水痘 水痘 水痘は,通常は小児期にみられる急性の全身感染症であり,水痘帯状疱疹ウイルス(ヒトヘルペスウイルス3型)によって引き起こされる。通常は軽度の全身症状から始まり,その後すぐに斑状疹,丘疹,小水疱,および痂皮を特徴とする皮膚病変が群発して現れる。重度の神経系またはその他の全身性合併症(例,肺炎)のリスクのある患者は,成人,新生児,および易感染性患者,または特定の基礎疾患を有する患者などである。診断は臨床的に行う。重症合併症のリスクのある患者は... さらに読む (水疱瘡)と 帯状疱疹 帯状疱疹 帯状疱疹は,水痘帯状疱疹ウイルスが後根神経節で潜伏状態から再活性化される際に生じる感染症である。症状は通常,侵された皮膚分節に沿った疼痛から始まり,その後小水疱が2~3日以内に生じ,通常はこれが診断の決め手となる。治療は抗ウイルス薬であり,皮膚病変発現後72時間以内に投与するのが理想である。 ( ヘルペスウイルス感染症の概要を参照のこと。) 水痘と帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルス(ヒトヘルペスウイルス3型)により引き起こされるが,水痘は同... さらに読む は,水痘帯状疱疹ウイルスにより引き起こされる疾患で,水痘はこのウイルスによる感染症の急性侵襲期であり,帯状疱疹は潜伏期からの再活性化を意味する。
詳細については,Zoster (Shingles) Advisory Committee on Immunization Practices Vaccine RecommendationsおよびCenters for Disease Control and Prevention (CDC): Shingles (Herpes Zoster) Vaccinationを参照のこと。2022年版の成人向け予防接種スケジュールに加えられた変更の要約が,ここから入手可能である。
(予防接種の概要 予防接種の概要 免疫は以下の形で付与することができる: 抗原を用いる能動免疫(例,ワクチン,トキソイド) 抗体を用いる受動免疫(例,免疫グロブリン,抗毒素) トキソイドは,無害でありながらも抗体産生を刺激できるように修飾が加えられた細菌毒素である。 ワクチンは,病原性を示さないように作製された完全な細菌またはウイルス(生または不活化ワクチン)あるいは細菌... さらに読む も参照のこと。)
帯状疱疹ワクチンの製剤
帯状疱疹ワクチンには以下の2種類がある:
組換えワクチン:弱毒生ワクチンよりも高い予防作用が長期間持続することから,望ましい帯状疱疹ワクチンである
弱毒生ワクチン:水痘ワクチンと似ているが,弱毒化ウイルスがより多く含まれている。その弱毒生ワクチンは,米国ではもはや使用できなくなっている。
帯状疱疹ワクチンの適応
帯状疱疹ワクチンの適応としては以下のものがある:
組換えワクチン:帯状疱疹の発症歴および弱毒生帯状疱疹ワクチンの接種歴を問わず,50歳以上の成人
組換えワクチン:疾患または治療のために免疫不全または免疫抑制状態にある,またはこれらの状態になることが見込まれる19歳以上の成人
組換えワクチンまたは弱毒生ワクチン:60歳以上の成人(組換えワクチンが望ましい)
帯状疱疹ワクチンの禁忌および注意事項
組換え帯状疱疹ワクチンの禁忌としては以下のものがある:
弱毒生帯状疱疹ワクチンの禁忌としては以下のものがある:
ワクチン成分に対して重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある
重度の 原発性または後天性免疫不全症 免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患では,感染症,自己免疫疾患,リンパ腫,その他のがんなど,様々な合併症がみられたり,そのような合併症が発生しやすくなったりする。原発性免疫不全症は遺伝性であり先天性となる可能性があり,続発性免疫不全症は後天性でありはるかに多くみられる。 免疫不全症の評価には病歴,身体診察,および免疫機能の検査が含まれる。どのような検査を行うかは... さらに読む (例,白血病,リンパ腫,固形腫瘍,骨髄またはリンパ系を侵す腫瘍,AIDS,重症HIV感染症,化学療法,免疫抑制薬の長期使用)が判明している
妊娠
注意事項としては以下のものがある:
発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の急性疾患が認められる(消失するまで接種を延期する)
弱毒生帯状疱疹ワクチンでは,特定の抗ウイルス薬の使用:アシクロビル,ファムシクロビル,バラシクロビル(可能であれば,これらの薬剤の使用後24時間まで接種を延期し,接種後14日間はその薬剤の使用を再開しない)
組換えワクチンの臨床試験では,妊婦および授乳中の女性は除外された。現在のところ,組換え帯状疱疹ワクチンの妊娠中の使用に関するCDCの推奨は存在しない;ゆえに,妊娠および授乳が終わるまで組換えワクチンの接種を遅らせることを検討すべきである。(CDC: Shingrix Recommendationsも参照。)
帯状疱疹ワクチンの用量および用法
組換え帯状疱疹ワクチンは,2~6カ月の間隔を空けて計2回(各0.5mL)筋肉内に接種する。
弱毒生帯状疱疹ワクチンの接種歴のある成人では,弱毒化生ワクチンの接種から2カ月以上後に,組換え帯状疱疹ワクチンを2~6カ月の間隔を空けて2回接種する。
弱毒生ワクチン0.65mLを領上腕の三角部の皮下に単回接種する。
帯状疱疹ワクチンは,免疫抑制療法を開始する14日以上前に接種すべきであるが,可能であれば,帯状疱疹ワクチン接種後1カ月間は免疫抑制療法の開始を延期するのが望ましいと考える専門家もいる。
帯状疱疹ワクチンの有害作用
組換え帯状疱疹ワクチンの最も頻度の高い有害作用は,注射部位の疼痛,発赤,腫脹,筋肉痛,疲労,頭痛,シバリング,発熱,および消化管症状である。
弱毒生帯状疱疹ワクチンの最も頻度の高い有害反応は,注射部位の疼痛,発赤,腫脹,およびそう痒,ならびに頭痛である。
より詳細な情報
以下の英語の資料が有用かもしれない。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP): Zoster (Shingles) ACIP Vaccine Recommendations
Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Shingles (Herpes Zoster) Vaccination: Information for Healthcare Providers