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水とナトリウムの平衡

執筆者:

James L. Lewis, III

, MD, Brookwood Baptist Health and Saint Vincent’s Ascension Health, Birmingham

最終査読/改訂年月 2016年 11月
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体液量および電解質濃度は,食事摂取量,代謝活動,環境ストレスの大幅な変化にもかかわらず,正常ではごく狭い範囲内に維持される。体液のホメオスタシスは主に腎臓によって維持される。

水およびナトリウムの平衡は密接に相互依存している。体内総水分量(TBW)は,男性では体重の約60%(肥満者での約50%から痩身者での70%),女性では体重の約50%である。TBWのほぼ3分の2が細胞内にあり(細胞内液,ICF),残り3分の1は細胞外にある(細胞外液,ECF)。正常では細胞外液の約25%が血管内にあり,残る75%は間質液である( 平均的な70kgの男性の体液コンパートメント)。

平均的な70kgの男性の体液コンパートメント

体内総水分量 = 70kg × 0.60 = 42L。

平均的な70kgの男性の体液コンパートメント

主な細胞内陽イオンはカリウムである。主な細胞外陽イオンはナトリウムである。細胞内および細胞外の陽イオンの濃度は以下の通りである:

  • 細胞内カリウム濃度は平均140mEq/Lである。

  • 細胞外カリウム濃度は3.5~5mEq/Lである。

  • 細胞内ナトリウム濃度は12mEq/Lである。

  • 細胞外ナトリウム濃度は平均140mEq/Lである。

浸透圧の力(Osmotic force)

水分中の全溶質の濃度を容量オスモル濃度(溶液1L中の溶質の量)といい,これは体液中では重量オスモル濃度(溶液1kg中の溶質の量)に近似する。血漿浸透圧(plasma osmolality)は,検査室での測定または下記の式から推定できる

血漿浸透圧(mOsm/kg) =

equation

ここでは,血清ナトリウム濃度はmEq/L,ブドウ糖およびBUNはmg/dLである。体液の浸透圧は正常では275~290mOsm/kgである。血漿浸透圧の主要決定因子はナトリウムである。計算された浸透圧の見かけ上の変化は,ナトリウムの測定誤差に起因する可能性がある(高脂血症または極度の高タンパク血症で起こることがあるが,これは血清サンプル中のスペースを脂質またはタンパクが占拠するために起こる現象で,ナトリウムの血清濃度そのものは変化していない)。この問題は,イオン選択電極法(直接法)という新しい血清電解質の測定法を用いることで回避できる。測定された浸透圧が予測浸透圧を10mOsm/kg以上超えている場合,浸透圧ギャップが存在する。これは,血漿中に存在する測定されていない浸透圧物質によるものである。このような物質として最も多いのはアルコール(エタノール,メタノール,イソプロパノール,エチレングリコール),マンニトール,およびグリシンである。

水は,低濃度の溶質領域から高濃度の溶質領域へと自由に細胞膜を通過する。したがって,浸透圧は様々な体液コンパートメントをまたいで平衡化する傾向を示し,これは溶質ではなく主として水が移動することで生じる。細胞膜を通過し自由に拡散する尿素などの溶質は,水の移動にほとんど,または全く影響を及ぼさない(浸透圧活性:osmotic activityがほとんど,または全くない)が,ナトリウムやカリウムのように主に1つの体液コンパートメントに制限されている溶質は浸透圧活性が高い。

張度,すなわち有効浸透圧は浸透圧活性を反映しており,体液コンパートメントをまたいで水分を引き寄せる力を決定する(浸透圧の力)。浸透圧の力は他の力の抵抗を受ける可能性がある。例えば,血漿タンパクは血漿内に水分を引き込む浸透圧効果を多少有するが,この浸透圧効果は正常では血漿から水分を押し出す血管の静水圧によって相殺されている。

水の摂取と排泄

1日の平均飲水量は約2.5Lである。尿および他の部位からの喪失を補充するために必要な量は,健康成人で約1~1.5L/日である。しかし短期的には,腎機能が正常な平均的な若年成人であれば,毎日わずか200mLを飲水すれば細胞代謝によって発生する窒素老廃物およびその他の老廃物を排出できる。腎濃縮能がいくらかでも失われている場合は必要量が増す。腎濃縮能の低下は以下でみられる:

  • 高齢者

  • 尿崩症,特定の腎疾患,高カルシウム血症,厳格な食塩制限,慢性的な水分過剰,または高カリウム血症

  • エタノール,フェニトイン,リチウム,デメチルクロルテトラサイクリン,またはアムホテリシンBを摂取している場合

  • 浸透圧利尿を来している場合(例,高タンパク食または高血糖などによる)

それ以外の回避できない水分喪失の大半は肺および皮膚からの不感蒸泄であり,1kg当たり平均0.4~0.5mL/時,すなわち70kgの成人で約650~850mL/日の水分を喪失する。発熱時は,体温が正常体温から1℃上昇する毎にさらに50~75mL/日が失われる。消化管からの喪失は,著明な嘔吐,下痢,またはその両方が生じていない限り通常は無視できる。暑さへの曝露または過度の運動時は,発汗からの喪失が顕著となりうる。

飲水量は口渇によって調節される。口渇は,前外側視床下部の受容体が血漿浸透圧上昇(わずか2%)または体液量の減少に応答することによって誘発される。まれに,視床下部機能障害では口渇が生じにくくなる。

腎臓による水分排泄は,主に バソプレシン(ADH)によって調節される。 バソプレシンは下垂体後葉から放出され,遠位ネフロンでの水の再吸収を増加させる。 バソプレシンの放出は以下のいずれかにより刺激される:

  • 血漿浸透圧の上昇

  • 血液量の減少

  • 血圧低下

  • ストレス

バソプレシンの放出は,特定の物質(例,エタノール,フェニトイン),下垂体後葉の腫瘍または下垂体後葉に浸潤する疾患,および脳への外傷によって阻害されることがある。特異的原因を同定できないことも多い。

水分を摂取すると血漿浸透圧は低下する。血漿浸透圧の低下は バソプレシンの分泌を阻害し,これにより腎臓で希釈尿が生成される。若年成人の正常な腎臓の希釈能は,最大で1日25Lもの飲水が可能なレベルである;それ以上の量では,血漿浸透圧が急速に低下する。

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