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アルコール中毒および離脱

執筆者:

Gerald F. O’Malley

, DO, Grand Strand Regional Medical Center;


Rika O’Malley

, MD, Albert Einstein Medical Center

最終査読/改訂年月 2016年 1月
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アルコール(エタノール)は中枢抑制薬である。短時間で大量に飲酒すると,呼吸抑制と昏睡を来たし,死に至ることがある。長期にわたる大量の飲酒は,肝臓や他の多くの臓器を損傷する。アルコール離脱症状は振戦から,重度の離脱(振戦せん妄)でみられる痙攣発作,幻覚,および生命を脅かす自律神経不安定状態に至るまで,連続的な病態として現れる。診断は臨床的に行う。

米国では成人の約半数は現在飲酒しており,20%はかつて飲酒し,30~35%は飲酒経験がない。飲酒は,ティーンエイジャーおよびそれより低年齢層の問題としても増えてきている。ほとんどの飲酒者の飲酒頻度と量であれば,身体的および精神的健康や日常活動を安全に行う能力を損なうことはない。しかしながら,急性アルコール中毒は外傷,特に対人暴力,自殺,および自動車衝突事故による外傷の有意な因子である。

慢性のアルコール乱用は社交と仕事を行う能力を妨害する。毎年,成人の約7~10%がアルコール使用障害(乱用または依存)の基準に適合する。男性では1回に5人分以上,女性では1回に4人分以上飲酒することと定義されるむちゃ飲みは,特に若者で問題となっている。

病態生理

1人分のアルコール(缶ビール1本360mL,ワイン1杯180mL,または蒸留酒45mL)にはエタノールが10~15g含まれている。アルコールは主に小腸から血液中に吸収されるが,一部は胃からも吸収される。酸化および消失速度よりも吸収速度の方が速いため,アルコールが血中に蓄積される。飲酒前に胃内が空であれば,飲酒後約30~90分で最高濃度に到達する。

摂取アルコールの約5~10%は未変化のまま尿,汗,および呼気中に排泄される;残りは主に肝臓によって代謝され,アルコール脱水素酵素がエタノールをアセトアルデヒドに変換する。アセトアルデヒドは最終的に(無水アルコールにして)5~10mL/時の割合で酸化され,二酸化炭素(CO2)と水になる;1mLは約7kcalに相当する。胃粘膜のアルコール脱水素酵素が一部の代謝に関与しており,女性では胃代謝が大幅に少ない。

アルコールはいくつかの機序によりその作用を発揮する。アルコールは中枢神経系のγ-アミノ酪酸(GABA)受容体に直接結合して,鎮静を引き起こす。アルコールはまた,心臓,肝臓,および甲状腺の組織にも直接影響を及ぼす。

慢性効果

アルコールに対する耐性(tolerance)は迅速に発生し,同じ量では中毒が起きにくくなる。耐性は中枢神経系細胞の適応的変化(細胞性または薬力学的耐性)や代謝酵素の誘導によって生じる。耐性が生じる人々では,血中アルコール濃度(BAC)が極めて高い値に達することがある。しかしながら,エタノール耐性は不完全であり,大量に摂取するとかなりの中毒症状や障害が現れる。ただし,こうした飲酒者でも,過度の飲酒に続いて起こる呼吸抑制のために死亡することがある。

アルコールに寛容をもつ人は,特にむちゃ飲みをしているうちにアルコール性ケトアシドーシスになりやすい。また,アルコールに寛容をもつ人は,他の多くの中枢抑制薬(例,バルビツール酸,非バルビツール酸系鎮静薬,ベンゾジアゼピン系薬剤)に交差耐性を示す。

耐性に伴う身体依存は深刻で,アルコール離脱には致死的となりうる有害作用を伴う。

長期にわたる大量の飲酒は,一般に肝疾患(例,脂肪肝,アルコール性肝炎,肝硬変)に至るが,必要な量と期間は様々である( アルコール性肝疾患)。重度の肝疾患がみられる患者は,肝臓での凝固因子合成の減少に起因する凝固障害も有することが多く,外傷(例,転倒または自動車衝突による)に起因する有意な出血,および消化管出血(例,胃炎による,門脈圧亢進症に起因する食道静脈瘤による)のリスクが高まり,アルコール乱用者は特に消化管出血リスクが高い。

長期にわたる大量の飲酒は以下を引き起こすことも多い:

間接的な長期的影響には,低栄養(特にビタミン欠乏症)がある。

一方で,低~中程度のアルコール摂取(1~2単位/日以下)により,心血管疾患に起因する死亡のリスクが低下する可能性がある(訳注:1単位はエタノール量14g)。それについては,高比重リポタンパク(HDL)値の上昇や直接抗血栓作用など,多くの説明が提唱されている。とはいえ,アルコール摂取をこの目的で推奨すべきでなく,心血管リスクを低減するより安全でより効果的なアプローチが複数ある場合は特にそうである。

特別な集団

アルコールにより糖新生が障害されると,比較的少ない貯蔵グリコーゲンが急速に枯渇してしまうため,幼児がアルコールを飲むと低血糖の重大なリスクがある。女性はアルコールの胃での(初回通過)代謝量が少ないため,体重当たりに換算してもアルコール感受性が男性よりも高いと考えられる。妊娠中に飲酒すると胎児性アルコール症候群のリスクが高まる。

症状と徴候

急性効果

症状はBACに比例して進行する。ある症状を引き起こすのに必要な実際量は耐性によって様々であるが,以下の量の典型的飲酒者でみられる症状は

  • 20~50mg/dL:静穏,軽度鎮静,および微細運動協調の若干の低下

  • 50~100mg/dL:判断力の低下および協調のさらなる低下

  • 100~150mg/dL:不安定歩行,眼振,言語不明瞭,行動抑制の喪失,および記憶障害

  • 150~300mg/dL:せん妄および嗜眠(が起こる可能性が高い)

中等度から重度の中毒では嘔吐がよくみられるが,嘔吐は一般に意識障害とともに起こるため,誤嚥が重大なリスクとなる。

米国のほとんどの州では,BACが0.08~0.10%以上(80~100mg/dL以上)の場合を中毒と法的に規定している(0.08%が最も多く用いられている)。

中毒または過剰摂取

飲酒経験がない人では,BACが300~400mg/dLとなるとしばしば意識消失が生じ,BACが400mg/dL以上となると死亡することがある。呼吸抑制または不整脈による突然死は,特に急激に大量飲酒した際に起こる可能性がある。このことは米国の諸大学で問題となっているが,これが一般的にみられる他の国々では以前から知られていることである。その他の多い影響には低血圧と低血糖がある。

特定のBACの影響は変動が大きく,一部の飲酒常習者はBACが300~400mg/dLの範囲でも影響がみられず,正常に機能しているように見えるのに対し,酒を飲まない人や付き合い程度に飲む人は,飲酒常習者では問題にならない程度のBACでも障害を受ける。

慢性効果

慢性使用の徴候には,手掌腱膜のDupuytren拘縮,くも状血管腫,そして男性での性腺機能低下症および女性化の徴候(例,滑らかな肌,男性型脱毛症の欠如,女性化乳房,精巣萎縮)などがある。低栄養は耳下腺腫大につながることがある。

離脱

飲酒の中止に伴い,中枢神経系(自立神経系を含む)の活動亢進による一連の症状と徴候が起こる可能性がある。

軽度のアルコール離脱症候群では,振戦,脱力,頭痛,発汗,反射亢進,消化管症状などが起こる。症状は通常,摂取中止後約6時間以内に始まる。一部の患者に全般性強直間代発作(アルコール性てんかん,またはラム発作と呼ばれる)が現れることがあるが,通常は短時間に2回を超えて発作が起こることはない。

アルコール幻覚症(他の意識障害がみられずに起こる幻覚)は,長期にわたる過度の飲酒を急に中止した後,通常は12~24時間以内に生じる。幻覚症は一般に幻視(視覚的幻覚)である。症状に聴覚性錯覚や幻聴が含まれる場合もあり,しばしば非難的で脅迫的である;通常,患者は恐れを抱き,幻覚や鮮明な恐ろしい夢による恐怖を味わうことがある。

アルコール幻覚症は統合失調症と類似するが,思考は通常障害されず,病歴も統合失調症の典型例とは異なる。離脱に伴う振戦せん妄(DT)または他の病的反応ほどには,症状が急性器質性脳症候群のせん妄状態に似ることはない。意識は清明であり,DTで起こる自律神経不安定の徴候は通常みられない。幻覚症が生じる場合は,一般にDTに先行し,一過性である。

振戦せん妄は通常,アルコール離脱の48~72時間後に始まり,不安発作,錯乱の増大,睡眠不足(悪夢または夜間の錯覚を伴う),大量の発汗,および重度の抑うつも起こる。不穏,恐怖,および驚愕さえも喚起する一過性の幻覚がよくみられる。初期のせん妄,錯乱状態,および見当識障害に典型的なのは,習慣的な活動への回帰である;例えば,患者はしばしば自分が復職したと想像し,仕事に関係した行動をとろうとする。

自律神経不安定は,発汗および脈拍数や体温の上昇という形で現れ,せん妄に付随して生じ,それとともに進行する。軽度のせん妄には通常,著明な発汗,100~120/分の脈拍,および37.2~37.8℃の体温上昇が伴う。著明な見当識障害と認知障害を伴う著明なせん妄は,顕著な不穏,120/分を超える脈拍,および37.8℃を超える体温上昇を伴い,死亡リスクが高い。

振戦せん妄の間,患者は多くの感覚刺激,特に薄明かりの中で見える物体により暗示を受けやすい。前庭の障害によって,患者は床が動き,壁が落ち,部屋が回っていると思い込むことがある。せん妄の進行とともに,手の安静時振戦が発現し,ときに頭部や体幹に広がることがある。運動失調が著明であり,自傷防止に努める必要がある。症状は患者によって異なるが,一般に各患者の再発時の症状は同じである。

診断

  • 通常は臨床的に行う

  • 急性:BACを測定し,低血糖と潜在的外傷,および可能性のある薬物の同時使用を除外するための評価を行う

  • 慢性:血算,マグネシウム測定,肝機能検査,およびプロトロンビン時間/トロンボプラスチン時間(PT/PTT)測定を行う

  • 離脱症状:中枢神経系損傷と感染症を除外するための評価を行う

急性中毒では,低血糖を除外するための指先採血による血糖検査とBACを測定する検査を除き,臨床検査は一般に役に立たず,診断は通常臨床的に行う。法的な目的のため(例,酔ったように見える運転手や従業員の中毒状態を確認するため)には,呼気中または血中アルコール濃度による確認が有用である。しかしながら,精神状態の変化とアルコール臭が認められる患者における低BAC所見は,それが別の原因の探索を促すことになるので有用である。

医師は,明らかに外傷が軽微な患者における高BACが,患者の意識障害を説明すると決めてかかるべきでない,それは頭蓋内損傷または他の異常によるものかもしれない。これらの患者については中毒検査も行い,他の物質による中毒の証拠を探索すべきである。

慢性アルコール乱用および依存の診断は臨床的に行う;長期使用の探索的マーカーは,汎用するには感度や特異度がまだ十分に証明されていない。AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)またはCAGE質問票などのスクリーニング検査が利用できる。しかしながら,大量飲酒者はスクリーニングする価値のある代謝障害をいくつか有していると考えられるため,血算,電解質測定(マグネシウムなど),肝機能検査(凝固機能[PT/PTT]など),および血清アルブミン測定がしばしば推奨される。

重度の離脱および中毒では,症状が中枢神経系損傷または感染症のそれと類似する場合があるため,コンピュータ断層撮影(CT)および腰椎穿刺による医学的評価が必要となりうる。症状が軽度の患者については,2~3日以内に顕著な改善がみられない場合を除き,ルーチン検査は必要ない。アルコール離脱症状の重症度についての臨床的評価ツールが利用可能である。

治療

  • 支持療法

  • 離脱症状にはベンゾジアゼピン系薬剤およびときにフェノバルビタールまたはプロポフォールを併用

中毒または過剰摂取

アルコール中毒の治療には以下が含まれる:

  • 気道確保

  • ときにチアミン,マグネシウム,およびビタミンを含む静脈内輸液

十分な気道確保を最優先とし,無呼吸または呼吸不十分の場合には気管挿管と機械的人工換気が必要となる。低血圧または体液量減少所見が認められる場合には,静注による水分補給が必要であるが,これによりエタノールクリアランスが著しく高まることはない。輸液を使用する場合は,ウェルニッケ脳症を治療または予防するために,チアミン100mgを単回静脈内投与する。輸液に総合ビタミン剤やマグネシウムを添加する医師も多数いる。

急性中毒患者の転帰は,特定のBACではなく臨床反応に依存する。

離脱

重度のアルコール離脱症状または振戦せん妄が認められる患者は,これらの症状が軽減するまで集中治療室(ICU)で管理すべきである。ウェルニッケ-コルサコフ症候群および他の合併症を予防するため,治療には以下が含まれると考えられる:

  • 静注チアミン

  • ベンゾジアゼピン系薬剤

ウェルニッケ-コルサコフ症候群を予防するため,チアミン100mgを静脈内投与する。

アルコールに寛容をもつ人は,離脱治療によく用いられる薬物(例,ベンゾジアゼピン系薬剤)にも交差耐性を示す。

治療の中心はベンゾジアゼピン系薬剤である。用量と投与経路は,激越の程度,バイタルサイン,および精神状態に依存する。一般的な初期介入は,鎮静が生じるまで1時間毎のジアゼパム5~10mgの静脈内または経口投与であり,別の選択肢はロラゼパム1~2mgの静脈内または経口投与である。あまり重症でない離脱症例に対し古くから容認された別の選択肢は,クロルジアゼポキシド50~100mgの4~6時間毎の経口投与とその後の漸減である。ベンゾジアゼピン系薬剤が無効な場合はフェノバルビタールが有用と考えられるが,併用すると呼吸抑制のリスクがある。

フェノチアジン系薬剤とハロペリドールは発作の閾値がより低いと考えられるため,初期には推奨されない。重大な肝疾患のある患者には,短時間作用型のベンゾジアゼピン系薬剤(ロラゼパム)かグルクロン酸抱合により代謝されるベンゾジアゼピン系薬剤(オキサゼパム)が望ましい。(:ベンゾジアゼピン系薬剤はアルコール依存症患者に中毒,身体依存,および離脱を引き起こすことがあるため,解毒期間後には継続すべきではない。別の選択肢として,カルバマゼピン200mgの1日4回経口投与[その後に漸減]が使用可能と考えられる。)重度のアドレナリン亢進作用に対して,またはベンゾジアゼピン系薬剤の必要量を低減するため,用量を調整したβ遮断薬(例,4~6時間毎のメトプロロール25~50mgの経口投与または5mgの静脈内投与),および2~4時間毎のクロニジン0.1~0.2mgの静脈内投与による短期療法(12~48時間)が使用可能である。

痙攣発作が短時間の孤発例であれば特異的な治療は必要ないが,痙攣発作の再発予防としてロラゼパム1~2mgの単回静脈内投与をルーチンに行う医師もいる。痙攣発作が反復するか長く続く(2~3分を超える)場合には,ロラゼパム1~3mgの静脈内投与により治療すべきであり,これで奏効することが多い。フェニトインのルーチンの使用は不要であり,効果のある可能性は低い。痙攣発作はアルコール離脱のストレス下でのみ発現し,離脱途中の患者やアルコールを多量に飲んでいる患者は抗てんかん薬を服用しないと考えられるため,フェニトインによる外来治療は,他に痙攣発作活動の原因が同定されていない場合には,単純なアルコール離脱痙攣発作患者に対してめったに適応とならない。

振戦せん妄は致死的となる可能性があるため,できればICUで,高用量の静注ベンゾジアゼピン系薬剤を用いて直ちに治療しなければならない。投与は軽度離脱の場合よりも高用量で頻回となる。非常に高用量のベンゾジアゼピン系薬剤が必要となる場合があり,最高用量や特定の治療レジメンはない。せん妄を抑制する必要があれば,ジアゼパム5~10mgの静脈内投与またはロラゼパム1~2mgの静脈内投与を10分毎に行う;最初の数時間で数百mgを要する患者もいる。高用量のベンゾジアゼピン系薬剤に抵抗性を示す患者は,必要に応じてフェノバルビタール120~240mgの20分毎の静脈内投与に反応する場合がある。

重度の薬剤抵抗性DTは,ロラゼパム,ジアゼパム,ミダゾラム,またはプロポフォールの持続注入で治療可能であり,通常は機械的人工換気と併用する。さらなる激越を最小化するため,できれば身体的拘束は避けるべきであるが,患者が逃げたり,静注を取り外したり,または別の方法で自らを危険にさらしたりすることを許してはならない。静脈内輸液により血管内容量を保ち,大量のビタミンBおよびC,特にチアミンを速やかに投与することが必要である。DTに伴う著明な体温上昇は予後不良の徴候である。

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