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結核

執筆者:

Dylan Tierney

, MD, MPH , Harvard Medical School;


Edward A. Nardell

, MD, Harvard Medical School

レビュー/改訂 2018年 4月
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結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。

抗酸菌は発育の緩徐な小型の好気性桿菌である。脂質を豊富に含む複雑な細胞壁を有する点が際立った特徴で,これが抗酸性(すなわち,石炭酸フクシン染色後の酸による脱色に対する抵抗性)とグラム染色に対する相対的に高い抵抗性という特徴をもたらしている。最も頻度の高い抗酸菌感染症は結核であるが,その他にも ハンセン病 ハンセン病 ハンセン病は,末梢神経,皮膚,上気道粘膜に対して特有な指向性を示す抗酸性の桿菌であるらい菌(Mycobacterium leprae)によって通常引き起こされる慢性感染症である。症状は多彩で,感覚消失を伴う多形性の皮膚病変や末梢神経障害などがみられる。診断は臨床的に行い,生検により確定する。治療は典型的にはジアフェニルスルホ... さらに読む ハンセン病 や,Mycobacterium avium complex感染症をはじめとする 結核に類似した様々な抗酸菌感染症 非結核性抗酸菌感染症 ときに結核菌以外の抗酸菌がヒトに感染することがある。それらの菌(非結核性抗酸菌と呼ばれる)は一般的に土壌中や水中に存在し,ヒトにおいては結核菌(Mycobacterium tuberculosis)よりもはるかに病原性が低い。これらの菌による感染症は,非定型環境性非結核性抗酸菌感染症と呼ばれてきた。... さらに読む などがある。

結核は,世界的に成人における感染症としての罹病および死亡原因の第1位であり,2016年には170万人が死亡し,その大半は低中所得国の人々である。HIV/AIDSと結核の両方が蔓延している世界の一部地域では,HIV/AIDSが結核感染および死亡の最も重要な素因となっている。

結核の概要
動画

結核の病因

結核とは,厳密にはヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(ヒトを主な病原体保有生物とする)に起因する疾患のみを指す。ときに,近縁の抗酸菌であるM. bovisM. africanum,およびM. microti(結核菌(M. tuberculosis)と併せて結核菌群[Mycobacterium tuberculosis complex]と呼ばれる)によって類似の疾患が引き起こされることがある。

結核はほぼ例外なく,結核菌(M. tuberculosis)を含んだ空気中の粒子(飛沫核)を吸入することにより生じる。それらの粒子は主に,喀痰に有意な数(典型的には塗抹陽性となるのに十分な数)の細菌が含まれる活動性肺または喉頭結核患者の咳嗽,歌唱,その他の強制的な呼吸動作を通じて飛散する。肺に空洞性病変を有する患者は,病変内に多数の菌が存在するため,他者への感染性が特に高くなる。

結核菌を含んだ飛沫核(直径5μm)は室内気流に数時間浮遊し,伝播の可能性を増大させることがある。しかし,これらの飛沫が一旦表面に落ちると,吸入可能な粒子として菌を再び浮遊させること(例,床を掃く,寝具を叩く)は困難となる。そのような行為は結核菌を含む塵埃粒子を浮遊させることがあるが,それらの粒子は大きすぎて肺胞表面には到達できず,したがって感染を引き起こさない。媒介物(例,汚染された表面,食物,人工呼吸器)への接触についても,伝播を促進することはないようである。

無治療の活動性肺結核患者の感染性には大きな個人差がみられる。結核菌(M. tuberculosis)のうち特定の菌株は感染力が強く,喀痰塗抹検査が陽性の患者は,培養のみが陽性の患者よりも感染性が高い。空洞性病変(喀痰中の結核菌量と密接に関連)のある患者は,そうでない患者よりも他者への感染性が高くなる。

環境因子も重要である。過密状態で換気が不十分な密閉空間で多数の結核菌を飛散させている未治療患者に頻回または長期間曝露することが伝播の促進につながるため,貧困生活を送っている人々や各種の施設で生活している人々は特にリスクが高い。活動性症例と濃厚に接触する医療従事者は,リスクが高くなる。

したがって,感染性に関する推計には大きな幅があり,ある研究では無治療の肺結核患者のうち濃厚接触者を感染させるのは3人に1人のみと示唆されているが,一方でWHOは無治療の患者は1人当たり年に10~15人を感染させると推計している。しかしながら,感染者の大半は活動性疾患を発症しない。

効果的な治療が開始されれば,感染性は急速に低下し,たとえ喀痰中に菌が存続していても,その感染力は低く,そして咳嗽の回数が減少する。家庭内接触者に関する研究から,患者が効果的な治療を開始してから2週間以内に感染性が消失することが示されている。

それほど頻度は高くないが,抗酸菌を扱う検査室または剖検室において,感染創を洗浄した際の菌のエアロゾル化によって伝播が生じることがある。

かつては,扁桃,リンパ節,腹腔臓器,骨,および関節の結核は,一般的にM. bovisで汚染されたミルクまたはミルク製品(例,チーズ)の摂取によって引き起こされたが,この伝播経路は,ツベルクリン反応陽性の牛の殺処分とミルクの低温殺菌によって,先進国においてはほぼ根絶されている。M. bovisによる結核は,発展途上国およびウシ結核が流行している発展途上国(例,ラテンアメリカの一部諸国)からの移民の間でいまだに発生する。無殺菌牛乳を原料とするチーズの人気が高まるにつれて,そのチーズがウシ結核の問題をかかえる国々(例,メキシコ,英国)で製造されたものかどうかに新たな関心事項となっている。

結核の疫学

世界人口の約4分の1が感染している(ツベルクリン検査による調査に基づく)。感染者のうち,任意の時点で活動性疾患を有している患者は,おそらく1500万人ほどと考えられる。

発生率は,国,年齢,人種,性別,社会経済的状況により大きく異なる。2016年には,新規症例の64%が7カ国で発生したが,その大半がインドで発生し,次いでインドネシア,中国,フィリピン,パキスタン,ナイジェリア,南アフリカの順に多かった(2 疫学に関する参考文献 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む 疫学に関する参考文献 )。北朝鮮,レソト,モザンビーク,フィリピン,南アフリカなどのいくつかの国では,発生率が500/100,000を超えていた(1 疫学に関する参考文献 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む 疫学に関する参考文献 )。

感染率(薬剤感性結核菌に関して)および死亡率は減少してきている。新規症例数は2014年と2015年の間で1.5%減少し,数年にわたり同様の傾向が続いている。これらの傾向については,結核およびHIV感染症に対する薬剤の入手機会をより多くの人々に提供するという,結核制圧に向けた世界的な取組みが一部寄与している可能性が高い。

米国では,1994年から2014年にかけて発生率が低下した。2016年には,9287例の新規症例がCDCに報告され,発生率は2.9/100,000で,2015年と比べてわずかに低かった。これらの症例の半数以上は,米国外の有病率の高い地域で生まれた患者で発生した。外国生まれの人々の結核発生率(14.6/100,000)は,米国生まれの人々の発生率(1.1/100,000)よりはるかに高かった(3 疫学に関する参考文献 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む 疫学に関する参考文献 )。シェルター,長期療養施設,矯正施設などのグループ施設居住者と過去1年間にホームレスであったことのある人では感染リスクが高い。そのような高リスク集団では,発生率が世界の感染率の高い地域のそれに近づいている。

1985年から1992年にかけて米国およびその他の先進諸国の一部地域で結核が再興したが,これには,HIVの同時感染,ホームレス,公衆衛生基盤の悪化,多剤耐性結核菌(MDR-TB)の出現など,いくつかの要因が関連していた。米国では効果的な公衆衛生および感染制御対策制度により十分に管理されているが,世界的には広範囲薬剤耐性結核菌(XDR-TB)を含むMDR-TBが大きな問題となっており,診断および治療提供システムを含めた医療資源の不足が事態の悪化につながっているようである。

世界のほとんどの地域では,薬剤耐性結核を迅速に診断することも第2選択薬の有害作用を効果的に管理することを含む効果的なレジメンを用いて速やかに治療することも不可能である。このような状況により,伝播が継続し,治癒率が低くなり,そして耐性が拡大する。XDR-TBでは良好な治療成績が得られることは少なく,HIVが同時感染している患者では,たとえ抗レトロウイルス薬で治療していても,死亡率が非常に高い。効果的な治療と有害作用の管理,地域への働きかけ,および社会的支援によって,いくつかの地域(例,ペルー,ロシアのTomsk州)では,疫学的に薬剤耐性結核の減少傾向が認められている。インドと中国では,全国規模のMDR-TB対策プログラムが開始されたところであり,MDR-TB問題の将来は,それらのプログラムの成否に大きな影響を受ける可能性がある。

疫学に関する参考文献

結核の病態生理

結核は以下の3つの段階を経る:

  • 初感染

  • 潜伏感染

  • 活動性感染

結核菌(M. tuberculosis)はまず初感染を引き起こすが,その際に急性疾患が発生することはまれである。ほとんどの初感染(約95%)は無症状で経過し,その後には潜伏(非活動)期が続く。その後,潜伏感染は,様々な割合で疾患の症状および徴候を伴って再活性化する。

感染症は初期段階では通常感染性はなく,潜伏期には決して伝播することはない。

初感染

感染には粒子を吸入する必要があるが,この粒子は上気道防御機構を通過して肺の深部(通常中葉または下葉の胸膜下気腔内)に沈着できるほど十分小さなものでなければならない。大きな飛沫は気道の近位部分に付着する傾向があり,通常は感染を引き起こさない。感染は通常は数個の菌を運搬する1つの飛沫核が発端となる。おそらく感受性の高い個人で感染を起こすには1個のみの菌で十分と考えられるが,感受性の低い個人で感染を起こすには反復的な曝露が必要になる。

感染過程が開始するには,結核菌(M. tuberculosis)が肺胞マクロファージによって貪食される必要がある。マクロファージによる殺菌を免れた菌はマクロファージ内で複製され,最終的には宿主のマクロファージを(CD8リンパ球の作用を利用して)殺傷する;炎症細胞がその領域に誘引されて限局性の肺炎を引き起こし,それらが融合して組織学的に観察できる特徴的な結節を形成する。

感染初期の数週間に,感染を受けたマクロファージの一部が所属リンパ節(例,肺門リンパ節,縦隔リンパ節)に移行し,そこから血流中に進入する。それから菌は血行性に全身のあらゆる部位,特に肺尖後部,長管骨の骨端,腎臓,椎体,および髄膜へ広がる。予防接種あるいは過去の結核菌(M. tuberculosis)または環境中抗酸菌の感染により部分的に免疫を有する患者では,血行性播種が起こる可能性は低くなる。

初感染後には,ほとんどの症例で潜伏感染に移行する。約95%の症例では,結核菌は阻害されることなく3週間ほど増殖した後,通常は症候が現れる前に免疫系によって増殖が抑制される。肺やその他の部位の細菌病巣は,中心部に乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫となる。結核菌はその内部で何年にもわたって生存することができ,宿主の抵抗力と菌の病原性との間のバランスにより,最終的に感染が無治療で頓挫するか,潜伏状態のまま維持されるか,または活動性となるかが決定される。感染病巣は,片側または両側肺尖部の線維結節状瘢痕(Simon病巣,通常は他の感染部位からの血行性播種に起因する)や,小さな硬化領域(Ghon focus)を残すことがある。リンパ節病変を伴うGhon focusはGhon complexと呼ばれ,石灰化していれば,Ranke complexと呼ばれる。 ツベルクリン反応試験 皮膚テスト 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む 皮膚テスト およびインターフェロンγ遊離試験(IGRA IGRA 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む IGRA )は潜伏期に陽性となる。潜伏感染部位では動的な変化が起きており,かつて信じられていたような完全に休止した状態ではない。

比較的まれであるが,原発病巣が急速に進行して,肺炎(ときに空洞性),胸水,縦隔または肺門リンパ節の顕著な腫大(小児においては気管支を圧迫)を伴う急性疾患が発生する。少量の胸水は主としてリンパ球性で,典型例では細菌をほとんど含まず,数週間以内に消失する。こうした一連の症状は幼児のほか,最近では感染または再感染を起こした免疫抑制患者でより頻繁に認められる。

活動性疾患

結核に感染している健常者が生涯で活動性疾患を発症するリスクは約5~10%であるが,その比率は年齢とその他の危険因子によって有意に変動する。

活動性疾患を発症する患者の50~80%では,結核の再活性化は最初の2年以内にみられるが,数十年後に発生することもある。

最初に播種が起きるあらゆる臓器が再活性化の部位となる可能性があるが,おそらくは高酸素分圧などの好ましい局所条件のため,再活性化は肺尖部で生じることが最も多い。Ghon focusや侵された肺門リンパ節が再活性化の部位となる可能性はかなり低い。

HIV感染より程度は低いが再活性化を促進するその他の条件として,以下のものがある:

臓器移植を受けて免疫抑制を必要とする患者は最もリスクが高いが,コルチコステロイドやTNF阻害薬などの他の免疫抑制薬も一般的に再活性化を引き起こす。タバコの使用も危険因子である。

一部の患者では,潜在性疾患の再活性化ではなく,再感染によって活動性疾患が発生する。結核が流行し,患者が多量の菌に曝露している地域では,再感染の方が発症機序としての可能性が高い。あまり流行していない地域では潜伏感染の再活性化が主流である。ある患者に生じた活動性疾患が再感染と再活性化のどちらに起因するかを判定するのは困難である。

結核は 遅延型過敏反応 IV型 (DTH)を介して組織を傷害し,典型例では乾酪性の組織学的形態をもつ肉芽腫性壊死を生じる。特にDTHが損傷している免疫抑制患者においては,肺病変は,常にというわけではないが,特徴として空洞性である。胸水は進行性の一次結核ほど一般的ではないが,直接の拡大または血行性拡大に起因することがある。大きな結核病変が胸腔内に破裂すると,気管支胸膜瘻を伴うことのある膿胸が生じることがあり,ときに気胸を来すこともある。化学療法導入前の時代には,ときに人工気胸療法の合併症として結核性膿胸が発生し,空洞の拡大による肺動脈のびらんが原因で突然大量喀血するなど,通常は急速に死に至っていた。

結核の経過は起因菌の毒性と宿主防御の状態に応じて大きく変化する。この疾患に対する先天免疫ないし自然免疫を獲得するまでに必要とされた何世紀にもわたる淘汰圧をこれまで経験してこなかった孤立集団の構成員(例,アメリカ先住民)では,多くの欧州人やその子孫の米国人集団とは異なり,急激な経過を示すことがある。欧州人および米国人集団では,より緩徐な経過をたどる場合が多い。

結核の症状と徴候

活動性肺結核が中等度または重度であっても,数週間かけて徐々に現れる「体調不良」と食欲不振,疲労,体重減少のほかは全く症状がみられない場合もあれば,より特異的な症状がみられる場合もある。咳嗽が最もよくみられる。当初,咳嗽は通常朝の起床時に最小限の黄色または緑色の喀痰を伴うが,疾患の進行に伴い多くの喀痰を生じるようになる。喀血は空洞性結核のみで起こる(肉芽腫性の血管損傷が原因であるが,ときに空洞内の真菌増殖に起因することもある)。

微熱がよくみられるが常にというわけではない。盗汗は古典的症状であるが,結核においては一般的でも特異的でもない。肺実質の損傷,自然気胸または滲出液を伴う胸膜結核によって呼吸困難が起こりうる。

DTHが損傷しているため,HIV感染を伴うと臨床像がしばしば非定型となり,肺外または播種性結核の症状を呈する可能性が高くなる。

結核の診断

  • 胸部X線

  • 抗酸菌染色と培養

  • ツベルクリン検査(TST)またはインターフェロンγ遊離試験(IGRA)

  • 利用可能なときは核酸検査

肺結核は,しばしば以下のいずれかに基づいて疑われる:

発熱,2~3週間以上続く咳嗽,盗汗,体重減少,またはリンパ節腫脹がみられる患者と,結核に曝露した可能性(例,感染した家族,友人,その他の接触者を介した曝露,施設での曝露,結核流行地域への旅行)がある患者では,結核の疑いがより強くなる。

最初の検査は胸部X線および喀痰検査と培養である。胸部画像検査および喀痰検査を行っても活動性結核の診断が不明確な場合には,TSTまたはIGRAを施行してもよい。核酸検査(例,PCR)が診断に役立つ可能性がある。

結核と診断したら,HIV感染症の検査も行うとともに,B型またはC型肝炎の危険因子を有する患者には,これらのウイルスに対する検査も行うべきである。典型的には肝機能および腎機能のベースライン検査を行うべきである。

胸部X線

成人においては,鎖骨上部または後部の多結節性浸潤が活動性結核の最も大きな特徴であり,それは疾患の再活性化を示唆する。それは肺尖撮影または胸部CTで最もよく見える。

中および下肺野の浸潤は非特異的であるが,症状または曝露歴から最近の感染が示唆される患者(通常,若年)においては一次結核の疑いを示しているはずである(特に胸水が認められるなら)。

喀痰の観察,培養,および検査

喀痰検査が肺結核診断の中心である。患者が自然に喀痰を喀出できない場合には,エアロゾル化した高張食塩水を用いて誘発してもよい。誘発が不成功に終わる場合は,気管支ファイバースコープによって特に感度の高い気管支洗浄液を採取することができる。喀痰の誘発と気管支鏡検査は医療スタッフの感染リスクを伴うため,これらの手技は,選択された症例のみに最後の手段として用いるべきである。適切な予防措置(例,陰圧室,N-95または他のぴったり合った呼吸用マスク)を講じるべきである。

初めに,典型例では鏡検で抗酸菌の有無を確認する。結核菌は,名目上はグラム陽性とされているが,グラム染色液の取込みにむらがあるため,従来の光学顕微鏡検査用の検体はZiehl-Neelsen染色またはKinyoun染色で,蛍光顕微鏡検査用の検体は蛍光染色で処理するのが最善である。塗抹鏡検は喀痰1mL当たり約10,000個の菌を検出できるが,これでは,再活性化初期あるいはHIVに同時感染した患者でみられるように,菌数が少ない場合には感度が低くすぎる。

喀痰の塗抹標本中に抗酸菌を検出することは結核を推定する強力な根拠となるが,確定診断には抗酸菌培養または核酸増幅検査(NAAT)で陽性となることが必要である。

培養は,薬剤感受性試験用および遺伝子型解析用として菌を分離する目的でも必要である。培養は,喀痰1mL当たり最小10個の菌を検出でき,固形または液体培地を用いて施行する。しかし,培養結果を最終的に確定するには最長3カ月かかることがある。液体培地は固体培地よりも感度が高く迅速で2~3週間で結果が得られる。MPB64抗原を検出する迅速抗原検査では,抗酸菌培養で増殖する微生物が結核菌(M. tuberculosis)であることを確認できる。

結核の診断には以下の2種類のNAATが利用できる:

  • Xpert MTB/RIF

  • ラインプローブアッセイ

Xpert MTB/RIFは,喀痰検体中の結核菌(M. tuberculosis)DNAをわずか2時間で同定し,同時にリファンピシン(rifampin)に対する耐性を検出できる,全自動の高速核酸増幅検査(NAAT)である。Xpert MTB/RIFの結核診断における感度は,喀痰塗抹の鏡検よりも高く,培養とほぼ同等である。

ラインプローブアッセイは,結核菌(M. tuberculosis)の存在とリファンピシンまたはイソニアジドへの耐性を同定できる。しかしながら,感度がXpert MTB/RIFより低い。この検査は通常,塗抹陽性の標本にのみ行われる。

利用できる検査の種類に応じて異なる様々な診断アルゴリズムがある。

喀痰検体を用いたXpert MTB/RIF検査が陽性であれば,肺結核の診断は確定されたとみなされる。そのような症例では,リファンピシンへの感受性に基づいて治療を開始できる。

NAATと抗酸菌塗抹検査がともに陰性であるか,抗酸菌塗抹検査が陽性でNAATが陰性の場合は,培養結果が出るまでの間,臨床判断に従って抗結核治療を開始するか否かを決定する。

薬物感受性試験

薬剤感受性試験(DST)は,効果的な抗結核レジメンを特定するために全ての患者からの初期の分離株を用いて施行すべきである。3カ月間の治療後も喀痰培養陽性が続く場合と陰性期間の後に培養陽性となった場合には,これらの検査を繰り返すべきである。

従来の細菌学的方法を用いる場合,DSTの結果が得られるまでに最長で8週間を要するが,いくつかの新しい分子生物学的手法によるDSTでは,1つの喀痰検体でリファンピシンに対する耐性またはリファンピシンおよびイソニアジドに対する耐性を数時間で検出することができる。

その他の検体での検査

浸潤例では経気管支生検が可能であり,採取した検体は培養,組織学的評価,および分子生物学的検査に提出する。

検体の少数が培養陽性となる胃洗浄液は,もはや一般的には用いられていないが,良好な喀痰検体が通常得られない幼児は例外である。しかしながら,協力が得られる幼児では喀痰誘発が用いられている。

理想的には,他の組織の生検検体は新鮮なうちに培養に供するべきであるが,NAATでは固定した組織標本も使用できる(例,組織学的検査で思いがけず肉芽腫性変化が検出された場合のリンパ節生検検体)。後者の用途でのNAATの利用は承認されていないが,陽性および陰性適中率が確立されていないにもかかわらず,極めて有用となる可能性がある。

皮膚テスト

複数穿刺器具の使用(管針法)はもはや推奨されない。

通常はTST(Mantoux試験またはPPD[精製ツベルクリン])が行われる。潜伏感染でも活動性感染でも陽性となるため,両者を鑑別することはできない。PPDを米国標準用量の5ツベルクリン単位(TU)含む0.1mL溶液を前腕の掌側に注射する。皮下ではなく皮内に注射することが重要である。境界明瞭な水疱または膨疹が即時に現れるはずである。注射の48~72時間後に硬結(紅斑ではない)の直径を腕の長軸に直交する方向に測定する。

陽性反応の推奨されるカットオフ値は臨床状況に依存する:

  • 5mm:胸部X線で過去の結核感染を示す所見が認められる患者,HIV感染症または薬剤(例,TNF-α阻害薬,プレドニゾン換算で15mg/日,1カ月以上に相当するコルチコステロイドの使用)のために免疫抑制状態にある患者,感染性結核患者と濃厚な接触のある個人など,感染していた場合に活動性結核を発症するリスクが高い患者

  • 10mm:注射薬物使用者,有病率の高い地域から最近移住してきた移民,高リスク環境(例,刑務所,ホームレスシェルター)の居住者,特定の疾患(例,珪肺症,腎機能不全,糖尿病,頭頸部がん)を有する患者,胃切除術または空回腸バイパス術を受けた患者など,特定の危険因子を有する患者

  • 15mm:危険因子のない患者(典型的には検査すべきでない)

偽陰性となることがあるが,その頻度は発熱のある患者,高齢患者,HIV感染患者(特にCD4陽性細胞数が200/μL未満の場合),および重症患者で最も高く,それらの患者の多くは,いかなる皮膚テストにも反応を示さない(アネルギー)。アネルギーはおそらく抑制性抗体が存在するか,またはT細胞が病変部位にあまりに多く動員されて,残ったT細胞が有意な皮膚反応を発現するには少なすぎるためであろう。

患者が非結核性抗酸菌感染症に罹患している場合,またはBCGワクチンの接種を受けた場合には,偽陽性の判定が出る可能性がある。しかし,TSTに対するBCG接種の影響は数年後には減弱しており,この時点以降で検査が陽性の場合には結核感染に起因する可能性が高い。

IGRA

IGRAは血液検査で,in vitroで結核特異的抗原に曝露したリンパ球によるインターフェロンγの遊離に基づいている。IGRAの結果は,TSTと常に一致するとは限らないが,これらの検査は接触者検診では,TSTと比較して感度は同じぐらい,そして特異性はより高いように思われる。重要な点として,この検査は,はるか前に結核に感染した患者は陰性となることが多い。過去にBCGワクチンを受けたことがあっても,TSTと異なり,IGRAで偽陽性にはならない。

TST陽性かつIGRA陰性の患者(特に免疫抑制患者)では再活性化のリスクが低いか否かを検討する長期研究が現在実施されている。

IGRAは比較的高価であるため,医療資源の少ない環境ではあまり利用できない。

結核の予後

免疫能正常の薬剤感性肺結核患者では,たとえ大きな空洞のある重症例でも,適切な治療を開始して完了すれば通常は治癒が得られる。結核はそれでも,症例の約10%(しばしば他の原因により衰弱している患者)において,死亡の原因または一因となる。播種性結核および結核性髄膜炎は,至適な治療を行っても最大25%の症例が死に至る。

易感染性患者では,結核は非常に強い侵襲性を示し,適切かつ積極的に治療しなければ,早ければ発症から2カ月で死に至ることがある(特にMDR-TBの場合)。しかしながら,効果的な抗レトロウイルス療法(および適切な抗結核治療)を施行することにより,HIV感染症患者の予後は,MDR-TBの場合でさえ,免疫能正常患者のそれに近づく可能性がある。XDR-TB患者では,効果的な薬剤が少ないために,治療成績はより不良となることを覚悟すべきである。

結核の治療

  • 感染予防策,ときに空気感染隔離を含む

  • 抗菌薬

合併症のない結核患者の大半,ならびに合併症(例, AIDS AIDS ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は,2つの類似したレトロウイルス(HIV-1およびHIV-2)のいずれかにより生じ,これらのウイルスはCD4陽性リンパ球を破壊し,細胞性免疫を障害することで,特定の感染症および悪性腫瘍のリスクを高める。初回感染時には,非特異的な熱性疾患を引き起こすことがある。その後に症候(免疫不全に関連するもの)が現れ... さらに読む AIDS 肝炎 肝炎の原因 肝炎とは,びまん性または斑状の壊死を特徴とする肝臓の炎症である。 肝炎には急性の場合と慢性(通常は6カ月以上続く場合と定義される)の場合がある。 急性ウイルス性肝炎は,ほとんどの症例で自然に消失するが, 慢性肝炎に進行する場合もある。 肝炎の一般的な原因としては以下のものがある:... さらに読む 糖尿病 糖尿病(DM) 糖尿病はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリン,経口血糖... さらに読む ),薬物有害反応,または薬剤耐性がある全ての患者は,結核専門医に紹介するべきである。Official American Thoracic Society,Centers for Disease Control and Prevention,およびInfectious Diseases Society of America:Clinical Practice Guidelines: Treatment of Drug-Susceptible Tuberculosisも参照のこと。

ほとんどの結核患者には,以下のような伝播予防のための指示を与えた上で,外来で治療することが可能である:

  • 外出しない

  • 訪問客を避ける(曝露歴のある家族は除く)

  • 咳をする際はティッシュペーパーまたは肘の内側で口を覆う

結核患者に対する外科用フェイスマスクの使用は,偏見を助長するため,一般的に協力的な患者への使用は推奨されない。予防措置は,薬物治療によって患者の感染性が十分に低下するまで継続する必要がある。薬剤感性またはMDR-TBであることが証明された患者については,治療に対して臨床的な反応が得られるまで(典型的には1~2週間)予防措置を維持する。しかしながら,XDR-TB患者については,治療に対する反応が遅いことがあり,また伝播が重大な結果につながるため,予防措置を終了するには,より説得力のある反応(例,塗抹または培養の陰性化)が要求される。

入院

入院の主な適応は以下の通りである:

  • 重篤な併発疾患

  • 診断検査上の必要性

  • 社会的問題(例,ホームレス)

  • 曝露歴のない人々と定期的に接触する集団環境の居住者については,空気感染隔離の必要性(効果的な治療を確保できない場合には特に重要である)

全ての入院患者は,理想的には6~12回換気/時間の陰圧室において,まず空気感染隔離しなければならない。入室者全員にNational Institute for Occupational Safety and Healthの認証規格(N-95以上の高規格)に適合した適切なサイズのレスピレーターマスク(サージカルマスクではない)を装着させる。他の入院患者をリスクに曝す可能性が高いため,たとえ効果的な治療を受けている患者で喀痰塗抹検査が陰性化する前に感染性が消失したとしても,空気感染隔離を解除するには通常は2日間で3回の喀痰塗抹検査(1回は早朝に採取した検体であること)が陰性になることが必要である。

パール&ピットフォール

  • 病院や診療所において,結核伝播のリスクが最も高いのは,結核と診断されていない患者や薬剤耐性菌の結核であることが特定されていないために十分な治療を受けていない患者からのものであり,効果的な治療を受けている既知の結核患者からの伝播ではない。

公衆衛生の注意事項

治療のアドヒアランスを改善し,治癒を確実なものとし,感染伝播と薬剤耐性株の発生を抑制するため,たとえ治療を行うのが個人開業医であっても,治療状況は公衆衛生プログラムにより細かくモニタリングされる。米国のほとんどの州において,治療の障害を低減するために結核治療(皮膚テスト,胸部X線,薬物を含む)は保健診療所において無料で利用できる。

至適な患者管理の一環として直接服薬確認療法(DOT)が採用されることが増えてきており,DOTでは毎回の投薬を公衆衛生担当官がモニタリングする。DOTにより,全治療過程を完了できる確率が61%から86%に上昇する(交通費保証,保育,アウトリーチワーカー,食事などの奨励策と支援者が提供される強化DOTでは91%)。

DOTが特に重要なのは以下の場合である:

  • 小児および青年が対象の場合

  • HIV感染,精神障害,または物質乱用がある患者が対象の場合

  • 治療失敗後,再発後,または薬剤耐性の出現後

いくつかのプログラムでは,治療に専心する患者に対してselective self-administered treatment(SAT)が可能である;この治療では,理想的には固定用量の配合剤を使用して,薬剤耐性を誘導する可能性のある単剤治療を回避する。SATにおけるアドヒアランスを改善するために,薬剤をモニタリングする機器が推奨されている。

通常は公衆衛生当局が家庭訪問を行って以下を実施する:

  • 治療の障害となりうる要因(例,極度の貧困,住所不定,育児の問題点,アルコール依存症,精神障害)を評価する

  • 活動性症例の有無を調べる

  • 濃厚接触者を評価する

濃厚接触者とは,同じ呼吸空間を長期間共有する個人で,典型的には同一家庭の居住者であるが,しばしば職場,学校,娯楽場所の人々が含まれる。結核患者の感染性は大きく異なることから,リスクを生じる正確な接触の期間および程度は様々である。複数の家族が罹患または皮膚テスト陽性であることから感染性が高いことが証明された患者では,比較的軽い接触者(例,当該患者の乗車するバスの乗客)も皮膚テストに紹介して 潜伏感染の評価 結核のスクリーニング 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む 結核のスクリーニング を行うべきであるが,一方,家庭内接触者を1人も感染させていない患者が軽い接触者に感染させる可能性は低い。

第1選択薬

イソニアジド(INH)は,1日1回で経口投与され,組織内分布が良好で(髄液を含む),高い殺菌作用を示す。現在も結核治療において最も有用かつ最も安価な唯一の薬物である。多くの国々(特に東アジア)における数十年に及ぶ無制限使用(しばしば単剤治療として)により,耐性菌の比率が著しく増加している。米国においては,分離株の約10%がINH耐性である。

イソニアジドの有害作用としては,発疹や発熱などのほか,まれに貧血や無顆粒球症もみられる。INHは,最大20%の患者に症状を伴わない一過性のアミノトランスフェラーゼ上昇を,そして約1/1000の患者に肝炎を引き起こす。肝炎は,35歳以上の患者,アルコール依存症患者,分娩後の女性,および慢性肝疾患の患者では,より高い頻度で発生する。患者に肝疾患の危険因子がない限り,月1回の肝機能検査は推奨されない。説明のつかない疲労,食欲不振,悪心,嘔吐または黄疸を示す患者は肝毒性が発現している可能性があり,治療を中断して肝機能検査を実施する。症状と有意なアミノトランスフェラーゼ上昇が認められる(または症状はないが正常上限値の5倍を超える上昇が認められる)患者は,定義によれば肝毒性を発現しており,INH投与は中止する。

軽度のアミノトランスフェラーゼ上昇および症状から回復した後の患者には半分の用量で2~3日安全に投与できる。この用量に耐えられる場合は(典型的には約半数の患者が該当する),症状および肝機能低下の再発を綿密にモニタリングしながら全量で再開してもよい。患者がINH,RIF,およびPZAを服用している場合は,全ての薬剤の投与を中止した上で,薬剤毎に別々に再投与を試みなければならない。肝毒性の原因である可能性は,RIFよりもINHまたはPZAの方が高い。

INH誘導性ピリドキシン(ビタミンB6)欠乏によって末梢神経障害が起こることがあるが,その可能性の最も高い人たちは,妊娠中または授乳中の女性,栄養不良患者,糖尿病またはHIV感染患者,アルコール依存症患者,がんまたは尿毒症患者,および高齢者である。ピリドキシン25~50mgを連日投与すればこの合併症を予防できるが,小児および健康な若年成人においては通常不要である。

INHはフェニトインの肝代謝を遅延させ,用量減量が必要となる。それはまた,アルコール依存症に対してときに使用されることのある薬剤ジスルフィラムに対する激しい反応を引き起こすこともある。INHは妊娠中も安全である。

リファンピシン(RIF)は,経口投与され,殺菌的に作用し,吸収性は良好で細胞および髄液中に良好に移行し,迅速に作用を発揮する。また,晩期再発を引き起こしうるマクロファージまたは乾酪病変中の潜伏菌の除去も行う。したがって,RIFは治療の全過程を通じて使用するべきである。

リファンピシンの有害作用としては,胆汁うっ滞性黄疸(まれ),発熱,血小板減少,腎不全などがある。RIFはINHよりも肝毒性発現頻度が低い。RIFを使用するときは薬物相互作用を考慮しなければならない。RIFは,抗凝固薬,経口避妊薬,コルチコステロイド,ジギトキシン,経口血糖降下薬,メサドンおよび他の多くの薬剤の代謝を促進する。リファマイシン系と多くの抗レトロウイルス薬との相互作用は特に複雑で,併用するには専門知識が必要である。RIFは妊娠中も安全である。

特殊な状況では以下の新規リファマイシン系薬剤が使用できる:

  • リファブチンは,RIFとの容認できない相互作用のある薬剤(特に抗レトロウイルス薬)を服用している患者に対して使用する。その作用はRIFと類似しているが,他の薬剤の代謝に対する影響がより少ない。クラリスロマイシンまたはフルコナゾールと併用するときは,リファブチンはぶどう膜炎との関連が報告されている。

  • リファペンチン(rifapentine)は週1回投与のレジメンで使用されるが( Professional.see table 第1選択の経口抗結核薬の用量* 第1選択の経口抗結核薬の用量* 第1選択の経口抗結核薬の用量* ),小児患者とHIV感染患者(許容できない治療失敗率のため)および肺外結核患者には使用されない。リファペンチン(rifapentine)は,結核予防のために週1回の頻度で12回投与するDOTレジメンでもINHとともに使用される。この予防的併用は,2歳未満の小児,抗レトロウイルス治療を受けているHIV感染患者,妊婦,治療期間中に妊娠することが予想される女性に対しては,安全性が不明であるため,推奨されない。

ピラジナミド(PZA)は,殺菌的に作用する経口薬である。最初の2カ月間の集中治療期間中に使用された場合には,治療期間を6カ月に短縮し,RIFに対する耐性の出現を防止する。

ピラジナミドの主な有害作用は消化管障害と肝炎である。しばしば高尿酸血症を引き起こすが,通常は軽度で痛風を誘発することはめったにない。PZAは妊娠期間中よく使用されるが,その安全性は確認されていない。

エタンブトール(EMB)は,経口投与され,最も忍容性の高い第1選択薬である。主な毒性は視神経炎で,高用量(例,25mg/kg)投与された場合および腎機能障害患者においてよくみられる。視神経炎患者は最初に青と緑が識別不能となり,続いて視力障害が発生する。いずれの症状も早期に検出されれば可逆的であるため,患者の視力および色覚の基準検査を実施して,視覚に関する問診を毎月行うべきである。EMBを2カ月以上または上記の表に掲げたものより高い用量で服用している患者は,視力および色覚検査を月1回受けるべきである。言葉および文化的障壁のためにコミュニケーションが制限される場合には,注意が必要である。同様の理由で,EMBは視力検査表を読めない幼児への使用は避けるのが通常であるが,薬剤耐性菌または薬剤に対する不耐性のために必要となった場合には使用可能である。視神経炎が発生した場合は,EMBに代わり別の薬剤を使用する。エタンブトールは妊娠中も安全に使用できる。EMBに対する耐性は,他の第1選択薬に対する耐性よりも頻度が低い。

第2選択薬

他の抗菌薬も結核に効果があり,患者が薬剤耐性の結核(DR-TB)に罹患しているとき,または第1選択薬の1つに耐容性がないときに,主に使用される。最も重要なクラスは,アミノグリコシド系(および非常に近縁のポリペプチド薬であるカプレオマイシン)とフルオロキノロン系の2つであり,アミノグリコシド系薬剤は注射剤としてのみ使用可能である。

ストレプトマイシンは,かつて最も頻用されていたアミノグリコシド系薬剤であり,非常に効果的で殺菌作用が強い。耐性は米国ではまだ比較的少ないが,世界的にはよくみられる。髄液への移行は不良であり,他に効果的な薬剤が利用可能であれば,髄腔内投与は行うべきでない。

ストレプトマイシンの用量依存性の有害作用として,尿細管損傷,前庭障害,聴器毒性がある。投与量は約15mg/kg,筋注である。最大量は通常の成人で1g,60歳以上では0.75g[10mg/kg]に減量する。用量依存性の有害作用を抑えるために,最長2カ月間薬剤を週に5日だけ投与する。その後,必要であれば週2回でさらに2カ月間投与してもよい。腎機能不全患者では投与頻度を減らすべきである(例,12~15mg/kgを週に2ないし3回投与)。平衡覚,聴力,そして血清クレアチニン濃度の適切な検査により,患者をモニタリングする必要がある。

ストレプトマイシンの有害作用としては,発疹,発熱,無顆粒球症,血清病などがある。一般的に口部周囲の紅潮およびピリピリ感が注射に付随するが,速やかに治まる。ストレプトマイシンは胎児に前庭毒性および聴器毒性を与える恐れがあることから,妊娠期間中は禁忌である。

カナマイシンおよびアミカシンは,たとえストレプトマイシン耐性が発現してもなお効果的なことがある。それらの腎毒性および神経毒性はストレプトマイシンと類似する。カナマイシンはMDR-TBに対して最も広く使用されている注射薬である。

カプレオマイシンは,アミノグリコシド系ではないが関連性のある殺菌的な注射薬であり,その用量,有効性,および有害作用はアミノグリコシド系薬剤と同様である。ストレプトマイシンに耐性の分離株はしばしばカプレオマイシンに感性であることから,カプレオマイシンはMDR-TBの治療において重要な薬剤であり,長期投与が必要な場合はアミノグリコシド系薬剤よりも忍容性がやや良好である。

一部のフルオロキノロン系(レボフロキサシン,モキシフロキサシン)は,イソニアジドおよびリファンピシン以後では最も活性が強くかつ最も安全な結核薬であるが,イソニアジドおよびリファンピシンに感性の結核に対する第1選択薬ではない。モキシフロキサシンは,リファンピシンと併用するとイソニアジドと同程度の活性を示すとみられている。

その他の第2選択薬として,エチオナミド,サイクロセリン,パラアミノサリチル酸(PAS)がある。これらの薬剤は,第1選択薬よりも効果的性が低く毒性が強いが,MDR-TBの治療には不可欠である。

ベダキリン,デラマニド,およびステゾリド(sutezolid)は新規抗結核薬で,典型的には高度耐性結核(正確な適応はまだ完全には決定されていない)または他の第2選択薬に耐えられない患者専用である。

薬剤耐性

薬剤耐性は自然発生的な遺伝子変異によって発生する。不完全な治療,一貫しない治療,または単剤での治療を行うと,それらの耐性菌が選択される。耐性株が一旦発生して増殖すると,同じ過程を経てもう1つ別の薬剤に対する耐性を獲得することがある。このようにして,細菌は段階を経て複数の抗菌薬に対して耐性を獲得することができる。

MDR-TBは,イソニアジドおよびリファンピシンに耐性であり,さらに他の薬剤にも耐性のことがある。MDR-TBによる多数のアウトブレイクが報告されており,世界的負担は増してきている。WHOは,全世界で2016年に220,000~490,000の新規症例が発生したと推計している。耐性検査が不十分または利用できない世界の一部地域では,第1選択の治療に反応しない患者の多くが自分がMDR-TBに感染していることにおそらく気づいていない。多剤耐性は結核コントロールに対して大きな負の影響をもたらす;代替療法では,有効性が低く,毒性が高く,より高価な第2選択薬を使用して,より長期間にわたって治療を行う必要がある。

プレXDR-TBでは,MDR-TBの耐性にフルオロキノロン系薬剤または注射薬のどちらか(両方ではない)に対する耐性が付け加わっている。

XDR-TBでは,MDR-TBの耐性プロファイルが拡張して,フルオロキノロン系薬剤とともに少なくとも1つの注射薬(例,ストレプトマイシン,アミカシン,カナマイシン,カプレオマイシン)にも耐性となっている。この追加耐性は治療上厳しい意味合いをもつ。XDR-TB患者の一部は治癒可能であるが,死亡率が高く,治療成績は,残っている効果的薬剤の数および菌によって引き起こされた肺破壊の程度に依存する。

進行したMDR-TBまたはXDR-TB症例の治療では,局所の肺壊死組織を除去する手術が重要であるが,感染率の高い地域で広く利用できるわけではない。

耐性株はヒトからヒトへ伝播しうる。別の人から薬剤耐性株が感染した人は,一次薬剤耐性感染者と呼ばれる。MDR-TBの全症例のうち半数を若干超える症例では治療の既往がないが,これはおそらくMDRまたはXDR株の伝播(しばしば再感染)のためと思われる。病院,診療所,刑務所,シェルター,および難民キャンプなどの集団環境内で薬剤耐性株の伝播が阻止されていないことが,世界的に結核を制御する上での主要な障害となっている。

耐性株にも活性を示すと思われるいくつかの新規抗結核薬が前臨床または臨床開発段階にあるが,あと数年間は利用できない。さらに,治療プログラムの強化(例,毎回の服薬を完全に監督して培養や感受性試験を行いやすくする)を行わなければ,新規薬剤に対する耐性が段階的に発生してくる可能性が高い。

薬剤耐性結核の治療成功の鍵は,効果のある複数の薬剤を同時に使用することであるが,これにより,1つの薬剤に対する耐性株が出現しても第2,第3,第4薬剤の殺菌作用によって抑え込むことができる。さらにレジメンにある全ての薬剤は長期間きちんと服用しなければならない。少しでも服薬遵守を怠ると,さらなる薬剤耐性の出現や治療の失敗を招く恐れがある。

新規抗結核薬であるベダキリン,デラマニド,およびステゾリド(sutezolid)は,耐性株に対して活性があり,薬剤耐性結核の流行をコントロールするのに役立つ可能性がある。しかしながら,結核制御の成功の鍵は,今後もなお,結核を早期に診断し,患者に適切な治療を施し,毎回の服薬を監督する(DOT)という世界的規模の強力な取組みにかかっている。

治療レジメン

以前に治療を受けていない全ての新規結核患者の治療には,以下の段階がある:

  • 2カ月の初期集中段階

  • 4~7カ月の継続段階

初期集中段階の治療には,以下の4つの抗菌薬を使用する:

これらの薬剤は,この段階の期間中連日投与することも,あるいは2週間連日投与し,続いて6週間週2~3回投与することもできる。結核菌の増殖が緩徐なことと増殖に対するpost-antibiotic effect(抗菌薬の濃度が最小発育阻止濃度以下になった後も菌の増殖がしばしば十分に遅延すること)が残存するため,間欠投与(通常高用量)は通常満足できる治療成績を与える。しかしながら,MDR-TBまたはHIV同時感染患者では毎日服用することが推奨される。毎日服用しないレジメンは,各投与がより重要となるのでDOTとして施行すべきである。

4薬剤による集中治療期間の2カ月が経過した後,PZAおよび通常EMBの服用を中止するが,これは最初の分離株の薬剤感受性パターンに左右される。

継続段階の治療は以下に依存する:

  • 最初の分離株での薬物感受性試験の結果(判明している場合)

  • 最初の胸部X線写真上での空洞性病変の有無

  • 2カ月時点での培養の結果

2カ月時点の培養が陽性の場合,それはより長い治療過程が必要であることを示している。

培養および塗抹がともに陰性の場合(胸部X線所見は問わない)と培養および塗抹はともに陽性であるがX線で空洞形成が認められない場合には,INHおよびRIFをさらに4カ月継続する(合計6カ月)。

X線で空洞形成が認められる患者で培養または塗抹が陽性となる場合は,INHおよびRIFをさらに7カ月継続する(合計9カ月)。

いずれのレジメンにおいても,最初の培養でいずれの薬剤に対する耐性も認められなければ,EMBは通常中止する。継続段階の薬剤は毎日か,患者がHIV陽性でなければ,週2~3回投与する。2カ月時点で培養および塗抹がともに陰性となり,胸部X線で空洞形成が認められないHIV陰性の患者には,INHとリファペンチン(rifapentine)を週1回で投与してもよい。

2カ月間の治療後培養が陽性の患者については,その原因を究明するための評価を行うべきである。MDR-TB(一般的原因)に対する評価は,徹底的に行うべきである。臨床医は,他の一般的原因(例,アドヒアランス不良,広範な空洞性病変,薬剤耐性,薬剤の吸収不良)についても検討すべきである。

初期段階および継続段階のいずれにおいても,総投与回数分(1週当たりの回数に週数を掛けて算出)投与すべきで,したがって1回でも投与忘れがあるならば,期間終了時点で終了とせずに治療を延長する。

薬剤耐性結核の管理は,薬剤耐性のパターンにより異なる。一般にMDR-TBには,効果のある4剤または5剤を含むレジメンを使用して,18~24カ月の治療が必要である。薬剤の効果は,薬剤感受性試験の成績,既知の初発患者,抗結核薬に対する曝露歴,または地域の薬剤感受性パターンに基づいて推定する。レジメンには,残っている効果のある第1選択薬(菌株が感性ならばPZAを含める)全てに加えて,4~5剤レジメンを構築するのに必要な場合は,注射用第2選択薬(フルオロキノロン系)および他の第2選択薬を含めるべきである。XDR-TBに対する治療レジメンの策定ははるかに難しくて,しばしばクロファジミンやリネゾリドのような未証明の毒性の高い薬剤を使用する必要がある。

これらの長期間服用する複雑なレジメンの有害作用の管理は困難な仕事である。これらの症例を管理する際には薬剤耐性結核に関する経験を有する結核専門家に相談して助力を求めるべきである。不遵守によってさらに別の薬剤に対する耐性が発生するのを避けるためにDOTが不可欠である。

その他の治療法

残存する結核空洞または肺組織の壊死領域に対する外科的切除がときに必要となる。切除の主な適応は,抗菌薬が移行できない肺組織の壊死領域がある患者における持続性かつ培養陽性のMDR-TBまたはXDR-TBである。その他の適応としては,コントロール不能の喀血および気管支狭窄などがある。

コルチコステロイドは,炎症が病態の主な原因である場合に,結核の治療にときに使用され,急性呼吸窮迫症候群患者または髄膜炎や心膜炎のような閉鎖腔感染症患者に対しては適応とされる。成人および25kg以上の小児にはデキサメタゾンを12mg,経口または静注,6時間毎で投与し,25kg未満の小児には8mgで投与する。治療は2~3週間継続する。他の適応に必要とされるコルチコステロイドは,効果的な結核レジメンで治療を受けている活動性結核患者を危険に曝すことはない。

結核のスクリーニング

  • 活動性肺結核に罹患した人との濃厚接触

  • 過去に結核に感染したことを示す胸部X線の所見

  • 結核への曝露の危険因子(例,過去5年以内に高リスク地域から移住してきた人々,静注薬物使用者,貧困層の患者,米国の一部の医療従事者[呼吸療法士や高リスク集団を担当する医療従事者など])

  • 活動性結核発症の危険因子(例,HIV感染または他の免疫障害,胃切除術,空回腸バイパス術,珪肺症,腎機能不全,糖尿病,頭頸部がん,70歳以上の年齢)

  • コルチコステロイド,TNF阻害薬またはがん化学療法に伴う治療的免疫抑制

米国においては,偽陽性反応を回避するため,特別な結核の危険因子のないほとんどの小児およびその他の人々の検査は行われないはずである。

TSTまたはIGRAが陽性の場合(基準については Professional.see page 皮膚テスト 皮膚テスト 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む 皮膚テスト ),LTBIが示唆される。TSTまたはIGRAの結果が陽性の患者では,他の臨床的および疫学的危険因子を評価し,胸部X線を施行する。結核を示唆するX線写真の異常を有する患者は,上述の通り顕微鏡および培養による喀痰検査などの活動性結核の評価が必要となる。

LTBIの検査および治療に関する最新のガイドラインは,CDCのウェブサイト(www.cdc.gov)で入手できる。

追加免疫反応

かなり以前に結核曝露,BCG予防接種,または非結核性抗酸菌の感染を受けた患者のなかにはTSTまたはIGRA陰性を示す人がいるが,そのような人で,TST自身が追加免疫として働き,わずか1週間あるいは数年も後に行った次の検査が陽性となることがある(追加免疫反応)。したがって,定期的に検査されている人(例,医療従事者)のなかには,2回目のルーチン検査が陽性となり,見かけ上誤って最近感染したとされる(したがって,追加検査および治療が必要となる)人がいる。LTBIの検査を繰り返す必要がある場合には,追加免疫反応を同定するため,2回目のTSTは1回目から1~4週間後に(対側の前腕に)行うべきである(なぜなら,この短期間に陽転が生じる可能性は非常に低いからである)。その後のTSTは標準的に実施して解釈する。

LTBIの新しい検査法であるIGRAは,抗原を注射しないため,追加免疫反応を引き起こさない。この種の検査法は,予防接種またはM. kansasiiM. szulgaiM. marinum以外の環境中の抗酸菌による感染に起因する既存の過敏性にも影響されない。

LTBIの治療

潜在性結核感染症の治療は主に以下の場合に適応となる:

  • TSTが過去2年以内に陰性から陽性に転換した場合

  • 陳旧性結核と一致するX線変化があるが,活動性結核の所見がない場合

予防的治療が適応となるその他の人々は以下の通りである:

  • 感染した場合に活動性結核を発症するリスクの高い人々(例,HIV感染者,薬剤による免疫抑制者)

  • TST陽転の有無にかかわらず,塗抹陽性結核患者と濃厚な接触のある5歳未満の全ての小児

偶発的にTSTまたはIGRA陽性となったが,これらの危険因子が認められない他の人々がしばしばLTBIの治療を受けるが,医師は薬剤毒性の個々のリスクと治療の便益を勘案すべきである。

治療は,耐性の疑い(例,既知のINH耐性症例に対する曝露)がない限り通常INHで行う。用量はほとんどの成人で300mg,1日1回,9カ月,小児では10mg/kg,9カ月である。INH耐性を示すかINHの服用に耐えられない患者に対してはRIF,600mg,1日1回,4カ月で代替する。INHに加えてリファペンチン(rifapentine)を週1回3カ月間服用するDOTも効果的である。

LTBIに対する治療の主な限界は以下の通りである:

  • 肝毒性

  • アドヒアランス不良

LTBIに対して使用された場合,INHは1000例に1例の頻度で肝炎を引き起こすが,INHが速やかに中止されれば,肝炎は通常回復する。LTBIの治療を受けている患者には,新たな症状(特に原因不明の疲労,食欲減退,または悪心)を経験した場合は服薬を中止するように指示しておくべきである。RIFに起因する肝炎はINHに伴う肝炎よりもまれであるが,薬物相互作用は高頻度である。

推奨されている9カ月のINH治療コースを完了する患者はたった約50%である。アドヒアランスは4カ月間のRIFの方が良好である。症状をモニタリングし治療を完了するように励ますために毎月訪問することは,臨床的および公衆衛生的に標準となる優れたやり方である。

結核の予防

予防接種

M. bovis の弱毒株からつくられたBCGワクチンは,感染率の高い国々を中心に世界中で80%を超える小児に接種されている。全体の平均効力はおそらく50%でしかない。BCGは小児における胸腔外結核,特に結核性髄膜炎,の発生率を明らかに低下させており,結核感染を防止していると思われる。したがって,感染率の高い地域では価値があると考えられる。米国ではBCG予防接種の適応はほとんどないが,効果的に治療できない感染性結核症例(すなわちプレXDRまたはXDR-TB)へ不可避的に曝露する小児および定期的にMDR-TBまたはXDR-TBに曝露する感染の既往がないと思われる健康な医療従事者は例外である。

BCG接種を行うと,しばしばTSTが陽転するが,その反応は通常,自然結核感染に対する反応よりも小さく,減弱も速やかである。BCGに起因するTST反応が15mmを超えることはまれで,BCG接種後15年で10mmを超えることもまれである。CDCは,未治療の潜伏感染は重篤な合併症の原因となりうることから,BCG接種歴がある小児で観察されたTST反応は全て結核感染によるものとみなす(かつ,その前提で治療を行う)よう勧告している。IGRAはBCG接種に影響されないため,理想的にはBCGによる予防接種を受けた患者で使用してTSTの反応が結核菌(M. tuberculosis)による感染に起因することを確認すべきである。

特別な集団

小児

結核に感染した小児は,成人よりも活動性疾患を発症する可能性が高いが,一般的には肺外結核として発現する。リンパ節炎(るいれき)が肺外感染で最も頻度の高い臨床像であるが,結核は脊椎(Pott病 骨と関節の結核 骨と関節の結核 ),長管骨の血管豊富な骨端,中枢神経系および髄膜も侵すことがある。

小児における活動性結核の臨床像は多彩であり,診断を困難にしている。大半の小児はbrassy cough以外の症状をほとんど示さない。

培養用の検体を採取するには,しばしば以下のいずれかが必要になる:

  • 胃吸引

  • 喀痰誘発

  • 気管支肺胞洗浄などのより侵襲的な処置

胸部X線の最も一般的な徴候は肺門リンパ節腫脹であるが,区域性無気肺が起こりうる。リンパ節腫脹は化学療法の開始後も進行することがあり,大葉性無気肺も起こしうるが,通常は治療中に消退する。空洞性病変は成人に比べるとまれであり,大部分の小児は,はるかに少数の菌しか存在しないため,感染性はない。

治療戦略は成人のそれと類似しているが,例外は小児の体重に厳密に基づいて薬剤用量を設定しなければならない点である( Professional.see table 第1選択の経口抗結核薬の用量* 第1選択の経口抗結核薬の用量* 第1選択の経口抗結核薬の用量* )。

高齢者

再活性化時にはあらゆる臓器が侵される可能性があり,特に肺,脳,腎臓,長管骨,椎骨,リンパ節が侵されやすい。再活性化では症状がほとんどみられない場合もあり,数週間あるいは数カ月間にわたって見逃され,適切な評価が遅れる可能性がある。高齢者は別の疾患を併発していることも多く,これが診断をさらに複雑なものにする。

年齢にかかわらず,以前にTST陰性であった介護施設入居者では,最近の感染によって発症するリスクが高いが,その場合には肺尖部,中葉,または下葉肺炎と胸水が発生しうる。その肺炎は結核として認識されないことがあり,無効な広域抗菌薬が投与されている間に,病態が持続して他者への伝播が生じる可能性もある。

米国では,一般的には幼児の疾患と思われている粟粒結核や結核性髄膜炎は,実際には高齢者の方が頻度が高い。

高齢者に治療を行う際には,事前に予防的治療のリスクと有益性を注意深く評価すべきである。INHは65歳以上の患者の最大4~5%で肝毒性を引き起こす(65歳未満の患者では1%未満)。このため,高齢者に対する化学予防は,TST後の硬結部が以前の陰性反応から15mm以上増大した場合に限定して行うのが通常である。活動性症例との濃厚接触者とリスクが高いTSTまたはIGRA陰性者にも,禁忌がなければ予防的治療を考慮すべきである。

HIV感染患者

アネルギーと思われる易感染性患者ではTSTの感度は一般に不良である。いくつかの研究によると,易感染性患者ではIGRAはTSTより良好に機能するようであるが,この利点はまだ確立されていない。

未治療の HIV感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は,2つの類似したレトロウイルス(HIV-1およびHIV-2)のいずれかにより生じ,これらのウイルスはCD4陽性リンパ球を破壊し,細胞性免疫を障害することで,特定の感染症および悪性腫瘍のリスクを高める。初回感染時には,非特異的な熱性疾患を引き起こすことがある。その後に症候(免疫不全に関連するもの)が現れ... さらに読む ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 を有するLTBI患者では,約5~10%が1年間で活動性結核を発症する一方,易感染状態にない人々では,生涯の発生率がこれと同等である。1990年代初期には,HIVに感染している未治療またはMDR株感染結核患者の半数が死亡し,生存期間の中央値はわずか60日であった。現在先進国では,早期結核診断および抗レトロウイルス療法のために転帰はやや良好であるが,HIV感染患者における結核は依然として深刻な問題である。発展途上国では,HIVとMDR-TBまたはXDR-TBが同時感染した患者の死亡率は依然として高いままである。

初感染期間中の菌の播種は,HIV感染患者では通常,はるかに広範となる。その結果,結核が肺外性となる割合が大きくなる。結核腫(肺または中枢神経系の結核による腫瘤病変)はかなり高頻度であり破壊性が強い。HIV感染があると,肺病変の炎症反応と空洞形成の両方が軽減する。その結果,胸部X線は非特異的な肺炎像を示すこともあれば,正常のこともある。

HIVが同時感染している場合は,塗抹陰性結核がより高い頻度で認められる。塗抹陰性結核の頻度が高いことから,HIVと結核の同時感染はしばしば少菌型の病態と考えられている。

結核はAIDSの早期に発症することがあり,最初の臨床像となる場合もある。HIV感染患者における結核の血行性播種は,両方の感染症状が混在する重篤でしばしば不可解な疾患を引き起こす。AIDS患者において,CD4陽性細胞数が200/μL以上の場合に発生する抗酸菌感染症は,ほぼ常に結核である。対照的に,結核曝露の確率に依存するが,CD4陽性細胞数が50/μL未満の場合に発生する抗酸菌感染症は通常,M. avium complex(MAC 非結核性抗酸菌感染症 ときに結核菌以外の抗酸菌がヒトに感染することがある。それらの菌(非結核性抗酸菌と呼ばれる)は一般的に土壌中や水中に存在し,ヒトにおいては結核菌(Mycobacterium tuberculosis)よりもはるかに病原性が低い。これらの菌による感染症は,非定型環境性非結核性抗酸菌感染症と呼ばれてきた。... さらに読む )に起因する。MAC感染症は感染性はなく,HIV感染患者では主に血液と骨髄を侵し,肺は侵さない。

結核発症以前に診断が下されなかったHIV感染患者は, 免疫再構築症候群 免疫再構築症候群(IRIS) ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は,2つの類似したレトロウイルス(HIV-1およびHIV-2)のいずれかにより生じ,これらのウイルスはCD4陽性リンパ球を破壊し,細胞性免疫を障害することで,特定の感染症および悪性腫瘍のリスクを高める。初回感染時には,非特異的な熱性疾患を引き起こすことがある。その後に症候(免疫不全に関連するもの)が現れ... さらに読む 免疫再構築症候群(IRIS) (IRIS)の発生リスクを低減するために,抗レトロウイルス療法を開始する前に2週間の抗抗酸菌治療を受けるべきである。一般にHIV感染患者の結核は,in vitro感受性試験によって菌が薬剤感性であることが示された場合には通常のレジメンによく反応する。しかしながら,MDR-TB株の場合には,薬剤の毒性が強い割には有効性が低いために,転帰はそれほど好ましくない。感性菌による結核の治療は,喀痰培養が陰性に転じた後も6~9カ月継続すべきであるが,治療前の喀痰塗抹検査が個別に3回陰性で,感染菌量が少ないことが示唆されていた場合は,6カ月まで短縮してもよい。現在では,喀痰培養が2カ月の治療後に陽性ならば治療を9カ月に延長することが推奨されている。

ツベルクリン反応が5mm以上(またはIGRAが陽性)のHIV感染患者は,化学予防を受けるべきである。

最新のCDCによる結核治療ガイドラインを参考にすべきである。

結核の要点

  • 結核は初感染時は無症状で経過する場合が多く,その後は潜伏期となり,少数の患者では活動期に移行する。

  • 世界人口の約4分の1が結核に感染しており,任意の一時点での活動性結核の患者数は約1500万人である。

  • 活動性疾患は,免疫障害患者,特にHIV感染患者では,発生する可能性がはるかに高くなる。

  • 診断は,症状,危険因子,ツベルクリン検査,およびインターフェロンγ遊離試験の結果に基づいて疑いとなり,喀痰検査(鏡検および培養)および/または核酸増幅検査によって確定する。

  • 複数の薬剤で数カ月間治療する。

  • 薬剤耐性が重大な問題であり,これはアドヒアランス不良,不適切な薬剤レジメンの使用,および不十分な感受性試験が原因で増加する。

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