乳幼児における呼気性喘鳴および喘息

執筆者:Rajeev Bhatia, MD, Phoenix Children's Hospital
レビュー/改訂 2020年 6月
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呼気性喘鳴(wheezing)とは,末梢気道の狭小化したまたは圧迫された部位を空気が通る際に生じる比較的高調な笛様の雑音である。生後数年間に最もよくみられ,典型的には気道のウイルス感染または喘息により起こるが,可能性のある他の原因として刺激物またはアレルゲンの吸入,食道逆流,および心不全などがある。

(成人における呼気性喘鳴および喘息も参照のこと。)

反復性の呼気性喘鳴は生後数年間はよくみられる;小児3人に1人が,3歳までに少なくとも1回急性の呼気性喘鳴のエピソードを呈する(1)。このような喘鳴は通常,気管支拡張薬に反応するため,歴史的には喘息と考えられてきた。しかし,小児期早期に反復性喘鳴があった多くの小児で小児期後期または青年期に喘息はみられないという最近のエビデンスから,反復性喘鳴の幼児では別の診断を考慮すべきであることが示唆されている。

オーディオ

パール&ピットフォール

  • 乳幼児の呼気性喘鳴(wheezing)全てが喘息とは限らない。

総論の参考文献

  1. 1.Taussig LM, Wright AL, Holberg CJ, et al: Tucson Children's Respiratory Study: 1980 to present.J Allergy Clin Immunol 111:661–675, 2003. doi: 10.1067/mai.2003.162.

病因

一部の幼児では,喘鳴の反復エピソードが喘息の最初の臨床像であり,このような小児では小児期後期または青年期にも喘鳴が継続する。6~10歳までに喘鳴が止まり喘息とは考えられない小児もいる。乳幼児では,ウイルス性疾患による呼気性喘鳴,特にRSウイルスおよびヒトライノウイルスによるものは,小児喘息の発生リスク増加と関連する(1)。アトピー症状があり,より重度の喘鳴を呈し,かつ/またはアトピーまたは喘息の家族歴がある小児は,最終的に喘息と診断される可能性が高い。

通常,喘鳴は気管支攣縮によって起こり,気管支攣縮は末梢気道と中気道の炎症によって悪化し,炎症が浮腫を起こし気道がさらに狭小化する。通常,乳幼児の急性喘鳴は気道のウイルス感染によって起こるが,気道の炎症はアレルギーまたは吸入刺激物(例,タバコ煙)によっても起こる(または悪化する)。反復性喘鳴は,頻回の呼吸器のウイルス感染,アレルギー,または喘息によって起こる。反復性喘鳴の比較的まれな原因として,反復性誤嚥を起こす慢性嚥下困難,胃食道逆流症,気道の軟化症,誤嚥した異物の残存,または心不全などがある。反復性喘鳴の原因は不明なことが多い。

病因論に関する参考文献

  1. 1.Sigurs N, Bjarnason R, Sigurbergsson F, et al: Respiratory syncytial virus bronchiolitis in infancy is an important risk factor for asthma and allergy at age 7.Am J Respir Crit Care Med 161:1501–1507, 2000.doi: 10.1164/ajrccm.161.5.9906076.

症状と徴候

喘鳴には反復する乾性咳嗽または湿性咳嗽が伴うことが多い。他の症状は病因によって異なり,発熱,鼻水(ウイルス感染症),および哺乳困難(例,心不全や嚥下困難による)などがある。

診察では,喘鳴は気道の狭小化が重度でなければ主に呼気で現れるが,重度の場合は喘鳴は吸気時にも聴取しうる。重症例の他の所見には,頻呼吸,鼻翼呼吸,肋間および/または剣状突起下の陥凹,およびチアノーゼなどがある。呼吸器感染症の患児には発熱がみられる可能性がある。

診断

  • 最初のエピソードが重度の場合,およびときに非典型的または反復性のエピソードの場合は胸部X線

重度の喘鳴の初回エピソードに対し,ほとんどの医師は異物誤嚥,肺炎,または心不全の徴候を検出するため胸部X線を行い,酸素療法の必要性を評価するためパルスオキシメトリーによる測定を行う。単純X線上での全体的な過膨張は,喘息でみられるようなびまん性のエアトラッピングを示唆するのに対し,局所的な所見は,構造的異常または異物誤嚥を示唆する。胸部X線で,呼気性喘鳴の原因として血管輪(例,右大動脈弓)が見つかることもある。

反復エピソードがある小児では,呼吸窮迫徴候がある場合を除き,増悪に対して検査は通常必要ではない。嚥下検査,食道造影検査,CT,または気管支鏡などの検査は,頻回または重度の増悪や症状がみられ気管支拡張薬や他の抗喘息薬に反応しない少数の患児の助けになりうる。

予後

小児期早期に反復性喘鳴を示す多くの小児は,その後臨床的に重要な喘鳴を呈さない。しかし,困難な慢性喘息を有する,より年長の小児と成人の多くは,小児期早期に最初の症状が生じる。

治療

  • 急性喘鳴エピソードには,吸入気管支拡張薬,および必要に応じてコルチコステロイドの全身投与

  • 頻回の重度の喘鳴エピソードのある患児には,喘息に使用される維持療法(例,吸入コルチコステロイド)の試験的使用

急性喘鳴の乳幼児には,吸入気管支拡張薬,および喘鳴が重度の場合,コルチコステロイドの全身投与(急性増悪の治療を参照)。

アトピーがない,アトピーおよび喘息の家族歴がない,喘鳴エピソードが比較的軽度かつ頻回でないなど,持続型の喘息を発症する可能性の低い小児は,通常,吸入気管支拡張薬の必要に応じた間欠的使用のみで管理できる。より頻回かつ/または重度の喘鳴エピソードがあるほとんどの幼児には,喘息に使用される気管支拡張薬(必要に応じて)および抗炎症薬による維持療法(例,吸入コルチコステロイド)が有益である( see page 治療)。しかし,ロイコトリエン修飾薬(leukotriene modifier)または低用量吸入コルチコステロイドの長期使用は喘鳴エピソードの重症度と頻度を低下させるものの,疾患の自然経過を変えることはない。

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