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動脈管開存症(PDA)

(動脈管開存症)

執筆者:

Jeanne Marie Baffa

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2016年 11月
本ページのリソース

心血管系の先天異常の概要も参照のこと。)

動脈管開存症(PDA)とは,大動脈と肺動脈をつなぐ胎児期の交通路(動脈管)が出生後も開存している状態である。心臓に他の構造的異常がなく,肺血管抵抗の上昇もない場合,PDAにおける短絡は左右方向(大動脈から肺動脈)となる。症状としては,発育不良,哺乳不良,頻拍,頻呼吸などがある。胸骨左縁上部に連続性雑音が聴取されることが多い。診断は心エコー検査による。有意な短絡のある未熟児には,シクロオキシゲナーゼ阻害薬(イブプロフェン リシンまたはインドメタシン)の単独投与または水分制限との併用を試みてもよいが,この治療法はPDAを有する正期産児やより年長の患児では効果的でない。動脈管の開存が遷延する場合は,外科手術またはカテーテル手技による修正が適応となる。

動脈管開存症は先天性心奇形の5~10%を占め,男女比は1:3である。PDAは未熟児では非常に多くみられる(出生体重1750g未満では約45%,出生体重1200g未満では70~80%)。PDAの約3分の1は自然に閉鎖し,超低出生体重児でも同様である。未熟児において開存が遷延すると,有意なPDAによって心不全,肺出血,腎機能不全,哺乳不耐(feeding intolerance),壊死性腸炎が生じ,死に至ることもある。

病態生理

動脈管は肺動脈と大動脈をつなぐ正常な交通であり,適正な胎児循環に必要である。出生時には,Pao2の上昇とプロスタグランジン濃度の低下が起こることにより,典型的には生後10~15時間以内に,動脈管の閉鎖が始まる。このプロセスが正常に起こらないと,動脈管の開存が持続する( 動脈管開存症)。

動脈管開存症

肺血流量,左房および左室容積,ならびに上行大動脈容積が増加する。

AO = 大動脈;LA = 左房;LV = 左室;

PA = 肺動脈。

動脈管開存症

生理学的な影響は動脈管の太さに依存する。動脈管が細ければ,症状が現れることはまれである。太い動脈管は大量の左右短絡を引き起こす。長期的には,大量の短絡によって左心拡大,肺動脈高血圧,肺血管抵抗の上昇が起こり,最終的にはアイゼンメンジャー症候群を来すことになる。

症状と徴候

臨床像は動脈管開存の大きさと分娩時の在胎期間に依存する。小さなPDAを有する乳児および小児は一般に無症状であるが,大きなPDAを有する乳児には心不全の徴候(例,発育不良,哺乳不良,頻呼吸,哺乳時の呼吸困難,頻拍)が出現する。未熟児の場合は,呼吸窮迫,無呼吸,人工換気設定条件の悪化,その他の重篤な合併症(例,壊死性腸炎)が発生することがある。未熟児では,心不全の徴候が正期産の乳児の場合より早期に出現するほか,より重度となりやすい。未熟児の動脈管を介した大量の短絡は,しばしば未熟性肺疾患の重症化に対する主要な寄与因子となる。

小さなPDAを有する患児の大半では,心音および末梢脈拍は正常である。1/6~3/6度の連続性雑音が胸骨左縁上部で最もよく聴取される( 心雑音の強度)。雑音は収縮期からII音を超え拡張期まで及び,典型的には収縮期と拡張期でピッチが異なる。

有意なPDAを有する正期産の乳児では,脈圧増大を伴う末梢血管の充満または反跳脈がみられる。1/6~4/6度の連続性雑音が特徴的である。雑音が大きい場合には,「機械様」に聞こえる。大量の左右短絡があるか心不全が発生した場合は,心尖部の拡張期ランブル(僧帽弁の血流量増大による)または奔馬調律が聴取される。

有意な短絡のある未熟児では,反跳脈と心尖拍動の亢進が認められる。肺動脈領域で心雑音が発生するが,これは肺動脈圧に応じて,連続性雑音のこともあれば,短い拡張期成分を伴う収縮期雑音や,収縮期成分のみのこともある。心雑音が全く聴取されない例もある。

診断

  • 胸部X線および心電図

  • 心エコー検査

診断は診察で示唆され,胸部X線および心電図で裏付けを得て,カラードプラ法を用いた2次元心エコー検査によって確定する。

動脈管開存症の開存口が小さい場合は,胸部X線および心電図は典型的には正常となる。有意な短絡が生じている場合は,胸部X線で左房,左室,および上行大動脈の突出ならびに肺血管陰影の増強を認め,心電図では左室肥大を認めることがある。

心エコー検査で以下のものを含むいくつかのパラメータを評価することにより,PDAの血行動態上の重大性について重要な情報が得られる:

  • PDAの大きさ(左肺動脈の大きさと比較することが多い)

  • PDA中の流速

  • 左心拡大の有無

  • 下行大動脈における拡張期逆行性血流の有無

  • 左肺動脈における拡張期順行性血流

心臓カテーテル検査は,治療に用いる場合を除いて必要ない。

治療

  • 内科的な支持療法

  • 有症状の未熟児では,シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬(例,インドメタシン,イブプロフェン リシン)による治療

  • ときにカテーテル閉鎖術または外科的修復

動脈管開存症の典型的な内科的管理としては,水分制限,利尿薬(通常サイアザイド系薬剤),ヘマトクリット35%以上の維持,ニュートラルな温度環境下での保育,人工換気下の患者に対するガス交換を改善するための呼気終末陽圧(PEEP)の適用などがある。

患児が未熟児か満期産児かによって治療は異なる。

未熟児におけるPDAの治療

水分制限は動脈管の閉鎖を促進する可能性がある。

呼吸障害もその他の異常もみられない未熟児では,動脈管開存症は一般的に治療対象とならない。

血行動態上有意なPDA呼吸状態の悪化がみられる未熟児では,ときにCOX阻害薬(例,イブプロフェン リシンまたはインドメタシン[用量については インドメタシンの投与ガイドライン(mg/kg)*])によってPDAを閉鎖できることがある。COX阻害薬は,プロスタグランジンの産生を阻害することにより作用する。インドメタシンは尿量に応じて12~24時間毎に3回静脈内投与するが,尿量が0.6mL/kg/時未満の場合は投与を控える。代替法としては,イブプロフェン リシン10mg/kgの経口投与に続いて,24時間間隔で5mg/kgを2回投与する。

かつては,水分制限および/またはCOX阻害薬が不成功に終わったPDAは,外科的に結紮されていた。過去10年間で,PDAに対するこの非選択的アプローチは長期成績の改善につながっていないと認識されるようになった。より最近では,手術が有益となる可能性が高い,血行動態上有意なPDAを有する集団を適切に定義することに力が注がれている。血行動態上の有意性の確認には心エコー検査が重要な役割を担う。

少数の施設では,2kg未満の早期産児を対象としたPDAのカテーテル閉鎖術で成功を収めている。

icon

インドメタシンの投与ガイドライン(mg/kg)*

1回目投与時の生後経過時間

1回目

2回目

3回目

48時間未満

0.2

0.1

0.1

2~7日

0.2

0.2

0.2

7日以上

0.2

0.25

0.25

*投与間隔は尿量に基づく(本文参照)。

満期産児におけるPDAの治療

満期産児には,COX阻害薬は通常無効である。

1歳以上の小児のPDAに対する第1選択の治療はカテーテル閉鎖術であり,正期産児および幼若乳児においても同様にカテーテル閉鎖術が好ましいと考える研究者もいる。様々なカテーテル用閉塞デバイスが使用可能である(例,コイル,septal duct occluder)。

動脈管の解剖がカテーテル閉鎖術には不向きな1歳未満の乳児では,カテーテル手技よりも外科的な分離・結紮の方が望ましい。心不全症状または肺高血圧を起こすほど大量の短絡が生じている動脈管開存症では,内科的治療で安定させた後に閉鎖術を施行すべきである。心不全および肺高血圧がみられない遷延性のPDAでは,生後1年以降のいずれの時点でも待機的に閉鎖することができる。閉鎖術を遅らせることによって,血管合併症のリスクが最小限に抑えられ,自然閉鎖を待つことも可能である。

PDA閉鎖後の予後は非常に良好である。

心内膜炎予防は,術前には必要ないが,閉鎖後最初の6カ月間,またはカテーテルで留置したデバイスもしくは外科用材料に隣接して遺残欠損がある場合にのみ必須である。

要点

  • 動脈管開存症(PDA)とは,大動脈と肺動脈をつなぐ胎児期の正常な交通路(動脈管)が出生後も開存している状態であり,結果として左右短絡が生じる。

  • 臨床像はPDAの大きさと患児の年齢に依存するが,連続性雑音が特徴的であり,雑音が大きい場合は「機械様」に聞こえる。

  • 未熟児では,呼吸窮迫またはその他の重篤な合併症(例,壊死性腸炎)が発生することがある。

  • 長期的には,大量の短絡によって左心拡大,肺動脈高血圧,および肺血管抵抗の上昇が起こり,無治療では最終的にアイゼンメンジャー症候群を来すことになる。

  • 血行動態上有意なPDAを有する未熟児には,COX阻害薬(例,イブプロフェン リシンまたはインドメタシン)を投与する。外科的閉鎖は,薬物療法が不成功に終わった血行動態上有意なPDAを有する患者で有益となる可能性がある。

  • 満期産児および児童期の小児には,COX阻害薬は通常無効であるが,典型的にはカテーテルによるデバイス閉鎖か外科手術が有益となる。

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