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妊娠中の高血圧

執筆者:

Lara A. Friel

, MD, PhD, University of Texas Health Medical School at Houston, McGovern Medical School

最終査読/改訂年月 2020年 4月
本ページのリソース

American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)から,妊娠中の高血圧疾患(妊娠高血圧腎症を含む)の分類,診断,および管理に関する推奨が公表されている [1]。

高血圧も参照のこと。)

2017年,American College of Cardiology(ACC)とAmerican Heart Association(AHA)は,高血圧の評価に関する新しいガイドラインを発表した。そこでは高血圧の定義が以下のように引き下げられた:

  • 正常:120/80mmHg未満

  • 高値:120~129/< 80mmHg)

  • ステージ1高血圧:130~139/80~89mmHg

  • ステージ2高血圧:≥ 140/90mmHg

ACOGは,慢性高血圧を妊娠20週以前の2回の測定で収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上になった場合と定義している。ACC/AHAが定義した高血圧が妊娠中に及ぼす影響については,データが限られている。そのため,妊娠管理はまだ進歩の途中である可能性が高い。

妊娠中の高血圧は以下のいずれかに分類できる:

  • 慢性:妊娠前または妊娠20週以前から血圧が高い。慢性高血圧は全妊娠の約1~5%に合併する。

  • 妊娠性:高血圧は妊娠20週以降(典型例では37週以降)に発生し,分娩後6週までに消失する;妊娠の約5~10%に起こり,多胎妊娠で頻度が高い。

どちらの高血圧も,妊娠高血圧腎症および子癇,ならびに他の原因による母体死亡または罹患(高血圧性脳症,脳卒中,腎不全,左室不全,HELLP症候群[溶血,肝酵素上昇,血小板数減少]など)のリスクを増大させる。

  • 高血圧性脳症

  • 脳卒中

  • 腎不全

  • 左室不全

  • HELLP症候群(溶血,肝酵素高値,血小板数低値)

子宮胎盤血流の減少が血管攣縮,発育不全,低酸素症,および常位胎盤早期剥離を引き起こし,胎児の死亡または罹患のリスクが増加する。高血圧が重度(収縮期血圧 ≥ 160mmHg,拡張期血圧 ≥ 110mmHg,または両方)であるか,腎機能不全(例,クレアチニンクリアランス < 60mL/min,血清クレアチニン > 2mg/dL[ > 180μmol/L])を伴う場合,転帰は一層不良となる。

総論の参考文献

診断

  • 高血圧の他の原因を除外するための検査

妊婦健診時にはルーチンに血圧を測定する。多胎妊娠や妊娠性絨毛性疾患でない妊婦に初めて重度の高血圧が生じた場合は,高血圧の他の原因(例,腎動脈狭窄大動脈縮窄症クッシング症候群SLE褐色細胞腫)を除外するための検査を考慮すべきである。

治療

  • 軽度の高血圧では,保存的治療に続き必要な場合は降圧薬

  • メチルドパ,β遮断薬,またはカルシウム拮抗薬が最初に試される

  • アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARBs),およびアルドステロン拮抗薬は避ける

  • 中等度~重度の高血圧では,降圧治療,綿密なモニタリングを行い,また状態が悪化する場合は,妊娠期間に応じて中絶または分娩とする

慢性高血圧および妊娠高血圧に対する推奨は同様で重症度により異なる。しかしながら,慢性高血圧はより重症であることがある。妊娠高血圧では,血圧の上昇は妊娠後期にのみ起こり治療が必要でないことがある。

妊娠中の腎機能不全のない軽度~中等度の高血圧の治療については議論がある;治療が転帰を改善するかどうか,また薬物治療のリスクが,疾患を治療しない場合のリスクを上回るかどうかという問題がある。子宮胎盤循環は最大限に拡大し,自己調節が効かないため,薬物により母体血圧を下げると子宮胎盤血流が突然減少することがある。利尿薬は母体の有効循環血液量を減少させる;減少が続くと胎児発育不全のリスクが増大する。しかしながら,腎機能不全を伴う高血圧に対しては高血圧が軽度または中等度であっても治療を行う。

軽度~中等度の高血圧(収縮期血圧140~159mmHgまたは拡張期血圧90~109mmHg)で,血圧が不安定な場合は,身体活動を減らすことで血圧が低下し,胎児の成長が改善し,高血圧のない女性と同程度の周産期のリスクになることがある。しかしながら,この保存的治療で血圧が低下しない場合,多くの専門家は薬物療法を推奨している。妊娠前にメチルドパ,β遮断薬,カルシウム拮抗薬のいずれか,または併用して服用していた女性はこれらの薬剤を継続することがある。しかしながらACE阻害薬およびARBは妊娠確定後に中止すべきである。

重度の高血圧(収縮期血圧 ≥ 160mmHg または拡張期血圧 ≥ 110mmHg)に対しては薬物療法の適応がある。合併症のリスクが,母体(標的臓器機能障害の進行または妊娠高血圧腎症)および胎児(早産,発育不全,死産)で著しく増大する。いくつかの降圧薬が必要となることがある。

収縮期血圧 > 180mmHgまたは拡張期血圧 > 110mmHgでは,直ちに評価が必要である。複数の薬剤がしばしば必要となる。また,妊娠後半期のほとんどの期間,入院が必要となる可能性がある。妊婦の状態が悪化すれば,人工中絶を勧めることがある。

妊娠中の慢性高血圧を有する全ての女性に,血圧の自己モニタリングを指導し,標的臓器損傷の評価を行うべきである。ベースライン時とその後定期的に行う評価としては以下のものがある:

  • 血清クレアチニン,電解質,および尿酸値

  • 肝機能検査

  • 血小板数

  • 尿タンパク評価

  • 通常,眼底検査

女性が4年を超えて高血圧を有している場合,母体の心エコー検査を考慮すべきである。胎児の解剖学的構造を評価するための初回の超音波検査の後,胎児の発育をモニタリングするための超音波検査を28週頃から開始し,毎月行う;出生前検査はしばしば32週から開始する。超音波検査による胎児の発育をモニタリングおよび出生前検査は,女性が他の合併症(例,腎疾患)も有している場合,または胎児に合併症(例,発育不全)を認める場合には,さらに早く開始することがある。分娩は37~39週までにすべきであり,妊娠高血圧腎症または胎児発育不全が認められるか,または胎児の検査結果がnonreassuringであれば,それ以前に誘発することがある。

薬物

妊娠中の高血圧に対する第1選択薬としては以下のものがある:

  • メチルドパ

  • β遮断薬

  • カルシウム拮抗薬

メチルドパ250mg,経口,1日2回から始め,過度の傾眠,抑うつ,または症候性起立性低血圧が起こらなければ,必要に応じて1日総量2gまで増量する。

最も多く用いられるβ遮断薬のラベタロール(ある程度のα1遮断作用のあるβ遮断薬)を単独で,または,メチルドパが最大1日量に達している場合にメチルドパと併用して投与できる。ラベタロールの通常用量は100mg,1日2回~1日3回で,必要に応じて1日総量2400mgまで増量する。β遮断薬の有害作用には,胎児発育不全のリスク上昇,母体の活力低下,および母体の抑うつがある。

ニフェジピン徐放錠(カルシウム拮抗薬)は,1日1回投与(初回用量30mg;最大1日量120mg)のため,好んで使用されることがある;有害作用として頭痛や脛骨前の浮腫などがある。サイアザイド系利尿薬は,有益性が胎児への潜在的リスクを上回る場合にのみ,妊娠中の慢性高血圧の治療に使われる。用量は低カリウム血症などの有害作用を最小限にするために調節されることがある。

いくつかのクラスの降圧薬は妊娠中通常避けられる:

  • ACE阻害薬は,胎児の尿路異常のリスクが増大するため禁忌である。

  • ARBは胎児の腎機能障害,肺低形成,骨格奇形,および死亡のリスクを上昇させるため禁忌である。

  • アルドステロン拮抗薬(スピロノラクトンおよびエプレレノン)は男子胎児の女性化の原因となることがあるため避けるべきである。

要点

  • 慢性高血圧および妊娠高血圧はどちらも,妊娠高血圧腎症,子癇,および他の母体死亡または罹患の原因(例,高血圧性脳症,脳卒中,腎不全,左室不全,HELLP症候群),および胎盤機能不全のリスクを増大させる。

  • 多胎妊娠または妊娠性絨毛性疾患のない妊婦で重度の高血圧が初めて起こった場合には,高血圧の他の原因を調べる。

  • 薬物療法が必要な場合は,メチルドパ,β遮断薬,またはカルシウム拮抗薬から開始する。

  • ACE阻害薬,ARB,またはアルドステロン拮抗薬は使わない。

  • 血圧が > 180/110mmHgの場合には入院または妊娠の中断を考慮する。

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