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コカイン

(クラック)

執筆者:

Gerald F. O’Malley

, DO, Grand Strand Regional Medical Center;


Rika O’Malley

, MD, Albert Einstein Medical Center

最終査読/改訂年月 2016年 1月
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コカインは,中枢刺激作用と多幸作用がある交感神経刺激薬である。高用量の使用は,パニック,統合失調症様症状,痙攣発作,高体温,高血圧,不整脈,脳卒中,大動脈解離,腸管虚血,および心筋梗塞を引き起こすことがある。中毒の管理は,(激越,高血圧,および痙攣発作に対する)静注ベンゾジアゼピン系薬剤や(高体温に対する)冷却法などの支持療法により行う。離脱症状は,主に抑うつ,集中困難,および傾眠(コカインウォッシュアウト症候群)として現れる。

ほとんどのコカイン使用者は,一時的な娯楽目的の使用者である。しかしながら,使用者の約25%(以上)は乱用または依存の基準に適合する。青年における使用は最近減少している。クラックコカインのような生物学的活性の高いコカインが入手可能になったことで,コカイン依存の問題は悪化している。米国における大半のコカインの純度は約45~60%であり,多様な賦形剤,混ぜ物,および夾雑物が含まれている可能性がある。

米国ではほとんどのコカインが揮発および吸入により摂取されるが,鼻からの吸引や静脈内注射により摂取されることもある。吸入するため,塩酸塩粉末は一般に重炭酸ナトリウム,水,および熱を加えることによって,より揮発性の高いものに変換される。生成した沈殿物(クラックコカイン)は,熱で揮発されて(燃焼ではない)吸入される。作用は急速に出現し,高揚感の程度は静脈内注射に伴うものに匹敵する。コカインは耐性(tolerance)が生じ,大量使用からの離脱の特徴には傾眠,集中困難,食欲亢進,および抑うつがある。離脱後もコカインを使用し続ける傾向が強い。

病態生理

植物のコカの葉に含まれるアルカロイドであるコカインは,中枢および末梢神経系でノルアドレナリン,ドパミン,およびセロトニンの活性を高める。

目的とするコカインの効果はドパミン活性の亢進によるものである可能性が高く,それによる強化は乱用と依存の発生に寄与する。

ノルアドレナリン活性は,頻脈,高血圧,散瞳,発汗,および高体温といった交感神経刺激作用の原因となる。

またコカインはナトリウムチャネルを遮断し,局所麻酔薬としての作用の原因となる。コカインは血管収縮を引き起こすため,ほぼ全ての臓器に影響を及ぼしうる。続発症として,心筋梗塞,脳虚血および脳出血,大動脈解離,腸管虚血,および腎虚血が起こりうる。

コカインの作用の発現は以下の通り使用方法に依存する:

  • 静脈内注射および喫煙:作用は直ちに発現し,約3~5分後にピークに達し,15~20分間持続する

  • 鼻腔内使用:作用は約3~5分後に発現し,20~30分でピークに達し,約45~90分間持続する

  • 経口使用:作用は約10分後に発現し,約60分でピークに達し,約90分間持続する

コカインは作用時間が非常に短いため,大量使用者は10~15分毎に繰り返し注射または喫煙吸入することがある。

妊娠

妊娠中のコカインの使用は胎児に影響を及ぼすことがあり,常位胎盤早期剥離自然流産の発生率が高まる。

症状と徴候

急性効果

使用方法によって作用が異なることがある。コカインを注射または喫煙により使用すると,刺激亢進,覚醒,多幸感,活力向上感,そして全能感や誇大感を引き起こす。興奮と高揚感は,アンフェタミン注射により出現するものと類似する。コカイン粉末を経鼻吸引する使用者では,これらの感覚は強度も破壊性も低い。

コカインを喫煙する使用者では気胸縦隔気腫が発生することがあり,これらは胸痛,呼吸困難,またはその両方を引き起こす。コカイン使用による心筋虚血も胸痛(「コカイン胸痛」)を引き起こすが,コカインは心筋虚血が認められない場合でも胸痛を引き起こすことがあり,その機序はよくわかっていない。不整脈と伝導異常が起こる可能性がある。心臓への影響により突然死に至ることがある。狂騒(binge)(数日にわたることも多い)の末に消耗症候群または「ウォッシュアウト」症候群に至り,激しく疲労し睡眠を必要とする。

中毒または過剰摂取

過剰摂取は,重度の不安,パニック,激越,攻撃性,不眠,幻覚,偏執性妄想,判断力の低下,振戦,痙攣発作,およびせん妄を生じることがある。散瞳と発汗が明らかに認められ,心拍数と血圧が増加する。心筋梗塞や不整脈により死亡することもある。

重度の過剰摂取は,急性精神病(例,統合失調症様症状),高血圧,高体温,横紋筋融解症,凝固障害,腎不全,および痙攣発作を引き起こす。極めて強い臨床毒性を示す患者は,コカインのクリアランスに必要な酵素である(異型)血清コリンエステラーゼが遺伝的に少ないことがある。

コカインを吸入する患者は,急性の肺症候群(crack lung)を生じ,発熱,喀血,および低酸素症(呼吸不全に進行しうる)を伴うことがある。

コカインとアルコールを同時に使用すると,刺激特性をもち中毒の原因となりうる,縮合物コカエチレンが生じる。

慢性効果

強迫的な大量使用者では,重度の中毒作用が生じる。心筋線維症,左室肥大,および心筋症が発生することがある。まれに,反復経鼻吸引により,局所虚血による鼻中隔穿孔が生じることがある。大量使用者の一部では認知障害(注意および言語性記憶の障害を含む)が起こる。コカインを注射する使用者は,典型的な感染性合併症に罹患する。

離脱

主な症状は,抑うつ,集中困難,および傾眠(コカインウォッシュアウト症候群)である。食欲が亢進する。

診断

  • 臨床的評価

診断は通常臨床的に行う。薬物濃度は測定しない。コカイン代謝物ベンゾイルエクゴニンの検査は,大半のルーチン尿薬物スクリーニングに含まれている。

治療

  • 静注ベンゾジアゼピン系薬剤

  • β遮断薬の使用は避ける

  • 必要に応じて高体温に対する冷却

中毒または過剰摂取

コカインの作用時間は極端に短いため,軽度コカイン中毒は通常治療を必要としない。中枢神経系興奮および痙攣発作,頻脈,高血圧などの大半の中毒作用の初期治療には,ベンゾジアゼピン系薬剤の使用が望ましい。ロラゼパム2~3mgの5分毎の静脈内投与(効果に応じて調整)が用いられる場合がある。高用量と持続注入が必要になることがある。抵抗性の症例にはプロポフォールの注入と機械的人工換気が用いられる可能性がある。

高血圧がベンゾジアゼピン系薬剤に反応しない場合は,静注硝酸薬(例,ニトロプルシド)またはフェントラミンにより治療する;β遮断薬はαアドレナリン受容体刺激の持続が可能なため,使用は推奨されない。

高体温は生命を脅かすことがあるため,鎮静薬に加え,気化冷却,氷嚢,および生理食塩水の静注による血管内容量と尿量の維持を用いて,積極的に管理すべきである。

フェノチアジン系薬剤は発作の閾値がより低く,その抗コリン作用が冷却を妨げることがあるため,鎮静目的の使用は望ましくない。

ときに重度の激越がみられる患者は,アシドーシス,横紋筋融解症,または多臓器不全を改善するため,薬剤により麻痺させて人工換気を施行しなければならない。

コカインに関連して胸痛がみられる場合は,胸部X線,一連の心電図検査,および血清心筋マーカーを用いて,心筋虚血または大動脈解離の可能性がある他の症例でないかについて評価する。上述の通り,β遮断薬は禁忌であり,ベンゾジアゼピン系薬剤が第1選択薬である。ベンゾジアゼピン系薬剤の投与後に冠動脈拡張が必要となった場合は,硝酸薬を使用するか,またはフェントラミン1~5mgの緩徐な静脈内投与を考慮してもよい。

乱用

大量使用者とコカインを静注または喫煙する人は,最も依存になりやすい。少量使用者とコカインを経鼻吸引または経口摂取する人は,依存になるリスクが低めである。長期使用を中止するには相当な支援が必要であり,抑うつに陥った場合には綿密な監視と治療が必要である。

支援団体,自助グループおよびコカインホットラインなど,多くの外来療法がある。入院療法は,身体的または精神的併存症によって必要とされる場合や,外来療法が何度も失敗に終わった場合に主に用いられる。

コカイン嗜癖のある母親から生まれた乳児の治療については, 出生前の薬物曝露を参照のこと。

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