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スポーツ脳震盪

執筆者:

James E. Wilberger

, MD, Drexel University College of Medicine;


Derrick A. Dupre

, MD, Allegheny General Hospital

最終査読/改訂年月 2013年 10月
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スポーツは,軽度の外傷性脳損傷の一形態である脳震盪の一般的な原因である。その症状としては,意識消失,混乱,記憶障害,その他の脳機能障害の徴候などがある。器質的脳損傷の証拠が認められることはまれであるため,診断は臨床的に行い,必要に応じて神経画像検査を施行する。競技への早期復帰は有害となる可能性があるが,症状が解消すれば,選手は徐々に競技活動を再開することができる。

脳震盪とは,頭部損傷(通常は打撲)によって生じる脳機能の一時的な障害である。その定義からして,直接または画像上で観察可能な器質的脳異常はない(より重篤な脳損傷については, 外傷性脳損傷)。病態生理はまだ完全には解明されていないが,脳機能障害には興奮性神経伝達物質の異常が関与していると考えていており,これは興奮性神経伝達物質,特にグルタミン酸の過剰放出によって引き起こされる神経損傷である。さらなる情報については,Concussions: What a neurosurgeon should knowを参照のこと。

米国におけるスポーツ脳震盪の発生数は,20万人/年から最大380万人/年と推定されている;この最大数には,病院で評価されない症例や報告されない症例の概算値が含まれている。脳震盪の認知度と報告数は過去10年間で有意に増加しているが,スポーツ関連の重篤かつ致死的な外傷性脳損傷の発生数が同様に増加しているわけではない。脳震盪の発生率は日常的に高速での衝突が生じるスポーツ(例,アメリカンフットボール,ラグビー,アイスホッケー,ラクロス)で最も高いが,チアリーディングを含めて,リスクのないスポーツは存在しない。コンタクトスポーツでは,19%の競技者が1シーズンに1回は脳震盪を起こすと推定されている。

繰り返し損傷

脳震盪の他の原因(例,自動車事故,転倒・転落)が単回の事象であると異なり,スポーツ選手は常に脳震盪のリスクに曝されている。そのため,繰り返し損傷がよくみられる。前回の脳震盪から完全に回復する前に損傷が繰り返し発生した場合,運動選手はより脳震盪を起こしやすいが,たとえ回復後であっても,一度脳震盪を経験した選手では将来脳震盪を起こす可能性が通常の2~4倍高くなる。また,脳震盪が繰り返し起きると,より軽度の衝撃でも発生しやすくなる。

さらに,ほとんどの選手は1回の脳震盪からは完全に回復するものの,そのうち3%は複数回の(たとえ軽度に見えても)脳震盪から慢性外傷性脳症(CTE,最初にボクサーで報告されたため,ボクサー認知症と呼ばれていた)を発症する。CTEでは,器質的な神経変性が生じ,皮質萎縮など,アルツハイマー病患者で認められる変化に似た所見もみられる。その症状としては,記憶障害,判断および意思決定の障害,人格変化(例,易怒性,移り気),パーキンソニズムなどがありうる。TBIを繰り返した著名な引退選手で自殺した者もいる。

症状と徴候

脳震盪でみられる最も明らかな脳機能障害は以下のものである:

  • 意識消失

しかしながら,多くの患者では意識の消失がみられない代わりに,以下のような症候がみられる:

  • 混乱:茫然自失のように見え,対戦相手や試合のスコアをはっきり認識できず,返答が遅い

  • 記憶障害:プレーや役割が分からず,受傷前(逆行性健忘)または受傷後(前向性健忘)の出来事が思い出せない

  • 視覚障害:複視,光過敏

  • 浮動性めまい,ぎこちない動き,平衡障害

  • 頭痛

脳震盪後症状は,脳震盪の発生後数日から数週間持続する認知および/または行動障害であり,具体的には以下のものがある:

  • 慢性頭痛

  • 短期記憶障害

  • 疲労

  • 睡眠困難

  • 人格変化(易刺激性,気分変動)

  • 光および音への過敏

脳震盪後症状は典型的には数日から数週間で消失する。

パール&ピットフォール

  • 意識消失を伴わない脳震盪もある。

診断

  • 臨床的評価

  • ときに,より重篤な損傷を除外するための神経画像検査

脳震盪の可能性がある運動選手は,脳震盪の評価および管理に長けた臨床医が評価すべきである。レベルの高い競技大会には,ときにそのような医師が待機していることもあるが,そうでない場合は,待機スタッフが脳震盪の症状を認識する訓練を受け,患者を評価に送るかどうかのプロトコルを把握しておくべきである。Standardized Assessment of Concussion(SAC),Sports Concussion Assessment Tool 2(SCAT2),SCAT3などの診断ツールは,コーチ,トレーナー,および経験の浅い医師がその場で選手をスクリーニングするのに役立つことがある。SCAT2およびSCAT3は,インターネット上から無料で入手でき(SCAT2,SCAT3),携帯機器へのダウンロードも可能である。CDCは,一般向けの診断ツールおよび訓練情報を提供している(CDC "Heads Up" programs)。

神経画像検査は,脳震盪そのものの診断には役に立たないが,より重篤な脳損傷(例,血腫,挫傷)の疑いがある場合に施行される。典型的には,意識消失がある,グラスゴー昏睡スケール(Glasgow Coma Scale:GCS)が15点未満( グラスゴー昏睡スケール(Glasgow Coma Scale)*),局所神経脱落症状がある,精神状態の変化が持続する,または状態が悪化しているように見える患者では,CTを施行すべきである( 外傷性脳損傷 : 神経画像検査)。

正式な神経心理学的検査は,症状のある患者では異常がみられる可能性が高いと考えられるが,脳震盪後症状が予想以上に長く続くか,著明な認知障害を呈しているのでない限り,一般的に行われる検査ではない。しかしながら,一部のアスリートプログラムでは,全ての参加者に対してベースライン時に神経心理学的検査を行い,脳震盪後に検査を繰り返すことにより,より軽微な異常も同定し,ベースラインの状態に回復するまで競技を再開できないようにしている。最も頻用される検査の1つに,ImPACT(ImPACT)と呼ばれる市販のコンピュータベースツールがある。

予後

患者は完全に回復するが,脳震盪後症状は最大で数週間持続することがある。

CTEは進行性の脳機能障害を引き起こし,典型的には最初の発症から10~15年後に死に至る。

治療

  • 大会または活動への参加を禁止する

  • 安静,頭痛に対するアセトアミノフェン

  • 段階的に完全な競技活動まで復帰させる

脳震盪の症状または徴候がみられた患者は,当日の競技再開は避けさせるべきであり,安静を勧める。学校および職場での活動,運転,飲酒,および脳に対する過度の刺激(例,コンピュータの使用,テレビ観賞,テレビゲーム)は避けるべきである。脳震盪からの回復を促進する効果が証明されている薬剤はないが,特定の症状は適切な薬剤で治療できる(例,頭痛に対してアセトアミノフェンまたはNSAID)。状態悪化の徴候( 外傷性脳損傷 : 軽度損傷)が出現しないか観察するよう家族に助言し,出現した場合は患者を病院に連れてくるよう指示する。

競技への復帰

典型的には,段階的なアプローチが推奨される。運動選手は,完全に症状がなくなり,薬剤が不要になるまで,競技活動を控えるべきである。その後,軽い有酸素運動から開始して,各スポーツのトレーニング,接触のないトレーニング,フルコンタクトのトレーニングと徐々にレベルを上げていき,最後に競技に出るという形で復帰するのが望ましい。あるレベルで無症状の状態が続けば,次の段階に進むことができる。どれだけ改善が速やかでも,通常は無症状の状態が1週間続くまでは完全な競技に復帰しないように助言する。重度の症状(例,5分以上の意識消失,24時間以上の健忘)がみられる患者では,少なくとも1カ月は待つべきである。1シーズンに複数回の脳震盪を起こした選手は,競技参加を続けることのリスクと利益について十分な助言を受ける必要がある。学齢期の小児の場合は,これらの話合いに親も参加させるべきである。

要点

  • 脳震盪とは一過性の外傷性脳機能障害であり,意識消失を伴う場合もあるが,混乱,記憶障害,および歩行または平衡障害しかみられない場合もある。

  • 症状はすぐに消失することもあれば,最大で数週間持続することもある。

  • 脳震盪の可能性がある選手は,競技への参加を中止させて評価を行うべきである;ここではSCAT2などのスクリーニングツールが役立つ可能性がある。

  • 意識消失,GCS 15点未満,局所神経脱落症状,持続する精神状態変化,または臨床的な状態悪化がみられた場合は,神経画像検査を施行する。

  • 脳震盪後には脳震盪を繰り返しやすい期間があるため,症状が消失してから1週間以上(損傷の重度に応じて)が経過するまでは,スポーツ活動を控えなければならない。

  • 競技活動の再開は段階的に進める。

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