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小児および青年における抑うつ障害

執筆者:

Josephine Elia

, MD, Sidney Kimmel Medical College of Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2017年 2月
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抑うつ障害は,機能の障害やかなりの苦悩を発生させるほど重度または持続的な悲しみまたは易怒性を特徴とする。診断は病歴および診察による。治療は,抗うつ薬,支持療法および認知行動療法,またはこれらの両方による。

(成人における抑うつ障害群の考察も参照のこと。)

小児および青年の抑うつ障害としては以下のものがある:

  • 重篤気分調節症

  • うつ病

  • 持続性抑うつ障害(気分変調症)

抑うつという用語は,失望(例,重篤な病気)や喪失(例,愛着対象の死亡)からもたらされる低調または落胆した気分を表すのに漫然と使用されることも多い。しかしながら,そのような気分の落ち込みは,抑うつとは異なり,断続的に生じるもので,きっかけとなった出来事についての思考やその出来事を思い出させる物事に結びついていることが多く,環境や出来事が改善すれば解消され,合間には陽性感情やユーモアを示す時期がみられる場合もあり,広汎な無価値感や自己嫌悪は伴わない。気分の落ち込みの持続期間は,数週間や数カ月間ではなく,通常は数日であり,自殺念慮や長期に及ぶ機能喪失が生じる可能性ははるかに低い。そのような気分の落ち込みは,意気消沈または悲嘆と呼ぶ方が適切である。しかしながら,意気消沈や悲嘆を引き起こす出来事およびストレス因子は,うつ病エピソードも誘発する可能性がある。

小児および青年におけるうつ病の病因は不明であるが,成人における病因と類似しており,遺伝的に決定される危険因子と環境ストレス(特に若年期の剥奪および喪失)との相互作用の結果として生じるものと考えられている。

症状と徴候

小児および青年における抑うつ障害の基本症状は,成人にみられるものと類似するものの,学業や遊びなどの小児に典型的な関心事に関係している。小児は内面の感情または気分を説明できないことがある。それまで成績優秀であった小児が成績を落としたり,引きこもりになったり,非行に走ったりした場合は,うつ病を考慮すべきである。

抑うつ障害患児の一部では,優勢な気分が悲しみではなく易怒性のことがある(小児型と成人型との重要な鑑別点)。小児期うつ病に関連する易怒性は,過行動および攻撃的反社会的行動として現れることがある。

知的能力障害がある小児では,抑うつ障害またはその他の気分障害が身体症状および行動障害として出現する可能性がある。

重篤気分調節症

重篤気分調節症は,持続的な易怒性と頻繁な制御不能の行動エピソードがみられる病態で,6~10歳で発症する。多くの患児には,他の障害,特に反抗挑発症注意欠如・多動症(ADHD),または不安症がみられる。この診断は6歳以前または18歳以降は下されない。成人の場合と同様に,単極性(双極性ではない)うつ病または不安症が発生する可能性がある。

12カ月以上にわたって以下の症状や徴候がみられる(いずれもみられない期間が3カ月以上続かない):

  • その状況から考えて著しく不釣り合いなほどの,重度,反復性のかんしゃく発作(例,人または器物に対する罵倒および/または身体的攻撃)で,平均週3回以上起こるもの

  • 発達水準に不相応なかんしゃく発作

  • 毎日,一日の大半の時間に苛立ちや怒りの気分がみられ,それが他者(例,親,教師,友人)により観察されている

かんしゃく発作および怒りは3つの状況(家,学校,友人といるとき)のうち2つで生じる必要がある。

うつ病

うつ病(major depressive disorder)は,明らかな抑うつエピソードが2週間以上持続する場合である。小児では2%,青年では5%と高い頻度で発生する。うつ病はいずれの年齢でも発症するが,思春期以降で頻度が高くなる。無治療でも,うつ病は6~12カ月で寛解することがある。重度のエピソードがみられた患者,比較的年少の患者,および複数回のエピソードがみられた患者では,再発リスクが高い。たとえ寛解中の軽度の抑うつ症状でも,長期間の持続は再発の強い予測因子である。

診断には,以下のうち1つ以上が同一の2週間以内にほぼ毎日,一日の大半の時間にみられる必要がある:

  • 悲しみを感じている,または悲しみ(例,涙を流している)または易怒性が他者により観察されている

  • ほぼ全ての活動に対する興味または喜びの喪失(しばしば著明な倦怠と表現される)

加えて,以下のうち4つ以上が存在しなければならない:

  • 体重減少(小児では,予測される体重増加がみられない),食欲減退,または食欲亢進

  • 不眠または過眠

  • 他者により観察される(自己報告ではない)精神運動焦燥または静止運動制止

  • 疲労感または気力喪失

  • 思考,集中,および選択の能力低下

  • 死(死の恐怖だけではない)に関する反復的思考および/または希死念慮もしくは自殺企図

  • 無価値感(すなわち,他者から拒否され,愛されていないと感じる)または過剰もしくは不適切な罪悪感

青年におけるうつ病は,学業不振,物質乱用,および自殺行動の危険因子である。抑うつ状態の間は,成績が急激に低下したり,重要な友人関係を失ったりする傾向がある。

持続性抑うつ障害(気分変調症)

気分変調症は,抑うつ気分または易怒性が一日の大半の時間かつ1年以上にわたり半分以上の日数で認められ,以下のうち2つ以上を示すものである:

  • 食欲不振または過食

  • 不眠または過眠

  • 気力減退または疲労感

  • 自尊心の低下

  • 集中力低下

  • 絶望感

症状はうつ病のものより多少強い場合がある。

うつ病エピソードが発症前または最初の1年間(すなわち,持続期間の基準が持続性抑うつ障害に合致する前)に生じることがある。

診断

  • 臨床的評価

抑うつ障害群の診断は上記の基準を含めた症状と徴候に基づいて行う。

情報源には小児や青年との面接および親や教師から得られた情報などがある。スクリーニング用にいくつかの簡易質問票が利用できる。それらは一部の抑うつ症状を同定するのに役立つが,単独で診断に用いることはできない。具体的な多肢選択回答式の質問は,Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Fifth Edition(DSM-5)の基準に基づいてうつ病を診断するのに必要な症状の有無の判定に有用である。

病歴には,ドメスティックバイオレンス,性的虐待および搾取,薬物有害作用など,原因となりうる因子を含めるべきである。自殺行動(例,念慮,演技,企図)についても質問すべきである。

病歴の注意深い検討と適切な臨床検査により,同様の症状を引き起こしうる他の疾患(例,伝染性単核球症,甲状腺疾患,薬物乱用)を除外しなければならない。

抑うつ症状のリスクを高めるか抑うつ症状の経過を変化させる可能性がある他の精神障害(例,不安症,双極性障害)も考慮しなければならない。最終的に双極性障害または統合失調症を発症する患児の一部では,病初期はうつ病を呈することがある。

うつ病が診断された後,その誘因となったと思われるストレスを同定するために,家族および社会環境を評価しなければならない。

治療

  • 家族および学校に対する対策の併用

  • 青年の場合,通常抗うつ薬および精神療法

  • 青年期以前の場合,精神療法の後に必要な場合は抗うつ薬

残存する機能を高めてさらに適切な教育的支援を提供するためには,直接的治療の他に,家族と学校に向けた適切な対策が伴われなければならない。急性発作,特に自殺行動が認められた場合には,短期入院が必要となるであろう。

青年の場合(成人の場合と同様に),精神療法と抗うつ薬の併用が各治療法単独の施行を通常大きく上回る成果を残している。青年期以前のうつ病における状況については不明な点が非常に多い。ほとんどの医師は幼児に精神療法を選択するが,特にうつ病が重度であるか,それまでに精神療法への反応がみられなかった場合,幼児にも薬剤が使用される(8歳以上ではフルオキセチンが使用可能)。

通常,抗うつ薬が適応となる場合にはSSRI( 不安症および関連症群の長期治療に使用される薬剤)が第1選択薬となる。行動面の副作用(例,脱抑制,行動活性化;頻度は高いが,通常は軽度から中等度)の発生を注意深くモニタリングすべきである。このような作用は通常,減量または他剤への変更によって消失または軽減する。まれに,重度の作用が生じることもある(例,攻撃性,自殺傾向の増大)。行動面の有害作用は特異体質によるものであり,どの抗うつ薬を使用しても,治療経過のあらゆる時点で発生しうる。そのため,これらの薬剤を服用する小児または青年には綿密なモニタリングが必要となる。

成人ベースの研究により,セロトニンおよびアドレナリン/ドパミン系の両方に作用する抗うつ薬の方がやや効果的である可能性が示唆されているが,そのような薬剤(例,デュロキセチン,ベンラファキシン,ミルタザピン;一部の三環系薬剤,特にクロミプラミン)は有害作用が多い傾向がある。このような薬剤は,治療に抵抗性を示す症例で特に有用となる。ブプロピオンやデシプラミンなどの非セロトニン系の抗うつ薬もまた,効力を高めるためにSSRIと併用されることがある。

成人の場合と同様に,再発および反復が多くみられる。小児期および青年期では,症状寛解後,最低でも1年間は治療を継続すべきである。現在では大半の専門医が,うつ病のエピソードを2回以上経験した小児には生涯治療を行っていくべきと推奨している。

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不安症および関連症群の長期治療に使用される薬剤

薬剤

用途

開始量*

用量範囲

備考/注意

シタロプラム

OCD

7歳以上の小児

10mg

10~40mg/日

デュロキセチン

7~17歳の小児におけるGAD

30mg

30~100mg/日

エスシタロプラム

7歳以上の小児におけるうつ病

5mg

5~20mg/日

フルオキセチン

8歳以上の小児におけるOCD,GAD,分離不安,社交不安,うつ病

10mg

10~60mg/日

長い半減期

フルボキサミン

8歳以上の小児におけるGAD,分離不安,社交不安,OCD

25mg(必要に応じて漸増)

50~200mg/日

用量が50mg/日を超える場合は,1日2回の分割投与とし,就寝時の投与量を多くする

パロキセチン

6歳以上の小児におけるOCD

10mg

10~60mg/日

体重増加

セルトラリン

6歳以上の小児におけるOCD,GAD,分離不安,社交不安

25mg

25~200mg/日

ベンラファキシン,即放性

8歳以上の小児におけるうつ病

12.5mg

25~75mg/日,1日2回または1日3回

用量および自殺行動の増加への懸念に関するデータは限定的;他の薬剤ほど効果的ではないが,これはおそらく低用量で使用されてきたためである

ベンラファキシン,徐放性

7歳以上の小児におけるGAD

37.5mg

37.5~225mg/日

*他に記載のない限り,投与は1日1回行う。必要であれば開始量を増量する。用量範囲はおおよその値である。治療に対する反応性と有害作用にはかなりの個人差がある。この表は完全な添付文書の代わりとなるものではない。

行動面の有害作用(例,脱抑制,興奮)は頻度が高いが,通常は軽度から中等度である。このような作用は通常,減量または他剤への変更によって消失または軽減する。まれに,重度の作用が生じることもある(例,攻撃性,自殺傾向の増大)。行動面の有害作用は特異体質によるものであり,どの抗うつ薬を使用しても,治療経過のあらゆる時点で発生しうる。そのため,これらの薬剤を服用する小児または青年には綿密なモニタリングが必要となる。

フルオキセチンとパロキセチンは,多数の他の薬剤(例,β遮断薬,クロニジン,リドカイン)を代謝する肝酵素を強力に阻害する。

GAD = 全般不安症;OCD = 強迫症。

自殺リスクと抗うつ薬

自殺リスクと抗うつ薬投与は,常に論議と研究の的とされてきた(1)。2004年,米国のFood and Drug Administration(FDA:食品医薬品局)は,9つの異なる抗うつ薬について過去に実施された23の試験を対象とするメタアナリシスを行った(2)。これらの試験で自殺した患者はいなかったが,抗うつ薬を服用していた小児と青年において,希死念慮の統計学的に有意な上昇が認められ(約4%対約2%),抗うつ薬の全てのクラスに対し黒枠警告が出された(例,三環系抗うつ薬,SSRI,ベンラファキシンなどのセロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬,ミルタザピンなどの四環系抗うつ薬)。

2006年,うつ病治療を受けている小児および青年に関するメタアナリシス(英国)(3)により,プラセボ服用者と比べて,抗うつ薬服用者では自傷または自殺関連事象がわずかに多かったことが明らかにされた(プラセボ群の3.0%に対して4.8%)。しかし,その差が統計学的に有意であるかどうかは解析の種類によって異なった(固定効果解析または変量効果解析)。希死念慮(1.2%対0.8%),自傷(3.3%対2.6%),および自殺企図(1.9%対1.2%)において,有意ではないが上昇傾向がみられた。異なる薬剤間ではリスクにある程度の差があるように考えられたが,直接比較試験は施行されておらず,うつ病の重症度および他の交絡危険因子の調整は困難である。

観察研究および疫学研究(4,5)では,抗うつ薬服用患者における自殺企図率と自殺完遂率の上昇はなかったという所見が得られている。また,抗うつ薬処方の減少にもかかわらず,自殺率は増加している。

一般に,抗うつ薬の効力は小児および青年では限定的であるが,それでもベネフィットがリスクを上回るようである。最良のアプローチは,薬剤と精神療法の併用のようであり,治療を綿密にモニタリングすることでリスクを最小化する。

薬剤使用の有無を問わず,自殺はうつ病の小児と青年において常に懸念されるものである。リスクを低減するため以下を行うべきである:

  • 親および精神医療従事者は,この問題について徹底的に話し合うべきである。

  • 小児と青年は適切な水準で管理されるべきである。

  • 定期受診の精神療法を治療計画に含めるべきである。

パール&ピットフォール

  • うつ病の小児や青年では,抗うつ薬を服用しているかどうかにかかわらず,自殺リスクが常に懸念される。

治療に関する参考文献

  • 1.Hetrick SE, McKenzie JE, Merry SN: Newer generation antidepressants for depressive disorders in children and adolescents. Cochrane Database Syst Rev Nov 11 2012.

  • 2.US FDA: Review and evaluation of clinical data: Relationship between psychotropic drugs and pediatric suicidality. 2004. Accessed 11/4/16.

  • 3.Dubicka B, Hadley S, Roberts C: Suicidal behaviour in youths with depression treated with new-generation antidepressants: Meta-analysis. Br J Psychiatry Nov 189:393–398, 2006.

  • 4.Adegbite-Adeniyi C, et al: An update on antidepressant use and suicidality in pediatric depression. Expert Opin Pharmacother 13(15):2119–2130, 2012.

  • 5.Gibbons RD, Brown CH, Hur K, et al: Early evidence on the effects of regulators' suicidality warnings on SSRI prescriptions and suicide in children and adolescents. Am J Psychiatry 164 (9);1356–1363, 2007.

要点

  • 小児では,抑うつ障害は悲しみや易怒性として現れることがある。

  • うつ病では,2週間以内のほぼ毎日,悲しみの感情もしくは易怒性,またはほぼ全ての活動に対する興味や喜びの喪失がみられ,加えて他の特異的症状を認める。

  • 抑うつ障害の診断は特異的な臨床基準に基づいて行い,適切な臨床検査により,他の疾患(例,伝染性単核球症,甲状腺疾患,薬物乱用)を除外する。

  • 小児を治療して残存する機能を高め,さらに適切な教育的支援を提供する上で,家族と学校に関わってもらう。

  • 青年の場合(成人の場合と同様に),一般に精神療法と抗うつ薬の併用が各治療法単独の成績を大きく上回る成果を残している;幼児では,ほとんどの医師は精神療法を選択するが,必要であれば小児の年齢に応じて薬剤が使用される。

  • 2004年,米国のFood and Drug Administration(FDA:食品医薬品局)がメタアナリシスを行い,これにより抗うつ薬の全てのクラスについて小児,青年,および若年成人に希死念慮および自殺行動のリスクが増加するという黒枠警告が出された;その後実施された解析は,この結論に疑義を呈している。

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