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エンテロウイルス感染症の概要

執筆者:

Mary T. Caserta

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

最終査読/改訂年月 2019年 9月
本ページのリソース

エンテロウイルスは,ライノウイルス(感冒を参照)およびヒトパレコウイルスとともに,ピコルナウイルス科(小さな[pico]RNAウイルス)に属する。ヒトパレコウイルス1型および2型は,かつてはエコーウイルス22型および23型と呼ばれていたが,現在ではパレコウイルスに再分類されている。全てのエンテロウイルスは不均一な抗原性を有し,地理的に広く分布する。

エンテロウイルスには以下のものが含まれる:

  • コクサッキーウイルスA1~A21,A24,およびB1~B6

  • エコーウイルス(enteric cytopathic human orpahn viruses)1~7型,9型,11~21型,24~27型,および29~33型

  • エンテロウイルス68~71型,73~91型,および100~101型

  • ポリオウイルス1~3型

エンテロウイルスは,気道分泌物中ならびに便中に排泄され,ときに感染者の血液および髄液中に認められる。感染症は通常,気道分泌物または便への直接的接触により伝播するが,汚染された環境因子(例,水)によって伝播することもある。

エンテロウイルスによる疾患や流行は,米国では夏期と秋期に多くみられる。

分娩時の母子感染から重度の播種性新生児感染症を来すことがあり,その具体的な病態としては,肝炎または肝壊死,髄膜脳炎,心筋炎,これらの組合せなどがあり,敗血症や死に至ることもある。

液性免疫およびB細胞が正常に機能することが,エンテロウイルスによる疾患の制御に必要である。重度のエンテロウイルス感染症(しばしば緩徐に進行する髄膜脳炎,皮膚筋炎,および/または肝炎として現れる)は,X連鎖無ガンマグロブリン血症などのBリンパ球の機能に異常がある患者に発生するが,それ以外の免疫不全症患者には通常発生しない。

エンテロウイルスによって引き起こされる疾患

エンテロウイルスは様々な症候群を引き起こす(エンテロウイルスによって引き起こされる症候群の表を参照)。以下の病態は,ほぼ全例がエンテロウイルスによって引き起こされる:

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エンテロウイルスによって引き起こされる症候群

症候群

最も頻度の高い血清型

コクサッキーウイルスA2,A4,A7,A9,その他のA群,およびB2~B5

ポリオウイルス1~3型

エコーウイルス4型,6型,7型,9型,11型,30型,その他

ヒトパレコウイルス1~4型

発疹を伴う無菌性髄膜炎

コクサッキーウイルスA9およびB4

エコーウイルス4型および16型

エンテロウイルス71型

エンテロウイルス70型

コクサッキーウイルスA24

流行性胸痛症(ボルンホルム病)

コクサッキーウイルスB1~B6

コクサッキーウイルスA6,A9,A16,その他のA群

コクサッキーウイルスB2~B5

エンテロウイルス71型

コクサッキーウイルスA2,A4~A6,A8,およびA10

おそらくコクサッキーウイルスB3,その他のB群

コクサッキーウイルスA4およびA16,ならびにB1~B5

エコーウイルス9型およびヒトパレコウイルス1型

麻痺

ポリオウイルス1~3型

コクサッキーウイルスA7,その他のA群

エコーウイルス4型,6型,9型,その他

エンテロウイルス71,D68,D70

コクサッキーウイルスA9およびB1,B3,B4,B5(A4~A6,A16も関与する)

エコーウイルス9型および16型(2型,4型,11型,14型,19型,25型も関与する)

エコーウイルス4型,8型,9型,11型,20型,その他

コクサッキーウイルスA21,A24,B1,B3~B5

エンテロウイルスD68型

その他の疾患(例,無菌性髄膜炎心筋心膜炎)は,エンテロウイルスによることもあれば,その他の病原体によることもある。

無菌性髄膜炎

無菌性髄膜炎は乳児および小児に最もよくみられる。乳幼児では,以下のものが原因となることが多い:

  • コクサッキーウイルスA群またはB群

  • エコーウイルス

  • ヒトパレコウイルス

より年長の小児と成人では,他のエンテロウイルスのほか,その他のウイルスが無菌性髄膜炎を引き起こす。

通常,経過は良好である。エンテロウイルスによる無菌性髄膜炎には発疹が併発することがある。まれに脳炎が発生し,重症化することもある。

エンテロウイルスD68型

エンテロウイルスD68型(EV-D68)は,主に小児で呼吸器疾患を引き起こし,その症状は通常,感冒に類似する(例,鼻漏,咳嗽,倦怠感,小児の少数例では発熱)。一部の小児(特に喘息患児)では,より重篤な下気道症状(例,喘鳴,呼吸窮迫)が生じることもある。

健康な成人も感染するが,症状はほとんどないか,無症状である。易感染状態の成人は重度の呼吸器疾患を発症することがある。

毎年,EV-D68による呼吸器感染症が少数の小児で確認されているほか,小規模なアウトブレイクが隔年で発生する傾向にある。しかしながら,2014年の夏後半から秋にかけて,米国全域で大規模なアウトブレイクが発生し,1000例以上の症例が確認された。かなりの数の小児に重度の呼吸窮迫が発生し,少数の死亡例が出た。それと同時に,呼吸器疾患後の急性弛緩性脊髄炎(AFM)と一致する脊髄病変(MRI上)を伴って四肢に局所的な筋力低下または麻痺が生じる小児症例のクラスターが複数報告され,アウトブレイクの独立した2つのクラスターのうち3分の2の症例で呼吸器検体から,また麻痺が進行している小児1例で血液検体からEV-D68が同定された。配列決定が行われたウイルスは,互いにほぼ同一で,AFMに関連することが知られているポリオウイルスおよびエンテロウイルスD70と相同性がみられたことから,EV-D68がAFMの麻痺の発生に直接関与している可能性が裏付けられた(1)。米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)による継続的サーベイランスにより,2014年の秋にはEV-D68のアウトブレイクと時期を同じくして120例のAFMが検出された。サーベイランスはその後も継続され,2015年には1年で16例のAFMが検出されたが,この年にEV-D68の症例は報告されなかった(2)。

EV-D68に関連した呼吸器疾患の別の大きなアウトブレイクが米国では2018年9月にピークに達した。CDCによる積極的なサーベイランスにより,米国のいくつかの大規模医療施設において急性呼吸器疾患のある小児患者の13.9%で同ウイルスが検出されたが,2017年の同様の患者における検出率はわずか0.08%であった。EV-D68感染患者の3分の2で入院が必要になり,この疾患の重症度が浮き彫りにされた。また,AFMの報告症例も同時に増加し,CDCが確認した症例数は2017年にはわずか35例であったのが,2018年には200例を上回り,EV-D68感染症とAFMとの関連がさらに裏付けられた(3)。

EV-D68は,他では説明できない重度の呼吸器感染症の病因として考慮すべきであり,特に夏の終わりから秋にかけての症例クラスターに関連している場合はなおさらである。アウトブレイクの発生が想定される状況での特異的検査が推奨され,公衆衛生当局を介して手配することができる。

出血性結膜炎

まれに,出血性結膜炎の流行が米国で発生している。アフリカ,アジア,メキシコ,およびカリブ海地域からウイルスが輸入されることで,アウトブレイクの頻度が高まる可能性がある。

眼瞼浮腫が急速に出現する。出血性結膜炎は,合併症のない結膜炎とは異なり,しばしば結膜下出血や角膜炎を来し,眼痛,流涙,および羞明を引き起こす。全身性疾患はまれである。しかしながら,出血性結膜炎がエンテロウイルス70型による場合は,まれに一過性の腰仙部脊髄神経根障害またはポリオ様疾患(麻痺を伴う)が発生する。通常は発症から1~2週間以内に完全に回復する。

コクサッキーウイルスA24も出血性結膜炎を引き起こすが,結膜下出血の頻度は低く,神経系の合併症は報告されていない。ほとんどの患者が1~2週間で回復する。

心筋心膜炎

心臓感染症はあらゆる年齢で発生するが,多くの患者は20~39歳である。胸痛不整脈心不全,または突然死を来すことがある。通常は完全に回復するが,一部の患者は拡張型心筋症を発症する。心筋心膜炎の診断には,心筋組織での逆転写PCR(RT-PCR)検査が必要になることがある。

新生児心筋炎(出生時における心臓感染症)は,B群コクサッキーウイルス,一部のエコーウイルス,およびヒトパレコウイルスによって引き起こされる。発熱や心不全を来し,死亡率が高い。

新生児感染症

通常は生後数日の新生児に,発熱,嗜眠,播種性血管内凝固症候群,出血,および多臓器不全(心不全を含む)を伴う敗血症様の症候群が突然発生する。同時に中枢神経系,肝臓,心筋,膵臓,または副腎にも病変が生じうる。

数週間以内に回復することもあるが,循環虚脱または肝不全(肝臓が侵される場合)により死亡することもある。

発疹

特定のコクサッキーウイルス,エコーウイルス,およびヒトパレコウイルスは,しばしば流行中に発疹を引き起こすことがある。発疹は通常そう痒を伴わず,落屑はなく,顔面,頸部,胸部,および四肢に現れる。発疹はときに斑状丘疹状または麻疹様を呈するが,出血,点状出血,または小水疱を認めることもある。発熱はよくみられる。無菌性髄膜炎が同時に発生することもある。

通常,経過は良好である。

呼吸器感染症

エンテロウイルスによって呼吸器感染症が生じることもある。症状としては発熱,鼻感冒,咽頭炎などがあり,一部の乳児および小児では嘔吐と下痢もみられる。成人および小児では,ときに気管支炎間質性肺炎が発生する。

通常は軽症で経過するが,2014年のエンテロウイルスD68のアウトブレイクによって証明されたように,重症化する可能性もある。

総論の参考文献

  • 1.Greninger AL, Naccache SN, Messacar K, et al: A novel outbreak enterovirus D68 strain associated with acute flaccid myelitis cases in the USA (2012-14): A retrospective cohort study.Lancet Infect Dis 15(6):671–682, 2015.doi: 10.1016/S1473-3099(15)70093-9.

  • 2.Sejvar JJ, Lopez AS, Cortese MM, et al: Acute flaccid myelitis in the United States, August-December 2014: Results of nationwide surveillance.Clin Infect Dis 63(6):737-745, 2016.doi: 10.1093/cid/ciw372. 

  • 3.Kujawski SA, Midgley CM, Rha B, et al: Enterovirus D68-associated acute respiratory illness - New Vaccine Surveillance Network, United States, July-October, 2017 and 2018.MMWR Morb Mortal Wkly Rep 68(12):277-280,2019.doi: 10.15585/mmwr.mm6812a1. 

診断

  • 臨床的評価

  • ときに培養または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査

エンテロウイルス感染症の診断は通常,臨床的に行う。

臨床検査による診断は通常不要であるが,行うとすれば多くの場合,以下の検査による:

  • ウイルスの培養

  • RT-PCR法によるウイルスRNAの同定

  • ときにセロコンバージョンの証明

無菌性髄膜炎を引き起こすエンテロウイルスは,咽頭拭い液,便,血液,または髄液検体の培養か,血液および髄液でのRT-PCR検査によって検出することができる。しかしながら,ヒトパレコウイルスは,エンテロウイルスを対象とする標準的なRT-PCR検査の大半では検出できず,検出するにはパレコウイルスに特異的なRT-PCR検査が必要である。呼吸器病原体を対象とする市販のマルチプレックスPCR用パネルでは,しばしばライノウイルスとエンテロウイルスを鑑別することができない。

治療

  • 支持療法

エンテロウイルスによる疾患の治療は支持療法による。

無ガンマグロブリン血症のある患者は免疫グロブリン静注療法で治療するが,その成果は一定でない。

経口抗ウイルス薬のプレコナリル(pleconaril)がいくつかのピコルナウイルスに対して活性を示しており,新生児の重症エンテロウイルス感染症の治療用として検討されている(1)。

治療に関する参考文献

  • 1.Abzug MJ, Michaels MG, Wald E, et al: A randomized, double-blind, placebo-controlled trial of pleconaril for the treatment of neonates with enterovirus sepsis.J Pediatric Infect Dis Soc 5 (1):53–62, 2016.doi: 10.1093/jpids/piv015.

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