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代謝性アシドーシス

執筆者:

James L. Lewis, III

, MD, Brookwood Baptist Health and Saint Vincent’s Ascension Health, Birmingham

最終査読/改訂年月 2016年 5月
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代謝性アシドーシスは重炭酸イオン(HCO3)の一次性の減少で,通常は二酸化炭素分圧(Pco2)の代償性の低下を伴う;pHは著明に低下するか,またはわずかに正常範囲を下回る。代謝性アシドーシスは,血清中の未測定陰イオンの有無に基づいて高アニオンギャップまたはアニオンギャップ正常に分類される。原因には,ケトン体および乳酸の蓄積,腎不全,薬物または毒素の摂取(高アニオンギャップ),消化管または腎からのHCO3喪失(アニオンギャップ正常)などがある。重症例の症状および徴候には,悪心・嘔吐,嗜眠,過呼吸などがある。診断は臨床的に行い,動脈血ガスおよび血清電解質の測定も用いる。基礎にある原因を治療し,pHが極めて低いときには炭酸水素ナトリウムの静注が適応になることがある。

酸塩基の調節および酸塩基平衡障害も参照のこと。)

病因

代謝性アシドーシスは,以下による酸の蓄積である:

  • 酸の産生量または摂取量の増加

  • 酸排泄量の減少

  • 消化管または腎臓からのHCO3喪失

酸負荷が呼吸性代償を上回るとアシデミア(動脈血pHが7.35未満)が生じる。原因はアニオンギャップに及ぼす影響によって分類される( アニオンギャップおよび 代謝性アシドーシスの原因)。

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代謝性アシドーシスの原因

原因

高アニオンギャップ

ケトアシドーシス

糖尿病

慢性アルコール中毒

低栄養

絶食

乳酸アシドーシス(生理的過程による)

ショック

肺疾患による一次性低酸素症

痙攣発作

アルコール(慢性の乱用)

乳酸アシドーシス(外因性毒素による)

一酸化炭素

シアン化物

イソニアジド

トルエン(最初は高ギャップであるが,その後の代謝物の排泄によりギャップは正常化する)

HIVに対する核酸系逆転写酵素阻害薬

ビグアナイド薬(急性腎障害以外ではまれ)

プロポフォール

d-乳酸の産生

腸内細菌異常増殖症候群/短腸症候群

腎不全

代謝されて酸となる毒素

メタノール(ギ酸)

エチレングリコール(シュウ酸)

パラアルデヒド(酢酸,クロロ酢酸)

サリチル酸

横紋筋融解症

アニオンギャップ正常(高クロール性アシドーシス)

消化管または腎臓からの重炭酸イオン(HCO3)喪失

人工肛門造設術

下痢

腸管の瘻孔

回腸瘻造設術

イオン交換樹脂の使用

塩化カルシウム(CaCl2

硫酸マグネシウム(MgSO4

泌尿器科的処置

尿管S状結腸吻合

回腸導管

腎臓からのHCO3喪失

尿細管間質性腎疾患

尿細管性アシドーシス(1型,2型,および4型)

副甲状腺機能亢進症

アセタゾラミド

非経腸(parenteral)投与

アルギニン

リジン

塩化アンモニウム(NH4Cl)

塩化ナトリウム(NaCl)の急速注入

その他

低アルドステロン症

高カリウム血症

トルエン(遅発性)

高アニオンギャップ性アシドーシス

アニオンギャップ増大を伴う代謝性アシドーシスの最も一般的な原因は以下のものである:

  • ケトアシドーシス

  • 乳酸アシドーシス

  • 腎不全

  • 毒素の摂取

ケトアシドーシスは1型糖尿病の一般的な合併症であるが(糖尿病性ケトアシドーシスを参照のこと),慢性アルコール中毒(アルコール性ケトアシドーシスを参照のこと),低栄養,および程度は軽いが絶食でも生じる。これらの状態では,生体内でグルコース代謝から遊離脂肪酸(FFA)代謝への転換が生じる;FFAは肝臓でケト酸,アセト酢酸,およびβ-ヒドロキシ酪酸(全て未測定陰イオン)へと変換される。ケトアシドーシスは,先天性のイソ吉草酸血症およびメチルマロン酸血症のまれな症状でもある。

乳酸アシドーシスは,入院患者における代謝性アシドーシスの最も一般的な原因である。乳酸の蓄積は,乳酸の過剰形成と利用低下が組み合わさって生じる。乳酸の過剰産生は,嫌気性代謝の状態で起こる。最も重篤な病型は様々な種類のショックで生じる。乳酸の利用低下は一般に,肝血流の低下による肝細胞機能障害に伴って生じるか,または全身性ショックの一環として生じる。ミトコンドリア機能を阻害する疾患や薬剤は,乳酸アシドーシスを引き起こしうる。

腎不全は,酸排泄の減少およびHCO3再吸収の減少によって高アニオンギャップ性アシドーシスを引き起こす。アニオンギャップの高値は,硫酸塩,リン酸塩,尿酸塩,および馬尿酸塩の蓄積によって説明できる。

毒素には,酸性代謝物を産生するものや乳酸アシドーシスを誘発するものがある。横紋筋融解症は代謝性アシドーシスのまれな原因であるが,陽子および陰イオンを筋肉から直接放出することによると考えられている。

アニオンギャップ正常のアシドーシス

アニオンギャップ正常のアシドーシスの最も一般的な原因は以下のものである:

  • 消化管または腎臓からのHCO3喪失

  • 腎臓からの酸排泄障害

アニオンギャップ正常の代謝性アシドーシスは,腎臓でHCO3の代わりに塩化物イオン(Cl)が再吸収されることから,高クロール性アシドーシスとも呼ばれる。

多くの消化管分泌物(例,胆汁,膵液,腸液)はHCO3に富む;そのため下痢,チューブドレナージ,瘻孔からの喪失はアシドーシスを引き起こしうる。尿管S状結腸吻合(尿路閉塞または膀胱摘除後に尿管をS状結腸に挿入する)では,結腸が尿のClと交換にHCO3を分泌して喪失し,また尿のアンモニウムを吸収し,このアンモニウムがアンモニア(NH3+)と水素イオン(H+)に分離する。イオン交換樹脂はHCO3に結合することでまれにHCO3喪失を引き起こす。

尿細管性アシドーシスでは,H+分泌(1型および4型)またはHCO3吸収(2型)のいずれかが障害される。アニオンギャップが正常な酸排泄障害は,腎不全の初期,尿細管間質性腎疾患,および炭酸脱水酵素阻害薬(例,アセタゾラミド)摂取時にもみられる。

症状と徴候

症状および徴候( 酸塩基平衡障害の臨床的影響)は,主に原因の症状および徴候と同じである。軽度であればアシデミア自体は無症状である。より重度のアシデミア(pHが7.10未満)は悪心,嘔吐,および倦怠感を引き起こしうる。アシドーシスが急速に発生した場合,pHがより高値にならなければ症状が発現しないこともある。

最も特徴的な徴候は過呼吸(長く深い呼吸,呼吸数は正常)であり,代償性の肺胞換気亢進を反映している;この過呼吸は呼吸困難の感覚を伴わない。

パール&ピットフォール

  • 代謝性アシドーシスによって惹起された過呼吸は,呼吸困難の感覚をもたらさない。

重度の急性アシデミアでは,低血圧およびショックを伴う心機能障害,心室性不整脈,ならびに昏睡が生じやすくなる。慢性アシデミアは骨の脱灰(例,くる病,骨軟化症,骨減少症)を引き起こす。

診断

  • 動脈血ガスおよび血清電解質

  • アニオンギャップおよびデルタギャップの算出

  • Winterの式を用いた代償性変化の算出

  • 原因の検査

代謝性アシドーシスおよび適正な呼吸性代償の確認については 酸塩基平衡障害 : 診断で考察されている。代謝性アシドーシスの原因判定は,アニオンギャップを用いることから始まる。

アニオンギャップ増加の原因が臨床的に明らかな場合もあるが(例,循環血液量減少性ショック,血液透析の未実施),そうでなければ血液検査に血糖,BUN,クレアチニン,乳酸,および考えられる毒素の検査を含めるべきである。サリチル酸濃度は大半の検査室で測定可能であるが,メタノールおよびエチレングリコールは測定できない場合が多く,これらの存在は浸透圧ギャップによって示唆されることがある。浸透圧ギャップの算出には,血清浸透圧の計算値(2[ナトリウム]+ [血糖]/18 + BUN/2.8 + 血中アルコール/5)を測定した浸透圧の値から減じる。差が10を上回れば浸透圧物質の存在が示唆され,これは高アニオンギャップ性アシドーシスの場合にはメタノールまたはエチレングリコールである。飲酒は浸透圧ギャップおよび軽度のアシドーシスにつながるが,決してこれを著明な代謝性アシドーシスの原因とみなしてはならない。

アニオンギャップが正常で,明らかな原因(例,著明な下痢)がなければ,尿中の電解質を測定し,[ナトリウム] + [カリウム] – [クロール]を計算して尿のアニオンギャップを求める。正常な尿のアニオンギャップ(消化管からの喪失がある患者を含む)は30~50mEq/Lで,この値の上昇は腎臓からのHCO3喪失を示唆する(尿細管性アシドーシスの評価については, 尿細管性アシドーシス : 診断)。

さらに,代謝性アシドーシスが存在する場合は,デルタギャップを算出して( アニオンギャップ)代謝性アルカローシスが共存するかを判定し,Winterの式( 診断)を適用して呼吸性代償が適正であるか,それとも別の酸塩基平衡障害を反映しているのかを調べる。

治療

  • 原因の治療

  • 主に重度のアシデミアに対して,炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)—慎重投与

治療は基礎にある原因に対して行う。腎不全に対して,また,ときにエチレングリコール,メタノール,およびサリチル酸による中毒に対して血液透析が必要となる。

NaHCO3を用いたアシデミアの治療適応があるのは,特定の状況のみであり,その他の状況ではおそらく有害である。代謝性アシドーシスがHCO3の喪失または無機酸の蓄積に起因するときは(すなわちアニオンギャップ正常のアシドーシス),HCO3療法は一般に安全かつ適切である。しかし,アシドーシスが有機酸の蓄積に起因するとき(すなわち高アニオンギャップ性アシドーシス)のHCO3療法については議論があり,このような状況ではHCO3療法が死亡率を明らかに低下させることはなく,いくつかの潜在的リスクが存在する。

基礎疾患の治療に伴い,乳酸およびケト酸は代謝されてHCO3に戻る;したがって外因性HCO3負荷は代謝性「オーバーシュート」アルカローシスを引き起こしうる。いかなる状況でも,HCO3はナトリウムおよび体液量の過剰や低カリウム血症をもたらす可能性があるほか,呼吸ドライブの抑制によって高炭酸ガス血症も引き起こしうる。さらに,HCO3は細胞膜を通過して拡散しないため細胞内アシドーシスは是正されず,追加されたHCO3の一部が二酸化炭素(CO2)に変換されて細胞内に入り,加水分解されてH+およびHCO3になるため,逆説的に細胞内アシドーシスは増悪する可能性がある。

こうした問題の他にも様々な議論があるにもかかわらず,多くの専門家は依然として,重度の代謝性アシドーシス(pHが7.10未満)に対しHCO3静注を推奨している。

治療には2つの計算が必要である。1つ目はHCO3をどの程度まで増加させなければならないかの計算で,Kassirer-Bleichの式によって算出され,pHが7.20のときの[H+]値として63nmol/Lを使用する(高アニオンギャップ性アシドーシスに対する目標は,[H+]79 nmol/L,pH ≤ 7.10である):

63 = 24 × Pco2/HCO3

すなわち

望ましいHCO3= 0.38 × Pco2

その値に達するために必要なHCO3の量は以下の通りである。

必要なNaHCO3(mEq) = (望ましい[HCO3測定された[HCO3]) × 0.4 × 体重(kg)

この量のNaHCO3を数時間かけて投与する。投与の30分~1時間後には血管外HCO3濃度と等しくなるため,この時間帯に血中のpHおよびHCO3濃度を測定する。

NaHCO3に代わる選択肢としては,以下のものがある:

  • 代謝性の酸(H+)と呼吸性の酸(炭酸[H2CO3])の両方を緩衝するアミノアルコールであるトロメタミン

  • NaHCO3と炭酸塩(炭酸塩はCO2を消費してHCO3を発生させる)の等モル混合物であるcarbicarb

  • 乳酸の酸化を促進するジクロロ酢酸

これらの代替選択肢はいずれも,単独のNaHCO3を超える便益は証明されておらず,特有の合併症を引き起こすことがある。

代謝性アシドーシスではK+ 欠乏がよくみられるため,血清K+を頻回にモニタリングすることによって同定し,必要に応じて塩化カリウムの経口または静脈内投で治療すべきである。

要点

  • 代謝性アシドーシスは,酸の産生もしくは摂取の増加,酸排泄の低下,または消化管もしくは腎臓からのHCO3喪失に起因する酸の蓄積によって引き起こされうる。

  • 代謝性アシドーシスは,アニオンギャップが高値または正常であるかに基づいて分類される。

  • 高アニオンギャップ性アシドーシスは,ケトアシドーシス,乳酸アシドーシス,腎不全,または特定の毒素の摂取が原因である場合が最も多い。

  • アニオンギャップ正常のアシドーシスは,消化管または腎臓からのHCO3喪失が原因である場合が最も多い。

  • デルタギャップを算出して代謝性アルカローシスが共存するかを判定し,Winterの式を適用して呼吸性代償が適正であるか,それとも別の酸塩基平衡障害を反映しているのかを調べる。

  • 基礎にある原因を治療する。

  • アシドーシスがHCO3の変化によるものである場合(アニオンギャップ正常のアシドーシス),NaHCO3の適応がある。

  • 高アニオンギャップ性アシドーシスにおける重炭酸塩の静注については議論がある(しかし,pH < 7.00であり,目標pHが ≤ 7.10である場合は考慮されることがある)。

乳酸アシドーシス

乳酸アシドーシスは,血中の乳酸濃度上昇による,高アニオンギャップ性の代謝性アシドーシスである。乳酸アシドーシスは乳酸の過剰産生,乳酸の代謝低下,またはその両方に起因する。

酸塩基の調節および酸塩基平衡障害も参照のこと。)

乳酸はグルコース代謝およびアミノ酸代謝の正常な副産物である。乳酸アシドーシスには,主に以下に挙げる2種類の病型がある:

  • A型乳酸アシドーシス

  • B型乳酸アシドーシス

d-乳酸アシドーシスはまれな病型である。

A型乳酸アシドーシス

最も重篤な病型であるA型乳酸アシドーシスは,O2 欠乏時にATPを産生するために,虚血組織で乳酸が過剰に産生されることで生じる。過剰産生は,典型的には循環血液量減少性ショック,心原性ショック,または敗血症性ショックにおいて組織灌流が低下しているときに生じ,肝臓への灌流が不十分で乳酸代謝が低下することによって悪化する。肺疾患による一次性低酸素症および種々の異常ヘモグロビン症に伴って生じることもある。

B型乳酸アシドーシス

B型乳酸アシドーシスは全体的な組織灌流が正常(したがってATP産生も正常)な状態で生じ,予後はさほど悪くない。乳酸産生の増加は,激しい筋肉使用(例,運動,痙攣,低体温性のシバリング)のような相対的な局所的低酸素症や,癌および特定の薬物または毒素の摂取に起因することがある( 代謝性アシドーシスの原因)。原因薬には,ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬ならびにビグアナイド系薬剤のフェンホルミンおよび(より程度は低いが)メトホルミンなどがある;フェンホルミンは大半の国で市場から回収されているが,中国からは依然として入手可能である(漢方薬の一成分としてのフェンホルミンを含む)。肝機能不全またはチアミン欠損症により代謝が低下する場合がある。

d -乳酸アシドーシス

d-乳酸アシドーシスは乳酸アシドーシスのまれな病型であり,空回腸バイパスのある患者または腸切除後患者の結腸で生じる細菌性炭水化物代謝の産物,d-乳酸が全身性に吸収される。ヒト乳酸脱水素酵素はl-乳酸しか代謝できないため,d-乳酸は循環血液中に存続する。

症状と徴候

症状および徴候は基礎にある原因(例,敗血症性ショック,毒素の摂取)によるものが優勢である。

診断

  • 動脈血ガスおよび血清電解質

  • アニオンギャップおよびデルタギャップの算出

  • 血中乳酸濃度

A型およびB型の乳酸アシドーシスの所見は,その他の代謝性アシドーシスと同様である。診断には,血中pH < 7.35および乳酸濃度 > 5~6mmol/Lを満たす必要がある。乳酸濃度およびpHがこれほど極端に変化していない病態は,高乳酸血症と呼ばれる。

d-乳酸アシドーシスでは,重炭酸イオン(HCO3)濃度の低下から予測されるよりもアニオンギャップは小さく,尿浸透圧ギャップ(尿浸透圧の計算値と測定値との差)が存在する可能性がある。乳酸に対する典型的な臨床検査はd-乳酸への感度が低い。特異的d-乳酸濃度検査が利用でき,腸の問題など複数の原因を有する可能性のある患者で,アシドーシスの原因を明らかにするために必要になることがある。

治療

  • 原因の治療

A型およびB型の乳酸アシドーシスの治療は,その他の代謝性アシドーシスの治療と同様である。原因の治療が最も重要である。重炭酸の投与は高アニオンギャップ性アシドーシスでは危険な可能性があるが,pH < 7.00であり,目標pHが ≤ 7.10の場合は考慮されることがある。

d-乳酸アシドーシスにおける治療では,輸液,炭水化物制限のほか,ときに経口抗菌薬(例,メトロニダゾール)が用いられる。

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