喉頭蓋炎

(声門上炎[supraglottitis])

執筆者:Alan G. Cheng, MD, Stanford University
Reviewed ByLawrence R. Lustig, MD, Columbia University Medical Center and New York Presbyterian Hospital
レビュー/改訂 修正済み 2024年 2月
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喉頭蓋炎は喉頭蓋および周辺組織において急速に進行する細菌感染症であり,突然の気道閉塞および死亡に至ることもある。症状としては,重度の咽頭痛,嚥下困難,高熱,流涎,吸気性喘鳴などがある。診断には声門上部構造の直接観察が必要であるが,この手技は十分な呼吸補助が可能になるまで行ってはならない。治療には気道の保護および抗菌薬などがある。

喉頭蓋炎はかつては主に小児に発生し,通常,インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型が原因であった。現在ではワクチン接種が広く行われているため,小児ではほとんど根絶されている(成人でより多く発生)。小児および成人における起因菌には,肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae),黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus),無莢膜型インフルエンザ菌(nontypeable H. influenzae),パラインフルエンザ菌( Haemophilus parainfluenzae),β溶血性レンサ球菌,Branhamella catarrhalis,および肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)などがある。インフルエンザ菌b型は,依然として成人およびワクチン未接種の小児における原因である。

上咽頭に定着した細菌は局所に拡大し,声門上の蜂窩織炎を引き起こし,喉頭蓋,喉頭蓋谷,披裂喉頭蓋ヒダ,披裂軟骨,および喉頭室における著明な炎症を伴う。インフルエンザ菌(H. influenzae)b型感染では,感染が血行性に拡がる。

炎症を来した声門上部構造が機械的に気道を閉塞し,呼吸仕事量が増加し,究極的には呼吸不全が引き起こされる。炎症性分泌物のクリアランスもまた障害される。

喉頭蓋炎の症状と徴候

喉頭蓋炎の小児では,咽頭痛,嚥下痛,および嚥下困難が突然発生し,多くの場合,視診できる中咽頭の炎症は伴わない。発症から数時間以内に致死的な窒息が生じることがある。流涎が非常によくみられる。さらに,典型的には重症感(アイコンタクトが乏しいか全くない,チアノーゼ,易怒性,なだめたり気をまぎらわせたりすることができない)があり,発熱がみられ,不安そうにしている。呼吸困難,頻呼吸,および吸気性喘鳴が現れることがあり,そのためしばしば患児は換気を高めるために,座位になり,前傾し,開口状態で下顎を前突させ,頸部を過伸展した前のめりの姿勢(tripod position)となる。この姿勢を中止すると,呼吸不全を招くことがある。胸骨上,鎖骨上,および肋骨下に吸気時の陥没がみられることがある。

成人の症状は,小児のものと同様で,咽頭痛,発熱,嚥下困難,および流涎などであるが,症状がピークに達するまでの時間は通常24時間を超える。成人では気道の直径が大きいため,閉塞は頻度がより低く,より劇症的でない。

小児と成人ともに,中咽頭の炎症は視診できないことが多い。それでも,重度の咽頭痛があり,咽頭の外観が正常である場合には,喉頭蓋炎が疑われる。診断および治療が遅れると,気道閉塞および死亡のリスクが高まる。

喉頭蓋炎の診断

  • 直接視診(通常は手術室で)

  • 疑いが低い比較的軽症例ではX線

喉頭蓋炎は,重度の咽頭痛があって咽頭炎がみられない患者,および咽頭痛と吸気性喘鳴がみられる患者で疑われる。小児における吸気性喘鳴は,クループ(ウイルス性の喉頭気管気管支炎―喉頭蓋炎とクループの鑑別の表を参照),細菌性気管炎,および気道異物によっても生じることがある。前のめりの姿勢(tripod position)は,扁桃周囲膿瘍または咽後膿瘍でも生じることがある。

表&コラム
表&コラム

喉頭蓋炎が疑われる場合は,患者を入院させる。診断には直接観察が必要であり,通常は軟性喉頭鏡検査で行われる。(注意:咽頭および喉頭の診察は,小児では気道の完全閉塞を突然誘発する可能性があり,咽頭および喉頭の直接観察は特別な訓練を受けた医師のみが最先端の気道介入を実施できる手術室で行うべきである。)直達喉頭鏡検査で喉頭蓋の強い発赤,こわばり,浮腫を認めれば診断に至る。

単純X線は助けになる場合もあるが,その精度はそれほど高くなく(1),偽陽性を回避するために回旋のない頸部伸展位で吸気時に撮影する必要がある。また,吸気性喘鳴のある患児をX線撮影室まで移動させるべきでもない。

続いて,起因菌を検索するために,声門上組織および血液検体の培養を行うことができる。

成人では喉頭蓋炎があっても,一部の患者では軟性喉頭鏡検査を安全に施行できる。しかしながら,気道虚脱を引き起こす可能性があるため,成人患者でも,ときに軟性喉頭鏡検査を避けることがある。

喉頭蓋炎およびクループ(声門下喉頭炎)
喉頭蓋炎
喉頭蓋炎

挿管された患者でみられる喉頭蓋炎。写真上部にみられる,硬く,浮腫が認められる喉頭蓋に注意すること。喉頭蓋の下および遠位に声帯が見える。

挿管された患者でみられる喉頭蓋炎。写真上部にみられる,硬く,浮腫が認められる喉頭蓋に注意すること。喉頭蓋の下および遠位に声帯が見える。

Image provided by Clarence T. Sasaki, MD.

喉頭蓋炎(成人)
喉頭蓋炎(成人)

このX線写真には,喉頭蓋炎に特徴的な腫大した喉頭蓋(thumb sign―矢印)と下咽頭の腫脹が認められる。後方に偏位している肥厚した喉頭蓋に注意すること。

このX線写真には,喉頭蓋炎に特徴的な腫大した喉頭蓋(thumb sign―矢印)と下咽頭の腫脹が認められる。後方に偏位している肥厚した喉頭蓋に注意すること。

Image provided by Clarence T. Sasaki, MD.

声門下クループ(Subglottic Croup)
声門下クループ(Subglottic Croup)

この前後X線像は,クループにより引き起こされる特徴的な気道の声門下の狭小化(steeple sign;矢印)を示している。

この前後X線像は,クループにより引き起こされる特徴的な気道の声門下の狭小化(steeple sign;矢印)を示している。

Image provided by Clarence T. Sasaki, MD.

パール&ピットフォール

  • 吸気性喘鳴のある喉頭蓋炎の小児患者では,咽頭または喉頭の診察は完全な気道閉塞を誘発する可能性がある。

診断に関する参考文献

  1. 1.Fujiwara T, Miyata T, Tokumasu H, et al: Diagnostic accuracy of radiographs for detecting supraglottitis: A systematic review and meta-analysis.Acute Med Surg 4 (2):190–197, 2016.doi: 10.1002/ams2.256 eCollection 2017 Apr.

喉頭蓋炎の治療

  • 気道確保

  • 抗菌薬(例,セフトリアキソン)

吸気性喘鳴がある患児では,動揺を与えることで気道閉塞を誘発する可能性がある介入は,気道を確保するまで控えるべきである。喉頭蓋炎がある小児では,直ちに気道を確保しなければならない。気道確保が非常に困難な場合があり,可能であれば経験豊富なスタッフが手術室で行うべきである。通常,気管内チューブは安定した状態を24~48時間維持するまで必要である(通常の合計挿管時間は小児と成人どちらの場合も60時間未満である)。あるいは,気管切開を施行する。気道確保前に呼吸停止が生じた場合,バッグ-マスク換気が救命的な一時的手段となることがある。喉頭蓋炎の患児の救急治療のため,各医療機関では,救命医療,耳鼻咽喉科学,麻酔科,および小児科を含めたプロトコルを用意しておくべきである。

気道が重度に閉塞している成人では,軟性喉頭鏡検査の施行中に気管挿管を行うことができる。他の成人では,直ちに挿管する必要がないこともあるが,集中治療室で挿管セットと輪状甲状靱帯切開用または気管切開用のトレイをベッドサイドに準備して,気道障害がないか観察すべきである。

β-ラクタマーゼ抵抗性抗菌薬(セフトリアキソン50~75mg/kg,静注にて1日1回[最大量2g]など)を,培養および感受性試験の結果が出るまでの間,経験的に使用すべきである。

インフルエンザ菌(H. influenzae)b型により引き起こされる喉頭蓋炎は,インフルエンザ菌(H. influenzae)b型(HiB)結合型ワクチンにより効果的に予防しうる。

要点

  • 最も一般的な原因であるインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型に対するワクチン接種が広く行われているため,喉頭蓋炎の発生率は,特に小児において著しく低下している。

  • 吸気性喘鳴のほか,咽頭が正常に見える状態での咽頭痛がある場合は,喉頭蓋炎への疑いを強めるべきである。

  • 吸気性喘鳴がみられ喉頭蓋炎が疑われる小児では,咽頭や喉頭の観察は完全な気道閉塞を誘発する可能性があり,咽頭および喉頭の直接観察は特別な訓練を受けた医師のみが行うべきであり,それは手術室で行われるべきである。

  • 本疾患が疑われる場合は,手術室で軟性喉頭鏡検査を施行する;画像検査は,疑いが非常に低い症例でのみ選択する。

  • 小児では,典型的には気管挿管により気道を確保すべきである;成人では,気道閉塞が重度でなければ,しばしば集中治療室で気道障害の徴候に注意して経過観察とすることができる。

  • セフトリアキソンなど,β-ラクタマーゼ抵抗性抗菌薬を投与する。

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