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本態性血小板血症

(本態性血小板増多症;原発性血小板血症)

執筆者:

Jane Liesveld

, MD, James P. Wilmot Cancer Institute, University of Rochester Medical Center

最終査読/改訂年月 2019年 2月
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本態性血小板血症(ET)は,血小板数の増加,巨核球の過形成,および出血性または血栓性傾向を特徴とする骨髄増殖性腫瘍である。症状および徴候として,筋力低下,頭痛,錯感覚,出血,および指の虚血を伴う肢端紅痛症がみられることがある。診断は,450,000/μLを超える血小板数,十分な鉄貯蔵の存在下での正常赤血球量または正常ヘマトクリットに加え,骨髄線維症,フィラデルフィア染色体(またはBCR-ABL再構成),または血小板増多を引き起こす可能性のある反応性疾患がないことに基づく。治療には議論があるが,アスピリンが使用可能である。60歳以上の患者に加え,血栓症および一過性脳虚血発作の既往がある患者では,血栓塞栓症が続発するリスクが高い。データからは血栓症のリスクが血小板数と比例しないことが示唆される。

病因

本態性血小板血症はクローン性の造血幹細胞疾患であり,血小板産生の亢進を引き起こす。本態性血小板血症では,通常50~70歳に発生のピークがあり,若年女性にも別のピークがみられる。

ヤヌスキナーゼ2(JAK2)酵素の変異であるJAK2V617Fが患者の約50%で認められる;JAK2はチロシンキナーゼファミリーに属する酵素であり,他の因子の中でも,エリスロポエチン,トロンボポエチン,および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)のシグナル伝達に関与する。 その他の患者ではカルレティキュリン遺伝子(CALR)のエクソン9における変異がみられ,少数の患者ではトロンボポエチン受容体遺伝子(MPL)の後天的な体細胞変異がみられる。

病態生理

血小板血症によって以下が生じることがある:

  • 微小血管閉塞(通常は回復可能)

  • 大径血管の血栓症

  • 出血

微小血管閉塞はしばしば,四肢遠位部(肢端紅痛症 肢端紅痛症 肢端紅痛症は,手足のほか,まれながら顔面,耳,膝の細い動脈にみられる,苦痛を伴う発作性の血管拡張であり,灼熱痛,皮膚温の上昇,および発赤を引き起こす。 このまれな病態には,原発性(原因不明)のものと,骨髄増殖性疾患(例,真性多血症,血小板血症),高血圧,静脈不全,糖尿病,全身性エリテマトーデス,関節リウマチ,硬化性苔癬,痛風,脊髄疾患,多発性硬化症などに続発した二次性のものがある。より頻度は低いが,一部の薬剤(例,ニフェジピン,ブロモク... さらに読む を引き起こす),眼(眼性片頭痛を引き起こす),または中枢神経系(一過性脳虚血発作 一過性脳虚血発作(TIA) 一過性脳虚血発作は,一過性の神経脱落症状を突然引き起こす局所的な脳虚血で,永続的な脳梗塞を伴わない(例,MRIの拡散強調画像で陰性)ものである。診断は臨床的に行う。頸動脈内膜剥離術またはステント留置術,抗血小板薬,および抗凝固薬は,特定の病型のTIA後に生じうる脳卒中のリスクを低下させる。 TIAは,症状の持続時間が通常は1時間未満(ほとんどのTIAは5分未満)である点を除けば,虚血性脳卒中と同様である。障害が1時間以内に消失する場合,... さらに読む を引き起こす)に生じる。血小板数が高くても,全ての患者が微小血管の症状を経験するわけではない。

本態性血小板血症では,深部静脈血栓症または肺塞栓症を引き起こす大径血管の血栓症のリスクが増大する。しかし,血小板数と血栓症の間に相関は認められない。

症状と徴候

多くみられる症状は,以下のものである:

  • 筋力低下

  • 皮下出血および出血

  • 痛風

  • 眼性片頭痛

  • 手足の錯感覚

  • 血栓イベント

血栓症では,患部に症状が現れることがある(例,脳卒中または一過性脳虚血発作による神経脱落症状;下肢血栓症による下肢痛,腫脹,またはその両方;肺塞栓症による胸痛および呼吸困難)。

通常,出血は軽度で,まれに自然発生し,鼻出血,紫斑ができやすい状態,または消化管出血として認められる。しかし,過度の血小板増多を認める症例では,割合は低いものの重篤な出血が生じることがある。

肢端紅痛症(熱感,紅斑,およびときに指の虚血を伴う手足の灼熱痛)がみられることもある。脾臓が触知可能になる場合があるが,有意な脾腫はまれであり,別の骨髄増殖性腫瘍を考慮すべきである。

診断

  • 血算および末梢血塗抹標本

  • 二次性血小板増多症の原因を除外

  • 細胞遺伝学的検査

  • ポリメラーゼ連鎖反応法によるJAK2変異,および陰性であればCALRまたはMPLの変異解析

  • 場合により骨髄検査

血小板数は450,000/μLを超えるが,1,000,000/μLを超えることもある。妊娠中には血小板数が減少することがある。末梢血塗抹標本で,巨大血小板,および巨核球の断片がみられることがある。

本態性血小板血症が疑われる場合は,慢性骨髄性白血病 慢性骨髄性白血病(CML) 慢性骨髄性白血病(CML)は,多能性造血幹細胞が悪性化してクローン性の骨髄増殖を起こすことで発生し,未熟な顆粒球の著しい過剰産生をもたらす。初期段階では無症状であるが,潜行性に進行し,非特異的な「慢性期」(倦怠感,食欲不振,体重減少)があり,最終的には,脾腫,蒼白,紫斑ができやすいおよび出血しやすい状態,発熱,リンパ節腫脹,皮膚の変化などの,より不良な徴候を呈する移行期または急性転化期に移行する。末梢血塗抹検査,骨髄穿刺,およびフィラデ... さらに読む (CML,血小板増多のみが現れる可能性がある)を除外するためのBCR-ABLアッセイとともに,血算,末梢血塗抹標本,鉄検査,および定量的JAK2 V617Fアッセイを含む遺伝子検査を実施すべきである。JAK2およびBCR-ABLアッセイが陰性の場合は,CALRおよびMPL変異アッセイの検査を行うべきである。本態性血小板血症の診断には,ヘマトクリット,白血球数,MCV,および鉄の検査が正常で,かつBCR-ABL転座を認めないことが必要である。

JAK2 V617F陽性の本態性血小板血症ではドライバー遺伝子のアレル量が50%を超えないため,遺伝子変異解析は常に定量的に行うべきであり,この所見からは真性多血症 真性多血症 真性多血症(PV)は,形態学的に正常な赤血球,白血球,および血小板の増加を特徴とする慢性骨髄増殖性腫瘍であり,赤血球増多が典型的にみられる。10~30%の患者で最終的に骨髄線維症および骨髄不全が生じ,1.0~2.5%では急性白血病が自然発生する。出血および動脈血栓症または静脈血栓症のリスクが高い。一般的な臨床像には,脾腫,微小血管イベント(例,一過性脳虚血発作,肢端紅痛症,眼性片頭痛),およびaquagenic... さらに読む または原発性骨髄線維症 原発性骨髄線維症 原発性骨髄線維症(PMF)は,骨髄線維化,脾腫,ならびに有核および涙滴赤血球を伴う貧血を特徴とする,慢性の骨髄増殖性腫瘍である。診断には骨髄検査が必要で,骨髄線維化(二次性骨髄線維症)の原因となりうる他の疾患を除外する。治療は支持療法となることが多いが,ルキソリチニブなどのJAK2阻害薬により症状を軽減できる場合があり,造血幹細胞移植により治癒が得られる可能性もある。 (骨髄増殖性腫瘍の概要も参照のこと。)... さらに読む が示唆される。

世界保健機関(World Health Organization:WHO)のガイドラインでは,骨髄生検で大型成熟巨核球数の増加を認めることが本態性血小板血症の診断に必要であると示唆しているが,この基準は前向きに妥当性が検証されたことがなく,また骨髄検査では本態性血小板血症を真性多血症と鑑別できない。細胞遺伝学的検査は骨髄穿刺検体で施行でき,その骨髄検体を用いて有意な線維化の有無を判定できる。

真性多血症は最初に血小板増多を伴って現れ,本態性血小板血症と混同されることがある(血漿量の増加のため,あるいは赤血球増多の他の症状がまだ出現していないため,血小板増多が真性多血症で優勢になることがある)。また,最初に本態性血小板血症とみられる患者(主に女性)の約25%は,時間の経過とともに顕性の真性多血症に移行し,ヘマトクリットの上昇とJAK2V617Fアレル量の増加がみられる。

予後

期待余命は正常に近い。症状がよくみられるが,疾患の経過は良性の場合が多い。動脈および静脈の重篤な血栓性合併症はまれであるが,生命を脅かす可能性がある。白血病への転化を起こす患者は2%未満であるが,ヒドロキシカルバミドなどの細胞傷害性治療薬に曝露すると可能性が高くなる。一部の患者,特にJAK2V617FまたはCALRのtype 1の変異を有する男性は,二次性骨髄線維症を発症する。

治療

  • アスピリン

  • 抗血小板薬(例,ヒドロキシカルバミド,アナグレリド)

  • まれに血小板アフェレーシス

  • まれに細胞傷害性薬剤

  • まれにインターフェロン

  • まれに造血幹細胞移植

軽度の血管運動症状(例,頭痛,軽度の指の虚血,肢端紅痛症)の場合および低リスク患者で血栓症リスクを低下させる場合は,アスピリン81mgの1日1回経口投与で通常は十分であるが,必要であればより高用量を用いることがある。重度の片頭痛をコントロールするために血小板数の減少が必要になることがある。妊娠中のアスピリンの有用性は証明されておらず,本態性血小板血症でCALR変異を有する患者では出血を引き起こすことがある。

アミノカプロン酸またはトラネキサム酸は,歯科処置などの小さな処置の際に後天性フォン・ウィルブランド病による出血をコントロールするのに効果的である。血小板数を最適化するためには大規模な手技が必要になることがある。

血小板数の低下

予後は通常良好であり,血小板増多の程度と血栓症との間に相関は認められないため,血小板数を低下させる薬剤で毒性を有する可能性がある場合,無症状の患者の血小板数を正常化するためだけに用いるべきではない。血小板数を低下させる治療に対して一般に同意が得られている適応は,以下のものである:

  • 心血管系危険因子

  • 一過性脳虚血発作

  • 高齢

  • 有意な出血

  • 極度の血小板増多がありリストセチン補因子活性が低い患者において手術の必要性がある

  • 場合によって重度の片頭痛

しかし,血小板数を低下させるための細胞傷害性薬剤による治療によって血栓リスクが低下すること,または生存期間が延長することを証明するデータはない。

血小板数を低下させるために用いられる薬剤には,アナグレリド,インターフェロンα-2b,およびヒドロキシカルバミドがある。一般にはヒドロキシカルバミドが短期治療で選択すべき薬剤であると考えられている。アナグレリドおよびヒドロキシカルバミドは胎盤を通過するため,妊娠中には用いられない;妊婦には,必要であればインターフェロンα-2bを使用できる。片頭痛に対してはインターフェロンが最も安全な治療法である。

ヒドロキシカルバミドの処方はその使用とモニタリングに精通する専門医のみが行うべきである。ヒドロキシカルバミドは,500~1000mgの1日1回経口投与で開始する。週1回の血算により患者のモニタリングを行う。白血球数が4000/μL未満に低下した場合,ヒドロキシカルバミドを中止し,値が正常に回復した後に50%用量で再開する。定常状態に達した場合は,血算の間隔を2週間毎に,次いで4週間毎に延長する。その目的は症状の緩和であり,血小板数の正常化ではない。ヒドロキシカルバミドの中止が早すぎると,急速なリバウンドと血小板の周期変動(platelet cycling)に至る可能性がある。JAK1/JAK2阻害薬であるルキソリチニブの役割が現在検討されている。

重篤な出血または反復性血栓症を認めるまれな症例に対して,また緊急手術前に血小板数を迅速に低下させる目的で,血小板を除去する血小板アフェレーシスが用いられている。ただし,血小板アフェレーシスが必要になるのはまれである。その効果は一時的であり,血小板数はすぐに元に戻る。ヒドロキシカルバミドまたはアナグレリドでは迅速な効果が得られないが,血小板アフェレーシスと同時に開始すべきである。

要点

  • 本態性血小板血症は,多能性造血幹細胞のクローン性の異常であり,血小板増多をもたらす。

  • 患者は,微小血管血栓症,出血,およびまれに大血管の血栓症のリスクが高い。

  • 本態性血小板血症では除外診断が用いられる;特に他の骨髄増殖性腫瘍および反応性(二次性)血小板増多症を除外しなければならない。

  • 無症状の患者には治療の必要はない。微小血管イベント(眼性片頭痛,肢端紅痛症,および一過性脳虚血発作)に対しては,通常はアスピリンが効果的である。

  • 極度の血小板増多がみられる患者では,血小板数をコントロールするためのより積極的な治療が必要でありそのような方法としては,ヒドロキシカルバミド,アナグレリド,インターフェロンα-2b,血小板アフェレーシスなどがある。

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