ジフテリア・破傷風・百日咳混合ワクチン

執筆者:Margot L. Savoy, MD, MPH, Lewis Katz School of Medicine at Temple University
レビュー/改訂 2022年 10月
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ジフテリアトキソイド,破傷風トキソイド,および無細胞百日咳を含むワクチンは,ジフテリア破傷風,および百日咳の予防に役立つが,全ての症例を予防できるわけではない。

詳細については,DTaP/Tdap/Td Advisory Committee on Immunization Practices Vaccine RecommendationsおよびCenters for Disease Control and Prevention (CDC): Diphtheria, Tetanus, and Pertussis Vaccinationを参照のこと。2022年版の成人向け予防接種スケジュールに加えられた変更の要約が,ここから入手可能である。

予防接種の概要も参照のこと。)

製剤

ジフテリア(D)ワクチンは,ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)から調製されたトキソイドを含有する。破傷風(T)ワクチンは,破傷風菌(Clostridium tetani)から調製されたトキソイドを含有する。無細胞(a)百日咳(P)ワクチンは,百日咳菌(Bordetella pertussis)の半精製または精製成分を含有する。全菌体百日咳ワクチンは,有害作用に関する懸念のために米国ではもはや入手できなくなっているが,世界の他の地域ではまだ入手可能である。無細胞ワクチンには次の2種類の製剤がある:

  • ジフテリア・破傷風・無細胞百日咳(DTaP),7歳未満の小児用

  • 破傷風・ジフテリア・百日咳(Tdap),青年および成人用

Tdapでは,ジフテリアおよび百日咳成分の含量が低減されている(このことを小文字のdpで示している)。

適応

DTaPは,ルーチンの小児予防接種の1つである( see table 0~6歳を対象とする推奨予防接種スケジュール)。

Tdapは,ルーチンで生涯に1回,11歳または12歳の小児に接種するほか,13歳以上でTdapが未接種(最後に受けた破傷風・ジフテリア[Td]ワクチン接種からの経過期間は問わない)またはワクチン接種歴が不明の個人に接種する。この後,10年毎にTdの追加接種を行う。

以下に該当する場合は,さらにTdapの追加接種も推奨される:

  • 妊婦:毎回の妊娠中(妊娠27~36週が望ましい),過去のTdap接種からの経過期間は問わない

  • 過去にTdapの接種を受けていない分娩後の女性

創傷管理の一環として破傷風トキソイドを含有するワクチンの接種を必要とし,かつ過去にTdapの接種を受けていない成人には,破傷風・ジフテリア混合ワクチン(Td)の代わりにTdapを接種する。過去にTdapの接種を受けたことがある成人には,TdapまたはTdを接種する。

百日咳菌の感染歴がある個人にも,ルーチンの推奨に従って,百日咳を対象に含むワクチンを接種すべきである。

禁忌および注意事項

DTaPおよびTdapの禁忌は以下の通りである:

  • 以前の接種後に,またはワクチン成分に対して,重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある

  • 百日咳成分について:過去のDTaPまたはTdapの接種から7日以内に他に明らかな原因が認められない脳症(例,昏睡,意識レベルの低下,長時間の痙攣)を発症したことがある

破傷風の予防接種は重要であるため,DTaPまたはTdapの成分に対するアナフィラキシー反応の既往がある個人については,破傷風トキソイドに対するアレルギーの有無を明らかにするために,アレルギー専門医に紹介するべきである。アレルギーがなければ,破傷風トキソイド(TT)ワクチンによる予防接種が可能である。脳症の既往がある成人には破傷風・ジフテリ混合アワクチン(Td)の接種が可能であり,小児にはTdapの代わりにジフテリア・破傷風ワクチン(DT)を接種できる。

注意事項は製剤によって大きく異なる。

DTaPおよびTdapに関する注意事項としては以下のものがある:

  • 発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の急性疾患が認められる(可能であれば消失するまで接種を延期する)

  • 破傷風トキソイドを含有するワクチンの接種後6週間以内にギラン-バレー症候群を発症したことがある

  • 百日咳成分のみ:進行性もしくは不安定な神経疾患,コントロール不良の痙攣発作,または進行性脳症(治療レジメンが確立されて病状が安定するまで接種を延期する)

DTaPのみに関する注意事項としては以下のものがある:

  • 過去のDTaP接種後3日以内に,痙攣発作(発熱の有無は問わない)を起こしたことがある

  • 過去のDTaP接種後48時間以内に,3時間以上持続し,あやしても治まらない激しい絶叫または啼泣を起こしたことがある

  • 過去のDTaP接種後48時間以内に,卒倒またはショック様の状態(筋緊張および意識レベルの低下[hypotonic hyporesponsive episode])に陥ったことがある

  • 過去のDTaP接種後48時間以内に,他の原因では説明できない40.5℃以上の発熱を起こしたことがある

Tdapのみに関する注意事項としては以下のものがある:

  • 過去に破傷風またはジフテリアトキソイドを含有するワクチンの接種後にIII型過敏反応を起こしたことがある(破傷風トキソイドを含有するワクチンの最後の接種から10年以上にわたり接種を延期する)

用量および用法

DTaPまたはTdapの用量は0.5mLの筋肉内接種である。

DTaPワクチンは,小児期に初回接種5回と追加接種1回を筋肉内注射で次の通り接種する:生後2カ月時,4カ月時,6カ月時,15~18カ月時,4~6歳時(就学前)。4回目の接種を4歳以上で受け,3回目の接種から6カ月以上経過している場合は,5回目の接種は不要である。

Tdapの追加接種は1回のみであるが,妊婦は例外で,妊娠のたびに接種すべきであり,妊娠27~36週時が望ましい。

パール&ピットフォール

  • 女性は妊娠のたびにTdapの追加接種を受けるべきである。

有害作用

有害作用の発生はまれであり,ほとんどが百日咳成分に起因する。具体的には以下のものがある:

  • 脳症(7日以内)

  • 発熱を伴うまたは伴わない痙攣発作(3日以内)

  • 48時間以内に,3時間以上持続し,あやしても治まらない激しい絶叫または啼泣を起こしたことがある

  • 卒倒またはショック(48時間以内)

  • 48時間以内に,他の原因では説明できない40.5℃以上の発熱を起こしたことがある

  • 即座に起こるワクチンへの重度の反応またはアナフィラキシー反応

百日咳ワクチンの禁忌がある場合は,百日咳成分を含有しないジフテリア破傷風混合ワクチンが使用可能である。

軽度の有害作用としては,注射部位の発赤,腫脹,疼痛などがある。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用かもしれない。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP): DTaP/Tdap/Td ACIP Vaccine Recommendations

  2. Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Diphtheria, Tetanus, and Pertussis Vaccination: Information for Healthcare Professionals

  3. Summary of changes to the 2022 adult immunization schedule

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