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ミトコンドリア酸化的リン酸化障害

執筆者:

Lee M. Sanders

, MD, MPH, Stanford University

最終査読/改訂年月 2016年 1月
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酸化的リン酸化の障害は,常にそうとは限らないが,しばしば乳酸アシドーシスを引き起こし,特に中枢神経系,網膜,および筋に影響を及ぼす。

細胞呼吸(酸化的リン酸化)はミトコンドリア内で進行し,そこでは酸素分子への電子伝達とエネルギー貯蔵物質であるATPの生成が一連の酵素群によって触媒される。ミトコンドリア遺伝子または核遺伝子の異常によってこの過程で使用される酵素に異常が生じると,細胞呼吸が障害され,ATP/ADP比が低下する。エネルギー需要が高い組織(例,脳,神経,網膜,骨格筋,心筋)が特に影響を受けやすい。最も頻度の高い臨床像は,痙攣発作,筋緊張低下,眼筋麻痺,脳卒中様発作,筋力低下,重度の便秘,および心筋症である。

生化学的には,NADH/NAD比が上昇するために著明な乳酸アシドーシスを来し,乳酸脱水素酵素反応の平衡が乳酸側に傾く。酸化的リン酸化障害では,乳酸/ピルビン酸比が上昇することから,乳酸/ピルビン酸比が正常を維持するピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症やピルビン酸脱水素酵素欠損症など,他の遺伝学的原因による乳酸アシドーシスと鑑別することができる。数多くの酸化的リン酸化障害が報告記載されており,ここでは特に頻度の高いものについてのみ,それらを識別できる特徴とともに概説する。

ミトコンドリアの遺伝子変異および変異体は,加齢によるいくつかの疾患(例,パーキンソン病,アルツハイマー病,糖尿病,難聴,悪性腫瘍)でも関与が疑われている。

以下に挙げる病態は,表現型と遺伝子型の相関がわかっているものである。比較的定義が不明確ではあるものの,その他のミトコンドリア機能障害も存在する。さらに,遺伝子の欠陥が続発性のミトコンドリア機能障害を引き起こすいくつかの病態も存在する。

レーベル遺伝性視神経症(LHON)

本疾患は,網膜変性による両眼の急性または亜急性の中心視力障害を特徴とする。発症は通常20歳代または30歳代であるが,小児期から成人期までに発生することもある。男女比は4:1である。多くの遺伝子変異が同定されているが,欧州人患者では,そのうちの90%を頻度の高い3つの変異が占めている。LHONの家系では通常,ミトコンドリア病に典型的な母系遺伝が認められる。

ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作(MELAS)症候群

ミトコンドリアtRNAleu遺伝子の変異は,この「chemical stroke」,ミオパチー,および乳酸アシドーシスの反復性発症を特徴とする進行性の神経変性疾患を引き起こす。多くの場合,細胞には野生型および変異型のミトコンドリアDNAが存在するため(ヘテロプラスミー),表現型は多様である。

赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん症候群(MERRF)

この進行性疾患は,制御不能の筋収縮(ミオクロニーてんかん),認知障害,運動失調,およびミオパチーを特徴とし,生検時に特殊染色を施すと赤色ぼろ線維(ミトコンドリアの増殖を示唆する)を認める。変異はミトコンドリアtRNAlys遺伝子内にある。ヘテロプラスミーがよくみられるため,表現型は多様である。

Kearns-Sayre症候群および慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)

これらの疾患は,眼筋麻痺,眼瞼下垂,非定型の網膜色素変性,赤色ぼろ線維を伴うミオパチー,運動失調,難聴,および典型的には20歳までに発症する心筋症を特徴とする。ほとんどの突然変異でミトコンドリア転移RNAおよび他のタンパクコード遺伝子の一部における隣接欠失/重複が関与している。

神経原性筋萎縮症・網膜色素変性(NARP)とLeigh症候群

神経筋変性を伴う色素性網膜症とLeigh症候群(運動失調および基底核変性を特徴とする亜急性壊死性脳症)は,遺伝学的に異質な症候群である。変異はミトコンドリアゲノムのATP6遺伝子内にみられる。

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