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百日咳

(whooping cough)

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;


Maria T. Perez

, MD, Wellington Regional Medical Center, West Palm Beach

最終査読/改訂年月 2018年 4月
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百日咳は,グラム陰性細菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)を原因菌として主に小児および青年に発生する,感染性の強い疾患である。 まず非特異的な上気道感染症状が出現した後,通常は長い吸気性笛声(whoop)で終わる発作性ないし痙攣性の咳嗽(痙咳)がみられるようになる。診断は上咽頭培養,PCR,および血清学的検査による。治療はマクロライド系抗菌薬による。

百日咳は世界中で流行している。米国では3~5年のサイクルで流行がみられる。百日咳はヒトにのみ発生する;病原体保有生物となる動物はいない。

主な伝播経路は,感染患者(特にカタル期と痙咳期早期)に由来する百日咳菌(B. pertussis)(非運動性の小さなグラム陰性球桿菌)を含む呼吸飛沫を介するものである。伝染力が高く,濃厚な接触がある場合には80%以上が発症する。汚染物との接触による感染はまれである。通常,痙咳期の3週目より後の患者は感染源とならない。

百日咳はワクチンで予防可能な小児疾患 小児予防接種の有効性および安全性 予防接種は重篤な疾患の予防に多大な効果を果たしてきた(Professional.see table ワクチンで予防可能な疾患の発生率)。その費用の低さ(特に長期の投与を要する薬剤と比べた場合)を考慮すると,ワクチンは最も費用対効果の高い医薬品の1つである。ワクチンの効果は非常に大きく,かつては極めて高い頻度でみられ致死的であった感染症は,... さらに読む であるが,発生率が上昇している。米国では,1980年時点での発生率は人口10万人当たり1例であったが,2014年には人口10万人当たり10例まで上昇した。CDCが2016年に公表した暫定的なサーベイランス報告書によると,発生率は10万人当たり4.9人例であった(1 参考文献 百日咳は,グラム陰性細菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)を原因菌として主に小児および青年に発生する,感染性の強い疾患である。 まず非特異的な上気道感染症状が出現した後,通常は長い吸気性笛声(whoop)で終わる発作性ないし痙攣性の咳嗽(痙咳)がみられるようになる。診断は上咽頭培養,PCR,および血清学的検査による。治療はマクロライド系抗菌薬による。 百日咳は世界中で流行している。米国では3~5年のサイクルで流行... さらに読む )。1980年代以降の増加の原因は以下の通りである:

このような免疫のない患者が発症するほか,免疫のない青年および成人は百日咳菌(B. pertussis)の重要な病原体保有生物となっており,しばしば,免疫のない1歳未満の乳児(年間発生率を最も大きく押し上げており,致死率が最も高い)への感染源となる(2 参考文献 百日咳は,グラム陰性細菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)を原因菌として主に小児および青年に発生する,感染性の強い疾患である。 まず非特異的な上気道感染症状が出現した後,通常は長い吸気性笛声(whoop)で終わる発作性ないし痙攣性の咳嗽(痙咳)がみられるようになる。診断は上咽頭培養,PCR,および血清学的検査による。治療はマクロライド系抗菌薬による。 百日咳は世界中で流行している。米国では3~5年のサイクルで流行... さらに読む )。また,アウトブレイクを起こす菌株の病原性が高まっている可能性もある。

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最初の曝露では終生免疫の獲得には至らないが,過去にワクチン接種を受けたが免疫が減弱している青年および成人では,2回目の曝露と感染では通常軽症となり,気づかれないことが多い。

百日咳菌による疾患

呼吸器合併症(乳児の窒息を含む)が最も多くみられる。しばしば中耳炎が生じる。年齢を問わず,気管支肺炎(高齢者に多い)から死に至ることがある。

痙攣発作は乳児でよくみられるが,より年長の小児ではまれである。

重度の発作とそれに起因する低酸素症の結果により,脳,眼,皮膚,粘膜への出血が起こることがある。脳出血,脳浮腫,および毒素による脳炎の結果として,痙性麻痺,知的障害,またはその他の神経学的障害を来すことがある。

ときに臍ヘルニアや直腸脱もみられる。

パラ百日咳

これはパラ百日咳菌(B. parapertussis)を原因菌とする疾患で,臨床的に百日咳と鑑別できないことがあるが,通常は比較的軽症で致死率も低い。

参考文献

症状と徴候

潜伏期間は平均7~14日(最大3週間)である。百日咳菌(B. pertussis)は呼吸器粘膜に侵入して粘液の分泌を亢進させるが,その粘液は当初は希薄ながら,後に濃厚かつ粘稠となる。合併症がない場合,症状は約6~10週間続き,以下の3期に分けられる:

  • カタル期

  • 痙咳期

  • 回復期

カタル期は潜行性に始まり,一般にくしゃみ,流涙,その他の鼻感冒の徴候;食欲不振;元気のなさ;煩わしい夜間の乾性咳嗽(徐々に日中に生じるようになる)などがみられる。嗄声がみられることがある。発熱はまれである。

10~14日後には痙咳期に移行し,咳嗽の重症度と頻度が悪化する。1回の呼気の間に立て続けに5回以上の咳嗽が連続して起こり,最後に深い吸気とともに高調の笛声(whoop)が聴かれる。発作中または発作後には,大量の粘稠な粘液が喀出されたり,外鼻孔から泡状に排出されたりすることがある。嘔吐が特徴的である。乳児では,吸気性笛声よりも窒息発作(チアノーゼはみられないこともある)の方がよくみられる。

回復期になると(通常は発症から4週間以内),症状は軽快する。平均罹病期間は約7週間(範囲は3週間から3カ月以上)である。発作性の咳嗽が数カ月にわたり反復することがあるが,これは通常,感受性が高い気道が上気道感染から刺激を受けることによって誘発される。

診断

  • 上咽頭培養,直接蛍光抗体法,およびPCR

  • 血清学的検査

カタル期には,気管支炎 急性気管支炎 急性気管支炎は気管気管支の炎症であり,一般的には,慢性肺疾患のない患者に発生する上気道感染症に続いて起こる。原因はほぼ常にウイルス感染である。病原体が同定されることはまれである。最も一般的な症状は咳嗽であり,発熱は伴うことも伴わないこともあり,また喀痰産生を伴うことがある。診断は臨床所見に基づく。治療は支持療法であり,抗菌薬は通常不要であ... さらに読む インフルエンザ インフルエンザ インフルエンザは,発熱,鼻感冒,咳嗽,頭痛,および倦怠感を引き起こすウイルス性呼吸器感染症である。季節的な流行の際には特に高リスク患者(例,施設入所者,低年齢児と高齢者,心肺機能不全患者,または妊娠後期の妊婦)の間で死亡も起こりうる;パンデミックの間は,健康な若年患者でさえ死に至る可能性がある。診断は通常,臨床的に,また地域の疫学的パターンに基づいて行う。インフルエンザワクチンは禁忌のない6カ月以上の全ての人に毎年接種すべきである。抗ウ... さらに読む との鑑別が困難となることが多い。アデノウイルス感染症 アデノウイルス感染症 数多くあるアデノウイルスのいずれかに感染した場合,無症状に経過することもあれば,軽度の呼吸器感染症,角結膜炎,胃腸炎,膀胱炎,原発性肺炎などの特異的な症候群を来すこともある。診断は臨床的に行う。治療は対症療法である。 アデノウイルスは,3つの主要なカプシド抗原(ヘキソン,ペントン,およびファイバー)によって分類されるDNAウイルスである。ヒトアデノウイルスには,7つの種(A~G)と57の血清型がある。血清型によって異なる病態がみられる。... さらに読む 結核 結核 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む 結核 も考慮すべきである。

上咽頭検体の培養では,カタル期および痙咳期早期症例の80~90%が百日咳菌(B. pertussis)陽性となる。特殊染色と長時間の培養が必要となるため,百日咳の疑いがあることを検査室に連絡しておくべきである。

上咽頭塗抹検体の特異的な蛍光抗体検査では,百日咳を正確に診断できるが,感度は培養ほど良好ではない。急性期と回復期のペア血清を用いた検査が役立つことがある。

上咽頭の検体のPCR検査は,最も感度が高く,最もよく選択される。

白血球数は通常15,000~20,000/μLであるが,正常値となる場合もあれば,60,000/μLまで上昇する場合(通常は60~80%が小リンパ球である)もある。

パラ百日咳は培養または蛍光抗体法により鑑別する。

治療

  • 支持療法

  • エリスロマイシンまたはアジスロマイシン

重篤な状態の乳児には空気感染隔離下での入院が推奨される。隔離は抗菌薬を5日間投与するまで継続する。

乳児では,吸引により咽頭の過剰な粘液を除去することが救命につながることがある。ときに,酸素投与と気管切開または経鼻気管挿管が必要となる。去痰薬,鎮咳薬,および軽い鎮静薬では効果はほとんど得られない。

わずかな刺激でも低酸素症を伴う重篤な咳嗽発作が誘発される可能性があるため,重篤な状態の乳児は暗く静かな部屋に移して,可能な限り刺激を回避するべきである。

在宅で治療する患者は,発症後少なくとも4週間が経過し,かつ症状が治まるまで隔離すべきである(特に感受性の高い乳児からの隔離)。

カタル期の抗菌薬投与は,病状の改善につながる可能性がある。痙咳期と確認されてからの抗菌薬投与は,臨床的な効果は得られないのが通常であるが,感染拡大を制限する目的で推奨される。

以下の薬剤が望ましい:

  • エリスロマイシン10~12.5mg/kg,経口,6時間毎(最大2g/日),14日間

  • アジスロマイシン10~12mg/kg,経口,1日1回,5日間

マクロライド系抗菌薬を使用できないか過敏症を有する生後2カ月以上の患者では,トリメトプリム/スルファメトキサゾールで代用することができる。

細菌性合併症(例,気管支肺炎,中耳炎)に対しても抗菌薬を使用すべきである。

予防

標準的な小児予防接種の一環として,百日咳に対する予防接種が行われている。無細胞百日咳ワクチン ジフテリア・破傷風・百日咳混合ワクチン ジフテリアトキソイド,破傷風トキソイド,および無細胞百日咳を含むワクチンは,ジフテリア,破傷風,および百日咳の予防に役立つが,全ての症例を予防できるわけではない。 詳細については,DTaP/Tdap/Td Advisory Committee on Immunization Practices Vaccine RecommendationsおよびCenters for Disease... さらに読む が5回接種されるが(通常はジフテリアおよび破傷風との混合ワクチン[DTaP]),具体的には生後2,4,6カ月時と追加免疫として生後15~18カ月時および4~6歳時に接種される。

ワクチンの百日咳成分による重大な有害作用としては以下のものがある:

  • 脳症(7日以内)

  • 発熱を伴うまたは伴わない痙攣発作(3日以内)

  • 3時間以上持続し,あやしても治まらない激しい絶叫または啼泣

  • 卒倒またはショック(48時間以内)

  • 40.5℃以上の発熱(48時間以内)

  • 即座に起こる重度の反応またはアナフィラキシー反応

これらの反応が発生した場合は,百日咳ワクチンのさらなる使用は禁忌であり,百日咳成分を含有しないジフテリアおよび破傷風の混合ワクチン(DT)が使用できる。現在利用できる無細胞ワクチンは,以前使用されていた多数の細胞成分を含むワクチンよりも忍容性に優れている。

予防接種であれ自然感染であれ,百日咳の感染または再感染に対する終生免疫の獲得には至らない。最後のワクチン接種から5~10年後には免疫は減弱する傾向がある。

19歳以上(65歳以上も含む)の全ての成人には,Tdの代わりにTdap(小児に使用されるDTaPよりジフテリアと百日咳の成分含量が少ない)を使用する1回の追加免疫が推奨される;これは妊娠するたび,20週以降に(27~36週が望ましい)投与すべきである。これらの比較的新しい推奨は,感受性の高い青年および成人から免疫をもたない乳児へ百日咳が伝播するリスクを低減することを目的とするものである。

自然感染後の免疫は約20年間持続する。受動免疫は信頼性が低く,推奨されない。

7歳未満でワクチン接種回数が4回未満の濃厚接触者には,ワクチンを接種すべきである。

曝露後予防

曝露後の抗菌薬は,予防接種の既往にかかわらず,発端者が咳嗽を発症してから21日以内に家庭内接触者に投与すべきである。

曝露後の抗菌薬は,予防接種の既往にかかわらず,以下に該当するリスクの高い人にも曝露後21日以内に投与すべきである:

  • 12カ月未満の乳児

  • 第3トリメスターの妊婦

  • 百日咳への感染により悪化する可能性のある病態(例,免疫不全症,中等度から重度の喘息,慢性肺疾患)をもつ全ての人

  • 12カ月未満の乳児,妊婦,または重症疾患もしくは合併症につながりうる病態をもつ患者と濃厚な接触がある人

  • 12カ月未満の乳児や第3トリメスターの妊婦がいるリスクの高い環境(例,保育所,産科病棟,新生児ICU)にいる全ての人

これらの人々には,エリスロマイシンを500mg,経口,1日4回または10~12.5mg/kg,経口,1日4回を7~14日間投与すべきである。代替抗菌薬としてはクラリスロマイシンおよびアジスロマイシンなどがある。1カ月未満の乳児の曝露後予防にはアジスロマイシンが望ましい。

要点

  • 百日咳は,あらゆる年齢で発生しうる呼吸器感染症であるが,その発生率と致死率は幼児(特に6カ月未満)で最も高くなっている。

  • 上気道感染症状を呈するカタル期に続く痙咳期では,立て続けに何度も咳嗽が起こり,最後に深い吸気とともに高調の笛声(whoop)が聴かれる。

  • 罹病期間は約7週間であるが,咳嗽が数カ月続くこともある。

  • PCR検査または上咽頭培養により診断するが,特殊培地が必要である。

  • 病状の改善(カタル期)または感染拡大の制限(痙咳期とそれ以降)を目的として,マクロライド系抗菌薬による治療を行う。

  • 定期的な予防接種の一環としての無細胞百日咳ワクチンの接種(成人への追加接種を含む)により発症を予防するとともに,濃厚接触者にはエリスロマイシンによる治療を行う。

  • 自然感染であれ予防接種であれ,生涯持続する免疫は獲得されないが,以降の発症時は軽症となる傾向がある。

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