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抗不安薬と鎮静薬

(睡眠薬)

執筆者:

Gerald F. O’Malley

, DO, Grand Strand Regional Medical Center;


Rika O’Malley

, MD, Albert Einstein Medical Center

最終査読/改訂年月 2016年 1月
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抗不安薬と鎮静薬には,ベンゾジアゼピン系,バルビツール酸系,およびこれらに関連する薬剤がある。高用量の薬剤は昏迷や呼吸抑制を引き起こすことがあり,その場合は気管挿管機械的人工換気により管理する。長期薬剤使用者は激越と痙攣発作の離脱症候群を呈する場合があるため,代替薬(ペントバルビタールまたはフェノバルビタール)を併用下または非併用下でゆっくりと減薬することによって依存を管理する。

抗不安薬と鎮静薬の治療効果は十分に確立されているが,ストレスや不安の緩和効果があることは,これらが非常に頻繁に乱用される理由でもあると考えられる。乱用される抗不安薬と鎮静薬には,ベンゾジアゼピン系やバルビツール酸系の他に,睡眠を促すために飲む薬剤がある。

病態生理

ベンゾジアゼピン系およびバルビツール酸系薬剤は,γ-アミノ酪酸(GABA)受容体の近傍にあると考えられる特異的受容体に作用してGABAを強化する。この強化プロセスの正確な機序は依然として不明であるが,塩素イオンチャネルの解放に関連しており,シナプス後ニューロン内で過分極状態(細胞の興奮を阻害する)を生じさせると考えられる。

慢性効果

高用量の鎮静薬を服用した患者はしばしば思考困難になり,(若干の構音障害とともに)発語と理解が緩慢になり,記憶力が低下し,判断を誤り,注意の範囲が狭くなり,そして情緒不安定になる。感受性の高い患者は,薬剤に対する精神依存が急速に生じる場合がある。身体依存の程度は用量と使用期間に関係している;例えば,ペントバルビタール1日200mgを何カ月も続けて服用しても重大な耐性(tolerance)が生じることはないと考えられるが,1日300mgを3カ月以上,または1日500~600mgを1カ月使用すると,薬剤を中止したときに離脱症候群が誘発されることがある。

耐性とタキフィラキシーが不規則かつ不完全に生じるため,用量とその薬剤の薬力学的効果に応じて,常用者でもかなりの行動障害,気分障害,および認知障害が持続する。アルコールとバルビツール酸系および非バルビツール酸系(ベンゾジアゼピン系薬剤など)の抗不安薬・鎮静薬との間には,若干の交差耐性が存在する。(バルビツール酸系薬剤とアルコールは,引き起こす依存症,離脱症状,および慢性中毒の点で驚くほど類似している。)

妊娠

妊娠中にバルビツール酸系薬剤を長期使用すると,新生児にバルビツール酸系薬剤の離脱症状が生じることがある。周産期にベンゾジアゼピン系薬剤を使用した場合も,新生児の離脱症候群または中毒(例,無呼吸,低体温,筋緊張低下)が生じることがある。

症状と徴候

中毒または過剰摂取

抗不安薬と鎮静薬の進行性中毒の徴候は,表在反射の減退,細かな側方注視眼振,粗大または急速な眼振を伴う軽度の意識レベル低下,運動失調,言語不明瞭,および体位不安定性である。

中毒が高まると,前方注視眼振,縮瞳,傾眠,転倒を伴う著しい運動失調,錯乱,昏迷,呼吸抑制を引き起こすことがあり,最終的には死に至ることもある。ベンゾジアゼピン系薬剤の過剰摂取はまれに低血圧を引き起こすが,これらの薬剤の過剰摂取で不整脈が生じることはない。

離脱

治療量の抗不安薬および鎮静薬の摂取を中止するか,または摂取回数を臨界レベル未満に減らすと,自然に消退する軽度の離脱症候群が起こることがある。薬剤の使用を中止しようとすると,わずか数週間後に不眠症が増悪することがあり,その結果として不穏状態,眠りを妨げる夢,頻繁な覚醒,および早朝の緊張感が生じる。

ベンゾジアゼピン系薬剤からの離脱はまれに生命を脅かすことがある。症状としては,頻呼吸,頻脈,振戦,反射亢進,錯乱,痙攣発作などが起こりうる。薬物が体内に長時間とどまるため,発現は緩徐な場合がある。急速な吸収と血清中濃度の急速な低下を示す薬物(例,アルプラゾラム,ロラゼパム,トリアゾラム)を用いた患者で,離脱症状は最も重度となる可能性がある。ベンゾジアゼピン系薬剤を誤用した人々は,過去にアルコールを大量に摂取していた,または現在大量に摂取していることが多く,遅発性のベンゾジアゼピン離脱症候群がアルコール離脱症状に合併することがある。

バルビツール酸系薬剤の大量摂取からの離脱は,急激で生命を脅かす可能性のある振戦せん妄に似た離脱症候群を引き起こす。ときには,1~2週間にわたる適正な離脱管理後にも痙攣発作が起きることがある。無治療の場合,短時間作用型バルビツール酸系薬剤からの離脱で以下が生じる:

  • 最初の12~20時間以内:不穏状態,振戦,および脱力の増加

  • 2日目まで:より顕著な振戦,ときに深部腱反射の亢進,および脱力の増加

  • 2日目および3日目中:痙攣発作(1日800mg以上を服用した患者の75%で),ときにてんかん重積状態や死亡に進行

  • 2日目から5日目まで:せん妄,不眠症,錯乱,幻視と幻聴によるおびえ,しばしば起こる異常高熱および脱水

診断

  • 臨床的評価

診断は通常臨床的に行う。一部の薬物(例,フェノバルビタール)については薬物濃度を測定できるが,一般的に,病院の検査室ではほとんどの睡眠薬および鎮静薬の濃度を測定できない。ベンゾジアゼピン系およびバルビツール酸系薬剤は通常,免疫測定法をベースとするルーチンの定性尿薬物検査に含まれる。しかし,そのようなスクリーニング検査で薬物が検出されても,通常は臨床上の管理に変化はない;結果が陽性であっても,患者に明らかな催眠鎮静薬の飲用歴がなければ,他の原因を除外すべきである。

治療

  • 支持療法

  • ベンゾジアゼピン系薬剤に対して,まれにフルマゼニル

  • バルビツール酸系薬剤に対して,ときに尿アルカリ化および/または活性炭

中毒または過剰摂取

急性中毒は一般に経過観察するだけでよいが,気道と呼吸を慎重に評価すべきである。摂取が1時間以内であれば,咽頭反射が保持されており,患者は気道を確保でき,さらなる吸収を減らすために活性炭50gを投与するとよいが,この介入により罹患率や死亡率が低下することは示されていない。ときに気管挿管と機械的人工換気が必要になる。

ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬であるフルマゼニルは,ベンゾジアゼピン系薬剤の過量投与に続発する重度鎮静および呼吸抑制を回復できる。用量は0.2mgの30秒かけての静脈内投与である;30秒後に0.3mgを投与した後,1分毎に0.5mgを投与してもよい。しかしながら,ベンゾジアゼピン系薬剤を過剰摂取した人のほとんどは支持療法だけで回復し,フルマゼニルはときに痙攣発作を誘発するため,その臨床的有用性は明確でない。

フルマゼニルの禁忌には,ベンゾジアゼピン系薬剤の長期使用(フルマゼニルが離脱を誘発する可能性があるため),潜在的な痙攣性疾患,攣縮または他の運動異常の存在,てんかん誘発性薬剤(特に三環系抗うつ薬)の同時過剰摂取,不整脈などがある。したがって,違法に過剰摂取される際には通常これらの禁忌の多くが知られていないため,フルマゼニルは医学的処置の際に呼吸抑制がみられる患者(すなわち,病歴が明らかな場合)にのみ用いるのが最善である。

フェノバルビタールの過剰摂取と診断された場合は,炭酸水素ナトリウムを用いた尿のアルカリ化により排泄が促進されることがある。フェノバルビタールが生命を脅かす量で過剰摂取された場合は,活性炭の複数回投与も考慮する。

尿のアルカリ化は,150mEqの炭酸水素ナトリウムを1LのD5W(5%ブドウ糖液)に加えて希釈し,1時間当たり1~1.5Lの速度で注入することにより達成する。効果的なアルカリ化のため,尿pHを可能な限り8に近い値で維持すべきである。

離脱と解毒

急性離脱症状が重度の場合は,入院(ICUが望ましい)と適切な用量のベンゾジアゼピン系薬剤の静脈内投与が必要となる。

鎮静薬依存を管理するアプローチの1つは,離脱症状の徴候をモニタリングしながら厳格なスケジュールに則り断薬を行うことである。漸減しやすい長時間作用型の薬剤への切替えが良好なことが多い。

アルコール離脱に関して,抗不安薬または鎮静薬離脱を経験する患者は綿密なモニタリングが必要であり,中等度から重度の離脱反応が予想される場合は入院が望ましい。

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