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小児における脱水

執筆者:

Michael F. Cellucci

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2014年 11月
本ページのリソース

脱水とは体内水分量が著しく欠乏している状態のことであり,程度は様々であるが電解質も欠乏している状態である。症状および徴候として,口渇,嗜眠,粘膜の乾燥,尿量の減少,および,脱水の程度が進行するにつれて,頻脈,低血圧,ショックなどが現れる。診断は病歴と身体診察に基づく。治療は,経口または静注での水分および電解質補充により行う。

脱水は,依然として世界中の乳幼児における疾患発生および死亡の主要な原因である。脱水は,ある疾患(最も頻度が高いのは下痢)の1つの症状または徴候である。乳児は特に脱水の悪影響を受けやすく,その理由は,ベースラインの水分要求量がより多いこと(代謝率がより高いことに起因),蒸散による喪失がより多いこと(容量に対する体表面積の比が大きいことに起因),および口渇を伝えられない,もしくは水を求められないことである。

病因

脱水の病因は以下の通りである:

  • 水分喪失量の増加

  • 水分摂取量の減少

  • これら両方

水分喪失量が増加する部位で最も多いのは消化管であり,嘔吐,下痢,またはその両方(例,胃腸炎— 胃腸炎の概要)による。その他の喪失源は,腎臓(例,糖尿病性ケトアシドーシス),皮膚(例,大量発汗,熱傷),およびサードスペースへの喪失(例,腸閉塞ないしイレウスが生じた腸管内腔への喪失)である。

水分摂取量の減少は,咽頭炎などの軽度の疾患またはあらゆる種類の重篤な疾患でよくみられる。小児が嘔吐している場合,または発熱,頻呼吸,もしくはその両方によって不感蒸泄が増加している場合,水分摂取量の減少は特に問題である。また,ネグレクトの徴候ともなりうる。

病態生理

喪失する水分はどのタイプでも様々な濃度の電解質を含んでいるため,水分喪失は電解質のある程度の喪失を必ず伴う。電解質喪失の正確な量と種類は,原因(例,下痢の場合,著しい量のHCO3-が失われるが,嘔吐の場合はそうではない)によって異なる。しかし,水分喪失には常に血漿よりも低濃度のNaが含まれている。そのため,何らかの補液がない場合,血清Na値は上昇する(高ナトリウム血症)。高ナトリウム血症によって,水は細胞内および間質腔から血管内腔へ移動し,少なくとも一時的に,血管内容量の維持を助ける。低張液(例,真水)を用いた補液では,血清Na値は正常化することもあるが,低下することもある(低ナトリウム血症)。低ナトリウム血症では,血管内容量を犠牲にして血管内腔から間質へある程度の水分の移動が生じる。

症状と徴候

症状と徴候は欠乏の程度( 脱水の臨床的相関)と血清Na値によって異なる。間質から血管内腔への水の移動のため,水分喪失が同程度の場合,高ナトリウム血症の患児の方が低ナトリウム血症の患児より重症感が強い(例,粘膜乾燥が強く,皮膚が青白く軟らかい)。しかし,血管内腔から水が移動している低ナトリウム血症の患児に比べ,高ナトリウム血症の患児の方が血行動態は良好である(例,頻脈の程度が低く尿量も良好)。脱水状態にある低ナトリウム血症の患児は,心血管虚脱および低血圧が切迫するまで,軽度の脱水状態のようにしか見えないことがある。

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脱水の臨床的相関

重症度

水分欠乏量,単位mL/kg(体重に対する%)*

徴候

乳児

青年

軽度

50(5%)

30(3%)

典型的には軽微な所見であるが,頬粘膜のわずかな乾燥,口渇が増す,尿量のわずかな減少

中等度

100(10%)

50~60(5~6%)

頬粘膜の乾燥,頻脈,尿が少量か全く出ない,嗜眠,眼および泉門の陥凹,皮膚ツルゴールの低下

重度

150(15%)

70~90(7~9%)

中等度と同様の徴候に加えて,速くて弱い脈;涙液欠乏;チアノーゼ;速い呼吸;毛細血管再充満時間の延長;低血圧;斑状の皮膚;昏睡

*乳児から青年の間の小児に対する標準的な推定値は確立されていない。この年齢範囲の小児に対して,医師は乳児の値と青年の値の間で臨床的評価に基づいて値を推定しなければならない。

これらの所見は血清Na値が正常範囲の患児でみられるものであり,高ナトリウム血症や低ナトリウム血症があると臨床像が異なってくる。

診断

  • 臨床的評価

一般に,脱水は以下のように定義される:

  • 軽度:血行動態の変化を伴わない(乳児では体重の約5%,青年では約3%)

  • 中等度:頻脈(乳児では体重の約10%,青年では約6%)

  • 重度:灌流障害を伴う低血圧(乳児では体重の約15%,青年では約9%)

しかし,脱水を評価するために症状と徴候を組み合わせて用いることは,1つの徴候のみの使用より正確な方法である。急性の脱水を来した患児で脱水の程度を評価する他の方法は体重の変化である;短期間に1日当たり1%を超える体重減少は全例,水分の欠乏を示すものとみなされる。しかしこの方法は,罹病前かつ最近の正確な体重を知っているかどうかに依存する。親による推定値は通常は不適当であり,体重10kgの小児における1kgの誤差は脱水の割合に換算すると10%の誤差となり,これは軽度の脱水と重度の脱水の差に相当する。

臨床検査は通常,電解質異常(例,高ナトリウム血症,低カリウム血症,代謝性アシドーシスまたはアルカローシス)の頻度がより高い中等度または重度の患児,および輸液療法が必要な患児でのみ実施される。脱水における検査結果の他の異常値には,血液濃縮による相対的な赤血球増多,BUNの上昇,尿比重の上昇などがある。

治療

  • 補液(可能であれば経口)

治療は,急速輸液での必要量,現在の欠乏量,進行中の喪失の量,および維持必要量を個別に考慮するアプローチが最良である。容量(例,輸液の量),組成,および補充速度は,それぞれに対して異なる。治療パラメータを決定するために用いる数式と推定値から開始時の数値が得られるが,治療にはバイタルサイン,臨床所見,尿量,および体重のほか,ときに血清電解質レベルの継続的モニタリングが必要となる。

American Academy of PediatricsとWHOの両者は軽度および中等度の脱水に経口補液療法を推奨している。重度の脱水(例,循環障害の所見)を有する小児には,輸液を行うべきである。経口摂取ができないまたはしようとしない患児,または嘔吐を繰り返す患児には,少量頻回の経口投与,静脈内投与,または経鼻胃管により補液を行う( 経口補液 : 溶液)。

急速輸液

低灌流の徴候を有する患児には,等張液(例,生理食塩水または乳酸リンゲル液)のボーラス投与による急速輸液を行うべきである。血圧および灌流を回復させるために,十分な循環体液量を回復することを目標とする。蘇生段階では,中等度または重度の脱水を体重の約8%の欠乏にまで回復させるべきである。脱水が中等度の場合,20mL/kg(体重の2%)の静注補液を20~30分かけて投与し,10%の欠乏を8%までに減らす。脱水が重度の場合,ときに3回の20mL/kgのボーラス投与が必要となる可能性が高い。急速輸液段階の終了点は,末梢循環および血圧の回復,ならびに心拍数の正常値(発熱がみられない小児の場合)への回復である。

欠乏量の補充

水分総欠乏量は,上述の方法で臨床的に推定される。Na欠乏量は通常,水分欠乏1L当たり約60mEqで,K欠乏量は通常,水分欠乏1L当たり約30mEqである。中等度または重度の脱水は,急速輸液段階で体重の約8%の欠乏にまで軽減させておくべきである;この残りの欠乏量は10mL/kg(体重の1%)/時の8時間投与によって補充可能である。0.45%食塩水には1L当たり77mEqのNaが含まれているため,通常は選択として適切な輸液であり,特に下痢の電解質含量が典型的には50~100mEq/Lであることから下痢の患児に適切である( 原因から推定される電解質欠乏量)。Kの補充(通常,補液1Lにつき20~40mEqのKを添加することによる)は,十分な尿量が確立するまでは開始すべきでない。

著明な高ナトリウム血症(例,血清Na値 > 160mEq/L)または低ナトリウム血症(例,血清Na値 < 120mEq/L)を伴う新生児の脱水には,合併症を回避するための特別な配慮が必要である( 新生児の高ナトリウム血症および 新生児の低ナトリウム血症)。

進行中の喪失

進行中の喪失の量は直接的に測定(例,経鼻胃管,カテーテル,便の測定)するか,または推定(例,下痢便1回につき10mL/kg)する。補充は,喪失の急速さおよび程度に対して適切な時間間隔で,喪失量と同量の補充を行うべきである。進行中の電解質喪失の量は,喪失源または原因によって推定できる( 原因から推定される電解質欠乏量)。尿を介した電解質の喪失量は,水分摂取量と疾患の経過に伴って変動するが,欠乏が補充療法に対して反応しない場合は測定してもよい。

維持必要量

基礎代謝による水分および電解質の必要量も考慮に入れなければならない。維持必要量は,代謝率に関連し,体温の影響を受ける。不感蒸泄(皮膚および気道からの蒸発による自由水の喪失)は,維持必要総量の約3分の1を占める(乳児ではこれよりやや多く,青年と成人ではやや少ない)。

用量を正確に決定しなければならない状況はまれであるが,一般的に腎臓が尿を著しく濃縮または希釈せずに済む量の水分投与を目指すべきである。最も一般的な推定法はHolliday-Segar式で,患児の体重を用いて代謝による消費量(kcal/24時間)を算出するが,その値は水分必要量(mL/24時間)にほぼ相当する( 体重毎の維持輸液必要量に対するHolliday-Segar式)。代謝による消費量の変動は体重に基づくものであるため,Holliday-Segar式では3つの体重区分を用いる。より複雑な計算式(例,体表面積を用いるもの)が必要になることはまれである。維持輸液量は個別に同時注入として投与できるため,欠乏量および進行中の喪失に対する補充注入の速度は,維持注入の速度に依存せずに設定および調節可能である。

基礎代謝推定値は,発熱(37.8℃を超えると1℃につき基礎推定値の12%ずつ増加),低体温,および活動度(例,甲状腺機能亢進またはてんかん重積状態で増加し,昏睡で減少する)から影響を受ける。

組成は,欠乏量および進行中の喪失を補充するために用いられる溶液とは異なる。Holliday-Segar式によると,患児が必要とするNaは3mEq/100kcal/24時間(3mEq/100mL/24時間),Kは2mEq/100kcal/24時間(2mEq/100mL/24時間)である。(:2~3mEq/100mL/24時間は,20~30mEq/L溶液に相当する。)この必要量は,0.2~0.3%食塩水とKを20mEq/L含有する 5%ブドウ糖溶液を用いることで達成される。しかし,最近の文献では,入院し維持輸液として0.2%食塩水を投与された脱水の患児で,ストレス,嘔吐,脱水,および低血糖などの刺激のためにおそらく抗利尿ホルモンがかなりの量放出され,自由水貯留が引き起こされることで,ときに低ナトリウム血症が生じることが示唆されている。この医原性低ナトリウム血症の可能性により,多くの医療センターは現在,脱水の患児の維持輸液として0.45%または0.9%食塩水などのより等張性の輸液を用いており,検査や処置前に絶食で静脈内輸液を必要とするなどの脱水のない小児を対象にルーチンの維持輸液として0.2%食塩水を用いている。医原性低ナトリウム血症は,重篤度の高い小児および手術後入院している小児にとってより大きな問題である。適切な輸液について議論が続いているが,静脈内輸液を受けている脱水患者を綿密にモニタリングするという重要な点では全ての医師が同意している。その他の電解質(例,Mg,Ca)はルーチンに加えない。欠乏量および進行中の喪失を,維持輸液の用量や速度を上昇させることのみで補充することは,不適切である。

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原因から推定される電解質欠乏量

成因

ナトリウム(mEq/L)

カリウム(mEq/L)

下痢

等張性脱水

80

80

低張性脱水

100

80

高張性脱水

20

10

幽門狭窄

80

100

糖尿病性ケトアシドーシス

80

50

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体重毎の維持輸液必要量に対するHolliday-Segar式

体重(kg)

電解質(mEq,水1Lにつき)

mL/日

mL/時

0~10kg

100/kg

4/kg

Na 30, K 20

11~20kg

1000 + 50(10kgを超える1kgにつき)

40 + 2(10kgを超える1kgにつき)

Na 30, K 20

> 20kg

1500 + 20(20kgを超える1kgにつき)

60 + 1(20kgを超える1kgにつき)

Na 30, K 20

実施例

生後7カ月の乳児が3日間にわたり下痢を起こし,体重が10kgから9kgに減少した。現在は3時間毎に下痢をしており,水分摂取を拒否している。粘膜の乾燥,皮膚ツルゴールの低下,著明な尿量減少,および血圧と毛細血管再充満は正常な頻脈という臨床所見から,10%の水分欠乏が示唆される。直腸温は37℃,血清Naは136mEq/L,Kは4mEq/L,Clは104mEq/L,HCO3は20mEq/Lである。

輸液量は,欠乏量,進行中の喪失の量,および維持必要量によって推定する。

体重を1kg減少させる総水分欠乏量は1Lである。

進行中の下痢による喪失は,生じたときに,おむつの重さを使用前と下痢の後に量ることによって測定する。

体重に基づいたHolliday-Segarの式による基準となる維持必要量は,100mL/kg × 10kg = 1000mL/日 = 1000mL/24時または40mL/時である。

ナトリウム値正常の患者の下痢による電解質の喪失量原因から推定される電解質欠乏量)は,推定でNaが80mEqでKが80mEqである。

手技

急速輸液

この患児には,最初に乳酸リンゲル液200mL(20mL/kg × 10kg)のボーラスを30分かけて投与する。これにより,推定されるNa欠乏量80mEqのうち26mEqが補充される。

欠乏量

残りの水分欠乏量は800mL(最初の欠乏量1000mLから急速輸液での200mLを引く),残りのNa欠乏量は54mEq(80 26mEq)である。残りの量をその後の24時間で投与する。典型的には,半量(400mL)を最初の8時間に投与し(400 ÷ 8 = 50mL/時),残りの半量をその後の16時間で投与する(25mL/時)。使用される輸液は5%ブドウ糖溶液/0.45%食塩水である。これにより,Na欠乏量が補充される(0.8L × Na77mEq/L = Na62mEq)。尿量が確立されれば,Kを20mEq/Lの濃度で加える(安全上の理由で,K欠乏量の完全な補充を急速には試みない)。

進行中の喪失

5%ブドウ糖溶液/0.45%食塩水は,進行中の喪失の補充のためにも用いる;投与量および速度は下痢の量によって決定する。

維持輸液

5%ブドウ糖溶液/0.2%または0.45%食塩水を40mL/時の速度で投与し,尿量が確立されればKを20mEq/L加える。代替として,最初の8時間で欠乏量を補充し,それに続いて16時間で1日分(すなわち,60mL/時)の維持輸液を行うことも可能である;24時間分の維持輸液を16時間で投与することで,投与時間を計算上通常の1.5倍まで短縮でき,同時の輸注(2つの速度制御ポンプを必要とする)を行わずに済む。

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