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肺移植および心肺同時移植

執筆者:

Martin Hertl

, MD, PhD,

  • Jack Fraser Smith Professor of Surgery, Director of Solid Organ Transplantation, and Chief Surgical Officer
  • Rush University Medical Center
;


Paul S. Russell

, MD, Harvard Medical School

最終査読/改訂年月 2016年 9月
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移植の概要も参照のこと。)

肺移植または心肺同時移植は,呼吸機能不全または呼吸不全があり,最適な医療にもかかわらず死亡リスクが残る患者における選択肢の1つである。

最も頻度が高い肺移植の適応は以下のものである:

  • COPD

  • 特発性肺線維症

  • 嚢胞性線維症

  • α1-アンチトリプシン欠乏症

  • 原発性肺高血圧症

頻度の低い適応には,間質性肺障害(例,サルコイドーシス),気管支拡張症,先天性心疾患が含まれる。

心臓が関与しないほとんどの肺疾患に対して単肺および両肺の移植は等しく適している;例外は慢性で広範性の感染症(例,気管支拡張症)で,これに対しては両肺移植が最も適している。

心肺同時移植の適応は,以下の通りである:

  • アイゼンメンジャー症候群

  • 肺疾患に伴う重度の心室機能異常があり,不可逆化する可能性が高い場合

肺性心は,肺単独移植の後に再発することが多いため,心肺同時移植が適応となることはまれである;しかしながら,ときには心肺同時移植が必要になることがある。

相対的禁忌には,年齢(単肺移植レシピエントは65歳以下,両肺移植レシピエントは60歳以下,心肺同時移植レシピエントは55歳以下でなければならない),現在喫煙,胸部手術の既往,ならびに一部の嚢胞性線維症患者,および一部の医療施設では,死亡リスクを大幅に上昇させるBurkholderia cepaciaの耐性株による肺感染などがある。

単肺および両肺移植はほぼ等しく普及しており,心肺同時移植より少なくとも8倍は多く施行されている。

肺ドナー

提供されるほぼ全ての肺は,心拍のある脳死(死体)ドナーからのものである。

心停止ドナーからの移植片は,心停止後臓器提供(DCD)ドナーと呼ばれ,これより適したドナーからの移植片が不足しているため,使用がますます多くなっている。

まれであるが,死体ドナーからの臓器が入手できない場合に,成人から(通常は親から子へ)の生体肺葉移植が行われる。

ドナーは,65歳以下かつ喫煙経験が無く,活動性の肺疾患がないことが以下によって証明されなければならない:

  • 酸素化:Pao2をmmHg単位で,Fio2(吸入酸素濃度)を小数単位(例,0.5)で表した場合,Pao2/ Fio2> 250~300

  • 肺コンプライアンス:1回換気量(VT)が15mL/kgで呼気終末陽圧が5cmH2Oのときの最大吸気圧が30cmH2O未満

  • 肉眼的所見:気管支鏡検査を用いる

ドナーとレシピエントは,解剖学的(胸部X線による),生理学的(全肺気量による),またはその両方でサイズが適合しなければならない。

移植紹介のタイミング

移植を紹介する時期は,以下のような因子により決定すべきである:

  • 閉塞性障害の程度:COPD,α1-アンチトリプシン欠乏症,または嚢胞性線維症の患者で予測される1秒量(FEV1)が25~30%未満

  • Pao2が55mmHg未満

  • Paco2が50mmHgを超える

  • 原発性肺高血圧症患者で,右房圧が10mmHgを超え,最大収縮期圧が50mmHgを超える

  • 臨床的,放射線学的,または生理学的疾患の進行速度

手技

ドナーに抗凝固薬を投与して,プロスタグランジンを含んだ冷晶質保存溶液を肺動脈から肺に流す。ドナー臓器をその場で氷冷した生理食塩水スラッシュで冷却するか,または人工心肺を介して冷却してから摘出する。予防的抗菌薬投与を行うことが多い。

片肺移植

単肺移植では後側方開胸が必要である。生来の肺を取り除いて,ドナー肺の気管支,肺動脈,肺静脈をそれぞれのカフに吻合する。気管支吻合では,十分な治癒を促すために,大網もしくは心膜による充填または被覆が必要である。

単肺移植の利点には,手術がより簡単,人工心肺および全身抗凝固療法(通常用いられる)の回避,サイズ適合に関して柔軟性がより高い,および同一ドナーの反対側の肺をもう1人のレシピエントに使用可能などがある。

欠点には,生来の肺と移植肺との間で換気/血流不均衡の可能性,および片側気管支の吻合の治癒が不良な可能性などがある。

両肺移植

両肺移植では,胸骨切開または前方横切開による開胸が必要である;手技は単肺移植を2回続けるのと同じである。

主な利点は,レシピエントの全ての罹患肺組織が確実に除去できることである。

欠点は,気管吻合の治癒が不良なことである。

心肺同時移植

心肺同時移植では,人工心肺を用いた胸骨正中切開が必要である。大動脈,右房,気管の吻合が必要である;気管は分枝部のすぐ上部で吻合する。

主な利点は,心肺同時移植片ブロック内に冠状・気管支側副路血行があるため,移植片機能の改善および気管吻合のより信頼のおける治癒がもたらされることである。

欠点には,人工心肺の必要性に伴い手術時間が長いこと,綿密なサイズ適合が必要であること,1人のレシピエントが3種類のドナー臓器を使用することなどがある。

免疫抑制

一般的な3剤併用免疫抑制療法のレジメンでは,以下の薬剤を組み合わせる:

  • カルシニューリン阻害薬(シクロスポリンまたはタクロリムス)

  • プリン代謝阻害薬(アザチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチル)

  • メチルプレドニゾロンまたはその他のコルチコステロイド

まず,術前に高用量を投与する;移植した肺の再灌流に先立って,手術中にしばしばメチルプレドニゾロンの静注が行われる。その後の維持療法では,用量を減量する( 移植の拒絶反応を治療するために用いられる免疫抑制薬)。

導入薬として,抗胸腺細胞グロブリン(ATG)またはアレムツズマブがしばしば投与される。これらの薬剤には,移植後の免疫抑制療法を最低限に抑える効果もある。導入療法が行われた場合,タクロリムスの単剤療法で十分であることが多い。

気管支吻合の治癒を促進するためにコルチコステロイドを割愛することがある;その代わりに,他の薬剤(例,シクロスポリン,アザチオプリン)を高用量で用いる。免疫抑制薬は無期限に継続する。

合併症

拒絶反応

免疫抑制療法にもかかわらず,ほとんどの患者で拒絶反応が起こる。症状と徴候は,超急性,急性,および慢性拒絶反応で類似しており,発熱,呼吸困難,咳嗽,SaO2(動脈血酸素飽和度)低下,およびFEV1の10~15%を超える減少などがある( カテゴリー別肝移植拒絶反応の症状)。

超急性拒絶反応は,移植手術中の虚血性損傷による早期の移植片機能不全と区別しなければならず,また急性拒絶反応は,感染症と区別しなければならない。胸部X線でみられる間質浸潤は,促進性または急性拒絶反応を起こしている患者でよくみられる。拒絶反応は通常,気管支鏡下の経気管支生検を含む気管支鏡検査によって診断する。拒絶反応が発生した場合は,生検によって小型血管の周囲にリンパ球浸潤が認められる;肺胞浸潤部の多形核白血球および感染性病原体から感染症が示唆される。静注コルチコステロイドは通常,超急性,促進性,または急性拒絶反応に効果的である。再発または抵抗性の症例の治療は多様で,より高用量のコルチコステロイド,エアロゾル化シクロスポリン,およびATGなどがある。

慢性拒絶反応は,移植後1年経過して最大50%の患者にみられる;閉塞性細気管支炎または頻度は高くないが動脈硬化として発現する。急性拒絶反応により慢性拒絶反応のリスクが高まることがある。閉塞性細気管支炎を発症した患者では,咳嗽,呼吸困難,ならびに気道経路の理学的および放射線学的所見の有無にかかわらず,FEF25-75%またはFEV1の低下がみられる。鑑別診断には肺炎が含まれる。診断は通常,生検を含めた気管支鏡検査による。効果的であることが証明された治療法はないが,選択肢として,コルチコステロイド,ATG,吸入型シクロスポリン,および再移植などがある。

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カテゴリー別肺移植拒絶反応の症状

拒絶反応のカテゴリー

臨床像

超急性

酸素化不良,発熱,咳嗽,呼吸困難,FEV1の低下

促進性

酸素化不良,発熱,咳嗽,呼吸困難,胸部X線でみられる浸潤,FEV1の低下

急性

促進型拒絶反応でみられるものと同じ

間質・血管周囲浸潤(経気管支生検によって検出)

慢性

閉塞性細気管支炎,咳嗽,呼吸困難

FEV1 = 1秒量(1秒間の努力呼気量)

手術の合併症

最も多くみられる手術の合併症は以下のものである:

  • 気管支または気管吻合の治癒不良(縦隔気腫または気胸がみられた場合に診断される)

  • 感染症

最多で20%の単肺移植レシピエントが喘鳴および気道閉塞を引き起こす気管支狭窄を発症する;拡張またはステント留置で治療できる。

他の手術合併症には,反回神経または横隔神経への障害によって起こる嗄声および横隔膜麻痺,胸部迷走神経への障害によって起こる消化管運動障害,ならびに気胸などがある。おそらく肺静脈と心房の縫合に起因する心伝導の変化のために,一部の患者で上室性不整脈が出現する。

予後

患者の生存率は以下の通りである:

  • 1年で:生体ドナーからの移植片で84%および死体ドナーからの移植片で83%

  • 5年で:生体ドナーからの移植片で34%および死体ドナーからの移植片で46%

死亡率は,原発性肺高血圧症,特発性肺線維症,またはサルコイドーシスの患者でより高く,COPDまたはα1-アンチトリプシン欠乏症の患者でより低い。死亡率は,単肺移植の方が両肺移植より高い。

死亡で最も多い原因は以下のものである:

  • 1カ月以内:原発性移植片不全,虚血再灌流傷害,およびサイトメガロウイルスを除く感染症(例,肺炎)

  • 1カ月から1年まで:感染症

  • 1年を過ぎてから:閉塞性細気管支炎

死亡の危険因子には,サイトメガロウイルス感染の不一致(ドナーが陽性,レシピエントが陰性),ヒト白血球抗原(HLA-DR)不適合,糖尿病,および以前に機械的人工換気または強心薬による補助が必要であったことなどがある。

まれに,元の疾患,特に一部の間質性肺疾患が再発する。運動耐容量は,過換気反応のためにわずかに制限される。

心肺同時移植で,1年後の全生存率(または全生着率)は患者および移植片ともに60%である。

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