中に空気(気尿症)がある

大腸と膀胱の間で瘻の形成が差し迫っていることを示す前兆である可能性がある

コルチコステロイドを服用している場合に生じた突然の腹痛

大腸が腹腔に向けて破裂している可能性がある

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