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デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジストロフィー

(Duchenne型筋ジストロフィー;Becker型筋ジストロフィー)

執筆者:

Michael Rubin

, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center

最終査読/改訂年月 2019年 1月

デュシェンヌ型およびベッカー型筋ジストロフィーは,筋線維の変性によって起こる近位部の進行性の筋力低下を特徴とするX連鎖劣性遺伝疾患である。ベッカー型筋ジストロフィーは発症が遅く,症状は軽度である。診断は臨床的に示唆され,遺伝子検査または変異遺伝子のタンパク質産物(ジストロフィン)の分析によって確定される。治療は,理学療法ならびに装具および矯正器具の使用による機能維持が中心である。デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者にはプレドニゾンまたはデフラザコルト(deflazacort)を勧めるべきである。

筋ジストロフィーとは,筋肉の正常な構造と機能に必要な遺伝子の1つまたは複数の欠陥の結果生じる遺伝性かつ進行性の筋疾患のことである。デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジストロフィーは,筋ジストロフィーの中で2番目に頻度の高い病型である(顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーに次いで)。Xp21.2座に位置する,ヒトで既知の最大の遺伝子であるジストロフィン遺伝子の突然変異によって起こる。デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは,この変異のために筋細胞膜のタンパク質の1つであるジストロフィンの重度の欠損(5%未満)がみられる。ベッカー型筋ジストロフィーでは,この変異のために産生されるジストロフィンが異常となるか,または産生量が不十分となる。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジストロフィーは合わせて1000人当たり5人に発生し,その大多数はデュシェンヌ型である。女性保因者では症状を伴わないCK値上昇およびおそらく腓腹部の肥大がみられることがある。

症状と徴候

デュシェンヌ型筋ジストロフィー

本症は,典型例では2~3歳の間に発症する。筋力低下が近位筋に発生し,典型例では最初は下肢にみられる。患児には,つま先歩き,動揺性歩行,および脊柱前弯がみられることが多い。走行,跳躍,階段昇降,および床からの起立が困難となる。頻回に転倒し,しばしば腕または下肢を骨折する(症例の約20%)。ほぼ全例の患児で筋力低下が着実に進行し,四肢の屈曲拘縮および脊柱側弯症が生じる。硬い仮性肥大(特定の腫大した筋肉群が脂肪および線維と置換されたものであり,特に腓腹部で顕著)が発生する。患児の大半が12歳までに車椅子の使用が必要になり,20歳までに呼吸器系合併症により死亡する。

心筋病変の結果,拡張型心筋症伝導障害不整脈などがみられる。そのような合併症は14歳までに症例の約3分の1に起こり,18歳以上の症例では全例に起こるが,このような患者は運動できないため,通常は晩期まで心病変による症状はみられない。動作性能力よりも言語性能力の障害が顕著な非進行性の軽度の知的障害が約3分の1の患者にみられる。

ベッカー型筋ジストロフィー

この疾患は典型的には発症時期がはるかに遅く,症状も軽度である。通常,歩行能力は少なくとも15歳までは維持され,多くの患児が歩行を維持したまま成人期に達する。罹患患児の大部分が30~40歳代まで生存する。

診断

  • DNA変異解析

  • ときにジストロフィンの免疫染色分析を併用する筋生検

診断は,特徴的臨床所見,発症年齢,およびX連鎖劣性遺伝を示唆する家族歴から疑われる。筋原性変化が筋電図検査(動員が速く,持続時間の短い,低振幅の運動単位電位)で認められ,筋生検を行った場合は,壊死および運動単位により区分されていない筋線維サイズの著明なばらつきが認められる。CK値は最大で正常値の100倍まで上昇する。

末梢血リンパ球から採取したDNAの変異解析が第一の確定検査であり,ジストロフィン遺伝子の異常(デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者の約70%およびベッカー型筋ジストロフィー患者の85%で欠失,両型の約10%で重複)を同定することができる。

遺伝子検査により診断が確定されない場合は,筋生検検体の免疫染色を用いたジストロフィンの分析を行うべきである。デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者ではジストロフィンが検出されない。ベッカー型筋ジストロフィー患者では,ジストロフィンは典型的には異常があるか(分子量が小さい),または低濃度で存在する。

デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者は,診断時または6歳までに心電図検査および心エコー検査によりベースラインの心機能評価を受けるべきである。

従来の検査法(例,家系分析,CK値測定,胎児の性別診断)に組換えDNA解析および筋組織のジストロフィン免疫染色を併用することにより,保因者診断および出生前診断が可能となる。

治療

  • 支持療法

  • ときにプレドニゾンまたはデフラザコルト(deflazacort)

  • ときに,心筋症にはACE阻害薬および/またはβ遮断薬

  • ときに矯正手術

特異的な治療法はない。廃用性萎縮または不活動の合併症を回避するため,できるだけ長く,愛護的な(すなわち最大ではない)能動運動を推奨する。他動運動によって歩行可能期間が延長されることがある。整形外科的介入は,機能維持および拘縮予防を目的とすべきである。睡眠中に装着する短下肢装具が屈曲拘縮の予防に有用となることがある。歩行能力または立位保持能力の維持のために,一時的に下肢装具が有用となることがある。矯正手術がときに必要となり,特に脊柱側弯症に必要である。肥満を回避すべきである;身体活動の減少のために,必要カロリーが正常よりも低下している可能性が高い。

呼吸機能不全は,非侵襲的な換気補助(例,鼻マスク―Professional.see page 喘息発作重積状態(SA))による治療が可能である。待機的気管切開が受け入れられてきており,これによりデュシェンヌ型筋ジストロフィー患児の20歳代までの生存も可能になってきている。

拡張型心筋症例には,ACE阻害薬および/またはβ遮断薬が予防または進行の緩徐化に助けとなることがある。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは,運動機能がもはや向上しないかまたは低下している5歳以上の患者に対して,プレドニゾンまたはデフラザコルト(deflazacort)の連日投与を考慮する。これらの薬剤は投与開始から10日後という早期から効果を発揮し始め,効力は3カ月時点で最高になり,6カ月間持続する。長期使用により筋力が改善し,歩行が失われる年齢が1.4~2.5年遅くなり,時間を測る機能検査(歩行や床からの起立などの機能的な課題をどれほど早く完了できるかの測定)が改善され,肺機能が改善され,整形外科的合併症(例,脊柱側弯症の手術の必要性)が減少し,心機能が安定し(例,心筋症の発症を18歳まで遅らせる),生存期間が5~15年延長する(1)。プレドニゾンの隔日投与は効果的ではない。体重増加およびクッシング病様の顔貌が6~18カ月後によくみられる有害作用である。椎骨圧迫骨折および長管骨骨折のリスクも増大する。デフラザコルト(deflazacort)はプレドニゾンよりも白内障のリスクとの関連が大きい可能性がある。

ベッカー型筋ジストロフィーにおけるプレドニゾンまたはデフラザコルト(deflazacort)の使用は十分に研究されていない。

現時点では遺伝子治療は利用可能な段階にはない。遺伝カウンセリングが適応となる。

治療に関する参考文献

  • 1.Gloss D, Moxley RT 3rd, Ashwal S, Oskoui M: Practice guideline update summary: Corticosteroid treatment of Duchenne muscular dystrophy: Report of the Guideline Development Subcommittee of the American Academy of Neurology.Neurology 86:465–472, 2016.doi: 10.1212/WNL.0000000000002337.

要点

  • デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジストロフィーは,筋細胞膜のタンパク質であるジストロフィンの減少を引き起こすX連鎖劣性遺伝疾患である。

  • 患者には,歩行困難,頻回の転倒,拡張型心筋症,呼吸機能不全による早期死亡などの重度障害を起こす,重大かつ進行性の筋力低下がみられる。

  • 下肢装具および短下肢装具と併せて,能動運動および受動運動が助けとなる。

  • デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは,プレドニゾンまたはデフラザコルト(deflazacort)の連日投与によって,筋力および筋肉量ならびに肺機能が改善する可能性があり,心筋症の発症を遅らせるのに役立つ可能性があるが,有害作用の頻度が高い。

  • ACE阻害薬および/またはβ遮断薬が心筋症の予防または進行の緩徐化に役立つことがある。

  • 換気補助(非侵襲的および後に侵襲的)が生存延長に役立つことがある。

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