ライソゾーム病の概要

執筆者:Matt Demczko, MD, Mitochondrial Medicine, Children's Hospital of Philadelphia
レビュー/改訂 2020年 4月
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    ライソゾーム酵素は,その細胞自身に由来する高分子(例,細胞構造要素が再利用される場合)または細胞外から獲得した高分子のいずれかを分解する。ライソゾーム酵素(またはその他のライソゾーム構成要素)における遺伝性の欠陥または欠損は,未分解の代謝物の蓄積を引き起こす可能性がある。数多くの特異的欠損症が存在するため,通常は蓄積する代謝物によって生化学的に蓄積症が分類されてる。サブグループには以下のものがある:

    遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチも参照のこと。

    このうち最も重要なものはムコ多糖症およびスフィンゴリピドーシスである。糖原病II型はライソゾーム病であるが,他のほとんどの糖原病はそうではない。

    網内系細胞(例,脾臓内にみられる)はライソゾームを豊富に有するため,網内系組織はいくつかのライソゾーム病において障害を受けるが,一般的に最も障害を受けるのは対応する基質が最も豊富に存在する組織である。したがって,ガングリオシドーシスではガングリオシドが豊富な脳が特に障害を受ける一方で,ムコ多糖症ではムコ多糖が全身に存在するがために様々な組織が障害を受ける。

    ムコ多糖症(MPS)

    MPSは,グリコサミノグリカンの分解に関与する酵素の遺伝的欠損症である。グリコサミノグリカン(以前はムコ多糖と呼ばれていた)は,細胞表面上ならびに細胞外基質および構造体の中に豊富に存在する多糖類である。グリコサミノグリカンの分解を阻害するような酵素欠損があると,ライソゾーム内にグリコサミノグリカンの断片が蓄積し,骨,軟部組織,および中枢神経系に広範な変化を引き起こす。遺伝形式は通常,常染色体劣性である(MPS II型は除く)。

    発症年齢,臨床像,および重症度は病型によって異なる(ムコ多糖症[MPS]の表を参照)。よくみられる臨床像としては,顔貌粗造,神経発達遅滞および退行,関節拘縮,臓器腫大,硬毛,進行性の呼吸機能不全(気道閉塞および睡眠時無呼吸に起因する),心臓弁膜症,骨格変化,頸椎亜脱臼などがある。

    ムコ多糖症の診断は,病歴,身体診察,全身骨X線検査で発見される骨異常(例,多発性異骨症),尿中総および断片化グリコサミノグリカンの高値によって示唆される。DNA解析および/または培養線維芽細胞(出生前)もしくは末梢血白血球(出生後)の酵素分析によって診断が確定される。(遺伝性代謝疾患が疑われる場合の検査も参照のこと。)臓器特異的な変化をモニタリングするため追加検査が必要となる(例,弁膜症には心エコー検査,聴力変化には聴力検査)。

    ムコ多糖症I型の治療はラロニダーゼによる酵素補充療法であり,これにより進行を効果的に食い止め,本疾患の中枢神経系以外の合併症を全て回復させることができる。造血幹細胞(HSC)移植も行われてきた。酵素補充療法および造血幹細胞移植の併用が試験段階にある。MPS IV-A型(モルキオA症候群)の患者は,エロスルファーゼ アルファによる酵素補充療法により,可動性などの機能状態が改善することがある。

    表&コラム

    スフィンゴリピドーシス

    スフィンゴ脂質は細胞膜の正常な脂質成分であり,酵素欠損によってその分解が阻害されると,ライソゾーム内に蓄積して神経系,骨,およびその他に広範な変化を引き起こす。発生率こそ低いが,保因者率の高い病型もある。

    スフィンゴリピドーシスには多くの病型がある(主なスフィンゴリピドーシスの表を参照);最も頻度の高いスフィンゴリピドーシスは以下のものである:

    その他のスフィンゴリピドーシスとしては以下のものがある:

    表&コラム

    ムコリピドーシスおよびその他のライソゾーム病

    ムコリピドーシスに加え,他にも以下のような多くのライソゾーム病がある:

    表&コラム
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