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機械的人工換気の概要

執筆者:

Bhakti K. Patel

, MD, University of Chicago

最終査読/改訂年月 2018年 4月
本ページのリソース

機械的人工換気には以下の種類がある:

適切な手法の選択および使用には呼吸力学の理解が必要である。

適応

気管挿管および機械的人工換気の適応は極めて多彩であるが(Professional.see table 気道管理が必要となる状況),一般には,気道の確保または十分な酸素化もしくは換気の維持が困難であることを示す徴候が臨床的または臨床検査により認められる場合に,機械的人工換気を考慮すべきである。

考慮すべき所見としては以下のものがある:

  • 呼吸数 > 30/分

  • 吸気酸素分画(Fio2> 0.60で,動脈血酸素飽和度を > 90%に維持できない

  • PaCO2  > 50mmHgかつpH < 7.25

機械的人工換気を開始するかどうかの判断は,全体的な臨床状況を考慮して臨床判断に基づいて行うべきであり,患者が危機的状態に陥るまで判断を遅らせてはならない。

呼吸力学

正常では,吸気により胸腔内に陰圧が生じ,それにより大気と肺胞との間に圧較差ができて,気流が生まれる。機械的人工換気の場合,圧較差は空気を送る側の(陽)圧の増加により生まれる。

最高気道圧は,気道入口部(Pao)で測定され,人工呼吸器上に常に表示されている。この値は肺にガスを押し入れるために必要な総圧力を示し,吸気抵抗(抵抗圧),肺と胸壁の弾性収縮力(弾性圧),および呼吸開始時の肺胞圧(呼気終末陽圧[PEEP]―Professional.see figure 吸気ホールド操作による,機械的人工換気中の気道圧の構成要素の図解)などの圧力から成る。したがって:

equation

抵抗圧は回路抵抗および気流によって生じる。機械的人工呼吸下にある患者では,人工呼吸器回路,気管内チューブ,および(最も重要なことに)患者の気道内で,気流に対する抵抗が生じる。(注意:これらの要因が一定のときでも,気流が増加すると抵抗圧が上昇する。)

吸気ホールド操作による,機械的人工換気中の気道圧の構成要素の図解

PEEP = 呼気終末陽圧。

吸気ホールド操作による,機械的人工換気中の気道圧の構成要素の図解

弾性圧は,肺および胸壁の弾性収縮力(弾性),ならびに送気ガス容量によって生じる。一定のガス量に対して,肺の硬さが増大したり(肺線維症において),胸壁もしくは横隔膜の可動域の制限が生じることで(例,緊満した腹水または重度肥満において),弾性圧が上昇する。弾性はコンプライアンスの逆であるため,弾性が高いとコンプライアンスは低くなる。

肺胞内の呼気終末圧は正常では大気圧と同じである。しかしながら,気道閉塞,気流制限,または呼気時間の短縮によって肺胞が完全に空にならないとき,呼気終末圧は相対的に大気よりも陽圧となることがある。この陽圧は内因性PEEPまたはautoPEEPと呼ばれ,人工呼吸器の操作や,口にぴったりフィットさせ呼吸時に陽圧を加えるマスクによって生まれる外因性(治療的な)PEEPからは区別される。

最高気道圧が上昇(例,> 25cmH2O)した場合,吸気終末ホールド操作により,吸気終末圧(プラトー圧)を迅速に測定し,抵抗圧および弾性圧がそれぞれどの程度寄与しているかを判断すべきである。この操作では,吸気の後で呼気弁を閉じたまま余分に0.3~0.5秒間待ち,呼気を遅らせる。この間は気流が止まるので,気道圧は最高値から下がる。その結果測定された吸気終末圧から,PEEPを引いた値が弾性圧を示す(測定時,患者は吸気筋または呼気筋の自発的な収縮を起こしていないと仮定する)。最高圧とプラトー圧の差が抵抗圧である。

抵抗圧の上昇(例,> 10cmH2O)は,気管内チューブのねじれもしくは分泌物による塞栓,または気管内の腫瘤もしくは気管支攣縮の存在を示唆する。

弾性圧の上昇(例,>10cmH2O)は,以下による肺コンプライアンスの低下を示唆する:

  • 浮腫,線維症,または大葉性無気肺

  • 大量の胸水気胸または線維胸

  • 周囲の熱傷またはその他の胸壁変形,腹水,妊娠,または重度の肥満などに起因する肺外部からの絞扼

  • 換気に携わっている肺の容積に対して1回換気量が大きすぎる(例,気管内チューブの位置がずれているため,通常の1回換気量が片肺にだけ送気されている)

人工換気を受けている患者における内因性PEEP(auto PEEP)は,呼気終末ホールド操作により測定できる。吸気の直前,呼気用のポートを2秒間閉じる。気流が停止し,抵抗圧が除去される;その圧が呼気終末の肺胞圧(内因性PEEP)を反映する。正確な測定ができるかどうかは人工呼吸器を装着した患者の呼吸が完全に非自発的であるかどうかに依存するが,内因性PEEPの測定のみを目的とした神経筋遮断薬の使用は認容されない。内因性PEEPを同定するための非定量的な方法は,呼気流量記録を調べることである。呼気流量が次の呼吸まで持続する,または患者の胸部が次の呼吸が始まるまで静止を保てないならば,内因性PEEPが存在している。内因性PEEPが上昇すると,吸気による呼吸仕事量の増大および静脈還流量の減少などが起こり,後者の結果心拍出量低下および低血圧を来すことがある。

内因性PEEPの存在が証明されれば,気流閉塞(例,気道の分泌物,弾性収縮力,気管支攣縮)の原因検索を迅速に行うべきである;しかしながら,気流閉塞のない患者でも,分時換気量が多い(> 20L/min)だけで内因性PEEPが生じることがある。気流制限が原因の場合,吸気時間を短縮させる(すなわち,吸気流量を増やす)か呼吸数を減らすることにより,呼吸サイクルで呼気の占める割合を増大させることで,内因性PEEPを軽減できる。

機械的人工換気の方法およびモード

人工呼吸器は,各呼吸につき,一定の容量(volume cycled),一定の圧(pressure cycled),またはその両方を組み合わせて送気するよう設定されている。患者が自発呼吸を開始するかどうかに関係なく,最低限の呼吸数を保つ換気モードは,補助/調節換気(A/C)モードと呼ばれる。圧および容量は圧-容量曲線により直接的に相関するので,人工呼吸器が圧または容量のどちらで制御されているかに関係なく,任意の容量が与えられれば特定の圧が決まり,またその逆も真である。

人工呼吸器の設定で調節できるものはモードにより異なるが,呼吸数,1回換気量,トリガー感度,流速,波形,および吸気時間/呼気時間(I/E)の比などがある。

一定の容量(volume cycled)による換気

このモードには従量式換気(V/C)および同期式間欠的強制換気(SIMV)があり,人工呼吸器は設定された1回換気量を送気する。その結果生じる気道圧は一定ではなく,呼吸器系の抵抗および弾性,ならびに選択された流速によって変化する。

V/C換気は,完全な機械的人工換気を行う上で,最も単純かつ効果的な方法である。このモードでは,設定された感度閾値を超える吸気努力が起こるたびに,トリガーが生じ一定の1回換気量が送気される。患者が人工呼吸器をトリガーする頻度が低ければ,人工呼吸器は送気を開始して,必要な最低呼吸数を確保する。

SIMVもまた,患者の吸気努力に同期して設定された回数および容量の呼吸を送る。V/Cとは対照的に,設定された呼吸数を超える患者の呼吸努力は補助されないものの,吸気弁が開いて呼吸は可能となる。このモードは,V/Cのように完全な機械的人工換気によるサポートを行うわけでもなく,機械的人工換気からの離脱を促進するわけでもなく,患者がより快適に過ごせるわけでもないのにもかかわらず,相変わらず人気が高い。

一定の圧(pressure cycled)による換気

この形式の機械的人工換気としては,従圧式換気(PCV),プレッシャーサポート換気(PSV),密着するフェイスマスクを使用したいくつかの非侵襲的換気法などがある。これらの全ての様式で,人工呼吸器は設定された吸気圧を送る。したがって,1回換気量は,呼吸器系の抵抗および弾性によって変化する。このモードでは,呼吸力学的変化により分時換気量が変化しても気付かれないことがある。このモードは肺の拡張圧力を制限するため,理論的には急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者に有益な可能性がある;しかしながら,V/Cに比べて臨床上の明らかな優位性は証明されておらず,またPCVにより送気される量とVCにより送気される量が同じであれば,拡張圧も同等となる。

従圧式換気は,A/Cの従圧式バージョンである。設定した感度閾値を超える吸気努力が起こるたびに,一定の吸気時間の間完全なプレッシャーサポートを行う。最低限の呼吸数は維持される。

プレッシャーサポート換気では,最低呼吸数は設定されない;全ての呼吸は患者によってトリガーされる。患者の吸気流量があらかじめ設定されたアルゴリズムを下回るまで,人工呼吸器は一定の値の圧を送って患者を補助する。したがって,患者の呼吸が長いまたは深いほど,1回換気量は多くなる。このモードは,患者に一定量の呼吸仕事量を課すことにより,患者を機械的人工換気から離脱させる目的で一般的に用いられる。しかしながら,このアプローチがより有効であることを示した研究はない。

非侵襲的陽圧換気(NIPPV)

NIPPVは,鼻または鼻と口の両方をぴったり覆うマスクを介して陽圧換気を行うものである。標準的なぴったりフィットするフェイスマスクに耐えられない患者のための代用品として,NIPPVを行うヘルメットが研究されている。これは自発呼吸のある患者に使用するので,主にPSVのモードで利用されたり呼気終末圧を送るのに使用されるが,容量コントロールも可能である。

NIPPVには以下の種類がある:

  • 持続陽圧呼吸療法(CPAP)

  • 二相性陽圧換気(BiPAP)

CPAPにおいては,追加の吸気サポートを行わず,呼吸サイクルを通して一定の圧力が維持される。

BiPAPの場合,呼気気道陽圧(EPAP)と吸気気道陽圧(IPAP)の両方が設定され,呼吸は患者によってトリガーされる。

いずれのモードでも,気道は保護されておらず誤嚥の可能性があるため,十分な意識レベルおよび気道防御反射がある患者でなければならず,手術や病棟からの移動を必要とする場合は,処置が長くなることから適応とならない。意識が障害された患者および大量の分泌物がある患者は,よい適応とはならない。血行動態が不安定な患者,およびイレウスや腸管の通過障害,または妊娠など胃内容排出障害の所見がある患者でも,NIPPVは避けるべきである。そのような状況において,大量の空気が胃に流入すると,嘔吐および生命を脅かす誤嚥を引き起こす可能性がある。また,胃への空気流入を避けるために,IPAPは食道入口部の圧(20cmH2O)よりも低く設定しなければならない。

気管挿管による従来の機械的人工換気への切替えの適応には,ショックまたは度重なる不整脈の発症,心筋虚血,ならびに心臓カテーテル室または手術室といった気道制御および完全な換気サポートが望まれる場所への移動などがある。

NIPPVは外来診療でも使用可能である。例えば,CPAPは閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者にしばしば用いられ,一方BiPAPは肥満低換気症候群を併発している患者,または神経筋疾患もしくは胸壁疾患の患者における長期の換気に用いられる。

人工呼吸器の設定

人工呼吸器の設定は,背景となっている病態に応じて個別に行うが,基本原理は次の通りである。

1回換気量および呼吸数により分時換気量が決まる。換気量が大きすぎると過膨張のリスクがある;換気量が小さすぎると無気肺が生じる可能性がある。呼吸数が多すぎると,過呼吸により呼気時間が不十分となりautoPEEPが発生し,呼吸性アルカローシスを来すリスクがある;呼吸数が少なすぎると,分時換気量が不十分となり呼吸性アシドーシスを来すリスクがある。当初,6~8mL/kg(理想体重―Professional.see sidebar ARDSにおける人工呼吸器の初期管理)の1回換気量がARDS患者に推奨されていた;ただし,この1回換気量は一般に,肺の構造が正常な特定の患者(1, 2),例えば,手術中に機械的人工換気を受けている患者にも適している(3, 4)。その他の患者(例,外傷,意識障害,重度のアシドーシスのある患者)では,それよりわずかに高い1回換気量(例,8~10mL/kg)から開始される場合がある。肺疾患を有し機械的人工換気を受けている患者の適切な1回換気量を決定する際は,実際の体重よりも理想体重が用いられる:

equation

感度を調節し,人工呼吸器をトリガーするのに必要な陰圧の値を設定する。一般的な設定は−2cmH2Oである。設定値が高すぎると(例,−2cmH2Oよりマイナスの値であると),衰弱している患者は呼吸をトリガーすることができない。設定値が低すぎると(例,−2cmH2Oよりゼロに近い値であると),人工呼吸器がオートサイクルに入り過換気を引き起こす可能性がある。autoPEEP 値が高い患者では,気道内を十分陰圧にするのに足る深い吸気を行うのが困難なことがある。

I:E比は,吸気に費やされる時間と呼気に費やされる時間の比である。I:E比は一部の換気モードで調節可能である。肺の力学的機能が正常な患者での初期設定は,通常1:3である。喘息またはCOPD増悪の患者では,autoPEEPの程度を制限するため,1:4またはそれ以上の比にすべきである。

換気モードの中には吸気流量を調節できるものもある(すなわち,流量またはI:E比のいずれかが調節可能で,両方同時に調節することはできない)。吸気流量は一般に約60L/minに設定すべきであるが,気流制限のある患者では,autoPEEPを制限するため呼気により長い時間を割けるよう,最大で120L/minまで上げられる。

Fio2は最初は1.0に設定し,その後,十分な酸素化を維持するのに必要な最低値まで下げる。

PEEPは人工呼吸器のあらゆるモードで利用できる。PEEPにより呼気終末の肺容量が増加し,呼気終末に閉鎖する気腔を減少させる。5cmH2OのPEEPを加えることで機械的人工換気を受ける患者のほとんどが便益を得られ,気管挿管,鎮静,麻痺,および/または仰臥位にしばしば伴う無気肺の発生が抑えられる。心原性肺水腫およびARDSなどの疾患では,PEEP値をより高い値にすることで酸素化が改善される。PEEPにより動脈血の十分な酸素化を保ちつつ,使用するFio2は比較的低いレベルを維持できる。この効果は,高濃度のFio2(0.6以上)への長期的曝露により生じる可能性がある肺損傷の発生を抑える上で,重要でありうる。PEEPにより胸腔内圧が上昇して静脈還流が妨げられると,循環血液量が減少した患者では低血圧を招くことがあり,また,肺の一部を過膨張させ呼吸器関連肺損傷(VALI)を引き起こすこともある。一方,PEEPが低すぎると気腔の周期的な開閉につながることがあり,結果としてこれもまた,反復されるずり応力によりVALIの原因となる可能性がある。圧-容量曲線は肺の領域によって異なるということを覚えておくことは重要である。この差異は,任意のPEEPに対し,容量の増加は肺の荷重部で小さく,非荷重部で大きいことを意味している。

人工呼吸器の設定に関する参考文献

  • 1.Serpa Neto A, Cardoso SO, Manetta JA, et al: Association between use of lung-protective ventilation with lower tidal volumes and clinical outcomes among patients without acute respiratory distress syndrome: A meta-analysis.JAMA 308:1651–1659, 2012.doi: 10.1001/jama.2012.13730.

  • 2.Gajic O, Dara SI, Mendez JL, et al: Ventilator-associated lung injury in patients without acute lung injury at the onset of mechanical ventilation.Crit Care Med 32:1817–1824, 2004.

  • 3.Futier E, Constantin JM, Paugam-Burtz C, et al: A trial of intraoperative low-tidal-volume ventilation in abdominal surgery.N Engl J Med 369(5):428–437, 2013.doi: 10.1056/NEJMoa1301082.

  • 4.Yang M, Ahn HJ, Kim K, et al: Does a protective ventilation strategy reduce the risk of pulmonary complications after lung cancer surgery?A randomized controlled trial.Chest 139:530–537, 2011.doi: 10.1378/chest.09-2293.

患者の体位

機械的人工換気は一般的には上体を半分起こした体位の患者に使用される。しかしながら,ARDSの患者では,主により均一な換気ができるという理由で,腹臥位で酸素化が改善されることがある。均一な換気により,換気を欠く肺容量(すなわち,シャントの量,一般的に背側および尾側に最も多い)が減少するが,血流の分布への影響はわずかである。

高いPEEP値(例,12cmH2O以上)およびFio2(例,0.6以上)を必要とするARDSの患者には腹臥位を試みるように多くの研究者が提唱するが,最近まで,臨床試験ではこの戦略で死亡率の改善が示されてはいなかった(しかしながら,そういった試験は概して検定力不足であった)。最近行われた大規模多施設前向き試験では,中等度のARDS(FIO2 ≥ 0.6,PEEP > 5cm H2Oの状況で,PaO2:FIO2 < 150mmHg)の患者で,1回換気量を約6mL/kgに設定して評価した。これらの患者を,人工換気中に16時間以上腹臥位を施行する群,または仰臥位を継続する群にランダムに割り付けた。計466人の患者を対象としたこの試験で,腹臥位を施行した群において,合併症の有意な発生なく,28日死亡率と90日死亡率が低下したことが明らかにされた(1)。

腹臥位は,脊椎が不安定な患者または頭蓋内圧が亢進している患者では禁忌である。この体位を施行する場合は,気管内チューブまたは血管内カテーテルのずれなどの合併症を予防するため,ICUスタッフによる注意深い観察も必要である。

患者の体位に関する参考文献

鎮静および快適さ

多くの患者は鎮静なしに気管内チューブを介した機械的人工換気に耐えられるが,一部の患者ではストレスおよび不安を最小限にするため,鎮静薬(例,プロポフォール,ロラゼパム,ミダゾラム)および鎮痛薬(例,モルヒネ,フェンタニル)の静脈内投与を必要とする。これらの薬剤はまた,エネルギー消費量をある程度減らすことにより,二酸化炭素の産生量および酸素消費量を削減できる。期待される効果を得るため,標準的な鎮静/鎮痛スコアリングシステムに従い投与量を調整すべきである。ARDSのために機械的人工換気を受ける患者は,概して高いレベルの鎮静および鎮痛を必要とする。24~48時間以上にわたりプロポフォールを使用する場合は,定期的な血清トリグリセリド値のモニタリングが必要である。鎮静薬を持続的に静脈内投与することにより,機械的人工換気の継続期間が延長するというエビデンスがある。よって,目標は十分かつ過度にならない鎮静を得ることであり,持続的な鎮静に毎日中断を加えたり,静注を間欠的に行うことにより達成できる。

神経筋遮断薬をルーチンに使用すると,神経筋伝達障害による遷延性の筋力低下が発生するリスクあるとともに,持続的な高レベルの鎮静を行う必要が生じるため,機械的人工換気を受けている患者でこの薬剤をルーチンに使用することはない;しかしながら,ある研究では,48時間にわたる神経筋遮断薬の投与を受けた早期の重症ARDS患者で,90日間の死亡率が低下したことが示されている(1)。神経筋遮断薬の恩恵を受ける例外的なケースとして,機械的人工換気のより精緻で複雑なモードに耐えられない患者,および心停止後の冷却法を用いる際にシバリングが止まらない患者などがある。

鎮静および快適さに関する参考文献

合併症および予防策

機械的人工換気の合併症の原因は以下のように分類できる:

  • 気管挿管

  • 機械的人工換気そのもの

  • 長期間に及び動けないこと,および通常の食事ができないこと

気管内チューブを挿入していると,副鼻腔炎(臨床的に重要となることはまれ),人工呼吸器関連肺炎(Professional.see page 院内肺炎),気管狭窄,声帯損傷,そして極めてまれに気管-食道または気管-血管の瘻孔を起こすリスクがある。換気開始後48時間以降に白血球数が上昇した患者において気管吸引液が化膿している場合,人工呼吸器関連肺炎が示唆される。

作動中の機械的人工換気そのものによる合併症には,気胸,酸素毒性,低血圧,およびVALIなどがある。

酸素毒性とは,高いFio2(例,> 0.6)に長期間曝露することで発生しうる炎症性変化,肺胞浸潤,およびその最終段階である肺線維化を指す。毒性は濃度および時間の両方に依存する。0.6を超えるFio2は,患者の生存に必要でない限り避けるべきである。0.6未満のFio2は,長期にわたって十分に許容される。

人工呼吸器関連肺損傷(VALI)は,ventilator-induced lung injuryと呼ばれることもある,機械的人工換気に関連する肺胞損傷である。考えられる機序として,肺胞の過膨張(すなわち,容量外傷)および肺胞の開放と虚脱が繰り返されること(すなわち無気肺)によって生じるずり応力などがあり,それが炎症性メディエータの放出につながり,肺胞透過性の亢進,体液の蓄積,およびサーファクタントの欠乏を引き起こす。

機械的人工換気下の患者に急性の低血圧が生じた場合,特に頻脈および/または急な最高吸気圧の上昇を伴う場合,常に緊張性気胸を考慮しなければならない;このような所見があれば,迅速に胸部の診察を行い,胸部X線(または,診察所見が確定的であれば,迅速に治療を)を行うべきである。しかしながら,低血圧のより一般的な原因は,挿管および換気を促すために用いた鎮静薬またはオピオイドによる交感神経の抑制である。高い値のPEEPを受けている患者,または喘息もしくはCOPDのため内因性PEEPが高い患者では,胸腔内圧の上昇による静脈還流量減少が原因で低血圧が起こることもある。緊張性気胸を示唆する身体所見がなく,血圧低下の原因として人工呼吸器関連の原因が考えられる場合,可動式X線装置による胸部X線検査を行う前に,患者を人工呼吸器から外し,100%酸素を用いて2~3呼吸/分の速度で手動により愛護的に換気しつつ,輸液(例,生理食塩水を成人では500~1000mL,小児では20mL/kg)を行う。すぐに回復した場合,人工呼吸器関連の原因が示唆され,それに応じて人工呼吸器の設定を調整すべきである。

比較的不動状態が続くため,静脈血栓塞栓症,皮膚の破綻,および無気肺のリスクが増加する。

多くの病院には合併症を減らすための標準化されたプロトコルが存在する。ベッドの頭側を30°よりも上昇させると人工呼吸器関連肺炎のリスクが減少し,また,ルーチンに2時間毎に体位変換を行うと皮膚の損傷のリスクが減少する(褥瘡の予防を参照)。機械的人工換気を受けている全ての患者に,深部静脈血栓症の予防を行うべきであり,ヘパリン5000単位を1日2回または3回皮下投与または低分子ヘパリンを使用するか,ヘパリンが禁忌の場合は連続圧迫装置(Sequential compression device[SCD])を用いる。消化管出血を予防するために,H2受容体拮抗薬(例,ファモチジン20mg,経腸もしくは静注で1日2回)またはスクラルファート(1g,経腸で1日4回)を投与すべきである。プロトンポンプ阻害薬は,もともと適応があった患者,または活動性出血を有する患者のみに用いるべきである。ルーチンの栄養評価は必須であり,機械的人工換気の持続使用が予想される場合,経管栄養を開始すべきである。

機械的人工換気の合併症を減少させる最も効果的な方法は,継続期間を制限することである。毎日「鎮静の中断」を行い自発呼吸を試みることは,人工呼吸器によるサポートから離脱できる時期の目安を判断するのに役に立つ。

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