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梅毒

執筆者:

Sheldon R. Morris

, MD, MPH, University of California San Diego

最終査読/改訂年月 2016年 1月
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先天梅毒。)

梅毒は,スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)によって引き起こされる疾患で,臨床的に3つの病期に区別され,それらの間には無症状の潜伏期がみられることを特徴とする。一般的な臨床像としては,陰部潰瘍,皮膚病変,髄膜炎,大動脈疾患,神経症候群などがある。診断は血清学的検査のほか,梅毒の病期に基づいて選択される補助的検査による。第1選択の薬剤はペニシリンである。

梅毒は,梅毒トレポネーマ(T. pallidum)によって引き起こされ,これはヒトの体外では長く生存できないスピロヘータである。梅毒トレポネーマ(T. pallidum)は,粘膜または皮膚を介して侵入し,数時間以内に所属リンパ節に達し,急速に体全体に広がる。

梅毒は第1期,第2期,および第3期の3段階で発生し( 梅毒の分類),各病期の間には長い潜伏期がある。第1期および第2期の感染者は感染性を有する。

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梅毒の分類

病期

説明

症状と徴候

後天性

第1期

感染性

下疳(通常は無痛の小さな皮膚潰瘍),所属リンパ節腫脹

第2期

感染性

第1期の数週間から数カ月後に発生する

発疹(他の多くの疾患に起因する発疹と混同される可能性がある),粘膜の潰瘍,脱毛,発熱,その他の多くの症状

潜伏期

無症候性;感染性なし

恒久的に持続することもあれば,第3期に移行することもある

前期潜伏梅毒 (感染症持続期間1年未満),ときに感染性病変の再発を伴う

後期潜伏梅毒 (感染症持続期間1年以上),まれに再発を伴う;血清学的検査陽性

晩期または第3期

症候性;感染性なし

臨床的には良性第3期梅毒,心血管梅毒,または神経梅毒(例,無症候性,髄膜血管型,または実質型神経梅毒;脊髄癆)に分類される

先天性*

前期

症候性

2歳までに発生する

顕性疾患

後期

症候性

生涯の後期に発生する

Hutchinson歯,眼または骨の異常

*永続的に潜伏(無症候性)状態で存続することもある。

感染症は,通常,性的接触(性器,口腔性器および肛門性器など)により伝播するが,皮膚接触または胎盤を介して非性的に伝播することもある ( 先天梅毒)。伝播するリスクは,第1期梅毒を有する人との1回の性行為で約30%,感染した母親から胎児へは60~80%である。一度感染しても再感染に対して免疫がつくことはない。

症状と徴候

梅毒はどの病期でも発現することがあり,複数または単一の臓器を侵し,他の多くの疾患と類似する。梅毒はHIV感染の共感染によって加速されうる;その場合には,眼病変,髄膜炎,および他の神経系合併症の頻度がより高く,より重度である。

第1期梅毒

3~4週間(範囲は1~13週間)の潜伏期に続いて,第1期病変(下疳)が接種部位に発生する。初期の紅色丘疹がすぐに下疳を形成するが,これは通常固い基底部を伴う無痛性潰瘍である;こすると,無数のスピロヘータを含んだ透明な液体を生じる。隣接するリンパ節の圧痛を伴わない腫脹,硬化を認めることがある。

下疳は,あらゆる部位に発生しうるが,以下の部位に最もよくみられる:

  • 男性では陰茎,肛門,および直腸

  • 女性では外陰,子宮頸部,直腸,および会陰

  • 男女とも口唇または口腔

ほとんど症状がないため,感染女性の約半分,および感染男性の3分の1は下疳に気づかない。通常男性に発生する直腸または口腔内の下疳は,しばしば見過ごされる。

下疳は,通常3~12週間で治癒する。その後,患者は完全に健康に見える。

第2期梅毒

スピロヘータは血流を介して拡散し,広範囲の粘膜皮膚病変とリンパ節腫脹が生じるほか,頻度はより低いが他の臓器にも症状が生じる。典型的には,症状は下疳が出現した6~12週間後から認められる;25%の患者では,その時点でも下疳がみられる。発熱,食欲不振,悪心,および疲労がよくみられる。頭痛(髄膜炎による),難聴(耳炎による),平衡障害(内耳炎による),視覚障害(網膜炎またはぶどう膜炎による),および骨痛(骨膜炎による)も発生する可能性がある。

80%以上の患者で皮膚粘膜病変がみられ,種々の発疹および病変が出現し,体表面のいかなる部分も侵される可能性がある。無治療の場合,病変は数日から数週間で消失するか,数カ月持続するか,治癒後に再発するが,いずれも最終的には治癒し,通常は瘢痕を残さない。

梅毒性皮膚炎は,通常左右対称で,手掌および足底でより顕著である。個々の病変は円形で,しばしば落屑を伴い,融合してより大きな病変を形成することがあるが,一般的にはそう痒または疼痛を伴わない。病変の治癒後,患部が正常部より明るくまたは暗く変色する。頭皮が侵される場合は,しばしば円形脱毛症が生じる。

扁平コンジローマは,粘膜皮膚移行部および皮膚湿潤部(例,肛門周囲部,乳房の下)にできる肥大した扁平な淡いピンクまたは灰色の丘疹である;病変は極めて感染性が強い。口腔,咽頭,喉頭,陰茎,外陰,または直腸の病変は,通常円形に隆起し,しばしば灰色から白色であり,赤い辺縁を有する。

第2期梅毒は,他の多くの臓器を侵す可能性がある:

  • 約半数の患者はリンパ節腫脹を有するが,通常全身性で圧痛を伴わず,硬く,融合せず,またしばしば肝脾腫を伴う。

  • 約10%の患者では他の臓器に病変が生じ,具体的には眼(ぶどう膜炎),骨(骨膜炎),関節,髄膜,腎臓(糸球体炎),肝臓(肝炎),脾臓などが侵される。

  • 約10~30%の患者で軽度の髄膜炎が生じる一方,髄膜刺激症状がみられる患者は1%未満であるが,その場合は頭痛,項部硬直,脳神経障害,難聴,眼炎(例,視神経炎,網膜炎)などが生じる。

しかしながら,HIV感染患者の間では急性または亜急性髄膜炎の頻度がより高く,頭蓋内血管炎による髄膜症状または脳卒中として現れることがある。

潜伏期

潜伏梅毒には前期(感染後1年未満)と後期(感染後1年以上)がある。

症状および徴候はないが,抗体は存続し,梅毒血清学的検査によって検出される。第1期および第2期梅毒の症状はしばしばごくわずかであるか,見落とされることがあるため,潜伏期に梅毒のルーチン血液検査が行われた際に初めて診断されることがしばしばある。

梅毒は恒久的に潜伏期にとどまることもあるが,前期潜伏期に伝染性皮膚病変または粘膜病変を伴って再発する可能性がある。

患者はしばしば他の疾患で抗菌薬の投与を受けており,その結果として潜伏梅毒の段階で治癒している可能性があり,このことから先進国で晩期梅毒がまれであることを説明できる。

晩期または第3期梅毒

未治療者の約3分の1が晩期梅毒を発症するが,初回感染から何年,何十年と経たないと発症しない。病変は臨床的には良性第3期梅毒,心血管梅毒,または神経梅毒として分類できる。

良性第3期梅毒によるゴム腫は,通常感染の3~10年以内に発生し,皮膚,骨,および内臓を侵しうる。ゴム腫は,軟性の破壊的な炎症性腫瘤であり,典型的に限局性であるが,臓器または組織にびまん性に浸潤することもある;緩徐に拡大し,徐々に治癒して瘢痕を残す。

良性第3期梅毒の骨病変は,深く刺すような疼痛を引き起こす炎症または破壊的病変を来し,夜間に悪化するのが特徴である。

心血管梅毒は,通常最初の感染後10~25年に,瘤による上行大動脈の拡大,大動脈弁機能不全,または冠動脈の狭小化として発現する。拡張した大動脈が拍動することで,胸腔の近隣臓器が圧迫または浸食され,症状を来す可能性がある。症状としては,金属音咳嗽,気管圧迫による呼吸閉塞,左喉頭神経の圧迫に起因する声帯麻痺による嗄声,胸骨および肋骨または椎骨の有痛性浸食などがある。

神経梅毒には,いくつかの病型がある:

  • 無症候性神経梅毒

  • 髄膜血管型神経梅毒

  • 実質型神経梅毒

  • 脊髄癆

無症候性神経梅毒では軽度の髄膜炎が生じるが,これは当初潜伏梅毒と診断された患者の約15%,第2期梅毒の患者の25~40%,心血管梅毒患者の12%,良性第3期梅毒患者の5%にみられる。無治療の場合,5%は症候性の神経梅毒に発展する。髄液検査で最初の感染から2年経って髄膜炎の所見が検出されない場合は,神経梅毒が発症する可能性は低い。

髄膜血管型神経梅毒は,脳または脊髄の大型から中型動脈の炎症に起因し,典型的には感染の5~10年後に発症し,その臨床像は無症状から脳卒中まで様々である。初期症状としては,頭痛,項部硬直,めまい,異常行動,集中力低下,記憶障害,倦怠感,不眠症,霧視などがある。脊髄が侵されると,肩甲帯および腕の筋肉の脱力および消耗,尿もしくは便失禁または両方を伴う緩徐進行性の下肢脱力,およびまれに脊髄動脈の血栓症に起因する突然の下肢麻痺が生じる可能性がある。

実質型神経梅毒(進行麻痺,または麻痺性認知症)は,慢性髄膜脳炎が皮質実質を破壊することで生じる。通常は初回感染の15~20年後に発生し,典型的には40代または50代より前の患者にはみられない。行動症状が進行性に悪化し,ときに何らかの精神障害や認知症に類似する。易刺激性,集中困難,記憶力低下,判断力低下,頭痛,不眠症,疲労,および嗜眠がよくみられる;痙攣発作,失語,および一過性の不全片麻痺が起こることもある。衛生状態や身だしなみに無頓着になる。患者は情緒不安定となり,抑うつ状態になり,病識の欠如を伴う誇大妄想がみられることがある;消耗が生じる場合もある。口腔,舌,広げた手,および全身の振戦が生じうる;その他の徴候としては,瞳孔異常,構音障害,反射亢進などがあり,一部の患者では伸展性足底反応がみられる。通常は,筆跡が揺れて読めなくなる。

脊髄癆(歩行性運動失調)では,後索および後根神経根の緩徐な進行性変性を来す。典型的には初感染の20~30年後に発生する;機序は不明である。通常,最初に発生する最も特徴的な症状は,不規則に再発する背部および下肢の激しく刺すような(稲妻様の)疼痛である。歩行失調,知覚過敏,および錯感覚は,発泡ゴムの上を歩いているような感覚を生じさせる。膀胱知覚の消失により,尿の貯留,失禁,および反復性感染症を来す。勃起障害がよくみられる。

脊髄癆患者の大多数がやせていて,特徴的な悲しげな顔貌およびArgyll Robertson瞳孔(近見視では調節が起こるが,光には反応しない瞳孔)を有する。視神経萎縮が起こりうる。下肢の診察では,筋緊張低下,反射低下,振動覚および関節位置感覚の障害,踵脛試験での運動失調,深部痛覚の消失,ならびにロンベルク徴候を認める。脊髄癆は治療をしても難治性の傾向にある。Visceral crisis(発作性疼痛)は,脊髄癆の変異型である;疼痛発作が様々な臓器で起こり,胃(嘔吐を引き起こす)が最も多いが,直腸,膀胱,および喉頭でもみられる。

その他の病変

梅毒による眼および耳症状は,本疾患のいずれの段階でも生じうる。

眼症候群 は実質眼のどの部分も侵される可能性があり,角膜実質炎,ぶどう膜炎(前部,中間部,および後部),脈絡網膜炎,網膜炎,網膜血管炎,脳神経障害,視神経症などが生じうる。眼梅毒の症例は,男性と性交を行うHIV感染男性に発生している。症例の中には,失明などの重度の合併症に至るものもある。眼梅毒の患者は神経梅毒のリスクがある。

内耳梅毒 では,蝸牛(難聴および耳鳴が生じる)または前庭器官(回転性めまいおよび眼振が生じる)が侵される。

栄養障害性病変 は,皮膚または関節周囲組織の知覚鈍麻に続発して,晩期にみられることがある。栄養障害性潰瘍は足底に発生し,内部の骨の深さまで到達することがある。

神経病性関節症(シャルコー関節)は,骨腫脹および可動域制限を伴う無痛性の関節変性であり,神経障害の古典的な臨床像の1つである。

診断

  • 血液スクリーニングおよび中枢神経系感染症診断のための血清学的レアギン試験(迅速血漿レアギン[RPR]試験またはVDRL[Venereal Disease Research Laboratory]試験)

  • 確定診断のための血清学的トレポネーマ検査(例,梅毒トレポネーマ蛍光抗体吸収試験,抗梅毒トレポネーマ[T. pallidum]抗体に対する赤血球凝集反応)

(US Preventive Services Task Forceの梅毒のスクリーニングに関する推奨の要約も参照のこと。)

典型的な皮膚粘膜病変または原因不明の神経疾患を有する患者では,梅毒を疑うべきであり,感染症が流行している地域では特に注意する。そのような地域では,原因不明の多彩な所見を認める患者においても,梅毒を考慮すべきである。臨床症候は実に多彩で,現在ほとんどの先進国で進行期の症例は比較的まれであるため,梅毒が見落とされることがある。HIV感染症と梅毒を併発する患者では,非定型の臨床像を呈するか,進行が速くなることがある。

診断検査の選択は,疑われる梅毒の病期によって異なる。神経感染症の発見およびフォローアップは,髄液の定量的レアギン試験によって行うのが最も望ましい。症例は公衆衛生当局に報告しなければならない。

梅毒の診断検査

梅毒の血清学的検査(serologic tests for syphilis:STS)を用いるが,これには以下の種類がある:

  • スクリーニング(レアギン,非トレポネーマ)検査

  • 確定(トレポネーマ)検査

  • 暗視野顕微鏡下鏡検

梅毒トレポネーマ(T. pallidum)は,in vitroで培養することができない。従来から,レアギン試験が最初に行われ,陽性であればトレポネーマ試験で確認されてきた。現在,一部の検査室ではこの順序を逆にしており,より新しい安価なトレポネーマ試験を最初に行い,陽性であれば非トレポネーマ試験で確認する。

非トレポネーマ(レアギン)試験では,脂質抗原(ウシ心臓に由来するカルジオリピン)を用いてレアギン(脂質に結合するヒト抗体)を検出する。VDRL(Venereal Disease Research Laboratory)試験および迅速血漿レアギン(RPR)試験は,感度が高く,簡便かつ安価なレアギン試験であり,スクリーニングに用いられるが,梅毒に対して完全に特異的というわけではない。試験結果は,定性的(例,反応,弱反応,境界域,または無反応)に,かつ抗体価によって定量的(例,16倍希釈液で陽性)に示される。

トレポネーマ感染症以外の多くの疾患(例,全身性エリテマトーデス[SLE],抗リン脂質抗体症候群)がレアギン試験で陽性(生物学的偽陽性)となりうる。髄液のレアギン試験は,初期の神経梅毒には適度な感度を有するが,晩期の神経梅毒では感度は低くなる。髄液のレアギン試験を行うことで,神経梅毒の診断や,抗体価の測定により治療に対する反応のモニタリングが可能である。

トレポネーマ試験は,抗トレポネーマ抗体を定性的に検出するもので,梅毒に対して非常に特異的である。具体的には以下のものがある:

  • 梅毒トレポネーマ蛍光抗体吸収(FTA-ABS)試験

  • MHA-TP(microhemagglutination assay for antibodies to T. pallidum

  • 梅毒トレポネーマ(T. pallidum)赤血球凝集反応法(TPHA)

  • 梅毒トレポネーマ(T. pallidum)酵素免疫測定法 (TP-EIA)

  • 化学発光免疫測定法(CLIA)

レアギン試験で陽性となった後に,これらの検査でトレポネーマ感染症が確定されない場合は,レアギン試験の結果は生物学的偽陽性とみなされる。髄液のトレポネーマ試験については議論があるが,一部の専門家はFTA-ABS検査は感度が高いと考えている。

レアギン試験もトレポネーマ試験も初感染後3~6週間経過しないと陽性にならない。したがって,第1期梅毒の初期に結果が陰性であることはよくあり,6週間経過するまでは梅毒の可能性を排除できない。レアギン試験での抗体価は効果的な治療後には低下し,第1期梅毒では1年で,第2期梅毒では2年で陰性となる。トレポネーマ試験は通常,効果的な治療を受けていても,数十年間陽性が続くため,有効性の評価には利用できない。

検査の選択と結果の解釈は様々な因子に依存し,具体的には過去の梅毒,梅毒への曝露の可能性,過去の検査結果などを考慮する。

梅毒にかかったことのある患者では,レアギン試験が行われる。抗体価の4倍の上昇は新たな感染または治療の不成功を意味する。

梅毒にかかったことのない患者では,トレポネーマ試験およびレアギン試験が行われる。検査結果により,次のステップが決まる:

  • 両方の検査で陽性:新たな感染を示唆する。

  • トレポネーマ試験で陽性,レアギン試験で陰性:トレポネーマ試験を再度行い,陽性であることを確認する。レアギン試験で繰り返し陰性であれば,治療の適応はない。

  • トレポネーマ試験で陽性,レアギン試験で陰性,しかし病歴から最近の曝露が疑われる:新たな感染症があればそれを確実に同定するため,曝露から2~4週間後にレアギン試験を再度行う。

暗視野顕微鏡検査では,下疳またはリンパ節から吸引した滲出液のスライドを通るように光線を斜めに当て,スピロヘータを直接可視化する。これに必要な技術および装置が利用できることはあまりないが,暗視野顕微鏡検査は初期の第1期梅毒に対して最も感度および特異度が高い検査である。スピロヘータは,暗い背景に対して明るい運動性の細いらせん状で,大きさは約0.25μm幅,長さは5~ 20μmである。特に口腔内では,常在菌で病原性のないスピロヘータと形態学的に鑑別しなければならない。そのため,梅毒の口腔内病変を暗視野顕微鏡で観察することはない。

第1期梅毒

第1期梅毒は通常,性器の(ときに性器外のこともある)比較的疼痛を伴わない潰瘍に基づいて疑われる。梅毒性潰瘍は他のSTDによる性器病変と鑑別すべきである( 性感染症でよくみられる性器病変の鑑別)。潰瘍を引き起こす2種類の病原体の同時感染(例,単純ヘルペスウイルスと梅毒トレポネーマ[T. pallidum])はまれではない。

下疳またはリンパ節から吸引した滲出液の暗視野顕微鏡検査で診断できる可能性がある。検査結果が陰性となるか,この検査が利用できない場合は,レアギン試験による梅毒血清学的検査を行う。検査結果が陰性か,速やかに検査を実施できない場合でも,皮膚病変が現れて3週間未満(梅毒血清学的検査が陽性になる前)で,かつ別の診断の可能性が低ければ,治療を開始し,2~4週間以内に梅毒血清学的検査を繰り返す場合がある。

梅毒患者は,HIV感染症などの他の性感染症(STD)の検査を診断時および6カ月後に受けるべきである。

第2期梅毒

梅毒は多くの疾患に類似するため,未診断の皮疹または粘膜病変がある場合,特に患者に以下のいずれかがみられる場合には,梅毒を考慮すべきである:

  • 全身性リンパ節腫脹

  • 手掌または足底の病変

  • 扁平コンジローマ

  • 危険因子(例,HIV,複数のセックスパートナー)

第2期梅毒は,臨床所見からは薬疹,風疹,伝染性単核球症,多形紅斑,毛孔性紅色粃糠疹,真菌感染症,または(特に)ばら色粃糠疹と誤診されることがある。扁平コンジローマは,疣贅,痔,または増殖性天疱瘡に間違えられる場合がある;頭皮の病変は白癬もしくは特発性円形脱毛症に間違えられることがある。

梅毒血清学的検査は第2期ではほぼ常に反応し,しばしば高い抗体価を呈するため,レアギン試験で陰性となれば,第2期梅毒は除外される。梅毒血清学的検査(レアギンまたはトレポネーマ試験)陽性と矛盾しない症候群があれば,治療が必要と判断される。まれに,この組合せが別の皮膚疾患を合併する潜伏梅毒を示すことがある。第2期梅毒患者は,他のSTDおよび無症候性神経梅毒の検査を受けるべきである。

潜伏梅毒

無症候性潜伏梅毒は,活動性梅毒の症状または徴候を欠いた状態であり,レアギン試験とトレポネーマ試験による梅毒血清学的検査がともに陽性である場合に診断される。そのような患者では,第2期および第3期梅毒を除外するため,徹底的に診察すべきであり,特に性器,皮膚,神経,および心血管系の診察が重要である。

前期潜伏梅毒の基準は,過去一年の間に,トレポネーマ試験が陽転した,非トレポネーマ試験が陽性になった,またはレアギン試験の抗体価が4倍以上の状態が続く(2週間以上)ことに加えて,以下のいずれかに該当することである:

  • 第1期または第2期梅毒の明らかな症状がある

  • 第1期,第2期,または前期潜伏梅毒と診断されたセックスパートナーがいる

  • 過去12カ月間を除き,曝露の可能性がない

潜伏梅毒の患者で,上記の基準を満たさない者は後期潜伏梅毒である。

レアギン試験による梅毒血清学的検査での抗体価の低下は緩徐であるため,治療を確実に成功させるため,最長で数年間にわたって,治療および血清学的検査によるフォローアップが必要になる場合がある。

潜伏期後天梅毒は,潜伏期先天梅毒,潜伏性イチゴ腫,および他のトレポネーマ性感染症と鑑別しなければならない。

晩期または第3期梅毒

第3期梅毒の症状または徴候(特に原因不明の神経学的異常)を呈する患者は,梅毒血清学的検査を要する。検査で反応性があれば,以下を行うべきである:

  • 髄液検査のための腰椎穿刺(レアギン試験による梅毒血清学的検査を含む)

  • 脳および大動脈の画像検査

  • 感染が臨床的に疑われる他の器官系のスクリーニング

この病期の梅毒では,脊髄癆の少数例を除き,レアギン試験による梅毒血清学的検査はほぼ常に陽性である。

良性の第3期梅毒では,生検なしで他の炎症性腫瘤病変または潰瘍と鑑別するのは困難なことがある。

動脈瘤による隣接臓器の圧迫で生じる症状および徴候,特に吸気性喘鳴または嗄声がみられる場合は,心血管梅毒が疑われる。

大動脈弁狭窄を伴わない大動脈弁閉鎖不全,ならびに胸部X線上での大動脈基部の拡大および上行大動脈壁の線状石灰化があれば,梅毒性大動脈瘤が示唆される。動脈瘤の診断は大動脈画像検査(経食道心エコー検査,CT,またはMRI)により確定される。

神経梅毒では,Argyll Robertson瞳孔を除いたほとんどの症状および徴候は非特異的なため,診断はあらゆる可能性を臨床的に疑うことに大きく依存する。無症候性神経梅毒の診断は,髄液の異常(典型的にはリンパ球優位の細胞増加およびタンパク上昇)および髄液によるレアギン試験で反応がみられることに基づいて下される。実質型神経梅毒では,髄液レアギン試験および血清トレポネーマ試験で反応がみられ,髄液中リンパ球優位の細胞増加およびタンパク上昇がみられるのが典型的である。HIVが存在する場合,軽度の髄液細胞増加および様々な他の神経症状を引き起こすため,診断が紛らわしくなる。

眼梅毒と診断したら,神経梅毒に対する髄液検査を行うべきである。

脊髄癆では,患者が以前に治療経験があると,血清レアギン試験が陰性となりうるが,血清トレポネーマ試験は通常陽性である。髄液では通常,リンパ球増多およびタンパク上昇がみられ,ときにレアギンまたはトレポネーマ試験を行うと陽性となる;しかしながら,治療を受けた患者の多くでは,髄液は正常である。

治療

  • ほとんどの感染症に対し,ベンジルペニシリンベンザチン

  • 眼梅毒または神経梅毒に水溶性ペニシリン

  • セックスパートナーの治療

梅毒の全ての病期および妊娠中における第1選択の治療は,徐放性ペニシリンのベンジルペニシリンベンザチン(Bicillin L-A)である。ベンザチンとプロカインペニシリンの合剤(Bicillin C-R)は使用してはならない。

過去3カ月以内(第1期梅毒が診断される場合)および過去1年以内(第2期梅毒が診断される場合)の全てのセックスパートナーを診断し,感染していれば治療すべきである。

パール&ピットフォール

  • 梅毒には,純粋なベンジルペニシリンベンザチン(Bicillin L-A)のみを使用すること;類似した薬剤名のベンザチンとプロカインペニシリンの合剤(Bicillin C-R)は使用してはならない。

第1期,第2期,および潜伏梅毒

ベンジルペニシリンベンザチン240万単位,筋注1回の投与で,第1期,第2期,および前期(1年未満)潜伏梅毒の治療に十分な血中レベルを2週間持続させられる。通常は両側の殿部に120万単位ずつ投与され,局所反応を抑える。

単回投与レジメン後でも髄液中にトレポネーマが存続することがあるため,後期(1年以上)潜伏梅毒または期間が不明な潜伏梅毒には,240万単位の追加注射を7日後および14日後に行うべきである。HIV感染の有無にかかわらず,治療法は同じである。

著しいペニシリンアレルギー(アナフィラキシー性,気管支攣縮性,または蕁麻疹性)を有する妊娠していない患者に対する第1選択薬は,ドキシサイクリン100 mg,経口,1日2回,14日間(後期潜伏梅毒もしくは,期間が不明な潜伏期梅毒には28日間)の経口投与である。アジスロマイシン 2g,経口,単回の投与は,第1期,第2期,または感受性菌株によって引き起こされた早期潜伏梅毒には効果的である。しかしながら,耐性を高める単一の突然変異が米国を含めた世界の多くの地域でますます高頻度になってきており,不成功率が許容しがたいほど高まっている。

アジスロマイシンは,妊婦または後期潜伏梅毒を治療するために使用すべきではない。ペニシリンアレルギーを有する妊娠患者は,入院してペニシリン脱感作を行う必用がある。

セフトリアキソン1g,筋注または静注,1日1回,10~14日間の投与が,一部の早期梅毒患者に効果的であり,より遅い病期にも効果的となりうるが,最適な用量および治療期間は不明である。

晩期または第3期梅毒

良性または心血管系の第3期梅毒は後期潜伏梅毒と同じ方法で治療できる。

眼の梅毒または神経梅毒には,水溶性ペニシリン,300~400万単位,静注,4時間毎(中枢神経系に最も浸透するが,非実用的な可能性がある),またはベンジルペニシリンプロカイン,240万単位,筋注,1日1回に加え,プロベネシド500mg,経口,1日4回が投与される;両薬剤を10~14日間投与した後,ベンジルペニシリンベンザチンを240万単位,筋注,週1回を最大3週間投与し,合計治療期間を後期潜伏梅毒の場合と等しくする。ペニシリンアレルギーのある患者には,セフトリアキソン2g,筋注または静注,1日1回,14日間の投与が効果的となりうるが,セファロスポリン系薬剤との交差感受性が懸念される場合がある。アジスロマイシンおよびドキシサイクリンは神経梅毒患者では十分に評価されていないため,残る選択肢はペニシリン脱感作である。

無症候性神経梅毒の治療は新しい神経脱落症状の発生を予防すると考えられる。神経梅毒患者には,不全麻痺の管理に抗精神病薬が経口または筋肉内投与されることがある。

電撃痛がある脊髄癆患者には必要に応じて鎮痛薬を投与すべきであり,ときにカルバマゼピン200mg,経口,1日3回または1日4回が有用となる。

ヤーリッシュ-ヘルクスハイマー反応(JHR)

第1期または第2期梅毒患者のほとんど,特に第2期梅毒患者が,初期治療の6~12時間以内にJHR反応を来す。典型的には,倦怠感,発熱,頭痛,発汗,悪寒・振戦,不安,または梅毒病変の一時的増悪として発症する。この機序は解明されておらず,JHRはアレルギー反応として誤診される可能性がある。

JHRは通常,24時間以内に消失し,危険はない。しかしながら,進行麻痺または髄液細胞数が高い患者は,痙攣または脳卒中などのより重篤な反応を呈することがあり,程度に応じて注意して観察すべきである。

梅毒が診断されていない患者で,その他の感染症に対しトレポネーマに有効な抗菌薬を投与された場合,予期しないJHRが発生する。

治療後のサーベイランス

治療後,患者は以下を行うべきである:

  • 診察およびレアギン試験を3カ月後,6カ月後,および12カ月後に行い,その後も試験が無反応となるまであるいは抗体価が4分の1に減少した状態が続くまで年1回行う。

  • 神経梅毒には,髄液細胞数が正常になるまで,6カ月毎の髄液検査

治癒を確認するために繰り返して検査を行うことの重要性を,治療前に患者に説明すべきである。診察およびレアギン試験は治療の3カ月後,6カ月後,および12カ月後に実施すべきであり,その後も試験が無反応となるまで年1回行う。6カ月の時点で抗体価が4分の1に減少しなければ,治療の不成功が示唆される。治療が成功すると,一次病変は急速に治癒し,血漿レアギン試験での抗体価が低下し,通常は9~12カ月以内に定性的に陰性になる。

推奨に従った治療を受けた第1期または第2期梅毒患者の約15%では,レアギン試験での抗体価が4分の1(治療から1年後の反応を定義する基準)まで低下しない。このような患者は,臨床的および血清学的にフォローアップすべきであり,HIV感染症の評価も行うべきである。フォローアップが確実に行えるかわからない場合は,髄液で神経梅毒の検査を行うか(未確認の神経梅毒が治療不成功の原因である場合があるため),またはベンジルペニシリンベンザチン240万単位を週1回,3週間筋注することにより再治療すべきである。

トレポネーマ試験は,数十年間または永久に陽性が維持されることがあるため,進行をモニタリングする目的で実施すべきではない。6~9カ月後には,血清学的または臨床的な再燃(通常は神経系)が起こりうるが,それは再発ではなく再感染によるものである可能性がある。

神経梅毒患者は,髄液細胞数が正常となるまで,6カ月間隔で髄液検査を受ける必要がある。HIV感染患者では,持続する髄液細胞増多は,持続的な神経梅毒よりはむしろHIVの作用を示している可能性がある。髄液細胞数が正常,髄液および血漿レアギン試験が陰性,かつ神経学的診察が陰性の状態が2年間にわたり持続すれば,おそらく治癒したものと考えられる。以下のいずれかが存在する場合は,さらに強化した抗菌薬レジメンによる再治療が適応となる:

  • 髄液細胞数が2年間以上にわたり異常値を維持する

  • 血漿レアギン試験で2年間以上にわたり反応性を維持する

  • 血漿レアギン試験における抗体価の上昇

  • 臨床的再発

要点

  • 梅毒には,無症状の潜伏期によって隔てられる症候性の3つの臨床病期がある。

  • 特徴的な皮膚病変(下疳)が,典型的には一次感染部位に現れる。

  • その後,ほぼ全ての臓器が侵される可能性があるが,皮膚,粘膜,眼,骨,大動脈,髄膜,および脳がよく侵される。

  • 非トレポネーマ(レアギン)試験(例,RPR,VDRL)を使用して診断し,陽性であればトレポネーマ抗体検査で確定する。

  • 可能であれば常にペニシリンで治療する。

  • 梅毒の症例は公衆衛生当局に報告する。

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