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百日咳

(whooping cough)

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;


Maria T. Perez

, MD, Wellington Regional Medical Center, West Palm Beach

最終査読/改訂年月 2016年 5月
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百日咳は,百日咳菌(Bordetella pertussis)を原因菌として主に小児および青年に発生する,感染性の強い疾患である。 まず非特異的な上気道感染症状が出現した後,通常は長い吸気性笛声(whoop)で終わる発作性ないし痙攣性の咳嗽(痙咳)がみられるようになる。診断は上咽頭培養,PCR,および血清学的検査による。治療はマクロライド系抗菌薬による。

百日咳は世界中で流行している。米国では3~5年のサイクルで流行がみられる。百日咳はヒトにのみ発生する;病原巣となる動物はいない。

主な伝播経路は,感染患者(特にカタル期と痙咳期早期)に由来する百日咳菌(B. pertussis)(非運動性の小さなグラム陰性球桿菌)のエアロゾルを介するものである。伝染力が高く,濃厚な接触がある場合には80%以上が発症する。汚染物との接触による感染はまれである。通常,痙咳期の3週目より後の患者は感染源とならない。

百日咳は,ワクチンで予防可能な小児疾患のうち発生率が上昇している唯一の疾患である。米国では1980年の時点で発生率は人口10万人に1人であったが,2014年には人口10万人に10人に上昇している。この増加の原因は,過去に予防接種を受けた青年および成人の免疫が低下していることと,親が子供の予防接種を拒否することである( 反ワクチン運動)。このような免疫のない患者が発症するほか,免疫のない青年および成人は百日咳菌(B. pertussis)の重要な病原体保有生物となっており,しばしば,免疫のない1歳未満の乳児(年間発生率を最も大きく押し上げており,死亡率が最も高い)への感染源となる(1)。

米国では,2014年に32,971件の百日咳の症例が発生し,13人が死亡している(2)。死亡例はどの年齢群にもみられたが,発生が最も多かったのは6カ月未満の乳児であり,ほとんどの死亡例(13件中8件)は3カ月未満の乳児であった。死亡例の大半は気管支肺炎と脳の合併症によるものである。百日咳は高齢者でも重篤化する。

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2014年の百日咳の発生率

年齢

症例数(%)

人口10万人毎の発生数

< 6カ月

3,330(10.1)

169

6~11カ月

875(2.7)

44.4

1~6歳

6,082(18.5)

25.1

7~10歳

5,576(16.9)

34

11~19歳

11,159(33.8)

29.6

20歳以上

5,839(17.7)

2.2

原因不明

110(0.3)

N/A

Based on National Center for Immunization and Respiratory Diseases Division of Bacterial Diseases: 2014 Final Pertussis Surveillance Report. Centers for Disease Control and Prevention, 2015.

最初の曝露では終生免疫の獲得には至らないが,過去にワクチン接種を受けたが免疫が減弱している青年および成人では,2回目の曝露と感染では通常軽症となり,気づかれないことが多い。

百日咳菌による疾患

呼吸器合併症(乳児の窒息を含む)が最も多くみられる。しばしば中耳炎が生じる。年齢を問わず,気管支肺炎(高齢者に多い)から死に至ることがある。

痙攣発作は乳児でよくみられるが,より年長の小児ではまれである。

重度の発作とそれに起因する低酸素症の結果により,脳,眼,皮膚,粘膜への出血が起こることがある。脳出血,脳浮腫,および毒素による脳炎の結果として,痙性麻痺,知的障害(精神遅滞),またはその他の神経学的障害を来すことがある。

ときに臍ヘルニアや直腸脱もみられる。

パラ百日咳

これはパラ百日咳菌(B. parapertussis)を原因菌とする疾患で,臨床的に百日咳と鑑別できないことがあるが,通常は比較的軽症で致死率も低い。

参考文献

症状と徴候

潜伏期間は平均7~14日(最大3週間)である。百日咳菌(B. pertussis)は呼吸器粘膜に侵入して粘液の分泌を亢進させるが,その粘液は当初は希薄ながら,後に濃厚かつ粘稠となる。合併症がない場合,症状は約6~10週間続き,以下の3期に分けられる:

  • カタル期

  • 痙咳期

  • 回復期

カタル期は潜行性に始まり,一般にくしゃみ,流涙,その他の鼻感冒の徴候;食欲不振;元気のなさ;煩わしい夜間の乾性咳嗽(徐々に日中に生じるようになる)などがみられる。嗄声がみられることがある。発熱はまれである。

10~14日後には痙咳期に移行し,咳嗽の重症度と頻度が悪化する。1回の呼気の間に立て続けに5回以上の咳嗽が連続して起こり,最後に深い吸気とともに高調の笛声(whoop)が聴かれる。発作中または発作後には,大量の粘稠な粘液が喀出されたり,外鼻孔から泡状に排出されたりすることがる。嘔吐が特徴的である。乳児では,吸気性笛声よりも窒息発作(チアノーゼはみられないこともある)の方がよくみられる。

回復期になると(通常は発症から4週間以内),症状は軽快する。平均罹病期間は約7週間(範囲は3週間から3カ月以上)である。発作性の咳嗽が数カ月にわたり反復することがあるが,これは通常,感受性が高い気道が上気道感染から刺激を受けることによって誘発される。

診断

  • 上咽頭の培養およびPCR検査

カタル期には,気管支炎やインフルエンザとの鑑別が困難となることが多い。アデノウイルス感染症と結核も考慮すべきである。

上咽頭検体の培養では,カタル期および痙咳期早期症例の80~90%が百日咳菌(B. pertussis)陽性となる。特殊染色と長期間の培養が必要となるため,百日咳の疑いがあることを検査室に連絡しておくべきである。上咽頭塗抹検体の特異的な蛍光抗体検査では,百日咳を正確に診断できるが,感度は培養ほど良好ではない。上咽頭の検体のPCR検査は,最も感度が高く,最もよく選択される。白血球数は通常15,000~20,000/μLであるが,正常値となる場合もあれば,60,000/μLまで上昇する場合(通常は60~80%が小リンパ球である)もある。

パラ百日咳は培養または蛍光抗体法により鑑別する。

治療

  • 支持療法

  • エリスロマイシンまたはアジスロマイシン

重篤な状態の乳児には空気感染隔離下での入院が推奨される。隔離は抗菌薬を5日間投与するまで継続する。

乳児では,吸引により咽頭の過剰な粘液を除去することが救命につながることがある。ときに,酸素投与と気管切開または経鼻気管挿管が必要となる。去痰薬,鎮咳薬,および軽い鎮静薬では効果はほとんど得られない。わずかな刺激でも低酸素症を伴う重篤な咳嗽発作が誘発される可能性があるため,重篤な状態の乳児は暗く静かな部屋に移して,可能な限り刺激を回避するべきである。在宅で治療する患者は,発症後少なくとも4週間が経過し,かつ症状が治まるまで隔離すべきである(特に感受性の高い乳児からの隔離)。

カタル期の抗菌薬投与は,病状の改善につながる可能性がある。痙咳期と確認されてからの抗菌薬投与は,臨床的な効果は得られないのが通常であるが,感染拡大を制限する目的で推奨される。望ましい薬剤は,エリスロマイシン10~12.5mg/kg,経口,6時間毎(最高2g/日)14日間,またはアジスロマイシン10~12mg/kg,経口,1日1回,5日間である。マクロライド系抗菌薬を使用できないか過敏症を有する生後2カ月以上の患者では,トリメトプリム/スルファメトキサゾールで代用することができる。細菌性合併症(例,気管支肺炎,中耳炎)に対しても抗菌薬を使用すべきである。

予防

標準的な小児予防接種の一環として,百日咳に対する予防接種が行われている。無細胞百日咳ワクチンが5回接種されるが(通常はジフテリアおよび破傷風との混合ワクチン[DTaP]),具体的には生後2,4,6カ月時と追加免疫として生後15~18カ月時および4~6歳時に接種される。

ワクチンの百日咳成分による重大な有害作用としては以下のものがある:

  • 脳症(7日以内)

  • 発熱を伴うまたは伴わない痙攣発作(3日以内)

  • 3時間以上持続し,あやしても治まらない激しい絶叫または啼泣

  • 卒倒またはショック(48時間以内)

  • 40.5℃以上の発熱(48時間以内)

  • 即座に起こる重度の反応またはアナフィラキシー反応

これらの反応が発生した場合は,百日咳ワクチンのさらなる使用は禁忌であり,百日咳成分を含有しないジフテリアおよび破傷風の混合ワクチン(DT)が使用できる。無細胞ワクチンは,多数の細胞成分を含有する以前使用されたワクチンよりも忍容性が良好であり,現在市販されている製剤は無細胞ワクチンである。予防接種であれ自然感染であれ,百日咳の感染または再感染に対する終生免疫の獲得には至らない。最後のワクチン接種から5~10年後には免疫は減弱する傾向がある。

19歳以上(65歳以上も含む)の全ての成人と妊娠前の女性には,Tdの代わりにTdap(小児に使用されるDTaPよりジフテリアと百日咳の成分含量が少ない)を使用する1回の追加免疫が推奨される;これは妊娠するたび,20週以降に(27~36週が望ましい)投与すべきである。これらの比較的新しい推奨は,感受性の高い青年および成人から免疫をもたない乳児へ百日咳が伝播するリスクを低減することを目的とするものである。

自然感染後の免疫は約20年間持続する。受動免疫は信頼性が低く,推奨されない。

7歳未満でワクチン接種回数が4回未満の濃厚接触者には,ワクチンを接種すべきである。年齢に関係なく接触者には,ワクチン接種の有無にかかわらず,エリスロマイシンを500mg,経口,1日4回または10~12.5mg/kg,経口,1日4回で10日間投与すべきである。

要点

  • 百日咳は,あらゆる年齢で発生しうる呼吸器感染症であるが,その発生率と致死率は幼児(特に6カ月未満)で最も高くなっている。

  • 上気道感染症状を呈するカタル期に続く痙咳期では,立て続けに何度も咳嗽が起こり,最後に深い吸気とともに高調の笛声(whoop)が聴かれる。

  • 罹病期間は約7週間であるが,咳嗽が数カ月続くこともある。

  • PCR検査または上咽頭培養により診断するが,特殊培地が必要である。

  • 病状の改善(カタル期)または感染拡大の制限(痙咳期とそれ以降)を目的として,マクロライド系抗菌薬による治療を行う。

  • 定期的な予防接種の一環としての無細胞百日咳ワクチンの接種(成人への追加接種を含む)により発症を予防するとともに,濃厚接触者にはエリスロマイシンによる治療を行う。

  • 自然感染であれ予防接種であれ,生涯持続する免疫は獲得されないが,以降の発症時は軽症となる傾向がある。

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