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中耳炎(急性)

執筆者:

Richard T. Miyamoto

, MD, MS, Indiana University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2015年 12月
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急性中耳炎(AOM)は,中耳の細菌感染症またはウイルス感染症であり,通常は上気道感染に併発する。症状としては耳痛があり,しばしば全身症状(例,発熱,悪心,嘔吐,下痢)を伴い,特に非常に若年の患者でその傾向が強い。診断は耳鏡検査に基づく。治療は鎮痛薬により行い,ときに抗菌薬も用いる。

急性中耳炎はどの年齢層でも生じるが,3カ月から3歳の間で最も多い。この年齢層では,耳管が構造的にも機能的にも未熟であり,耳管の角度が比較的水平で,口蓋帆張筋と耳管軟骨の角度のために,開放機構が効率的に機能しない。

急性中耳炎の病因は,ウイルス性または細菌性である。ウイルス感染はしばしば,二次的な細菌感染を併発する。新生児ではグラム陰性腸内桿菌,特に大腸菌(Escherichia coli,)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)がAOMの原因となる。年長の乳児および小児(14歳未満)では,最も一般的な起因菌は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae,),Moraxella (Branhamella) catarrhalis,および無莢膜型インフルエンザ菌(nontypeable Haemophilus influenzae)であり,A群β溶血性レンサ球菌と黄色ブドウ球菌(S. aureus)は起因菌としてそれほど一般的ではない。14歳以上の患者では,肺炎球菌(S. pneumoniae),A群β溶血性レンサ球菌,および黄色ブドウ球菌(S. aureus)が最も一般的であり,インフルエンザ菌(H. influenzae)が続く。

危険因子

家庭内喫煙は,急性中耳炎の有意な危険因子である。他の危険因子には,中耳炎の強い家族歴,哺乳瓶による哺育(すなわち,母乳哺育でない),および託児所通いなどがある。

合併症

急性中耳炎の合併症はまれである。まれに,中耳の細菌感染が局所的に拡がり,急性乳様突起炎,錐体尖炎,または内耳炎を引き起こす。頭蓋内への波及は極めてまれであり,通常は髄膜炎を引き起こすが,脳膿瘍,硬膜下膿瘍,硬膜外膿瘍,横静脈洞血栓症,または耳性水頭症が生じることもある。抗菌薬療法を行っても,特に易感染性患者においては,頭蓋内合併症の回復は遅い。

症状と徴候

通常の初発症状は耳痛であり,しばしば難聴を伴う。乳児では,単にむずかったり,睡眠障害がみられるだけの場合もある。幼児では,発熱,悪心,嘔吐,および下痢がしばしば起こる。耳鏡検査では,膨隆および発赤した鼓膜(不明瞭なツチ骨柄などの目印および光錐の位置変化を伴う)がみられることがある。送気による検査(air insufflation)(気密耳鏡検査[pneumatic otoscopy])では,鼓膜の可動性の低下が認められる。鼓膜の自然穿孔は,漿液血性または膿性の耳漏を引き起こす。

感染の頭蓋内への波及とともに,重度の頭痛,錯乱,または局所性の神経学的徴候が生じることがある。顔面神経麻痺または回転性めまいは,顔面神経管または迷路部への局所的な拡大を示唆する。

診断

  • 臨床的評価

急性中耳炎の診断は通常は臨床的に行い,急性(48時間以内)の疼痛発症,鼓膜の膨隆,および特に小児では,気密耳鏡検査において中耳滲出液の徴候がみられることに基づく。鼓膜切開術の際に採取した液を除き,一般に培養は行わない。

治療

  • 鎮痛薬

  • ときに抗菌薬

  • まれに鼓膜切開術

痛みによる行動障害(例,耳を引っ張るまたはこする,過度の啼泣またはむずかり)がある言語習得前の小児に対してなど,必要な場合は鎮痛を得るべきである。アセトアミノフェンまたはイブプロフェンなどの経口鎮痛薬が通常は効果的である;小児に対しては体重に基づく用量を用いる。処方薬および一般用医薬品として様々な外用薬が利用できる。十分に研究されていないものの,一部の外用薬によって一過性の軽快が得られる可能性があるが,おそらく20~30分を超えるものではない。鼓膜穿孔がある場合は外用薬を使用すべきでない。

症例の80%は自然に回復するが,米国では抗菌薬がしばしば投与される([1]; 中耳炎に用いる抗菌薬)。抗菌薬によって症状の軽減が早まり(ただし,1~2週間後の転帰は同様である),難聴の残遺および内耳内または頭蓋内続発症の可能性が低下しうる。しかしながら,最近になって耐性菌が出現したことにより,小児科関係の諸機関では,特定の小児(例,比較的若年の小児または重症患者― 急性中耳炎の患児における抗菌薬使用の指針*)またはAOMを繰り返す患者(例,6カ月間に4回以上)にのみ,初期の抗菌薬を強く推奨している。

その他の患者は,フォローアップが良好であれば48~72時間の観察で問題なく,改善がみられない場合にのみ抗菌薬を投与できる;電話によるフォローアップを計画している場合は,時間と費用の節約のため,初診時に処方箋を交付してもよい。観察とすべきかどうかの決定については,養育者と話し合うべきである。

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中耳炎に用いる抗菌薬

薬剤

投与量*(年齢別)

備考

初期治療

アモキシシリン

< 14歳:40~45mg/kg,12時間毎

> 14歳:500mg,8時間毎

患児に以下のいずれもなければ望ましい:

  • 過去30日間にアモキシシリンの投与を受けている

  • 化膿性結膜炎

  • アモキシシリンに反応しない反復性急性中耳炎

耐性菌が疑われる場合は高用量レジメン

ペニシリンアレルギー

セフジニル

14mg/kg,1日1回,または7mg/kg,12時間毎

セフロキシム

< 14歳:15mg/kg,12時間毎

> 14歳:500mg,12時間毎

最大1000mg/日

セフポドキシム

5mg/kg,12時間毎

セフトリアキソン

50mg/kg,筋肉内または静脈内に1回

72時間時点で繰り返すことがある

重度の嘔吐がある小児または抗菌薬の液剤を飲もうとしない小児に対して特に考慮

難治例

アモキシシリン/クラブラン酸

< 14歳:40~45mg/kg,12時間毎

14歳:500mg,12時間毎

アモキシシリンの成分に基づく投与量が望ましい

クラブラン酸を最大10mg/kg/日に制限するため新製剤を使用

セフトリアキソン

50mg/kg,筋肉内または静脈内投与,1日1回,3日間

セファロスポリン系の経口薬が無効だった場合でも使用可能

服薬遵守が不良になる可能性が高い場合に考慮

クリンダマイシン

10~13mg/kg,8時間毎

第2選択の代替薬,セファロスポリン系薬剤との併用を考慮

*特に指定がない限り,治療期間は一般的に2歳未満の小児では10日間,より年長の小児では7日間である。特に指定がない限り,薬剤は経口投与する。

第2世代および第3世代セファロスポリン系薬剤とペニシリンの交差反応性は非常に弱い。

48~72時間の治療後に改善がない,もしくは過去の治療抵抗性の感染がある;過去30日間にアモキシシリンを使用している;または化膿性結膜炎を併発している

Data from Lieberthal AS, Carroll AE, Chonmaitree T, et al: The diagnosis and management of acute otitis media. Pediatrics e964–99, 2013.

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急性中耳炎の患児における抗菌薬使用の指針*

年齢

耳漏

重度の症状(片側性または両側性)

両側性

片側性,重度の症状なし

< 6カ月

抗菌薬

抗菌薬

抗菌薬

抗菌薬

6カ月~2歳

抗菌薬

抗菌薬

抗菌薬

抗菌薬または48~72時間の経過観察§

2歳

抗菌薬

抗菌薬

抗菌薬または48~72時間の経過観察§

抗菌薬または48~72時間の経過観察§

*これらの指針は,急性中耳炎の診断基準を満たす小児にのみ適用する(例,急性[48時間以内]の疼痛発症,鼓膜の膨隆,および気密耳鏡検査における中耳滲出液の徴候)

症状としては,過去24時間以内に直腸温39℃以上を記録,48時間を超える中等度から重度の耳痛,または患児が重篤であるという医師の判断などがある。

本表の元にしたPediatricsの記事におけるガイドラインには,経過観察に関する研究が不十分なこの年齢層は含まれていない。したがって,抗菌薬による治療を続けるのが妥当である。

§判断は親と共有すべきである。†経過観察は,電話または来院によるフォローアップが48~72時間以内に確実に可能な場合にのみ妥当;改善がみられなければ抗菌薬を開始する。

Modified from Lieberthal AS, Carroll AE, Chonmaitree T, et al: The diagnosis and management of acute otitis media. Pediatrics e964–99, 2013.

全ての患者に鎮痛薬(例,アセトアミノフェン,イブプロフェン)を投与する。成人では,0.25%フェニレフリン3滴,3時間毎などの血管収縮薬の点鼻により,耳管機能が改善する。リバウンドによる鼻閉を避けるため,これらの製剤は4日間を超えて使用すべきではない。全身に作用する鼻閉改善薬(例,プソイドエフェドリン30~60mg,経口にて6時間毎,必要に応じて投与)が有用な場合がある。アレルギーのある患者では抗ヒスタミン薬(例,クロルフェニラミン4mg,経口にて4~6時間毎,7~10日間投与)により耳管機能が改善することもあるが,真にアレルギーのある患者にのみ使用すべきである。小児に対しては,血管収縮薬も抗ヒスタミン薬も有益ではない。

鼓膜の膨隆に対し,特に重度もしくは持続的な痛み,発熱,嘔吐,または下痢がある場合には,鼓膜切開術を行うことがある。患者の聴力,ティンパノメトリー,ならびに鼓膜の外観および可動性が正常に戻るまでモニタリングする。

治療に関する参考文献

予防

小児期に,肺炎球菌(肺炎球菌結合型ワクチンによる),インフルエンザ菌(H. influenzae)b型,およびインフルエンザに対する予防接種をルーチンに行うことで,AOMの発生率は低下する。乳児が哺乳瓶を口に入れたまま寝ないようにすべきであり,また家庭での喫煙を止めることにより,発生率が低下する可能性がある。AOMを繰り返す患児に対し,抗菌薬の予防投与は推奨されない。

要点

  • 全ての患者に鎮痛薬を投与する。

  • 抗ヒスタミン薬および鼻閉改善薬は小児に推奨されない;成人には鼻閉改善薬の経口投与または点鼻が有用な場合があるが,抗ヒスタミン薬はアレルギー性の病因を有する成人にのみ投与する。

  • 抗菌薬は,患者の年齢,疾患の重症度,およびフォローアップの実施可能性に基づいて,選択的に使用すべきである。

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