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常位胎盤早期剥離

執筆者:

Antonette T. Dulay

, MD, Main Line Health System

最終査読/改訂年月 2014年 1月
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常位胎盤早期剥離とは,正常に付着した胎盤が,通常20週以降に子宮から時期尚早に分離することである。産科的緊急事態となりうる。症状として,性器出血,子宮の疼痛ならびに圧痛,出血性ショック,および播種性血管内凝固症候群を含むことがある。診断は臨床的に行い,ときに超音波検査を用いる。治療は症状が軽度の場合には安静(例,試験的な床上安静),母体や胎児が不安定な場合や満期に近い妊娠では早急な分娩である。

常位胎盤早期剥離は全妊娠の0.4~1.5%に生じる;発生頻度は妊娠24~26週で最大である。

常位胎盤早期剥離は,数ミリの分離から完全な剥離までその程度も様々である。剥離は急性のことも,慢性のこともある。剥離により胎盤裏側(胎盤後方)の基底脱落膜への出血が起こる。ほとんどの場合,病因は明らかでない。

危険因子

危険因子としては以下のものがある:

  • 母体が高齢

  • 高血圧(妊娠性または慢性)

  • 子宮内胎児発育不全として現れる胎盤の虚血(胎盤虚血性疾患)

  • 羊水過多

  • 羊膜感染(絨毛膜羊膜炎)

  • 血管炎

  • 他の血管疾患

  • 常位胎盤早期剥離の既往

  • 腹部外傷

  • 後天性の母体血栓性疾患

  • 喫煙

  • 前期破水

  • コカインの使用(最大10%のリスク)

合併症

合併症としては以下のものがある:

  • 血行動態の不安定(ショックを伴うことも伴わないこともある),および/または播種性血管内凝固症候群(DIC)を引き起こすことのある母体失血

  • 胎児機能不全(例,胎児ジストレス,死亡),または常位胎盤早期剥離が慢性の場合(通常)は発育不全

  • ときに胎児母体間輸血および同種免疫(例,Rh感作による)。

症状と徴候

急性常位胎盤早期剥離では,鮮紅色または暗赤色の血液が子宮頸管を通じて流出することがある(外出血)。血液は胎盤の裏側に貯留する場合もある(潜伏出血[concealed hemorrhage])。症状および徴候の重症度は,剥離および失血の程度による。剥離が続くにつれ,子宮に,疼痛,圧痛,および触診過敏が生じうる。DICの徴候や,出血性ショックが生じる場合がある。慢性の常位胎盤早期剥離では,持続的または間欠的な暗褐色かつ少量の性器出血を伴うことがある。

常位胎盤早期剥離では症候がみられないかわずかなこともある。

診断

  • 臨床所見,検査所見,および超音波検査所見の組合せ

診断は,妊娠後期に以下のいずれかが生じる場合に示唆される:

  • 性器出血(痛みを伴うまたは伴わない)

  • 子宮の疼痛および圧痛

  • 胎児ジストレスまたは死亡

  • 出血性ショック

  • DIC

  • 性器出血の程度と不釣り合いな圧痛またはショック

腹部外傷を受けた女性で本症を考慮すべきである。もし妊娠後期に出血が起これば,内診を行う前に,同様の症状を呈する前置胎盤を除外する必要がある;前置胎盤があれば,検査によって出血が増加することがある。

評価には以下を含める:

  • 胎児心拍数モニタリング

  • 血算

  • 血液型およびRh型

  • PT/PTT

  • 血清フィブリノーゲンおよびフィブリン分解物(最も感度の高い指標)

  • 経腹または経腟超音波検査

  • 患者の血液型がRh陰性の場合,Kleihauer-Betke試験(必要なRh0(D)免疫グロブリン量を計算するため)

胎児心拍数モニタリングで,nonreassuring patternや胎児死亡が検出されることがある。

経腹超音波検査に基づき前置胎盤が疑われる場合には,経腟超音波検査が必要である。しかしながら,常位胎盤早期剥離ではいずれの病型の超音波検査でも結果が正常なことがある。

パール&ピットフォール

  • 超音波検査所見が正常でも常位胎盤早期剥離を除外できない。

治療

  • ときに早急な分娩および積極的な支持療法(例,満期に近い妊娠の場合,または母体が不安定な場合や胎児が不安定な可能性がある場合)

  • 妊娠が満期に近くなく,母体と胎児が安定している場合には試験的な入院および安静

緊急帝王切開は以下のいずれかが存在する場合,特に経腟分娩が禁忌の場合に通常適応となる:

  • 母体の血行動態不安定

  • 胎児心拍数がnonreassuring pattern

  • 満期に近い妊娠(例,> 36週)

分娩が必要と思われる場合,母体の血行動態が安定し,胎児心拍数パターンがreassuringであり,経腟分娩の禁忌(例,前置胎盤または前置血管による)がなければ経腟分娩を試みることができる;陣痛は注意深く誘発または促進する(例,オキシトシンおよび/または人工破膜を用いる)。分娩後出血に対する準備を行うべきである。

入院および安静を,以下の全てを満たす場合に勧める:

  • 出血が母体または胎児の生命を脅かさない。

  • 胎児心拍数パターンがreassuringである。

  • 妊娠が満期近くではない。

このアプローチにより母体と胎児を注意深くモニタリングし,必要であれば早急に治療できる。(安静時は腹腔内圧を長時間上昇させるあらゆる活動を控えさせる―例,女性は1日の大半を横になって過ごすべきである。)在胎期間が34週未満であれば,コルチコステロイド投与を考慮すべきである(胎児の肺成熟を促進するため)。出血が止まり,母体および胎児の状態が安定していれば,歩行および通常は退院が許可される。出血が持続する,または状態が悪化する場合には緊急帝王切開が適応となる場合がある。

合併症(例,ショック,DIC)は血液および血液製剤の積極的な輸血で管理する。

要点

  • 常位胎盤早期剥離の出血は外出血を呈することもあれば潜伏する場合もある。

  • 常位胎盤早期剥離でわずかな症状や徴候しか生じないことがある。

  • 検査結果(超音波検査を含む)が正常であっても診断を除外しない。

  • 母体または胎児の安定が脅かされている場合,または妊娠が満期に近い場合には緊急帝王切開を考慮する。

  • 母体および胎児が安定し妊娠が満期に近い場合には経腟分娩を考慮する。

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