胆道閉鎖症

執筆者:William J. Cochran, MD, Geisinger Clinic
レビュー/改訂 2019年 8月
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胆道閉鎖症は,肝外胆管の進行性硬化による胆道系の閉塞である。診断は血液検査,超音波検査,肝生検,および肝胆道シンチグラフィーによる。治療は手術による。

消化器系の先天異常の概要も参照のこと。)

米国における胆道閉鎖症の発生率は出生10,000~15,000人当たり1例である(1)。

ほとんどの場合,胆道閉鎖症は生後数週間が経過した後,おそらく肝外(および,ときに肝内)胆管の炎症および瘢痕化に引き続いて発症する。早産児または出生時の新生児にはほとんどみられない。炎症反応の原因は不明であるが,レオウイルス3型やサイトメガロウイルスなど,いくつかの感染性微生物の関与が示唆されている。さらに,いくつかの遺伝子(CFC1FOXA2)の1つに,異常を伴う遺伝的要素が存在している可能性もある。

無治療の場合,進行性かつ不可逆的な肝臓の瘢痕化を伴う肝硬変が生後2カ月までに生じる可能性がある。

約15~25%の患児には,多脾/無脾,腸閉鎖,内臓逆位,心奇形腎奇形など,他の先天異常がみられる。

総論の参考文献

  1. 1.Zagory JA, Nguyen MV, Wang KS: Recent advances in the pathogenesis and management of biliary atresia.Curr Opin Pediatr 27(3):389–394, 2015.doi: 10.1097/MOP.0000000000000214.

症状と徴候

胆道閉鎖症の乳児は黄疸を呈し,しばしば濃色尿(抱合型ビリルビンを含有する),灰白色便,および肝脾腫がみられる。

生後2~3カ月までに,発育不良と栄養障害,そう痒,易刺激性,および脾腫がみられることがある。

無治療の場合は,肝線維化が肝硬変に進行し,結果として門脈圧亢進症腹水による腹部膨隆,腹壁静脈怒張,および食道静脈瘤による上部消化管出血が発生する。

診断

  • 総ビリルビンおよび直接ビリルビン

  • 肝機能検査

  • 血清α1-アンチトリプシン濃度

  • 汗中塩化物イオン濃度の測定

  • 腹部超音波検査

  • 肝胆道シンチグラフィー

  • 一般的には肝生検および術中胆道造影

胆道閉鎖症は,総ビリルビン値と直接ビリルビン値両方の上昇によって同定される。α1-アンチトリプシン欠乏症も胆汁うっ滞の原因として比較的頻度が高いため,血清α1-アンチトリプシン濃度を測定すべきである。肝機能を評価するために必要な検査としては,アルブミン,肝酵素,プロトロンビン時間/部分トロンボプラスチン時間(PT/PTT),アンモニア値などがある。嚢胞性線維症を除外するために汗の塩分濃度も測定すべきである。しばしば,新生児胆汁うっ滞に対するその他の代謝性,感染性,遺伝性,および内分泌系の原因について評価するために,さらなる検査が必要となる。

腹部超音波検査は,肝臓の大きさと胆嚢および総胆管の特定の異常を非侵襲的に評価することができる。胆道閉鎖症の乳児では,胆嚢が収縮して小さくなっているか,観察できないことが多い。しかしながら,これらの所見は非特異的である。ヒドロキシ基イミノ二酢酸を用いる肝胆道シンチグラフィー(HIDA scan)も行うべきであり,腸管内への造影剤排泄があれば胆道閉鎖は除外されるが,排泄がない場合は胆道閉鎖症,重度の新生児肝炎,ならびに胆汁うっ滞のその他の原因が考えられる。

胆道閉鎖症の確定診断は,肝生検および術中胆道造影による。古典的な組織学的所見は,線維化による門脈域の拡張と胆管増生である。胆管には胆栓もみられることがある。術中胆道造影では肝外胆管の開存がみられない。

予後

胆道閉鎖症は進行性であり,無治療では生後数カ月までに門脈圧亢進症を伴う肝硬変を起こし,肝不全を来して1歳までに死に至る。

治療

  • 術中胆道造影

  • 肝門部腸吻合術(葛西手術)

  • しばしば肝移植

胆道閉鎖症が推定される児には,術中胆道造影による外科的検索が必要である。胆道閉鎖症が確定した場合は,肝門部腸吻合術(葛西手術)を施行すべきである。葛西手術は理想的には生後1~2カ月で施行すべきである。この時期を過ぎた場合,短期的予後は顕著に悪化する。術後,多くの患児に胆汁うっ滞の持続,再発性の上行性胆管炎,および発育不良などの重大な慢性的問題がみられる。上行性胆管炎の予防として術後1年間は抗菌薬の予防投与(例,トリメトプリム/スルファメトキサゾール)が処方されることが多い。ウルソデオキシコール酸10mg/kgを1日3回経口投与するなど,胆汁分泌を促進する薬剤(利胆薬)が術後にしばしば使用される。成長を支えるのに十分な摂取量を確保するために,脂溶性ビタミンを補充するなどの栄養療法が非常に重要である。至適治療がなされていても,ほとんどの患児は肝硬変を発症し肝移植を必要とする。

肝門部腸吻合術を受けられない患児には,しばしば1~2歳までに肝移植が必要になる。

要点

  • ほとんどの場合,胆道閉鎖症は生後数週間が経過した後,おそらく肝外(および,ときに肝内)胆管の炎症および瘢痕化に引き続いて発症する。

  • 患児は黄疸を呈し,しばしば濃色尿(抱合型ビリルビンを含有する),灰白色便,および肝脾腫がみられる。

  • 生後2~3カ月までに,発育不良と栄養障害,そう痒,易刺激性,および脾腫がみられることがある。

  • 血液検査結果,超音波検査,肝胆道シンチグラフィー,肝生検,および術中胆道造影よって診断する。

  • 治療は肝門部腸吻合術(葛西手術)による。

  • 通常はその後に肝移植が必要になる。

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