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大脳半球の奇形

執筆者:

Stephen J. Falchek

, MD, Nemours/Alfred I. duPont Hospital for Children

レビュー/改訂 2018年 12月
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大脳半球は増大,縮小,非対称などの形態をとることがあり,脳回は欠損,増大,多小脳回などの場合がある。

肉眼的に確認できる奇形だけでなく,外観は正常な脳でも顕微鏡切片を見ると,ニューロンの正常な層構造が崩壊している場合がある。正常では白質で占められている領域に,灰白質の限局性沈着がみられることがある(異所性灰白質)。

大脳半球の奇形の原因には遺伝性のものと後天性のものがある。後天性の原因としては,感染症(例,サイトメガロウイルス)や,発達途中の脳への血液供給が途絶える血管イベントなどがある。

これらの異常には 小頭症 小頭症 小頭症とは,頭囲が年齢平均値より標準偏差の2倍を超えて小さい状態である。 ( 頭蓋顔面部および筋骨格系の先天異常に関する序論ならびに 先天性頭蓋顔面異常の概要も参照のこと。) 小頭症では,頭部が他の部位に比して不釣り合いに小さい。小頭症には染色体または環境に起因する原因が数多くあり,具体的には,出生前の 薬物, アルコール,または 放射線への曝露,出生前の感染症(例,TORCH[... さらに読む 小頭症 または 大頭症 大頭症 大頭症(巨頭症)とは,頭囲が年齢平均値より標準偏差の2倍を超えて大きい状態である( 1, 2)。 ( 頭蓋顔面部および筋骨格系の先天異常に関する序論ならびに 先天性頭蓋顔面異常の概要も参照のこと。) 以下の2つの病型がある: 不均衡型大頭症(disproportionate macrocephaly) 均衡型大頭症(proportionate macrocephaly) さらに読む ,中等度から重度の 知的障害 知的能力障害 知的能力障害は,平均を著しく下回る知的機能(しばしば知能指数で70~75未満と表現される)に加えて,適応機能(すなわち,コミュニケーション,自己主導,社会的技能,自己管理,社会資源の利用,自身の安全の維持)において制限がみられるとともに,支援の必要性が実証されていることが特徴である。管理は教育,家族カウンセリング,および社会的支援から構成される。 知的能力障害は,神経発達障害の1つと考えられている。神経発達障害とは,小児期早期,典型的に... さらに読む てんかん 痙攣性疾患 脳起源の発作(seizure)は,大脳皮質の灰白質で発生する無秩序な異常放電のために正常な脳機能が一過性に妨げられる現象である。典型的な発作では,意識変容,異常感覚,局所的な不随意運動,または痙攣(広範囲の随意筋に生じる激しい不随意収縮)が引き起こされる。診断は臨床的に下すこともあるが,新規発症の発作では神経画像検査,臨床検査,および脳波... さらに読む が合併することが多く,極めて多様な臨床像を伴う。

治療は支持療法であり,必要に応じて抗てんかん薬も使用する。

全前脳胞症

全前脳胞症のスペクトラムは,胎生期に前脳の完全な分節化と分割が生じない場合に発生する。

全前脳胞症の主要な3つの病型は,重症度の高い順に以下の通りである:

  • 無分葉型

  • 半分葉型

  • 分葉型

無分葉型が最も重症で,通常は死に至る。完全な分割不全と,隔壁形成のない単一の脳室を特徴とする。

半分葉型全前脳胞症は,後方では半球の部分的な分割を特徴とするが,前方には交通して1つになった脳室がみられる。

分葉型全前脳胞症は,透明中隔(左右の側脳室前角を隔てる膜)の欠損,脳梁の無発生,側脳室前角の癒合のほか,ときに帯状回の癒合を特徴とする。

4つ目のまれな病型はmiddle interhemispheric variantと呼ばれ,前頭葉後部と頭頂葉の癒合のほか,ときに視床の癒合も特徴とするが,他の部位では正常に半球が分化する。

全前脳胞症では 頭蓋顔面異常 頭蓋顔面部および筋骨格系の先天異常に関する序論 頭蓋顔面部および筋骨格系の異常は小児ではよくみられる。特定の部位のみに異常がある場合(例,口唇裂,口蓋裂,内反足)と,複数の先天奇形を合併する症候群(例,軟口蓋心臓顔貌症候群,トリーチャー・コリンズ症候群)の一部である場合がある。孤発性の異常を非定型の症候群や発現が軽度の症候群と鑑別するために,慎重な臨床的評価が必要になることがある。... さらに読む がみられ,その重症度は通常,基礎にある脳の異常を反映している。そのスペクトラムには, 無眼球症 無眼球症 出生時から眼の欠損,変形,または不完全な発育がみられることがある。 ( 頭蓋顔面部および筋骨格系の先天異常に関する序論ならびに 先天性頭蓋顔面異常の概要も参照のこと。) 眼間開離は,両眼の間隔が広い状態であり,瞳孔間距離の延長によって定義され,前頭鼻異形成(正中顔面裂と脳奇形を伴う),頭蓋前頭鼻異形成( 頭蓋縫合早期癒合症を伴う),Aarskog症候群(四肢および性器奇形を伴う)など,いくつかの先天性症候群でみられる。... さらに読む 無眼球症 または単眼症,鼻孔または鼻腔の奇形または欠損, 眼間狭小 眼間狭小 出生時から眼の欠損,変形,または不完全な発育がみられることがある。 ( 頭蓋顔面部および筋骨格系の先天異常に関する序論ならびに 先天性頭蓋顔面異常の概要も参照のこと。) 眼間開離は,両眼の間隔が広い状態であり,瞳孔間距離の延長によって定義され,前頭鼻異形成(正中顔面裂と脳奇形を伴う),頭蓋前頭鼻異形成( 頭蓋縫合早期癒合症を伴う),Aarskog症候群(四肢および性器奇形を伴う)など,いくつかの先天性症候群でみられる。... さらに読む 眼間狭小 口唇裂および口蓋裂 口唇裂および口蓋裂 口唇裂,口唇口蓋裂,および単独の口蓋裂を総称して,口腔裂と呼ぶ。口腔裂は最も頻度の高い頭頸部先天奇形であり,全体での有病率は出生1000人当たり2.1例である。環境因子と遺伝因子の両方が原因として推定されている。出生前の母親による喫煙および飲酒によってリスクが増大する。罹患児が1人いると,2人目の罹患リスクが高くなる。このリスクは,受胎前から第1トリメスターにかけて葉酸を摂取することで低減できる。... さらに読む 口唇裂および口蓋裂 ,中切歯などが含まれる。

全前脳胞症はいくつかの遺伝子の突然変異によって引き起こされ,そのうち14を超える遺伝子が判明しており,その中にはソニックヘッジホッグシグナル伝達経路の遺伝子とその修飾遺伝子がある(1 全前脳胞症の参考文献 大脳半球は増大,縮小,非対称などの形態をとることがあり,脳回は欠損,増大,多小脳回などの場合がある。 肉眼的に確認できる奇形だけでなく,外観は正常な脳でも顕微鏡切片を見ると,ニューロンの正常な層構造が崩壊している場合がある。正常では白質で占められている領域に,灰白質の限局性沈着がみられることがある(異所性灰白質)。 大脳半球の奇形の原因には遺伝性のものと後天性のものがある。後天性の原因としては,感染症(例,サイトメガロウイルス)や,発達... さらに読む 全前脳胞症の参考文献 )。 13トリソミー 13トリソミー 13トリソミーは,過剰な13番染色体によって引き起こされる病態で,前脳,中顔面,および眼の発育異常,重度の知的障害,心臓の異常,ならびに出生時低身長で構成される。診断は細胞遺伝学的検査による。治療は対症療法である。 ( 染色体異常症の概要も参照のこと。) 13トリソミーは出生約10,000人当たり1例の頻度で発生し,約80%が完全な13トリソミーである。母体年齢が高くなるにつれてリスクも増大し,過剰染色体は通常母親由来である。... さらに読む 13トリソミー および 18トリソミー 18トリソミー 18トリソミーは,過剰な18番染色体によって引き起こされる病態で,通常は知的障害と出生時低身長のほか,重度の小頭症,心奇形,後頭部突出,変形を伴う耳介低位,やつれたような特徴的顔貌などの様々な先天奇形で構成される。出生前診断は細胞遺伝学的検査による;出生後診断は末梢血検査による。治療は対症療法である。 ( 染色体異常症の概要も参照のこと。) 18トリソミーは出生6000人当たり1例の頻度で発生するが,自然流産となることが多い。95%以上... さらに読む 18トリソミー ,ならびにその他の 染色体欠失 染色体欠失症候群 染色体欠失症候群は,染色体の一部が欠損することによって生じる。重度の先天奇形と有意な知能および身体障害が生じる可能性がある。特定の染色体欠失症候群が生前から疑われる可能性は比較的低いが,他の理由で実施された核型分析の際に偶然発見されることがある。出生後診断では,臨床的な外観から疑い,核型分析(欠失が比較的大きい場合)またはその他の細胞遺伝学手法(蛍光in situハイブリダイゼーションやマイクロアレイ解析など)によって確定する。... さらに読む および重複に,全前脳胞症との関連が報告されている。

重度の障害を受けた胎児は出生前に死亡する。全前脳胞症の治療は支持療法による。

全前脳胞症の参考文献

滑脳症

滑脳症は,大脳皮質の異常な肥厚,脳表面の脳回パターンの減少または欠損,および大脳皮質の層構造の減少または異常のほか,しばしばびまん性のニューロンの異所形成より構成される。

この奇形はニューロンの遊走における異常によって引き起こされるが,その機序は,未成熟のニューロンが放射状神経膠に付着して脳室付近の起点から大脳表面へと移動するというものである。この異常を引き起こす可能性がある 単一遺伝子の異常 単一遺伝子の異常 単一の遺伝子によって規定される遺伝性疾患(メンデル遺伝病)は,最も解析が容易で,最も詳細に解明されている。形質の発現に1コピーの遺伝子(1つのアレル)のみを必要とする場合,その形質は優性とみなされる。形質の発現に2コピーの遺伝子(2つのアレル)を必要とする場合,その形質は劣性とみなされる。例外の1つはX連鎖疾患である。男性では通常,X染色体のほとんどのアレルに対して影響を相殺する対のアレルが存在しないため,X染色体のアレルは形質が劣性で... さらに読む がいくつか存在する(例,LIS1)。 X連鎖 X連鎖劣性 単一の遺伝子によって規定される遺伝性疾患(メンデル遺伝病)は,最も解析が容易で,最も詳細に解明されている。形質の発現に1コピーの遺伝子(1つのアレル)のみを必要とする場合,その形質は優性とみなされる。形質の発現に2コピーの遺伝子(2つのアレル)を必要とする場合,その形質は劣性とみなされる。例外の1つはX連鎖疾患である。男性では通常,X染色体のほとんどのアレルに対して影響を相殺する対のアレルが存在しないため,X染色体のアレルは形質が劣性で... さらに読む 遺伝子であるDCXは,男性では家族性X連鎖性滑脳症を引き起こし,女性では皮質下帯状異所性灰白質と呼ばれる一般に比較的軽度の遊走異常を引き起こす。皮質下帯状異所性灰白質では,皮質下白質の広い帯状の異所性灰白質がMRI上で「二重の皮質(double cortex)」のように見える。

患児には乳児期から,ほぼ常に重度の 知的障害 知的能力障害 知的能力障害は,平均を著しく下回る知的機能(しばしば知能指数で70~75未満と表現される)に加えて,適応機能(すなわち,コミュニケーション,自己主導,社会的技能,自己管理,社会資源の利用,自身の安全の維持)において制限がみられるとともに,支援の必要性が実証されていることが特徴である。管理は教育,家族カウンセリング,および社会的支援から構成される。 知的能力障害は,神経発達障害の1つと考えられている。神経発達障害とは,小児期早期,典型的に... さらに読む と痙攣発作(しばしば 点頭てんかん 点頭てんかん 点頭てんかんは,両上肢の突然の屈曲,体幹の前屈,下肢の伸展,および脳波上のヒプスアリスミアを特徴とするてんかん発作である。治療は副腎皮質刺激ホルモンまたは,ときにビガバトリンによる。 点頭てんかんの発作は数秒間続き,1日に何回も繰り返すことがある。通常は1歳未満の小児に発生する。発作は約5歳までに自然に消失するが,しばしば他の発作型に置き換わる。 病態生理は不明であるが,点頭てんかんは皮質と脳幹の異常な相互作用を反映している可能性がある... さらに読む )がみられる。

滑脳症の治療は支持療法であり,生存期間は痙攣発作の重症度と嚥下機能障害,無呼吸,口腔咽頭分泌物の除去困難など,他の合併症の有無に依存する。

多小脳回症

多小脳回症とは,小さな脳回が過剰に形成された状態であり,ニューロンの遊走異常が関与する。その他の頻度の高い所見として,障害領域における大脳皮質層構造の単純化または欠如,異所性灰白質,脳梁および透明中隔の低形成または欠損,脳幹および/または小脳の奇形などがある。構造的異常はびまん性のこともあれば,限局性のこともある。限局性病変が最もよくみられる部位は傍シルビウス裂(両側または一側)である。

多小脳回症は,大脳半球に異常な細隙ないし裂隙がみられる 裂脳症 裂脳症 孔脳症とは,出生前または出生後に大脳半球内に空洞が形成される病態である。 空洞はしばしば脳室と交通しているが,閉鎖して(すなわち非交通性)液体が充満していることもある。孔脳症(特に非交通性)では頭蓋内圧亢進と進行性 水頭症を併発することがあるが,まれである。 孔脳症の原因としては以下のものがある: 遺伝性の異常 炎症性疾患 さらに読む を合併することが多い。多小脳回症の原因は数多く同定されており,いくつかの単一遺伝子変異(例,SRPX2),母体のサイトメガロウイルス初感染(すなわち,母親に過去の免疫がない場合― Professional.see page 先天性および周産期サイトメガロウイルス感染症(CMV) 先天性および周産期サイトメガロウイルス感染症(CMV) サイトメガロウイルス(CMV)感染症は,出生前または周産期の感染によって発生することがあり,最も頻度の高い先天性ウイルス感染症である。出生時にみられることのある徴候は,子宮内胎児発育不全,未熟性,小頭症,黄疸,点状出血,肝脾腫,脳室周囲石灰化,脈絡網膜炎,肺炎,肝炎,および感音難聴である。乳児期後期に感染した場合の徴候としては,肺炎,肝脾腫,肝炎,血小板減少,敗血症様症候群,異型リンパ球増多などが挙げられる。新生児感染症の診断法としては... さらに読む 先天性および周産期サイトメガロウイルス感染症(CMV) )などがある。最も頻度の高い臨床像は痙攣発作,知的障害,および痙性片麻痺または両麻痺である。

多小脳回症の治療は支持療法による。

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