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高浸透圧性高血糖状態(HHS)

執筆者:

Erika F. Brutsaert

, MD, New York Medical College

最終査読/改訂年月 2019年 1月
本ページのリソース

高浸透圧性高血糖状態は糖尿病の代謝性合併症で,重度の高血糖,極度の脱水,血漿浸透圧高値,および意識変容を特徴とする。2型糖尿病で最も頻度が高く,しばしば生理的ストレス下で生じる。高浸透圧性高血糖状態の診断は,重度高血糖,血漿浸透圧高値,および有意なケトーシスがないことによる。治療は生理食塩水およびインスリンの静注である。合併症には昏睡,痙攣発作,死亡などがある。

高浸透圧性高血糖状態(以前は高血糖性高浸透圧性昏睡[HHNK],非ケトン性高浸透圧症候群[NKHS]と呼ばれていた)は,2型糖尿病の合併症であり,推定死亡率は最大20%と,糖尿病性ケトアシドーシス 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA) 糖尿病性ケトアシドーシスは糖尿病の急性代謝性合併症で,高血糖,高ケトン血症,および代謝性アシドーシスを特徴とする。高血糖は浸透圧利尿を引き起こし,体液と電解質の有意な減少をもたらす。DKAは主に1型糖尿病(DM)で生じる。悪心,嘔吐,および腹痛を引き起こし,脳浮腫,昏睡,および死亡に進展する恐れがある。DKAの診断は,高血糖の存在下で高ケトン血症およびアニオンギャップ増大を伴う代謝性アシドーシスを検出することによる。治療は循環血液量の増... さらに読む の死亡率(現在では1%未満)と比べて有意に高い。通常は症候性高血糖の期間を経て発症し,この期間中の水分摂取が不十分であるため,高血糖誘発性の浸透圧利尿による極度の脱水が生じると考えられる。

誘発因子としては以下のものがある:

  • 急性感染症およびその他の病態

  • 耐糖能を障害する薬剤(グルココルチコイド)または体液喪失を促進する薬剤(利尿薬)

  • 糖尿病治療に対するアドヒアランス不良

大半の2型糖尿病患者では,ケトン体生成を抑制するのに十分な量のインスリンがあるため,血清ケトン体は存在しない。アシドーシスの症状は存在しないため,大半の患者は発症前にかなり長期間にわたって浸透圧性の脱水に耐え,ゆえに,血糖値(> 600mg/dL[> 33.3mmol/L])および浸透圧(> 320mOsm/L)は,糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)よりも通常大幅に高い。

症状と徴候

高浸透圧性高血糖状態の主症状は錯乱や見当識障害から昏睡までと幅広い意識変容であり,通常は,腎前性高窒素血症,高血糖,極度の脱水(高浸透圧を伴う場合と伴わない場合とがある)の結果生じる。DKAとは対照的に,焦点発作または全般発作および一過性の片麻痺が生じうる。

診断

  • 血糖値

  • 血清浸透圧

通常,高浸透圧性高血糖状態が最初に疑われるのは,意識変容のある患者の精査で指先採血の血糖値が著明に上昇しているのを認めたときである。血清電解質,BUNおよびクレアチニン,グルコース,ケトン体,ならびに血漿浸透圧をまだ測定してなければ測定すべきである。尿中のケトン体を検査すべきである。血清カリウム濃度は通常は正常範囲内であるが,ナトリウムは循環血液の不足量に応じて低値または高値となる。高血糖は希釈性低ナトリウム血症を引き起こすことがあるため,血清血糖値が100mg/dL(5.6mmol/L)を超える場合,100mg/dL(5.6mmol/L)の上昇毎に血清ナトリウムの測定値に1.6mEq/L(1.6mmol/L)を加算することで補正する。BUNおよび血清クレアチニンの濃度は著明に上昇している。動脈血pHは通常7.3を上回るが,ときに乳酸が蓄積して軽度の代謝性アシドーシスが生じる。

水分欠乏量は10Lを超えることがあり,急性循環虚脱が一般的な死因である。広範な血栓症は剖検でしばしば認められる所見であり,一部の症例では播種性血管内凝固症候群 播種性血管内凝固症候群(DIC) 播種性血管内凝固症候群(DIC)は,循環血中のトロンビンおよびフィブリンの異常な過剰生成に関係する。その過程で血小板凝集および凝固因子消費が亢進する。緩徐に(数週間または数カ月かけて)進行するDICでは,主に静脈の血栓性および塞栓性の症状がみられる;急速に(数時間または数日で)進行するDICでは,主に出血が生じる。重度で急速進行性のDICは,血小板減少症,PTTおよびPTの延長,血漿Dダイマー(または血清フィブリン分解産物)濃度の上昇,... さらに読む の結果,出血を来すことがある。その他の合併症には,誤嚥性肺炎 誤嚥性肺炎 誤嚥性の肺炎(pneumonia)および肺臓炎(pneumonitis)は,毒性物質,通常は胃内容物を肺に誤嚥することで引き起こされる。化学性肺臓炎,細菌性肺炎,または気道閉塞が起こりうる。症状としては,咳嗽や呼吸困難などがある。診断は臨床像および胸部X線所見に基づく。治療および予後は,誤嚥された物質によって異なる。 (肺炎の概要も参照のこと。) 誤嚥は肺の炎症(化学性肺臓炎),感染(細菌性肺炎または肺膿瘍),または気道閉塞を引き起こす... さらに読む 急性腎不全 急性腎障害(AKI) 急性腎障害は,数日間から数週間で腎機能が急速に低下する病態であり,これにより,尿量減少の有無にかかわらず,血中に窒素化合物が蓄積する(高窒素血症)。原因は重度の外傷,疾患,または手術による腎臓の灌流低下である場合が多いが,ときに急速進行性の内因性の腎疾患に起因する場合もある。症状としては,食欲不振,悪心,嘔吐などがある。無治療の場合,痙攣... さらに読む ,および急性呼吸窮迫症候群 急性低酸素血症性呼吸不全(AHRF,ARDS) 急性低酸素血症性呼吸不全は,酸素投与に反応しない重症の動脈血低酸素血症である。気腔への体液貯留または虚脱により生じる血液の肺内シャントによって引き起こされる。所見には呼吸困難および頻呼吸などがある。診断は動脈血ガスおよび胸部X線による。通常,治療には機械的人工換気が必要となる。 (機械的人工換気の概要も参照のこと。) 急性低酸素血症性呼吸不全(AHRF)における気腔への体液貯留は以下に由来する:... さらに読む 急性低酸素血症性呼吸不全(AHRF,ARDS) などがある。

治療

  • 生理食塩水の静注

  • 低カリウム血症があればその是正

  • インスリンの静注(血清カリウムが3.3mEq/L[3.3mmol/L]以上である場合)

最初の数時間は,生理(等張)食塩水を15~20mL/kg/時で投与する。その後,ナトリウムの補正値を計算すべきである。ナトリウムの補正値が135mEq/L(135mmol/L)未満であれば,等張食塩水を250~500mL/時で続けるべきである。ナトリウムの補正値が正常または上昇していれば,0.45%食塩水(半生食)を使用すべきである。

一旦血糖値が250~300mg/dL(13.9~16.7mmol/L)になったら,ブドウ糖を追加すべきである。輸液速度は,血圧,心臓の状態,水分の出納バランスに応じて調節すべきである。

インスリンは,最初の1Lの生理食塩水静注後に0.1単位/kgをボーラス投与し,続いて0.1単位/kg/時を静注する。輸液単独でも,ときに血糖値が急激に低下しうるため,インスリンの減量が必要になることがある。浸透圧があまりに急激に低下すると,脳浮腫を来す恐れがある。ときに,高浸透圧性高血糖状態を呈するインスリン抵抗性2型糖尿病患者ではより高用量のインスリンを要する。血糖値が300mg/dL(16.7mmol/L)に下がれば,インスリン投与速度を基礎レベル(1~2単位/時)まで低下させ,輸液が完了し患者が食事を摂れるようになるまで続けるべきである。

目標血漿血糖値は250~300mg/dL(13.9~16.7mmol/L)とする。通常は急性エピソードからの回復後,用量を調整したインスリン皮下注射に切り替える。

カリウムの補充は糖尿病性ケトアシドーシスの場合と同様である:血清カリウム値が3.3mEq/L(3.3mmol/L)未満であれば40mEq/時,3.3~4.9mEq/L(3.3および4.9mmol/L)であれば20~30mEq/時で投与し,5mEq/L(5mmol/L)以上であれば投与は行わない。

治療に関する参考文献

要点

  • 2型糖尿病患者では,感染症,アドヒアランス不良,および特定の薬剤が,血糖値の著明な上昇,脱水,および意識変容を誘発する恐れがある。

  • 患者にはケトアシドーシスを予防するのに十分なインスリンが存在する。

  • 水分欠乏量は10Lを超えることがある;その場合の治療は,生理食塩水の静注とインスリンの点滴である。

  • 急性期の治療における血糖値の目標値は250~300mg/dL(13.9~16.7mmol/L)である。

  • 血清カリウム濃度に応じてカリウムを補充する。

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