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血栓性疾患の概要

執筆者:

Joel L. Moake

, MD, Baylor College of Medicine

最終査読/改訂年月 2019年 8月
本ページのリソース

健常者では,凝固を促進する力と凝固を阻止する力および線維素を溶解する力との間で恒常性が保たれている。多くの遺伝的因子,後天的因子,および環境因子により,凝固の方向にバランスが傾き,病的な血栓が静脈(例,深部静脈血栓症[DVT]),動脈(例,心筋梗塞,虚血性脳卒中),または心腔内に形成されることがある。血栓は,形成された部位で血流閉塞を起こしたり,引き離されて遠隔の血管をふさぐ塞栓となったりすることがある(例,肺塞栓症,塞栓性脳卒中)。

病因

静脈血栓塞栓症への傾向を高める遺伝的欠陥としては以下のものがある:

後天的欠陥も静脈および動脈血栓症の素因となる(血栓塞栓症の後天的原因の表を参照)。

その他の疾患および環境因子は,特に遺伝子異常が併存する場合,血栓症のリスクを高めることがある。

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血栓塞栓症の後天的原因

状態

備考

静脈または動脈血栓のリスク上昇を伴う自己免疫疾患

動脈血栓のリスクを高める

狭窄が存在する患者でリスクがより高い

アテローム性プラークは破裂すると,組織因子が露出または放出され,凝固を活性化して,局所の血小板粘着および凝集を惹起し,血栓症を引き起こす

悪性腫瘍(前骨髄球性白血病;肺,乳房,前立腺,膵臓,胃,および結腸の腫瘍)

第X因子活性化プロテアーゼの分泌,細胞膜表面での組織因子の発現/露出,またはその両方によって凝固を活性化することがある

血小板凝集と血栓症リスクの増加を伴う

考えられる原因

葉酸,ビタミンB12,またはビタミンB6欠乏症による

感染症が重度の場合(例,敗血症)

静脈血栓症のリスクを高める

単球およびマクロファージによる組織因子の露出/発現を亢進させる

活性化プロテインCの形成を減少させる

エストロゲンを含有する経口避妊薬

低用量レジメンでは低リスク

静脈血栓塞栓症の素因となる遺伝的異常を有する患者,および喫煙している女性で頻度が高い

組織損傷

外傷または手術による

静脈うっ滞

手術,整形外科処置もしくは麻痺による不動状態,心不全,妊娠,または肥満による

症状と徴候

血栓性疾患の一般的な症状としては,原因不明の深部静脈血栓症および肺塞栓症(PE)などがある。表在性血栓性静脈炎を来すこともある。その他の合併症として,動脈血栓症もある(例,脳卒中または腸間膜虚血を引き起こす)。症状は,以下の例のように血栓の位置によって異なる:

  • 胸痛および息切れ:PEの可能性

  • 下肢の熱感,発赤,および腫脹:DVT

  • 半身の筋力低下/しびれ,発声障害,平衡障害,および歩行障害:虚血性脳卒中の可能性

  • 腹痛:腸間膜虚血の可能性

大半の遺伝性疾患では,若年成人期まで血栓リスクが高まり始めることはないが,血栓形成はあらゆる年齢で生じうる。複数回の自然流産の既往を有する女性もいる。

診断

診断については,本マニュアルの他の箇所で血栓の部位別に要約されている(例,深部静脈血栓症肺塞栓症虚血性脳卒中)。

素因

常に素因を考慮しておくべきである。症例によっては,臨床的に素因が明白である(例,最近の手術または外傷,長期の不動状態,悪性腫瘍,全身動脈硬化)。素因がすぐに明らかにならない場合,以下を認める患者において評価をさらに実施すべきである:

  • 静脈血栓症の家族歴

  • 静脈血栓症の複数のエピソード

  • 50歳前の静脈または動脈血栓症

  • 珍しい部位の静脈血栓症(例,海綿静脈洞,腸間膜静脈)

自然発生的なDVTの全患者のうち,半数もの患者が遺伝的素因を有する。

素因となる先天性因子の検査には,血漿中における生来の抗凝固分子の量または活性を測定する特異的な検査法および特定の遺伝子欠陥を調べるスクリーニングがあり,以下のようなものが含まれる:

  • ループスアンチコアグラントの凝固検査

  • 活性化プロテインCに対する抵抗性の凝固検査

  • 第V因子Leiden変異の遺伝子検査

  • プロトロンビン遺伝子変異(G20210A)の遺伝子検査

  • アンチトロンビンの機能測定

  • プロテインCの機能測定

  • プロテインSの機能測定

  • プロテインSの総抗原量および遊離型抗原量の測定

  • 血漿ホモシステイン濃度の測定

  • 抗リン脂質抗体の免疫測定

治療

治療については,本マニュアルの他の箇所で血栓の部位別に要約されている。

しばしば抗凝固療法が必要になり,典型的には注射剤のヘパリンまたは低分子ヘパリンに続いて経口のワルファリンまたは直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を投与する。具体的には第Xa因子阻害薬(リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバン)や直接トロンビン阻害薬(ダビガトラン)などがある。ワルファリンと異なり,直接作用型経口抗凝固薬では臨床検査による定期的なモニタリングを行う必要がない。DOACは,時間の経過により(in vivoでの半減期が短い),あるいは一部の症例では最近開発された薬剤(ダビガトランに対するイダルシズマブ[idaricizumab];リバーロキサバンまたはアピキサバンに対するアンデキサネット)により中和可能である(1, 2)。

現時点でのDOACの大きな欠点はその費用である。

治療に関する参考文献

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