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乳房腫瘤(乳房のしこり)

執筆者:

Mary Ann Kosir

, MD, Wayne State University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2016年 5月

乳房腫瘤は,あらゆる大きさの孤立した触知可能な部位を示す用語として,しこりよりも望ましい。乳房腫瘤は,患者によって偶発的または乳房自己検診中に見つかることや,ルーチンの身体診察中に医師により検出されることがある。

腫瘤は痛みを伴わないことも伴うこともあり,ときに乳頭分泌物または皮膚変化を伴う。

病因

原因としては乳癌が最も恐れられているが,大半(約90%)の乳房腫瘤は良性である。最も頻度の高い原因としては以下のものがある:

  • 線維嚢胞性変化

  • 線維腺腫

線維嚢胞性変化(fibrocystic change)(以前の線維嚢胞性疾患)は,乳房痛,乳房嚢胞,および特徴のない腫瘤(通常乳房の外側上部に生じる)を意味する包括的な用語であり,これらの所見は単独で起こることも,併発することもある。乳房は小結節状の緻密な組織をもち,触診時に圧痛が生じることが多い。線維嚢胞性変化は,最も一般的に報告される乳房症状を引き起こし,多くの原因が存在する。線維嚢胞性変化は癌のリスク上昇と関連しない。

エストロゲンとプロゲステロンによる反復刺激が線維嚢胞性変化に寄与することがあり,初経が早かった女性,初産が30歳以上であった女性,または未経産の女性でより多くみられる。

線維腺腫は典型的には滑らかで丸く,可動性のある痛みを伴わない腫瘤である;癌と間違われることがある。通常は妊娠可能年齢の女性で発生し,時間の経過とともにサイズが小さくなることがある。若年性線維腺腫は異型で,青年期に起こり,年長女性の線維腺腫と異なり時間とともに増大を続ける。単純性線維腺腫(simple fibroadenoma)は,乳癌のリスクを上昇させないとみられるが,複雑性線維腺腫(complex fibroadenoma)はリスクをわずかに上昇させる可能性がある。

乳房感染乳腺炎)が起きると,疼痛,紅斑,および腫脹が生じ,膿瘍により孤立性腫瘤が形成されることがある。感染は産褥期(分娩後)または穿通性外傷後を除き極めてまれである。感染は乳房手術後に起こることがある。産褥性乳腺炎は,通常は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が原因であり,広範囲の炎症と重度の乳房痛を引き起こすことがあり,ときに膿瘍を伴う。それ以外の状況で感染が起こる場合は,潜在する癌を早急に探索すべきである。

galactoceleは,乳汁で充満した容易に可動する円形の嚢胞であり,通常は授乳の中止から6~10カ月後までに形成される。こうした嚢胞が感染を起こすことはまれである。

様々な種類のが腫瘤として現れうる。約5%の患者で疼痛を伴う。

評価

病歴

現病歴には腫瘤がいつから存在するか,現れたり消えたりするか,痛みを伴うかを含めるべきである。過去に腫瘤ができたことがあるかや,その評価結果についても尋ねるべきである。

系統的症状把握(review of systems)では,乳頭分泌物の有無を判定し,認める場合はそれが自然に起きるものか,乳房の触診に反応してのみ起きるのかを,また,その性状が透明,乳白色,血性のいずれであるかを判断する。進行癌の症状(例,体重減少,倦怠感,骨痛)がないか調べるべきである。

既往歴には,過去に診断された乳癌,30歳以前の胸部への放射線療法の既往(例,ホジキンリンパ腫によるもの)などの,乳癌の危険因子を含めるべきである。家族歴の聴取では第1度近親者(母,姉妹,娘)の乳癌および,家族歴が陽性であれば,その近親者が乳癌遺伝子として知られている2つ(BRCA1またはBRCA2)のうちどちらかを保有しているかに注意すべきである。

身体診察

診察は乳房および隣接組織を中心に行う。乳房を視診して,腫瘍の部位全体の皮膚変化および乳頭分泌物がないか確認する。皮膚変化には紅斑,発疹,正常な皮膚紋理の増強,およびときに橙皮状(オレンジ皮様)と表現される圧痕性浮腫を含む。

腫瘤を触診して,大きさ,圧痛,硬さ(すなわち,硬または軟,整または不整)および可動性(自由に動くかまたは皮膚や胸壁に固定されているように感じるか)を確認する。腋窩,鎖骨上,および鎖骨下を触診して,腫瘤やリンパ節腫脹がないかを確認する。

警戒すべき事項(Red Flag)

特定の所見には特に注意が必要である:

  • 皮膚または胸壁に固定した腫瘤

  • 石状に硬い,不整な腫瘤

  • 皮膚の陥凹

  • 癒合または固定した腋窩リンパ節

  • 血性または自然に起こる乳頭分泌物

  • 紅斑を伴う肥厚した皮膚

所見の解釈

痛み,圧痛,弾性のある腫瘤を,類似した所見の既往がある妊娠可能年齢の女性に認める場合,線維嚢胞性変化が示唆される。

レッドフラグサインは癌を示唆する。しかしながら,良性病変と悪性病変の特徴には,危険因子の有無を含めて,かなりの重複がある。この理由に加え,癌を見落とすことは重篤な結果を招くことから,大部分の患者では乳癌をより決定的に除外するために検査が必要となる。

検査

嚢胞が癌病変であることはまれであるため,充実性腫瘤と嚢胞性腫瘤をまず区別するようにする。一般的には,超音波検査を施行する。嚢胞様病変はときに吸引し(例,症状を引き起こしている場合),充実性腫瘤はマンモグラフィー,その後画像ガイド下生検で評価する。全ての腫瘤を穿刺吸引で評価する医師もいる;液体が採取できない場合または吸引で腫瘤が除去されない場合,マンモグラフィーを実施し,その後画像ガイド下に生検を行う。

嚢胞から吸引した液体は以下の状況でのみ細胞診を行う:

  • 混濁している,または肉眼的に血性である。

  • 液体がほとんど採取されない。

  • 吸引後腫瘤が残存する。

4~8週間以内に患者を再検査する。嚢胞がもはや触知できなければ,良性と考えられる。嚢胞が再発している場合には再吸引し,外観に関係なく液体を細胞診にまわす。3回目の再発であったり,最初の吸引以降も腫瘤が残存したりする場合は(細胞診が陰性であっても)生検が必要である。

治療

治療は原因に対して行う。

線維腺腫は増大したり症状を引き起こす場合には通常切除する。線維腺腫は局所麻酔を用いて通常切除できるが,再度出現することも多い。切除していない線維腺腫を有する患者では,定期的に変化がないか確認すべきである。何度か線維腺腫が良性と判明すると,患者がそれ以降の線維腺腫を切除しないと決めてしまう場合がある。若年性線維腺腫は増大する傾向にあるため,切除すべきである。

線維嚢胞性変化の症状を緩和するために,アセトアミノフェン,NSAID,および運動用ブラジャー(外傷を軽減するため)を使用できる。ビタミンEおよびイブニングプリムローズ(月見草)オイルがいくらか効果的なことがある。

要点

  • 大部分の乳房腫瘤は癌ではない。

  • 良性と悪性疾患の臨床的特徴は重複する部分が多いため,通常,検査を行うべきである。

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