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遺伝子と染色体

執筆者:

David N. Finegold

, MD, University of Pittsburgh

最終査読/改訂年月 2017年 8月
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遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパクの設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。

  • 遺伝子は染色体内にあり、染色体は主に細胞の核にあります。

  • 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。

  • 人間のすべての細胞には23対(計46本)の染色体が入っています。

  • 遺伝子により決定される特徴のことを形質といい、多くの場合、複数の遺伝子によって決定されます。

  • 形質には、遺伝して受け継がれた異常遺伝子や、新たな変異により生じた異常遺伝子に由来するものがあります。

タンパク質はおそらく体内で最も重要な物質です。タンパク質は、筋肉や結合組織、皮膚などの構造を構成するだけでなく、酵素を作るためにも必要です。酵素は複雑なタンパク質で、体内のほぼすべての化学的な過程や反応を調節して実行します。体は数千もの様々な酵素を産生します。その結果、体が合成するタンパク質の種類と量によって体全体の構造や機能が決定されます。タンパク質の合成は、染色体上にある遺伝子によって制御されます。

遺伝子型(あるいはゲノム)とは、個々人で異なる遺伝子の組合せないし遺伝子構成のことをいいます。つまり、遺伝子型とは、各人の体がどのようにタンパク質を合成するか、その結果、体がどのように組み立てられ、どう機能するのかという本来のつくりを示した1組の完全な設計図です。

表現型とは、各人の体の実際の構造と機能のことです。遺伝子型にある設計図のすべてが実行に移される(発現する)とは限らないため、表現型は遺伝子型とは若干異なるのが一般的です。遺伝子が発現するかどうかや、どのように発現するかは、遺伝子型だけで決まるのではなく、環境(病気や食事を含む)などの様々な因子に左右され、まだ解明されていない因子もあります。

核型とは、人の細胞に含まれる染色体一式のことです。

遺伝子

ヒトの遺伝子の数は20,000~23,000個といわれています。

DNA

遺伝子はデオキシリボ核酸(DNA)で構成されます。DNAにはタンパク質の合成に使用されるコード(設計図)が含まれます。遺伝子の大きさは、コードするタンパク質の大きさにより様々です。DNA分子はらせん階段のような長い二重らせん構造になっており、その階段は数百万段あります。階段のステップにあたる部分は、4種類のヌクレオチドの塩基部分が対になって形成されています。各ステップは、アデニン(A)とチミン(T)という2つの塩基、またはグアニン(G)とシトシン(C)という2つの塩基が対を成しています。

DNAの構造

DNA(デオキシリボ核酸)は細胞の遺伝物質で、細胞核内の染色体とミトコンドリアにあります。

特定の細胞(例えば、精子や卵子、赤血球)を除き、細胞核には23対の染色体が格納されています。1本の染色体には多くの遺伝子が含まれています。遺伝子とは、DNAのうち、タンパク質をつくるためのコードが含まれている部分のことです。

DNA分子は長いコイル状の二重らせんで、らせん階段に似ています。DNAには、糖(デオキシリボース)とリン酸からできた2本の鎖(ストランド)があり、4種類の塩基が対になって、階段のステップのように鎖の間をつないでいます。ステップは、アデニンとチミンの対と、グアニンとシトシンの対で形成されます。各塩基対は水素結合で結合しています。遺伝子は塩基の配列で構成されます。3つの塩基配列を1組として1つのアミノ酸(アミノ酸はタンパク質の構成成分)をコードする部分と、その他の情報を含む部分があります。

DNAの構造

タンパク質の合成

タンパク質は次々と結合するアミノ酸の長い鎖でできています。タンパク質の合成には20種類のアミノ酸が使用されます。これらのアミノ酸には、食事から摂取されるもの(必須アミノ酸)と体内で酵素により産生されるものがあります。アミノ酸が結合して1本の鎖が作られると、その鎖は折りたたまれて複雑な3次元構造を形成します。折りたたみ構造の形状が、体内でのタンパク質の機能を決定します。折りたたみ構造はアミノ酸配列によって厳密に決定されるため、配列が異なると別のタンパク質になります。一部のタンパク質(ヘモグロビンなど)は、複数の異なる折りたたみ構造の鎖から構成されます。タンパク質の合成の指示はDNAにコードされています。

コード

情報はDNAの塩基(A、T、G、C)配列によりコードされます。このコードはトリプレット(3塩基)で示されます。すなわち、塩基は3つを1組として並んでいます。DNA内の特定の3つの塩基の配列により、特定のアミノ酸を鎖に加えるなどの固有の指示がコードされています。例えば、GCT(グアニン、シトシン、チミン)はアラニンというアミノ酸を、GTT(グアニン、チミン、チミン)はバリンというアミノ酸をコードします。このように、タンパク質のアミノ酸配列は、DNA分子上にある遺伝子の3塩基対の配列順で決定されます。コードされている遺伝情報をタンパク質に変換する過程は、転写と翻訳によって行われます。

転写と翻訳

転写とは、DNAにコードされている情報がリボ核酸(RNA)に写し取られる(転写される)過程です。RNAはDNA鎖と同様の長い塩基の鎖ですが、塩基としてチミン(T)の代わりにウラシル(U)を用いています。したがって、RNAにはDNAと同様に3塩基でコードされた情報が含まれます。

転写が開始されると、DNAの二重らせんの一部がほどけて開いた状態になります。ほどけたDNA鎖の一方が鋳型として働き、相補的なRNA鎖が形成されます。相補的なRNA鎖はメッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれます。mRNAはDNAから離れて細胞核の外に出て、細胞質(細胞の核外の部分— 細胞の内部)に移動します。その場所で、mRNAは細胞内の小さな構造体であるリボソームに結合し、タンパク質の合成が行われます。

翻訳の過程では、mRNAの情報(DNAに由来します)から、つなげていくアミノ酸の順序と種類がリボソームに伝達されます。それらのアミノ酸は、トランスファーRNA(tRNA)と呼ばれる極めて小さなRNAによってリボソームに運ばれます。tRNA 1分子がアミノ酸1個を運んでくると、そのアミノ酸がタンパク質の鎖に付加されて鎖が伸びていきます。長くなった鎖は付近のシャペロンと呼ばれる分子のサポートを受けて、複雑な3次元構造に折りたたまれます。

遺伝子発現の調節

人間の体には心臓の細胞、肝臓の細胞、筋肉の細胞など、多くの種類の細胞があります。これらの細胞は、外観と働きが異なり、それぞれ異なる化学物質を生成します。しかし、すべての細胞は1個の受精卵に由来し、本質的に同じDNAをもっています。異なる細胞では(また、同じ細胞でも異なる時期には)異なる遺伝子が発現するため、細胞は多様な外観と機能を獲得します。遺伝子がいつ発現するかの情報もDNAにコードされています。遺伝子発現は、組織の種類、年齢、特定の化学信号や、ほかの多数の要因やメカニズムによって左右されます。遺伝子発現を制御するほかの要因やメカニズムに関する情報は急速に増えていますが、そのような要因の多くはまだよく解明されていません。

遺伝子が互いを調節する仕組みは非常に複雑です。遺伝子には、どこで転写を開始して、どこで終了するかを示すマークがあります。DNAの周辺にある様々な化学物質(ヒストンなど)が、転写を阻止したり可能にしたりします。また、アンチセンスRNAと呼ばれるRNA鎖は、mRNAと相補的に結合して翻訳を阻止します。

複製

細胞は2つに分裂して増殖します。新しい細胞のそれぞれに完全なDNA分子のセットが必要であるため、細胞分裂中にもとの細胞のDNA分子は自己を複製しなければなりません。複製は転写とよく似た仕組みで起こりますが、二本鎖のDNA分子が完全にほどけて2つに分かれる点が異なります。分かれた後、各鎖の塩基が近くにある相補的な塩基(AとT、GとC)に結合して、もう1本の鎖が作られます。この過程が完了すると、同一の二本鎖DNA分子が2つできます。

突然変異

複製の誤りを防ぐために、細胞には「プルーフリーディング(校正)」機能があり、塩基が正確な対を作るように助けます。正確に写し取られなかったDNAを修復する化学的な仕組みもあります。しかし、数十億もの塩基対が関与し、タンパク質の合成過程が複雑なことから、誤りが起こる場合があります。このような誤りは多くの理由(放射線や薬、ウイルスへの曝露など)で起こりますが、はっきりした理由が分からない場合もあります。DNAのわずかな違いは非常によくみられ、大部分の人で起こっています。ほとんどの変化は、その後の遺伝子コピーに影響しません。その後のコピーで複製された誤りは、突然変異と呼ばれます。

遺伝性の突然変異とは、子孫に引き継がれる可能性がある突然変異のことですが、突然変異が遺伝するのは、それが生殖細胞(静止または卵子)に影響を及ぼしている場合だけです。生殖細胞に影響しない突然変異は、変異した細胞に由来する細胞には影響を及ぼしますが(がんになるなど)、子孫には受け継がれません。

突然変異は特定の個人や家系に固有の場合があり、ほとんどの突然変異はまれな変異です。人口の1%以上にみられるほど一般的な突然変異は、多型と呼ばれます(例えば、人間の血液型のA、B、AB、O)。大半の多型は、表現型(個々人の体の実際の構造や機能)に何の影響も及ぼしません。

突然変異は、DNAの小さな部分にのみ生じることもあれば、大きな部分が突然変異の影響を受けることもあります。大きさと場所によっては、突然変異が明らかな影響をもたらさない場合もありますが、タンパク質のアミノ酸配列が変化したり、生成されるタンパク質の量が減少したりすることもあります。タンパク質のアミノ酸配列が変化すると、異なる機能が現れたり、まったく機能しなくなったりします。タンパクの欠如や機能不全は、しばしば有害であったり致死的であったりします。例えば、フェニルケトン尿症では、突然変異によりフェニルアラニン水酸化酵素が欠損または欠乏します。この欠損により食事から吸収したフェニルアラニンというアミノ酸が体内に蓄積して、最終的には重度の知的障害を引き起こします。まれに、突然変異により有利な変化が起こることもあります。例えば、鎌状赤血球遺伝子のケースでは、この異常遺伝子を両親から2つ受け継ぐと、その人は鎌状赤血球症を発症することになります。一方で、鎌状赤血球遺伝子を1つだけ受け継いだ人(キャリアと呼ばれます)は、マラリア(血液の感染症の一種)に対する抵抗力が高くなります。マラリアに対する抵抗力はキャリアにとって生存の助けになりますが、鎌状赤血球症を発症すれば(問題の遺伝子を2つ受け継いだ人の場合)、その症状や合併症によって寿命が短くなる可能性があります。

自然淘汰とは、環境内での生存を妨げる突然変異は子孫に引き継がれにくい(その結果、集団内で少数になる)のに対し、生存を積極的に進歩させる突然変異は徐々に一般的になる、ということを表す概念です。したがって、有利な突然変異は、最初はまれであっても次第に多くなります。交配集団の中で起こる突然変異と自然淘汰により長年の間にゆっくりと生じた変化は、進化と呼ばれます。

知っていますか?

  • すべての遺伝子異常が有害というわけではありません。例えば、鎌状赤血球症の原因となる遺伝子は、一方でマラリアに対する対抗力を与えてくれます。

染色体

1本の染色体は非常に長いDNA鎖からできており、そこには多く(数百~数千)の遺伝子があります。各染色体上の遺伝子は特定の順序に配列されており、各遺伝子は染色体上の特定の場所(遺伝子座)を占めています。DNAのほかに、染色体には遺伝子機能に影響を及ぼすほかの化学成分もあります。

対形成

特定の細胞(例えば、精子と卵子、赤血球)を除き、人のすべての細胞の核には23対、合計46本の染色体が格納されています。通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方を父親から受け継ぎます。

22対の常染色体と1対の性染色体が存在します。常染色体の対は、実際的な目的から、大きさ、形、遺伝子の位置と数が同一です。常染色体の対の1本1本には対応する各遺伝子が片方ずつあるため、これらの染色体上の遺伝子はある意味、各自のバックアップをもっていることになります。

23番目の対が性染色体です(XまたはY)。

性染色体

胎児が男性になるか女性になるかは、2本の性染色体によって決まります。男性はX染色体を1本とY染色体を1本もっています。男性のX染色体は母親に、Y染色体は父親に由来します。女性はX染色体を2本もち、1本は母親、もう1本は父親に由来します。いくつかの点で、性染色体の機能は常染色体とは異なります。

Y染色体はX染色体より小さく、男性であることを決定する遺伝子と少数のほかの遺伝子を含んでいます。X染色体にはY染色体より多くの遺伝子があり、その多くは性を決める以外の機能をもち、Y染色体上に対の片方はありません。男性では、2本目のX染色体がないため、X染色体上のこのような遺伝子は対となるものがなく、ほぼすべてが発現します。X染色体上の遺伝子は、伴性遺伝子やX連鎖遺伝子とも呼ばれます。

常染色体では通常、対の遺伝子は両方とも完全に発現する能力があります。しかし、女性では、X染色体不活化と呼ばれる過程により、2本のX染色体の片方にあるほとんどの遺伝子が発現しなくなります(卵巣中の卵子を除く)。X染色体不活化は胎児期の早期に起こります。父親由来のX染色体が不活化する細胞もあれば、母親由来のX染色体が不活化する細胞もあります。その結果、X染色体については、ある細胞は母親由来の遺伝子をもち、別の細胞は父親由来の遺伝子をもつことになります。X染色体の不活化が起こるため、1本のX染色体の欠損による異常は、通常は比較的軽度です(ターナー症候群など)。したがって、X染色体の欠損が及ぼす害は、常染色体の欠損に比べるとはるかに小さいものです(性染色体異常の概要を参照)。

3本以上のX染色体をもつ障害のある女性では、余分な染色体が不活化される傾向にあります。したがって、余分なX染色体を1本以上もっていても、余分な常染色体が1本以上ある場合に比べ、はるかに少ない頻度でしか発達異常は起こりません。例えば、X染色体を3本もつ女性(トリプルX症候群)では、身体にも精神にも異常がみられないことがよくあります。複数のY染色体をもつ男性( XYY症候群)では、心身に異常がみられることがあります。

染色体異常

染色体異常にはいくつかの種類があります。染色体数に異常がある場合や、1本以上の染色体に異常領域が存在する場合があります。これらの異常の多くは出生前に診断できます(染色体異常と遺伝子異常の検査を参照)。

通常、常染色体数の異常は重度の異常をもたらします。例えば、常染色体を余分に受け継ぐと、胎児は致死的な事態に陥るか、21番染色体が3本あるダウン症候群などの異常が生じます。常染色体の欠損では、胎児に致死的な影響が現れます。

ある部分全体が脱落したり(欠失)、誤って別の染色体に入り込んだりして(転座)、染色体上の広範囲に異常がみられる場合があります。例えば慢性骨髄性白血病は、ときに9番染色体の一部が22番染色体に転座して起こります。この異常は遺伝により受け継がれる場合もあれば、新たな突然変異により起こる場合もあります。

ミトコンドリアDNA

ミトコンドリアは細胞内の小さな構造物で、エネルギーとして利用される分子を合成します。細胞内のほかの構造物と異なり、各ミトコンドリアには独自の環状DNAがあります。このDNA(ミトコンドリアDNA)は、すべてではありませんが、ミトコンドリアを構成するタンパク質をコードしています。ミトコンドリアDNAは通常は母親のみに由来しますが、これは、卵子が受精すると、一般的に卵子に由来するミトコンドリアだけが発育中の胎児の一部となるためです。精子由来のミトコンドリアは通常、発育中の胎児の一部にはなりません。

形質

形質は遺伝子によって決まる特徴です。多くの形質は複数の遺伝子の機能によって決まります。例えば、人間の身長は、成長や食欲、筋肉量、活動レベルに影響を与える遺伝子など、多くの遺伝子によって決定されると考えられています。しかし、一部の形質は単一の遺伝子の機能で決定されます。

眼の色や血液型など一部の形質の変化は、正常と考えられます。白皮症マルファン症候群ハンチントン病などの変化は体の構造や機能に有害で、病気とみなされます。しかし、これらの遺伝子異常がすべて一様に有害というわけではありません。例えば、鎌状赤血球遺伝子を1つだけもっていると、マラリアに対する抵抗力が高くなりますが、この遺伝子が2つあると、鎌状赤血球貧血の原因になります。

遺伝性疾患

遺伝性疾患は遺伝子の異常によって起こる有害な形質です。遺伝子異常は、遺伝により受け継がれる場合も、突然変異により自然に発生する場合もあります。遺伝子の異常は珍しいものではありません。人間は平均100~400個の異常遺伝子をもっています。しかし、ほとんどの場合、対をなすもう一方の染色体上の対応する遺伝子が正常で、有害な影響が現れるのを防ぎます。2つの遺伝子が両方とも同じ異常をもち、それによって病気が現れる確率は、一般の人々では非常に低いものです。しかし、近親者同士の子どもでは、その確率が高くなります。キリスト教のアーミッシュやメノー派の人たちのように、隔絶された集団内で結婚した両親から生まれた子どもでも、この可能性がより高くなります。

知っていますか?

  • 人間は平均100~400個の異常遺伝子をもっています。

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