体の状態や病気の中には、腸の内容物が腸内を進む動きを遅らせたり、止めたりするものがあります。
腹部不快感、下痢、腹部膨満、過度の放屁(ほうひ)がみられます。
診断は症状、とりわけ特定の手術を受けた人や特定の病気がある人に現れた症状に加え、呼気試験や腸液の培養検査の結果に基づいて下されます。
過剰な細菌は抗菌薬で減らすことができます。
腸内細菌異常増殖症候群の原因
小腸内の細菌を適切なバランスに保つためには、小腸の内容物が正常に着実に動く(ぜん動)ことが重要です。腸の内容物の動きが遅くなったり、1カ所にたまる状態が生じると、細菌が過剰に増殖します。このような状態になる例として、胃や腸、またはその両方に対する特定の手術などがあります。 糖尿病 糖尿病 糖尿病は、体がインスリンを十分に生産しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 糖尿病は神経の損傷をもたらし、触覚の問題を引き起こします。... さらに読む 、 全身性硬化症 全身性強皮症 全身性強皮症は、皮膚、関節、内臓の変性変化と瘢痕化、および血管の異常を特徴とする、まれな慢性 自己免疫性結合組織疾患です。 全身性強皮症の原因は不明です。 指が腫れる、間欠的に指が冷たくなり青く変色する、関節が永続的に(通常は曲がった状態で)固まる(拘縮)などの症状のほか、消化器系、肺、心臓、腎臓の損傷が発生することがあります。 多くの場合、患者の血液中には自己免疫疾患に特徴的な抗体が認められます。... さらに読む 、 アミロイドーシス アミロイドーシス アミロイドーシスは、異常に折りたたまれたタンパク質がアミロイド線維を形成し、様々な組織や器官に蓄積して臓器が正常に機能しなくなり、臓器不全や死に至ることもあるまれな病気です。 アミロイドーシスの症状と重症度は、どの重要臓器が影響を受けるかによって異なります。 組織サンプル(生検サンプル)を採取し、顕微鏡で検査することにより、診断を確定しま... さらに読む などの病気でも、ぜん動が緩慢になり、細菌の過剰増殖を引き起こすことがあります。
増えすぎた細菌が炭水化物やビタミンB12などの栄養素を消費するため、摂取カロリーの減少や ビタミンB12欠乏症 ビタミンB12欠乏症 ビタミンB12欠乏症は、サプリメントを摂取しない完全な菜食主義者に発生したり、吸収障害の結果として発生することがあります。 貧血が起こり、蒼白、筋力低下、疲労が生じ、重度の場合には息切れやめまいも起こります。 重度のビタミンB12欠乏症によって神経の損傷が起きることがあり、手足のピリピリ感や感覚消失、筋力低下、反射消失、歩行困難、錯乱、認知症が起こります。 ビタミンB12欠乏症の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む が生じます。また細菌は、消化を助けるために肝臓が分泌する胆汁酸塩も分解します(胆嚢と胆管 胆嚢と胆管 胆嚢(たんのう)は、洋ナシのような形をした、筋肉でできた小さな袋状の臓器で、胆汁を蓄える機能があり、胆道と呼ばれる管で肝臓とつながっています。( 肝臓と胆嚢の概要も参照のこと。) 胆汁(たんじゅう)は、緑がかった黄色の粘り気のある液体です。胆汁には、胆汁酸塩、電解質(ナトリウムや重炭酸塩など可溶性の荷電粒子)、胆汁色素、コレステロール、その他の脂肪(脂質)が含まれています。胆汁には主に2つの働きがあります。... さらに読む を参照)。胆汁酸塩が失われると、脂肪が吸収しにくくなり、下痢や栄養不良が生じます。
腸内細菌異常増殖症候群の症状
小腸内細菌異常増殖症で最もよくみられる症状は腹部膨満です。その他の症状は腹部不快感、 下痢 成人の下痢 下痢は、便の量や水分、排便回数が増加することです。( 小児の下痢も参照のこと。) 排便回数が多いだけでは、下痢を決定づける特徴とはいえません。正常な状態で1日に3~5回排便する人もいます。野菜に含まれる食物繊維をたくさん食べる人は、1日に約500グラム以上の便を排泄することがありますが、この場合の便はよく固まっていて、水様便ではありません。下痢になると腸内ガス、差し込むような腹痛、便意の切迫を伴うことが多く、下痢が感染性微生物や有害物質... さらに読む 、過度の放屁、体重減少や、栄養欠乏症の症状です。重度の下痢や脂肪便(明るい色で、柔らかく、量の多い、脂ぎった便で、異常な悪臭を放つ)がみられる人もいます。
腸内細菌異常増殖症候群の診断
医師による症状の評価
呼気試験
腸液の培養検査
画像検査
小腸内細菌異常増殖症の診断は、典型的な症状、とりわけ特定の手術を受けた人や特定の病気がある人に現れた典型的な症状に基づいて下されます。
医師は 内視鏡検査 内視鏡検査 内視鏡検査とは、柔軟な管状の機器(内視鏡)を用いて体内の構造物を観察する検査です。チューブを介して器具を通すことができるため、内視鏡は多くの病気の治療にも使うことができます。 口から挿入する内視鏡検査では、食道(食道鏡検査)、胃(胃鏡検査)、小腸の一部(上部消化管内視鏡検査)が観察できます。 肛門から挿入する内視鏡検査では、直腸(肛門鏡検査)、大腸下部と直腸と肛門(S状結腸内視鏡検査)、大腸全体と直腸と肛門(大腸内視鏡検査)が観察できま... さらに読む (柔軟性のある管状の機器を小腸まで挿入する検査)の際に体液のサンプルを採取することがあります。この体液を培養して、存在する細菌の種類と量を調べます。
あるいは、呼気試験を行うこともあります。腸内細菌が特定の糖を分解すると、水素が生じます。そこで医師は呼気試験を行い、患者が呼吸を通じて吐き出す水素の量を調べます。患者は特定の糖(ブドウ糖またはラクツロース)を水に混ぜた液体を飲んだ後、4時間にわたり1時間毎に採取バッグに息を吐き出します。その後、バッグ内の空気を分析します。いずれかの液体を摂取した後に吐いた息に含まれる水素の量が著しく増加した場合、その人は小腸内細菌異常増殖症です。
ときには腸内細菌が異常増殖しやすくなる内部構造の異常がみられることがあります。このような異常を検出するために、X線写真に写る液体を飲んだ後に胃や小腸のX線検査(上部消化管造影検査と呼ばれます)が行われます。
腸内細菌異常増殖症候群の治療
抗菌薬
食習慣の変更
大半の人では、抗菌薬を10~14日内服すると改善します。
炭水化物により腸内細菌の異常増殖が速くなるため、脂肪が豊富で、炭水化物と食物繊維をあまり含まない食事に変更する必要があります。栄養素の欠乏がある場合はそれを治すサプリメントが処方されます。