血管性紫斑病の原因となる異常タンパク血症

執筆者:David J. Kuter, MD, DPhil, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2020年 5月
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    典型的には免疫グロブリンの形で血中に含まれるタンパク質が異常に増加する病態であり,それにより血管が脆弱化し,紫斑が形成されやすくなる。

    血管性の出血性疾患の概要も参照のこと。)

    紫斑とは,出血によって紫調に変色した皮膚または粘膜病変のことである。小さな病変(2mm未満)は点状出血と呼ばれ,大きな病変は斑状出血または皮下出血と呼ばれる。

    アミロイドーシス

    アミロイドーシスでは,皮膚および皮下組織の血管内にアミロイドが沈着し,それにより血管が脆弱化して紫斑が形成される。本症の紫斑は典型的には上肢に生じ,大半の紫斑が下肢に生じる免疫性血小板減少症とは対照的である。一部の患者では,凝固第X因子がアミロイドにより吸着されて欠乏するが,通常はこの欠乏が出血の原因となることはない。血小板減少症のない患者において皮膚を軽く叩いた後に出現する眼窩周囲の紫斑,または紫斑性発疹から,アミロイドーシスが示唆される。一部のアミロイドーシス患者では巨舌症(舌の腫大)を呈し,皮膚にアミロイド沈着を認めることもある。

    巨舌症
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    この写真には,巨舌症を認める全身性アミロイドーシス患者が写っている。舌が口角からはみ出しており,背面には上歯による圧痕を見ることができる。
    © Springer Science+Business Media

    ほとんどの患者で血清遊離軽鎖濃度が高値となる。アミロイドーシスの診断は組織生検により確定される(例,罹患組織または吸引した脂肪組織のコンゴレッド染色による複屈折所見)。

    クリオグロブリン血症

    クリオグロブリン血症では,血漿が四肢の皮膚および皮下組織を流れているときに冷やされた際に析出する免疫グロブリン(すなわち,クリオグロブリン)を生じる。クリオグロブリンにはIgG,IgM,IgAがある。混合型クリオグロブリンは通常,単クローン性または多クローン性のIgGと複合体を形成したIgMで構成される。この免疫複合体は,正常な血小板機能およびフィブリン重合を阻害することがある。マクログロブリン血症(リンパ形質細胞性リンパ腫)または多発性骨髄腫で産生される単クローン性免疫グロブリンは,ときにクリオグロブリンとして作用し,最も一般的なC型肝炎をはじめとするいくつかの慢性感染症で形成される混合型のIgM-IgG免疫複合体も,同様にクリオグロブリンとして作用することがある。クリオグロブリンは特発性のこともある。クリオグロブリン血症は,小血管炎の原因となり,それにより紫斑が生じることもあるが,過粘稠と直接的な血管損傷が寄与している場合もある。クリオグロブリン血症は,先端部の出血性壊死,触知可能な紫斑,網状皮斑,下肢潰瘍を呈することがある。

    クリオグロブリンは臨床検査で検出可能である。

    クリオグロブリン血症
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    この画像には,先端部の出血性壊死,触知可能な紫斑,網状皮斑,および下肢潰瘍を呈したクリオグロブリン血症の臨床像が写っている。
    By permission of the publisher. From Deitcher S.In Atlas of Clinical Hematology. Edited by JO Armitage. Philadelphia, Current Medicine, 2004.

    高ガンマグロブリン血症性紫斑病

    高ガンマグロブリン血症性紫斑病は,主に女性に発生する血管炎性紫斑病である。触知できる小さな紫斑状の病変群が下腿の皮膚に繰り返し出現する。これらの病変は小さな残留性の褐色斑点となる。多くの患者に基礎免疫疾患(例,シェーグレン症候群全身性エリテマトーデス)の症状がみられる。診断に至る所見は多クローン性IgGの増加である。皮膚生検が必要になることがある。

    過粘稠度症候群

    過粘稠度症候群は,通常は血漿IgM濃度の著明な上昇によって生じ,マクログロブリン血症の患者では紫斑病やその他の異常出血(例,大量の鼻出血)の原因となることもある。他の免疫グロブリン値(特にIgAおよびIgG3)の著明な上昇が過粘稠度症候群に関連していることもある。

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