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事前指示書

執筆者:

Charles Sabatino

, JD, American Bar Association

最終査読/改訂年月 2015年 12月

事前指示書は,ある人が能力を喪失した場合に,医療に関する決断に対しその人のコントロールを及ばせる法律文書である。能力の喪失が起きる以前に希望を表明するため,それらは事前指示書と呼ばれる。2つの主要な形式がある:

  • リビングウィル:終末期ケアに関する希望を表明する

  • 医療判断代理委任状:代理意思決定者を指名する

米国の全ての州はこれらの文書を認め,人々が希望を表明しそれらを尊重してもらうための簡易な法的手段としての使用を奨励している。しかしながら,正式な事前指示書はそのような希望を表明する唯一の方法ではない。慣習法と憲法原則の両者は,患者の希望に関するいかなる真正かつ明確な表明も,一般的に受け入れられている医療水準の範囲内であるならば,尊重されるべきであると指示している。

事前指示書は,患者が事前指示書の性質や効力について十分理解することができないほど無能力となった後に完成させることはできない;また,ほとんどの州で事前指示書は,患者が医療判断を行う上で無能力と判定されるまで効力を生じない。事前指示書が準備されていない場合は,医療に関する意思決定を下すために,委任代理人が特定または任命されなければならない。

リビングウィル

リビングウィルは,終末期医療に関する患者の希望を表明する限定的な文書である(患者の生存中から効力を生じるため,「リビング」ウィルと呼ばれる)。多くの州では,この文書はより正式に,医師への医学的指示書または申告書と呼ばれる。リビングウィルの範囲と適用に関する州法は極めて多様である。

リビングウィルにより,人々は無介入から最大限の治療まで,受ける医療の量と性質に関する希望を表明できる。医療従事者に,より具体的な指示を与えるため,治療に関する詳細な希望があれば役に立つ。しかしながら,致死的疾患を経験するよりずっと以前に完成されたリビングウィルは,通常あまり有用ではなく,それは,とりわけ環境の変化に伴い多くの人が希望を変えるという理由のためである。リビングウィルは医学的または倫理的に不当な医療を提供することを医療従事者に強要することはできない。

リビングウィルが法律的に有効なものであるためには,州法を遵守していなければならない。州によっては,リビングウィルをかなり標準化された様式に従って記入することが必要とされる。より柔軟な姿勢の州もあり,文書が適切に署名され証人により連署されていれば,いかなる言語でも容認される州もある。ほとんどの州では,患者のケアにかかわる医療従事者が証人になることはできない。法定のリビングウィルに求められる州法の要件を満たさない文書でも,それが患者の希望の真正な表明であると思われる場合は,患者の希望に対する信頼できる証拠としての役割を果たしうる。

リビングウィルは,医療上の意思決定能力を喪失したとき,または指示書で特定した病状(典型的には,末期病態,永続的な植物状態,もしくは慢性疾患の末期段階)が診断されたときに有効となる。しばしば州法は,決定能力喪失および病状の確認と記録の過程について規定している。

医療判断代理委任状(durable power of attorney for health care)

この文書では,ある個人(本人)が,医療および医療のみについての意思決定を行う別の人物(代理人,代理権者,または医療代表者)を指名する。ほとんどの州では,本人が医療に関する意思決定を行う臨床的能力を喪失した場合,これらの文書は法的に有効となる。一部の州では,医療判断代理委任状は直ちに有効なもので,理論的には代理人は直ちに医療に関する意思決定を行うことができると認められているが,実際問題としては,本人が医療に関する意思決定を下す能力を保持している限り,本人は代理人の行為を指図および無効とすることができる。したがって,違いはさほど重要なものではない。リビングウィルのように,医療判断代理委任状は州によって別の用語で呼ばれる場合がある。

リビングウィルと医療判断代理委任状の両方をもつ人々は,それぞれの文書が矛盾する場合どちらに従うべきかを定めておくべきである。選択肢としては,これら2つの文書を医療判断代理委任状にまとめることが望ましい。医療判断代理委任状の最大の長所は,リビングウィルで対応していないような将来の仮定された医療状況に対する指示を単に示すというよりはむしろ,指定された意思決定者が現在の状況および選択肢にも対応できるようにすることにある。代理人には一般に,外傷または疾患について医学的な事実および予後を知り,治療の選択肢について話し合い,判断を下すという,本人が無能力でなければ持ち得たと同等の権限がある。ほとんどの州では,患者にケアを提供している医療従事者は,医療に関する問題において代理人となることはできない。医療判断代理委任状には,リビングウィルの規定またはその他の具体的な指示を織り込むことが可能であるが,できれば義務的な指示としてよりもむしろ,代理人に対する指針としてのみ織り込むべきである。

医療判断代理委任状は,第1任命者が代理人の役目を果たせない場合,またはその意思がない場合に備えて,一般的に代替代理人または後任者を指名する。2人以上の人々が,共同で(連帯責任で)または単独で(個別に)役目を果たすために指名されることがあるが,同一の権限を有する複数の代理人への依存は問題をはらむ可能性がある。連帯責任を負う委任状は,全ての代理人が同意し,共同で行動することを要求する。この取り決めでは,いかなる意見の不一致も,代理人または裁判所により解決されるまで,こう着状態をもたらす可能性がある。個別責任を負う委任状では,任命された代理人のいずれもが単独で行動することができるため,より機能的なことがある。しかしながら,この取り決めにおける代理人でも意見を異にすることがあり,解決できない場合は裁判所が関与しなければならない場合がある。

医療判断代理委任状の利用は,あらゆる年齢の成人にとって有益である。未婚のカップル,同性のパートナー,友人,または法律的に無関係とみなされる人たちで,医療上の決定を下したり面会および医療情報を入手する権利を保証する法的な権限を互いに与えることを希望する者にとって,これは特に重要である。

理想的には,医師は患者のリビングウィルおよび医療判断代理委任状の写しを入手し,患者に意思決定能力がある間に定期的にその内容を患者とともに検討し,医療記録の一部とするべきである。医療判断代理委任状の写しの1枚は,患者に任命された代理人にも渡されるべきであり,別の写しは重要な書類とともに収納すべきである。患者の弁護士は,全ての書類の写しを保持すべきである。ますます多くの州が,事前指示書を記録するための任意的な電子登録を勧めている。

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